最近、動画投稿サイトによる著作権の侵害が訴訟で問題になることが増えています。
動画投稿サイトでは、Googleが提供する動画投稿サイトYouTubeが有名です。
しかし、日米では著作権法に違いがあり、米国の法律で合法とされているサービスも、日本では必ずしも合法とならないことに注意が必要です。
投稿者がサイトにアップロードした動画が著作権を侵害しており、これを見つけた権利者からサイト運営者に削除要請があった場合、サイト運営者は動画を削除しなければなりません。これは日米どちらでも同じです。
日米の著作権法で違いが生じるのは、すぐに削除したけれども、削除するまでの間、動画を配信していた点について、動画の著作権者が投稿サイトを運営する会社に対して損害賠償請求ができるかどうか、という点です。
米国の著作権法は、投稿サイトの運営者側が、自社の投稿サイトにより特定の動画の著作権が侵害されていることを知らない間は、投稿サイトの運営者は原則として損害賠償責任を負担しないとされています。つまり、権利者からクレームを受けて投稿サイトの運営者がすぐに削除すれば、サイト運営者は損害賠償責任は負担しないのが原則です。
これに対し、日本の法律ではこの点が明確ではありません。しかし、これまでの裁判例の傾向からすれば、日本では、自社の投稿サイトにおいて著作権侵害の事例が多いことを認識しながら、投稿サイトの運営者がこれを放置していた場合は、それだけで投稿サイトの運営者は損害賠償責任を負担すると判断される可能性が高いと思われます。
仮に削除依頼があってすぐにサイト運営者が動画を削除したとしても、それまでサイトで動画を配信していた点について、動画の権利者から損害賠償責任を追及されれば、サイト運営者としては責任を負担するリスクが高いのです。
このように、動画投稿サイトの運営に関しては、日本では現状、アメリカよりもリスクが高いと考えられます。
他国で導入されているサービスを日本でもやろうとお考えの経営者の方々には、そのサービスが日本で合法なのかを法律専門家によく確認していただく必要があります。
著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円