業務上のミスについて従業員に対して損害賠償請求する場合の問題点
企業向け法律講座ブログ

業務上のミスについて従業員に対して損害賠償請求する場合の問題点

  • ツイート
  • シェア
  • はてブ
  • LINEで送る
  • Pocket
  • 2013年11月06日

    従業員が仕事でミスをして会社に損害が発生した場合、会社は被った損害を従業員に請求できるでしょうか。

    今回はこの問題について解説したいと思います。

     

     

    この問題に関する裁判例として平成23年10月31日の「エーディーディー事件」を紹介します。

    X会社は、コンピューターシステム及びプログラムの企画・設計・受託等を業務としており、取引先から販売管理システムの改良業務を受託していました。

    従業員Yは、この改良業務を担当するチームの責任者の地位にありました。

    この業務にあたっては、納品されたシステムに不具合が見つかり、取引先から指摘を受けて修正、しかしまた不具合が見つかる、ということが相次ぎました。

    不具合の原因は、主にY自身やチームメンバーによるミスでした。このようなミスが続いたため、取引先はX会社との取引を徐々に減らし、結果X会社の売り上げが減少しました。

    X会社はこの売上減少はYの職務怠慢によるものとして、Yに対して2000万円を超える損害賠償を請求しました。

     

     

    結論から言えば、裁判所はX会社の請求を認めず、従業員Yは売上減少分を賠償する必要はないと判断しました。

    裁判所は、会社の従業員に対する請求を認めない理由として、従業員のミスが原因となって顧客を失ったとしても、そのようなことは「取引関係にある企業同士で通常に有り得るトラブルなのであって,それを労働者個人に負担させることは相当ではない」としています。

     

     

    この判決は妥当であり、取引関係で起こる一般的なトラブルについて発生した損害を従業員個人に請求するのは筋違いであると言わざるを得ません。

    業務上のミスで受注を逃した、営業の目標が達成できなかった、納品前の検査が不十分で不良品を納品してしまった、などというトラブルは、いずれもこの範疇に入ります。

    一方で、従業員が会社の車両で交通事故を起こして車両が破損した、従業員が振込先を間違えて会社に損害を与えたというようなケースは、過失であっても従業員に損害の賠償を求めることができることがあります。

    ▼ この記事を読んでいただいた方にお勧めの記事はこちらです。 ▼

     ○ 従業員の横領行為と証拠の収集について https://kigyobengo.com/blog/2878

    ○ ノルマを達成できない営業社員を解雇する前に考えること https://kigyobengo.com/blog/2656

    ○ ブログの一覧はこちらから  https://kigyobengo.com/blog

     

    ご相談はhttps://kigyobengo.com/contactから気軽にお申し込みください。

    顧問契約をご希望の経営者の方の面談を随時行っておりますので、https://kigyobengo.com/contactからお申し込みください。

    なお、このブログの内容はメールマガジンによる配信も行っております。

    https://kigyobengo.com/mailmagazinにメールマガジン登録フォームを設けておりますので、ぜひご登録をお願いいたします。

     

  • ツイート
  • シェア
  • はてブ
  • LINEで送る
  • Pocket
  • 業法務に特に強い弁護士が揃う 顧問弁護士サービス

    企業法務の取扱い分野一覧

    企業法務に強い弁護士紹介

    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
    片山 琢也 弁護士
    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
    堀野 健一 弁護士
    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


    書籍出版情報一覧へ

    運営サイト

    大阪をはじめ全国の中小企業に選ばれ続けている顧問弁護士サービス
    弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV
    中小企業や士業(社労士・税理士)のための労務セミナー情報サイト

    弁護士会サイト

    大阪弁護士会
    日本弁護士連合会
    企業法務のお役立ち情報 咲くや企業法務.NET遠方の方のご相談方法