従業員同士のけんかで怪我をした従業員について、会社は責任を負うことになるのでしょうか。
この点について、参考となるのが、大阪地方裁判所の平成23年9月5日判決「ヤマダ電機・アデコ事件」です。
本件は、ヤマダ電機の従業員とヤマダ電機の店舗に派遣されていた派遣社員の間で喧嘩が発生し、頭を殴られた派遣社員が、その怪我による損害の賠償をヤマダ電機などに求めた事件です。
裁判所は、喧嘩が発生したのが勤務時間外であったこと、喧嘩が発生した場所もヤマダ電機の店舗内とはいえ、地下1階の勤怠打刻機の前であり、勤務場所とはいえなかったことなどを理由に、ヤマダ電機の責任を認めませんでした。
従業員同士の喧嘩が発生した場合、会社としてはどのような点に注意しなければならないのでしょうか。
① まず、会社で暴力が発生したのに、何もせずに放っておくということがないようにしなければなりません。
暴力が発生したときは、会社として必要な処分をして、会社はいかなる理由があっても暴力を許さないという態度を従業員全員に明確に示すことが必要です。
小さな暴力についても会社の姿勢を明確にすることで、大きな問題を発生する前に予防することが一番重要です。
② 具体的には、まず、喧嘩の当事者を1人ずつ呼んで、喧嘩が発生した経緯や喧嘩の内容、喧嘩後の経緯などの聴き取りをすることが必要です。
2人の言い分が食い違う場合は、喧嘩を目撃した人がいないか、日頃の2人の関係がどうだったかを同僚にも聴き取り調査する必要があります。
その上で、聴き取り調査の結果を踏まえ、弁護士と相談の上必要な処分を検討します。
喧嘩については、どちらかが一方的に悪いとは言えない場合もあります。
そのような場合は、懲戒処分をするのではなく、個別に呼び出して反省を促し始末書を提出させる、朝礼で話をして会社としてこのような喧嘩を許さないということをみんなの前で話す、朝礼の際に喧嘩した当事者にみんなの前で謝罪させるという対応をとるのがよいです。
③ 喧嘩した2人は、今後一緒に業務には就かせないことも検討する必要があります。
④ 今回の判決は勤務時間外だったため、会社の責任は認められませんでした。
しかし、勤務時間内の喧嘩による怪我については、怪我をした従業員から会社に対して損害賠償請求をすれば、通常会社にも損害賠償責任があるとされてしまいます。
こういったリスクに備えるため、使用者賠償責任保険に加入しておくことをお勧めします。
従業員間の喧嘩などのトラブルでお困りの方はぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。一緒にトラブルを解決して、より良い会社を作っていきましょう。
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著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円