先日、クレーム解決を弁護士に頼むメリットとして、5つの項目をあげてお話ししました。
の5点があります。
という話でした。
今回は、最後の⑤の「対等な交渉、明確なノーを言える」について書きたいと思います。
先日少し取り上げたバグ発生の事例を題材にお話しします。
たとえば、システム開発会社(以下、「A社」といいます)がプログラムの開発を他社から請け負って、 納品を済ませたが、納品後にプログラムにバグが発生して、納品先でシステムがダウンしたような場合、 どのように対応すればよいでしょうか。
プログラムのバグを巡るトラブルでは、バグが発生したプログラムが納品先の基幹システムに関するものだった場合、 システムが使えなかったことによる売り上げの減少について損害賠償請求を受け、請求額が多額になるケースも珍しくありません。
では、バグが発生した場合、プログラムの開発を請け負ったベンダーは全責任をとらなければならないのでしょうか?
これについては以前少しお話ししましたが、判例があり、バグが発生してシステムが一時的に使用できなくなっても、 すぐに復旧あるいは代替措置が講じられる場合は、原則として損害賠償の対象とならないとしています。
つまり、裁判所も納品の段階でバグをゼロにすることは難しいという実情を踏まえ、バグが発生してユーザー企業に迷惑をかけても、 必ずしもそれが損害賠償の対象にはなるわけではないと判断しているのです。
A社としてはこの判例を踏まえて、納品先からの損害賠償請求に対応していくことになります。
では、具体的にどうすればいいでしょうか?
もちろん、A社としては自社が納品したプログラムによりお客様に迷惑をかけたのですから、 すぐ補修の申出をして補修作業を進めると同時に、お客様に謝罪する必要があります。
しかし、謝罪するということと、損害賠償に応じてお金を払うということは別問題です。
多額の損害賠償を請求された場合は、さきほどあげた判例を引き合いに出して、 「このバグは法律上損害賠償の対象となりませんので、お支払いできません。」と明確にノーを言わなければなりません。
でも、実際には納品先はA社から見ればお客様ですので、なかなかこのようには言いづらいというのがクレーム担当者の本音ではないでしょうか。
その結果、あいまいな対応をしてしまい、余計に納品先から不信を買うという例が多く見受けられます。クレームをさらに拡大させてしまうのです。
このような場合には弁護士をクレーム対応の窓口にすることがお勧めです。
弁護士なら、判例、法律を踏まえて明確なノーを相手に伝えることができ、結果的に判例、 法律に基づくきちっとした解決が可能になるというメリットがあるのです。
著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円