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従業員に着服、横領された金銭の返還請求の重要ポイント!※合意書の雛形有り

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  • 従業員に着服、横領された金銭の返還請求の重要ポイント

    会社の規模が大きくなるにつれて、経営者が直面することが多いトラブルの1つが従業員による金銭の不正な引出しや着服、横領です。
    平成27年に報道された事例でも、下記のようなものがありました。

    事例1:
    さいたま市の運送会社の経理の従業員が約6000万円を横領した事件
    (平成27年7月8日に逮捕)

    事例2:
    千葉市の不動産管理会社のパート社員がマンション管理費等約2億円を横領した事件
    (平成27年10月20日に逮捕)

    事例3:
    輸入車販売大手ヤナセの役員が現金約3000万円を着服した事件
    (平成27年11月18日に逮捕)

    このような従業員による金銭の不正な引き出しや着服、横領のトラブルが起こった場合、会社としてはどのようにして金銭の返還をさせればよいのでしょうか?

    今回は、従業員に着服、横領された金銭の返還請求の場面で、早く確実に債権の回収を得るために重要なポイントを、債権回収に強い弁護士がご説明します。

     

    今回の記事で書かれている要点(目次)

    ●【必ずチェック!】従業員に着服、横領された金銭の返還請求の4つのポイント!
    ●ポイント1:身元保証書の取得の有無を確認する。
    ●ポイント2:本人、身元保証人の財産調査を行う。
    ●ポイント3:着服、横領に関する証拠を収集する。
    ●ポイント4:内容証明の前に話し合いによる返還請求をする。

     

    【必ずチェック!】
    従業員に着服、横領された金銭の返還請求の4つのポイント!

    従業員による金銭の着服、横領が発覚し、会社から金銭の返還請求をする場面で、必ずおさえておきたい対応のポイントは以下の4つです。必ず事前にチェックしてから返還請求をスタートするようにしてください。

    従業員に着服、横領された金銭の返還請求の4つのポイント

    ポイント1:
    身元保証書の取得の有無を確認する。

    ポイント2:
    本人、身元保証人の財産調査を行う。

    ポイント3:
    着服、横領に関する証拠を収集する。

    ポイント4:
    内容証明の前に話し合いによる返還請求をする。

    従業員に対する返還請求は、これらの4つのポイントをよく把握したうえで、行いましょう。
    以下で順番にご説明していきたいと思います。

     

    ポイント1:
    身元保証書の取得の有無を確認する。

    従業員に着服、横領された金銭の返還請求のポイントの1つ目は、「身元保証書の取得の有無を確認すること」です。

    従業員に着服、横領された金銭が多額の場合、従業員1人だけでは返済することができないケースも多くあります。そのような場合に、身元保証人にも請求できれば、回収のスピードと確実性を上げることができます。そのため、従業員による着服、横領が発覚した時は、身元保証書の取得の有無を必ず確認しましょう。そして、身元保証書を取得している場合はその期間がすぎていないかを確認する必要があります。

    身元保証書の期間については、身元保証人の負担が大きくなりすぎないようにという配慮から法律による制限が設けられており、確認のポイントは以下の通りです。

    身元保証書の期間の確認のポイント

    ポイント1:
    身元保証書に期間の記載がない場合は、法律上期間は「3年」となります。

    ポイント2:
    期間の記載がある場合は、その期間となりますが、5年以上の期間が記載されている場合は、法律上期間は「5年」となります。

    ポイント3:
    身元保証書は自動更新ができません。最初の身元保証の期間が経過している場合は、新たに身元保証書を取り直しているかどうかの確認が必要です。

    以上を踏まえて、「身元保証人の有無」と「身元保証の期間がすぎていないか」を確認することが、まず、最初のポイントになりますのでおさえておきましょう。

     

    ポイント2:
    本人、身元保証人の財産調査を行う。

    従業員に着服、横領された金銭の返還請求のポイントの2つ目は、「本人と身元保証人の財産調査を行うこと」です。

    財産の調査を行うのは、金銭の返還請求について訴訟等を起こすことになった場合に、「本人や身元保証人の財産に対して強制執行して回収することができそうかどうか」の見込みをつけるためです。具体的には所有不動産と、生命保険の調査を行います。所有不動産があれば、競売にかけて、その代金から、着服、横領された金銭を回収をすることができます。また、生命保険があれば、それを強制解約して、解約返戻金から、着服、横領された金銭を回収をすることができます。

    まず、所有不動産の調査のポイントについてご説明します。

    所有不動産の調査のポイント

    ポイント1:
    本人と身元保証人の自宅の所有者が誰かを、登記簿謄本で確認します。

    ポイント2:
    自宅の所有者が本人あるいは身元保証人のときは、抵当権の有無を確認します。

    抵当権が自宅についているときは、銀行等への返済が優先されますので、自宅を競売等にかけた場合、銀行等への返済がまず行われ、その残額から回収をしていくことになります。一方で抵当権が自宅についておらず、かつ、自宅が所在地等から見て売却しやすく価値が高い土地、建物であれば、それを競売にかけることは、回収の有力手段になります。

    ポイント3:
    共同担保目録から自宅以外の不動産がないかを確認します。

    自宅に抵当権がついている場合、登記簿に「共同担保目録」の記載があることがあります。これは、自宅についている抵当権が自宅不動産だけでなく別の不動産にも共同でつけられていることを示しています。この共同担保目録の記載から、自宅以外の所有不動産が見つかることがありますので確認しておきましょう。

    次に、生命保険の調査についてご説明します。

    生命保険の調査のポイント

    生命保険の調査は、本人が年末調整の際に会社に提出している「給与所得者の保険料控除申告書」を確認することにより行います。本人名義の生命保険の記載があれば、その生命保険を強制解約して、解約返戻金を差し押さえることが可能です。

    以上の通り、所有不動産の調査と生命保険の調査が財産調査のポイントになりますのでおさえておきましょう。

     

    ポイント3:
    着服、横領に関する証拠を収集する。

    従業員に着服、横領された金銭の返還請求のポイントの3つ目は、「着服、横領に関する証拠を収集すること」です。

    本人が着服、横領の事実を認めてない場合はもちろんですが、着服、横領の事実を認めている場合でも、裁判になれば前言をひるがえし、「横領していない」と主張してくることがよくあります。そのため、裁判で本人が「横領していない」と主張してきた場合にも、着服、横領の事実を証明できるかどうか、慎重に確認しておきましょう。

    着服、横領に関して収集しておくべき証拠は以下の4つです。

    着服、横領に関して収集しておくべき4つの証拠

    証拠1:
    支払誓約書

    本人からの事情聴取の際に本人が横領を認めた場合は、本人から支払誓約書を取得しておくべきです。
    これは裁判になる場合に、本人が横領の事実を認めた文書として、重要な証拠になります。「支払誓約書」については、以下の関連記事の「ポイント3: 本人からの事情聴取を行い、支払誓約書を提出させる。」の項目で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

    ●参考●

    逆に企業側が支払うリスクも有り!?従業員による横領が発覚した時の懲戒解雇に関する4つの注意点【支払誓約書の雛形アリ】

    証拠2:
    弁明書、議事録

    本人からの事情聴取の際に本人が横領を認めない場合は、本人の言い分を記載した「弁明書」を本人から提出させておきましょう。また、事情聴取の際の記録を「議事録」として本人に確認させ、署名、押印をもらっておきましょう。これらの資料は、横領の事実を否定する内容にはなりますが、本人が不合理な弁明をしていたり、あるいは後で本人の弁明が嘘であることが確認できる資料が発見された場合には、本人が嘘の弁明をしていることを立証するための重要な証拠になります。

    「弁明書、議事録」については、以下の関連記事の「ポイント3: 本人からの事情聴取を行い、支払誓約書を提出させる。」の項目で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

    ●参考●

    従業員による横領が発覚した時の懲戒解雇に関する4つの注意点【支払誓約書の雛形アリ】

    証拠3:
    本人が会社から金銭を引き出すために、架空の発注書や契約書、領収書などを会社に提出しているケースでは、その原本。

    本人が会社から金銭を引き出すために、架空の発注書や契約書、領収書などを会社に提出しているケースでは、これらの資料は、本人による横領の事実を証明するための重要な証拠になります。必ず原本を確認し、本人がどのようにしてその資料を作成したのかも確認しておきましょう。

    証拠4:
    本人が横領のために、自ら銀行で不正な出金あるいは不正な送金をしている場合は、銀行に保管されている出金伝票あるいは送金伝票の写し。

    本人が自分で銀行に行って、不正な出金あるいは不正な送金をしている場合は、出金伝票あるいは送金伝票の筆跡は、本人による横領の事実を証明するための重要な証拠になります。

    以上が、着服、横領に関して収集しておくべき証拠です。

    そのほか、補足として着服、横領に関して、裁判になった場合に裁判所に請求を認めてもらえるかどうかの見込みをたてるために、検討しておくべきポイントは以下の通りです。

    【補足】
    着服、横領に関して、裁判になった場合の見込みをたてるために検討しておくポイント

    ポイント1:
    横領した金額と日時の特定し、本人が「いつ」、「いくら」、着服ないし横領したのかを、裁判でも明確に主張できるように準備しておきましょう。

    裁判では、「いつ」、「いくら」、本人が着服ないし横領をしたのかを明確に主張することが必要です。この点をまず確認しておきましょう。

    ポイント2:
    横領に使われた資料に本人以外の印鑑が捺印されている場合は、印鑑の偽造や不正な持ち出しがなかったかを確認しましょう。

    たとえば、本人が、架空の発注書を経理に提出して、発注代金を横領したようなケースでは、発注書に取締役や本人の上司などの印鑑が、承認印として捺印されていることがあります。このように本人以外の印鑑が捺印されている場合、本人がその印鑑を持ち出したかあるいは偽造した可能性があります。持ち出しか偽造かを確認したうえで、もし持ち出しの場合には、さらに印鑑の持ち主に印鑑の管理状況を確認し、印鑑を持ち出すことが可能な状況であったかどうか、検証しておく必要があります。

    ポイント3:
    本人の営業日報や出勤簿、交通費の請求書等で、横領を行った日の本人の行動を確認し、本人による横領が可能だったことを確認しておきましょう。

    ポイント4:
    本人以外の他の人間が行ったと裁判で主張される可能性がないか、検討しましょう。

    たとえば、小売店の店舗の売上金が本社の金庫に入金されるまでの間に横領されたというケースでは、小売店舗内の従業員が横領した可能性と、本社の従業員が横領した可能性があります。あらゆる可能性を検討したうえで、本当に本人が犯人だと裁判所に説明できるように準備しておくことが必要です。

    以上が、着服、横領に関して、裁判になった場合の見込みをたてるための検討のポイントになりますので、確認しておきましょう。

     

    ポイント4:
    内容証明の前に話し合いによる返還請求をする。

    従業員に着服、横領された金銭の返還請求のポイントの4つ目は、「内容証明の前に話し合いによる返還請求をすること」です。

    これまで述べてきた、身元保証書の有無、財産状況、横領に関する証拠を確認した後は、本人や身元保証人との話し合いによる返還交渉を行いましょう。いきなり内容証明の送付や訴訟などの手段をとると、事案が長期化するリスクがありますので、まずは話し合いにより返還を実現できないかを試すことがおすすめです。
    話し合いによる返還請求のポイントは以下の通りです。

    従業員による着服、横領の際の返還請求の話し合いのポイント

    ポイント1:
    身元保証人も交渉相手に加える。

    身元保証人がいる場合は、本人だけでなく、身元保証人にも面談を求めて交渉をすすめる必要があります。本人だけでは一括の返済ができないときも、身元保証人を加えることによって一括の返済が可能になったり、分割になる場合でも早期の返済が可能になることがあります。また、身元保証人を交渉相手に加えることによって、本人にもプレッシャーがかかり、早期に解決したいという気持ちで交渉に臨ませることが可能です。

    ポイント2:
    分割払いになる場合は、できるだけ初回の支払いを大きくなるように交渉する。

    多額の着服、横領のケースでは、一括の支払いが難しく、分割払いにする場合も分割の回数が長くなりがちです。そして、分割が何年もの期間になると、最初のうちは支払われても、実際に最後まで支払いがされるかどうか不確実と言わざるを得ません。そのため、初回の支払額は2回目以降の支払額と同額に設定せず、「払える分はすべて初回で払ってもらう」という方針で交渉することが必要です。

    初回にできるだけ大きな額の支払いをさせることにより、少しでも、分割の期間を短くすることが重要なポイントです。

    ポイント3:
    本人が「分割でしか払えない。」と言ってきたときは、預金通帳の写しを提出させる。

    預金通帳の写しを提出させることにより、生命保険料の引き落としや証券口座への送金の履歴を発見することができ、それをきっかけに、生命保険契約の存在や、証券口座の存在が明らかになることがあります。このようにして見つけた生命保険契約や証券口座は、分割の支払いが止まった時に、本人の財産に対する差押さえをして回収するための重要な情報になります。

    ポイント4:
    分割払いの合意書を作成するときは、「期限の利益喪失条項」を必ず入れる。

    本人との間で分割払いの話がまとまったときは、分割払いの合意書を作成します。この分割払いの合意書には、必ず、「期限の利益喪失条項」を入れておくようにしましょう。

    期限の利益喪失条項とは、分割払いが1回でも遅れた場合は、残金を一括で支払わなければならないという条項です。この条項がないと、分割金の支払い遅延があった場合でも、遅延した分しか請求ができず、残金の一括払いを求めることができません。必ず入れておきましょう。

    分割払いの合意書の雛形は下記の通りですので、参考にしてください。雛形の第5条が「期限の利益喪失条項」です

    ●参考:着服、横領した金銭の返還に関する分割払いの合意書の雛形●

    合意書の雛形のダウンロードはこちら

    上記の4点が、従業員による着服、横領の際の返還請求の話し合いのポイントになりますので、確認しておきましょう。

     

    まとめ

    今回は、従業員に着服、横領された金銭の返還請求のポイントとして、以下の4つの重要ポイントをご説明しました。

    ポイント1:
    身元保証書の取得の有無を確認する。

    ポイント2:
    本人、身元保証人の財産調査を行う。

    ポイント3:
    着服、横領に関する証拠を収集する。

    ポイント4:
    内容証明の前に話し合いによる返還請求をする。

    話し合いによる返済請求で解決ができないときは、「弁護士による内容証明郵便での督促」から「訴訟」の流れに進みます。
    ただし、訴訟で勝訴するためには証拠が必要ですし、勝訴した場合に全額回収するためには本人や身元保証人の財産の情報を入手しておくことが必要です。そして、これらの証拠や情報は、訴訟を起こす段階になってから入手することは難しく、初動の段階で上記4つのポイントを踏まえて、証拠、情報を収集できていたが重要なポイントとなります。

    万が一、従業員の着服、横領といった事件がおきてしまったときは、上記の4つのポイントを頭において冷静に対応していくことが必要になりますのでおさえておいてください。

     

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