非常勤の従業員を契約期間を決めて採用することがあります。
こういった非常勤の従業員の契約を更新しない場合、どのような点に注意すべきでしょうか。
この点について参考になるケースとして東京高裁平成24年2月22日判決をご紹介したいと思います。
このケースは、新潟県にある私立高校が25年間勤務していた非常勤講師の契約を更新しないことにしたところ、この非常勤講師から契約の継続を求める裁判を起こされた事案です。
従業員側は、非常勤講師も通常の教員と同じ内容の業務を行っており、1年契約とはいえ長年にわたり契約の更新を繰り返してきたのであるから、雇い止めは不当であると主張しました。
これに対し、裁判所は「実質において期間の定めのない雇用契約と異ならない状態にあったものといえない」として、非常勤講師の主張を認めませんでした。
この事件で、裁判所は、非常勤講師の主張を認めない理由として
・非常勤講師は,クラス担任及び生活指導等は行わないなど,常勤講師とは仕事の内容が違っていたこと
・非常勤講師について兼職が禁止されていなかったこと
・給与体系や適用される就業規則が専任教員と異なっていたこと
・勤務時間数も各年度によって変動するものであったこと
などをあげています。
非常勤の従業員というのは、本来、常勤の従業員では対応できないような状況が生じた時に、それを補うために採用されるものです。
そのため、雇用調整的な要素があり、仕事量が減って常勤の従業員で対応できるようになった場合にまで、契約を更新しなければならないとすると、非常勤として雇用した意味がなくなります。
この点を、裁判所は、「非常勤講師に担当させるべき授業時数がないにもかかわらず,これを捻出して非常勤講師を採用しなければならないものではない。」と述べています。
このように裁判所としても、非常勤であることを明確にして雇用している場合は雇い止めを正当と判断します。
ただし、経営者側としては臨時的に採用するという趣旨でも、それが従業員側に伝わっていなかったり、制度に反映されていなかったりすると、仕事の量が減った時でも継続雇用を求められてしまいますので、注意が必要です。
具体的には、臨時的に仕事の量が増えた時にその点をカバーするために非常勤の従業員を採用するという場合は、まず対象者に、あくまで臨時の採用であり、仕事の量によって勤務時間が変動することを明らかにしておくことがポイントと言えます。
また、兼職を禁止せず、認めるということも重要なポイントです。
そして、就業規則も常勤の従業員とは別のものを作っておく必要があります。
逆に言うと、このような点に留意して非常勤であることが明確に分かる雇用制度を設ければ、仕事が減った時に人件費を抱えすぎる心配がない形で、雇用することが可能です。
非常勤の従業員についての雇用制度や雇い止めに関する労務の問題でお困りの企業様はぜひご相談ください。弁護士が経営者の立場にたってご相談をお受けします。
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著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円