高齢者雇用安定法への対応として、60歳の定年後も65歳までの再雇用制度を設け、その5年間は有期雇用の更新を繰り返すことで雇用を継続している会社が多いと思います。
このような制度を採用している会社が、経営が悪化したことを理由に再雇用制度で雇用中の従業員の契約を更新しないことは許されるのでしょうか。
この点について参考となるのが大阪地方裁判所平成23年8月12日判決です。
この事件は、経営が悪化した建設会社が定年後の再雇用を原則として中止することとしたことについて、その制度の対象であった従業員らが再雇用を求めて会社を訴えた事件です。
裁判所は、高齢者雇用安定法がある以上、有期の雇用契約といっても雇い止めをするには正当な理由が必要であるとした上で、この会社が実際に経営難に直面しており、役員報酬の減額、経費削減の徹底その他の措置もとられていること、会社が再雇用の中止にあたり組合と誠実に話し合いをしていることなどを指摘して、会社が再雇用を中止したことは正当であると判断しました。
高齢者雇用安定法で、65歳までの雇用の確保が義務づけられています。
この判決からも明らかなように、会社の経営上の必要から人件費を削減する必要が生じ、65歳までの雇用を確保できなくなった場合に、高齢の従業員を再雇用しないことによって人件費を削減することは法的にも認められます。
ただし、その場合、役員報酬の削減や経費の削減などをすでに実行していることが必要です。
さらに、会社側が組合や従業員の代表者と積極的に話し合いをもって、人員削減がなぜ必要なのか、どの様な基準で対象者を選ぶのか、対象者にどの様な条件で退職してもらうのか、などの重要事項について誠実な交渉をしていることが必要です。
有期の雇用契約であるからといって、これらの点を考慮せず、再雇用を中止することは裁判所でも不当とされるでしょう。
逆に言えば、これらのルールを守る限り、経営が悪化したことによる解雇や雇い止めを進めることは問題が無く、むしろ早期に経営を改善するための人件費削減は早めに着手すべきです。
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著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円