解雇の訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い4つのポイント!

解雇トラブルで訴訟でかつための労務管理
従業員との労務関係のトラブルの中で、もっとも深刻なものの1つが、解雇トラブルです。解雇トラブルが訴訟に発展して、企業側が敗訴し、解雇した従業員に対して支払いを命じられるケースでは、支払金額が以下のようにかなり高額になっています。

事例1:三井記念病院事件(東京地方裁判所平成22年2月9日判決)
「経営者の事業方針、業務命令に従わない」などの理由で従業員を解雇したことが不当解雇と判断されたケース
判決による支払命令額:約1700万円

事例2:森下仁丹事件(大阪地方裁判所平成14年3月22日判決)
「パソコンの入力ミスを多数回繰り返す」などの理由で従業員を解雇したことが不当解雇と判断されたケース
判決による支払命令額:約650万円

事例3:松筒自動車学校事件(大阪地方裁判所平成7年4月28日判決)
「自動車学校の受付業務において多数回ミスを繰り返す」などの理由で従業員を解雇したことが不当解雇と判断されたケース
判決による支払命令額:約330万円

このように、解雇トラブルで敗訴した場合、金銭的にも会社に多大な負担になります。

では、どのような労務管理をしていれば、解雇トラブルが訴訟になったときも勝訴することができるのでしょうか?今回は、「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」について、重要な4つのポイントをご説明します。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い「4つのポイントとは?」
ポイント1:従業員に「的確な指導」をしているかどうか。
ポイント2:従業員との「定期的な面談」をしているかどうか。
ポイント3:日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にあるかどうか。
ポイント4:離職率の高い会社か、離職率の低い会社か。

 

解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い「4つのポイントとは?」

最初に、「不当解雇の訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」に関する4つのポイントをまとめておきます。
ポイントは、以下の通りです。

不当解雇の訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い4つのポイント!

ポイント1:従業員に「指導」をしているかどうか。
ポイント2:従業員との「定期的な面談」をしているかどうか。
ポイント3:日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にあるかどうか。
ポイント4:離職率の高い会社か、離職率の低い会社か。

解雇のトラブルでは、解雇した従業員の個別の問題点が訴訟の争点になります。
しかし、実際には、従業員側の個別の問題点だけではなく、4つのポイントとしてあげた会社の日ごろの「労務管理体制」の違いが訴訟の結論に大きく影響します。

▶参考:解雇トラブルの発生リスクを下げるための「弁護士が教える解雇方法」

今回の記事のテーマ「会社の日ごろの労務管理体制の違い」が訴訟の結論に大きく影響してくるというお話に関連して、そもそもの解雇トラブルが発生しないようにするための「正しい解雇方法」を理解しておくことも重要です。そのため、「弁護士が教える問題社員の解雇方法」の記事についても必ずチェックしておきましょう。

▶参考:実際に不当解雇で訴えられた時の会社の守り方を弁護士が解説!

参考の二つ目として、実際に「不当解雇」として訴えられた時のことについてもおさえておきましょう。「不当解雇の損害賠償や慰謝料はいくらくらい?」などの実態から、「実際に不当解雇で訴えられたときの会社の守り方」について詳しく理解していきましょう。こちらについては、「弁護士が解説する不当解雇で訴えられた時の会社の守り方」をご覧下さい。

 

以下では、「ポイント1」から「ポイント4」まで、4つのポイントについて順番に詳しくご説明します。

 

ポイント1:
従業員に「的確な指導」をしているかどうか。

「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」の1つ目のポイントとして、「従業員に的確な指導をしているかどうか」という点があげられます。従業員に的確な指導ができていない会社は、解雇トラブルの訴訟で、「敗訴」してしまいます。
これは、裁判所の考え方として、以下のような基本的な考え方があるためです。

解雇事件に関する裁判所の基本的な考え方

『従業員を指導するのは会社の責任であり、十分な指導もしないまま、問題点を指摘して解雇するのは不当解雇である』

この基本的な考え方をもう少し具体的な例でご説明したいと思います。
たとえば、部下に対する叱責の程度がパワハラにあたるほどひどく、部下に対する人格的な非難にまでおよんでいる管理職がいたとします。

会社がこの管理職を部下に対するパワハラを理由に解雇した場合に、解雇の裁判では、「会社は、解雇した管理職に対して、パワハラにあたるようなひどい叱責はするべきではないことを指導したか」が問われます。「パワハラをしないなどということは、管理職としてあたりまえのことだから、わざわざ指導しなくてもわかるはずだ」、という論理は、通用しません。

また、解雇の理由が「勤務成績の不良」や「勤務態度の不良」である場合も、「会社が従業員に対してどのように指導したのか」が問われます。
たとえば、エース損害保険事件(東京地方裁判所平成13年8月10日決定)は、保険会社が従業員を勤務成績の不良や勤務態度の不良を理由に解雇した事件です。

この事件で、裁判所は、「研修や適切な指導を行うことなく、早い段階から組織から排除することを意図した。」などと指摘し、会社が行った解雇は不当解雇であったとして、保険会社を敗訴させています。

このように、裁判所は不当解雇かどうかの判断にあたって、会社が行った指導の内容、頻度を重視しています。
経営者や上司が、問題点がある従業員に指導をしない会社には、次のようにいくつかのパターンがあります。

経営者や上司が、問題のある従業員に指導しないパターンの例

パターン1:
経営者や上司が、指導をすることにより従業員とぎくしゃくすることを恐れ、指導しないで我慢しているケース。

パターン2:
「あたりまえのことだから言わなくてもわかる」と思って、指導しないケース。

パータン3:
従業員の問題点をみて、指導する前に、「退職させよう」、あるいは「解雇しよう」と決めてしまうケース。

パターン4:
成績のよい従業員に対して、成績以外の問題点については目をつぶってしまい、指導をしないケース。

パターン5:
組合に加入した従業員に対して、組合とのトラブルを恐れて、指導を避けてしまうケース。

パターン6:
一応の指導はしているものの、遠まわしで回りくどい表現のため、端的なわかりやすい指導になっていないケース。

いずれにしても、従業員に指導しないケースは、裁判所の論理では、「指導すべきなのに指導しないまま解雇した」ということになり、不当解雇として敗訴してしまいます。従業員の問題点に気づいたときは、その場で、はっきり明確に指導して、改善させることが労務管理の基本であることを肝に銘じておきましょう。

 

ポイント2:
従業員との「定期的な面談」をしているかどうか。

「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」の2つ目のポイントとして、従業員との「定期的な面談」をしているかどうかという点が重要になります。

従業員と「定期的な面談」の機会をもって、面談の内容について記録を残している会社は、解雇トラブルの訴訟に強い会社です。
以下、その理由について、ご説明したいと思います。

従業員との定期的な面談の内容を記録している会社が訴訟に強い理由

「ポイント1」で述べたとおり、従業員の問題点に気づいたときは、その場で明確に指導して改善させることが必要です。しかし、このような現場での適宜の指導だけでは、指導が一部の従業員に偏り、すべての従業員に指導が行き届かないことになりかねません。

また、適宜の指導だけでは、指導の内容を記録に残す機会がなく、万一の解雇トラブルの際に、従業員に、「いつ」、「どのような場面で」、「誰が」、「なにを」指導したのかを裁判所で説明することができません。そして、従業員に指導した内容を、裁判所で説明することができなければ、会社が敗訴してしまいます。

正しい労務管理のためには、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回など、定期的に経営者あるいは従業員の上司が、従業員と面談する機会を持つことが不可欠です。

その中で、会社のビジョン、目標を従業員と共有し、また、従業員の日々の業務に対する評価を伝えて、「褒めるべき点は褒めること」、「改善すべき点は指導を行うこと」、を繰り返していきましょう。面談を行った際は、従業員に伝えた内容、従業員に対する指導内容、指導に対する従業員からの回答などを記録し、次回の面談に生かすことで、継続的な指導につなげることが必要です。

このような「定期的な面談」は、従業員との信頼関係をつくり、従業員を育てるためのものですが、万一、問題のある従業員と解雇トラブルになった際も、会社が従業員を継続的に的確な指導をしてきたことを立証するために役立ちます。従業員との「定期的な面談」を行っているかどうかが、解雇トラブルの場面でも、訴訟の結果に大きく影響することをおさえておきましょう。

 

ポイント3:
日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にあるかどうか。

「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」の3つ目のポイントとして、「日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にあるか」という点があげられます。
日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にあれば、解雇トラブルの訴訟に強い会社を作ることができます。

「なぜ、日ごろから弁護士に相談できる環境が必要なのでしょうか?」

それは、解雇トラブルの訴訟では、従業員側の問題点だけでなく、「会社として解雇までにするべきことをしたか」が問題にされるためです。
この「会社として解雇までにするべきこと」というのは、以下のようなものがあります。

●業務成績が不良な従業員に対して、成績をあげるために的確な指導をしたか。
●業務態度が悪い従業員に対して、正面から問題点を指摘し、戒告、譴責などの懲戒処分をしたか。
●能力不足の従業員に対して、他部署で雇用継続できないか検討するための配置転換をしたか。
●会社の方針に従わない従業員との間で、話し合いの機会をもったか。
●業務命令に従わない従業員に対して、弁明の機会を与えたか。

このように、「会社として解雇までにするべきこと」は、ケースによってさまざまです。

しかし、いずれにしても、裁判所は「解雇は、会社が雇用継続のための手立てを尽くしても従業員の問題点が改善しない場合の最後の手段」と考えており、会社が解雇までに必要な努力を怠って、安易に解雇を選択したケースでは、会社が敗訴します。

このことは、解雇する以前の、いわば平時の対応こそが、解雇トラブルが訴訟になったときの結果をわける重要なポイントとなることを意味しています。そのため、日ごろから弁護士とコンタクトをとり、業務成績や業務態度、協調性に問題がある従業員に対して、どのように対応していけばよいかを相談し、正しい対応をしておくことは、解雇トラブルに強い会社を作るために不可欠です。

逆に、解雇する直前になって、あるいは解雇してからはじめて弁護士に相談しているようなケースでは、その後の訴訟に勝つことは困難です。解雇トラブルの訴訟に強い会社を作るためには、日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境を作っておくことがポイントになることをおさえておきましょう。

 

ポイント4:
離職率の高い会社か、離職率の低い会社か。

「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」の4つ目のポイントとして、「離職率の高い会社か、離職率の低い会社か」という点があげられます。
離職率の高い会社が、解雇トラブルの訴訟に勝訴することは難しいのが現実です。

離職率の高い会社が、解雇トラブルの訴訟に勝訴することは難しい理由について

離職率が解雇のトラブルでの勝敗に影響する理由は、「離職率が高い会社は、解雇した従業員の問題点や、解雇した従業員に対してした指導の内容を、裁判所で十分に主張することができなくなってしまう」という点にあります。

解雇トラブルの訴訟に勝訴するためには、「従業員にどのような問題点があったか」、「会社が十分な指導をしたか」という点を裁判所で主張し、立証しなければなりません。この「立証」で重要な部分を占めるのが、「証人尋問」です。「証人尋問」では、解雇した従業員の問題点について、従業員の上司や同僚に裁判所にきてもらい、証人として話してもらう必要があります。また、従業員に対する指導の内容についても、従業員を直接指導した上司に裁判所に来てもらい、証人として話してもらう必要があります。

しかし、訴訟による決着は解雇後1年半以上の時間がかかることも多く、離職率が高い会社では、従業員を直接指導した上司や、従業員と一緒に働いていた同僚が訴訟が終わるまでに退職してしまい、証人として出廷してもらえないことが多いのが実情です。
その場合、仮に解雇が正当であっても、裁判所でそのことを十分に主張し、立証することができませんので、会社が敗訴する可能性が極めて高くなります。

このように、解雇トラブルに強い会社を作るためには、離職率にも注意する必要があります。

 

まとめ

今回は、「解雇トラブルの訴訟で勝てる会社と負ける会社の労務管理の違い」についてご説明しました。解雇トラブルが訴訟になり、敗訴すると、事例でもご紹介した通り、会社側にとって大きな負担となります。そのため、結論をもう一度まとめて整理すると、解雇トラブルに強い会社の労務管理とは、以下の通りになります。

ポイント1:
従業員に「的確な指導」をしている。

ポイント2:
従業員との「定期的な面談」をしている。

ポイント3:
日ごろから労務問題を弁護士に相談できる環境にある。

ポイント4:
離職率が低い。

これらの4つのポイントは、解雇トラブルを乗り切るためにはもちろんですが、正しい労務管理をするために必須のポイントともいえます。

自社の労務管理に問題がないか、この機会に確認しておきましょう。

そして、解雇問題は「ポイント3」でご説明したように、解雇トラブルが発生してから弁護士に相談しても訴訟で負けることが多いため、日ごろから弁護士と相談しながら労務管理を行っていく必要があります。

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2017年3月6日

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