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固定残業代制度(みなし残業代)の導入時の3つの注意点!トラブル急増中です

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  • 固定残業代制度の導入時の注意点

    就業規則や賃金規程を改訂し、固定残業代の制度を設ける会社が増えています。しかし、就業規則や賃金規程で固定残業代を設けていたのに、裁判所がこれを認めず、企業が多額の残業代の支払いを命じられるケースが相次いでいます。
    たとえば、以下のような事例です。

    事例1:
    マーケティングインフォメーションコミュニティ事件(東京高裁平成26年11月26日判決)
    ガソリンスタンドの運営会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代「約651万円」の支払いを命じられたケース

    事例2:
    リンクスタッフ事件(平成27年2月27日東京地方裁判所判決)
    人材紹介会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約770万円の支払いを命じられたケース

    事例3:
    イーライフ事件(平成25年2月28日東京地方裁判所判決)
    ポータルサイトの運営などを事業とするIT企業で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約365万円の支払いを命じられたケース

    事例4:
    ファニメディック事件(平成25年7月23日東京地方裁判所判決)
    動物病院の経営などを事業とする会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約95万円の支払いを命じられたケース

    このように、固定残業代制度は、きちんとした制度設計をしなければ、従業員から未払い残業代の請求を受けたときに、企業は多額の残業代支払いを命じられることになります。今回は、固定残業代制度を導入する際に必ず確認しておいていただきたい注意点についてご説明します。

     

     今回の記事で書かれている要点(目次)

    ●最初に確認!固定残業代制度を導入する会社が増えている背景事情について
    ●【必ずチェック!】固定残業代制度の導入時に必ず確認しておきたい注意点とは?
    ●注意点1:固定残業代の金額の決め方についてのポイント
    ●注意点2:固定残業代に関する就業規則や雇用契約書の作成についてのポイント
    ●注意点3:固定残業代導入時に基本給を減額する場合のポイント

     

    最初に確認!固定残業代制度を導入する会社が増えている背景事情について

    固定残業代制度を導入する際の注意点についてご説明する前に、固定残業代を導入する会社が増えている背景事情について、確認しておきたいと思います。
    固定残業代を導入する会社が増えている背景事情については大きく分けて以下の2つです。

    固定残業代を導入する会社が増えている背景事情

    背景事情1:従業員からの残業代請求についての対策のため
    背景事情2:求人広告を出す際の、待遇面のアピールのため

    以下で詳細を見ていきましょう。

    背景事情1:
    従業員からの残業代請求についての対策のために固定残業代制度を導入するパターン

    このパターンはいままで残業代を支払っていなかった企業が固定残業代制度を導入する場合にみられるパターンです。
    残業代請求に対する対策のため、固定残業代の制度を、現在の人件費の枠内で設けるケースが多く見られます。たとえば、基本給40万円の従業員について、給与の内訳を「基本給30万円、固定残業代10万円」と変更することによって、いままでの人件費の枠内で、残業代の不払いを解消しようとするケースです。ただし、このケースは基本給の引き下げを伴うという問題点があります。

    背景事情2:
    求人広告を出す際に、待遇面のアピールのために、固定残業代を導入するパターン

    このパターンは残業代の部分も含めた支給額を求人の際に案内することにより、求職者向けに給与が高いことをアピールしようとするケースです。
    たとえば、初任給が20万円で残業代が月に5万円くらい発生することが通常の会社の場合、月給20万円として求人するのではなく、「月給25万円(基本給20万円、固定残業代5万円)」という内容で求人を出そうとする場合があてはまります。

    まずは、固定残業代制度を導入する主な背景事情として、上記の2つのパターンがあることをおさえておきましょう。それでは、この点を踏まえて、固定残業代制度導入の際の注意点を、ご説明していきたいと思います。

     

    【必ずチェック!】
    固定残業代制度の導入時に必ず確認しておきたい注意点とは?

    最初に結論からご説明しますと、固定残業代制度の導入時に必ず確認しておかなければいけない注意点は3つ存在します。
    その具体的な3つの注意点は、以下の通りです。

    固定残業代制度の導入時に必ず確認しておきたい3つの注意点

    注意点1:固定残業代の金額の決め方についてのポイント
    注意点2:固定残業代に関する就業規則や雇用契約書の作成についてのポイント
    注意点3:固定残業代導入時に基本給を減額する場合のポイント

    これら3つの注意点について、以下で順にご説明していきたいと思います。

     

    注意点1:
    固定残業代の金額を決め方についてのポイント

    固定残業代制度導入時に必ず確認しておきたい1つ目の注意点は、「固定残業代の金額の決め方に関するポイント」です。
    以下の3つのポイントを踏まえて固定残業代の金額を決めることをおさえておきましょう。

    固定残業代の金額の決め方についての3つのポイント

    ポイント1:固定残業代の金額と時間数の明示が必要。
    ポイント2:固定残業代に対応する残業時間は月45時間までとする。
    ポイント3:固定残業代導入に伴い基本給を減額するときは、最低賃金を下回らないように注意する。

    順番に詳しくみていきましょう。

    ポイント1:
    固定残業代の金額と時間数の明示が必要。

    裁判所は固定残業代の「金額」と、それに対応する「時間数」を明示していなければ、固定残業代の制度を無効と判断することがほとんどです。

    たとえば、「基本給には●時間分の残業代を含む」といった規定の仕方は、時間数は明示されていますが、固定残業代の「金額」がいくらなのかが明示されていません。このようなケースでは、裁判所は、基本給の中に残業代が含まれていたとは認めず、改めて残業代の支払いを企業に命じることが通常です。

    裁判でも通用する固定残業代の制度にするためには、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる固定残業代部分が金額で明確に区別されていること」、「固定残業代の金額に含まれる残業時間数が明記されていること」が必要ですので、おさえておきましょう。

    ポイント2:
    固定残業代に対応する残業時間は月45時間までとする。

    固定残業代を支給する際に、あまりに長時間の残業をこれに含ませることは、そもそも会社として、長時間労働が当然であるという建前をとっていると受け取られかねません。

    このような観点から、冒頭の「事例1」のマーケティングインフォメーションコミュニティ事件で、裁判所は「月45時間を超える固定残業代の制度は無効」と判断しています。企業は従業員を残業させる際は、「36協定」と呼ばれる労使協定を締結する必要がありますが、「月45時間」というのは通常の36協定で法律上許されている上限の残業時間数になります。

    固定残業代として支給する残業代は、「月45時間」の残業分までとしておきましょう。

    ポイント3:
    固定残業代導入に伴い基本給を減額するときは、最低賃金を下回らないように注意する。

    従来の人件費負担を増やさずに固定残業代制度の導入しようとする場合は、従業員の基本給やそれまで支給してきた手当を減額することになります。

    その場合、基本給と諸手当(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除く手当)の合計額が、最低賃金を下回らないかチェックしておきましょう。

    ●最低賃金の参考●

    最低賃金は厚生労働省のホームページに掲載されています。
    http://goo.gl/fXn5IL

    上記の3つのポイントに注意して、適正な固定残業代の金額を決めることが、固定残業代制度導入の第一歩となります。

     

    注意点2:
    固定残業代に関する就業規則や雇用契約書の作成についての注意点

    固定残業代制度の導入時に必ず確認しておきたい2つ目の注意点は、「就業規則や雇用契約書の作成についての注意点」です。

    固定残業代制度については、就業規則あるいは雇用契約書に必ず規定を設ける必要があります。就業規則あるいは雇用契約書に規定せず、口頭で「月給には〇〇時間分の残業代が含まれている」などと説明していただけでは、万が一、残業代請求の訴訟等が起きた場合に、裁判所で、「月給の中に残業代を含めて支給していた」と認められることはほとんどありません。
    そして、固定残業代制度について就業規則あるいは雇用契約書に規定を設ける際のポイントは以下の4つです。

    固定残業代制度について就業規則あるいは雇用契約書に規定を設ける際のポイント

    ポイント1:
    固定残業代が、割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであることを明確に規定する。

    ポイント2:
    固定残業代を上回る割増賃金が発生した時は、超過分を支払うことを明確に規定する。

    ポイント3:
    固定残業代が時間外割増賃金の支払いにのみ充てられるのか、それとも、深夜割増賃金や休日割増賃金にも充当されるのかを明確に規定する。

    ポイント4:
    毎月の給与明細に、固定残業代の金額と、固定残業代に対応する残業時間数を記載する。

    順に詳しくみていきましょう。

    ポイント1:
    固定残業代が、割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであることを明確に規定する。

    固定残業代が残業代の支払いとして認められるためには、「固定残業代が割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであること」が明確に就業規則あるいは雇用契約書に書かれていることが大前提になります。まずはこの点を確認しておきましょう。

    ポイント2:
    固定残業代を上回る割増賃金が発生した時は、超過分を支払うことを明確に規定する。

    固定残業代の制度を設けていても、会社は、従業員の残業時間を管理し、もし、固定残業代の金額を上回る割増賃金が発生したときは、超過分を支払う必要があります。裁判例でも、冒頭の「事例3」のイーライフ事件では、超過分の支払いについて就業規則等で明示されておらず、また実際にも残業時間を管理する体制がとられていなかったことが一つの理由となって、固定残業代の制度が無効であると判断されています。

    固定残業代を上回る割増賃金が発生したときは超過分を支払う旨の規定を就業規則や雇用契約書に明記しておく必要があります。

    ポイント3:
    「固定残業代が時間外割増賃金の支払いにのみに充てられるのか」、それとも、「深夜割増賃金や休日割増賃金にも充てられるのか」を明確に規定する。

    残業代には、法律上以下の3種類があります。

    (1)「時間外割増賃金」:1日8時間、週40時間を超えた場合に支払われる割増賃金
    (2)「深夜割増賃金」:午後10時以降の残業について支払われる割増賃金
    (3)「休日割増賃金」:法定休日の就業について支払われる割増賃金

    冒頭の「事例4」のファニメディック事件では、固定残業代が(1)の「時間外割増賃金」に宛てられるのか、それとも(2)、(3)の「深夜割増賃金」、「休日割増賃金」の支払いにも充てられるのかが、明確になっていなかったことが、固定残業代の制度が無効と判断された理由の一つになっています。

    固定残業代の制度を作る場合は、固定残業代が「時間外割増賃金」のみの支払いに充てられるのか、それとも、「深夜割増賃金」、「休日割増賃金」の支払いにも充てられるのかを、就業規則や雇用契約書で明確にしておく必要があります。

    ポイント4:
    毎月の給与明細に、「固定残業代の金額」と「固定残業代に対応する残業時間数」を記載する。

    固定残業代の制度では、「固定残業代の金額」と「固定残業代に対応する残業時間数」の明示が必要です。

    固定残業代の金額と時間数については、各従業員の残業状況によって異なることが通常ですので、就業規則には記載せず、給与明細に記載することをおすすめします。就業規則あるいは雇用契約書に固定残業代の規定を設ける際は、上記4つのポイントをおさえた規定にすることが必要です。
    たとえば、下記のような条文を盛り込んでおくとよいでしょう。

    ●参考の条文例●

    第〇条(固定残業手当)

    1、従業員には時間外割増賃金の支払いに充てるものとして毎月定額の固定残業手当を支給することがある。
    2、会社が固定残業手当を支給するときは、1ヶ月の時間外割増賃金の金額が固定残業手当の金額を超えた場合に限り、超過額を別に支給する。また、深夜割増賃金、休日割増賃金が発生したときは、固定残業手当と別にこれを支給する。

    就業規則あるいは雇用契約書の固定残業代に関する規定が適切に定められているかは、裁判でもよく問題になる大変重要な点ですので、必ずチェックしておきましょう。

     

    注意点3:
    固定残業代導入時に基本給を減額する場合の注意点

    固定残業代制度導入時に必ず確認しておきたい3つ目の注意点は、「固定残業代導入時に基本給を減額する場合の注意点」です。

    総人件費の負担を増やさないまま固定残業代制度を導入するケースでは、基本給を減額することが必要になります。そして、基本給を減額するためには、各従業員一人ずつの同意が必要になります。基本給の減額に同意する書面を作成し、従業員に署名、捺印して提出してもらう手続きが必要になります。

    このような手続が必要になることから、基本給を減額しなければならない場合は、固定残業代制度の導入の成否は、社長ないしは経営陣が、従業員に対し、基本給を減額することについて理解を求め、納得を得ることができるかにかかっています。「これまでは残業代の支給ができていなかったが、今後は、残業代はきちんと支払う制度にしたい。ただ、残業代を今の基本給のまま支給すると、会社の人件費負担が増えすぎるので、基本給の減額を了解してほしい。」などと率直に従業員に話をして理解を得ることが必要です。

    各従業員からの同意の書面をもらっておかないと、従業員から減額前の基本給との差額を請求された場合に、請求に応じざるを得なくなりますので、注意しましょう。このように、固定残業代導入時に基本給を減額する場合は、各従業員一人ずつから書面で同意してもらう必要があることを、おさえておきましょう。

     

    まとめ

    今回は、最近、トラブルが急増している「固定残業代」について、必ず確認しておきたい注意点をご説明しました。中小企業の経営者も残業代対策として固定残業代の制度導入をしている企業も増えてきておりますが、固定残業代の制度は、最近、裁判所で無効と判断する判決が相次いでおり、安易な制度導入は大変危険です。

    実際に咲くやこの花法律事務所の企業法務トラブルで相談数が多い「未払い残業代トラブル」の問題で、きちんと対策ができていなかったために多額の残業代を支払わなければならないという結果になることも少なくありません。固定残業代の制度を導入する際は、今回ご説明した注意点をきっちりと確認しておきましょう。

    また、少しでも現在の就業規則や賃金規定に不安がある場合は、労務問題に強い弁護士がそろっている咲くやこの花法律事務所までお気軽にご相談下さい。

     

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