これまで、従業員の退職の際に注意しなければらないこととして、退職願を必ずもらっておいてくださいということをお話ししました。
今回は、退職の際に問題になることがある最後の給料の支払い方についてお話します。
従業員がトラブル含みで会社を辞めた場合、本人ではなく、その家族が本人の代理人であるとして会社に最後の給料をとりに来るというケースをよく耳にします。
しかし、給料は本人に直接支払うべきもので、代理人に渡すべきものではありません。
法律上、労働者の賃金というのは、その労働者に直接支払わなければらなないとされているのです(労働基準法24条)。
では、従業員が未成年の場合はどうでしょうか?
従業員が未成年だったから、親が給料を取りに来た時に渡してしまったというケースをときどきお聞きします。
しかし、 仮に従業員が未成年であっても、賃金を親に手渡しすることは許されません。
労働基準法59条は
「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。」と定めています。
間違って、親や家族に払ってしまった後に、従業員本人から再度支払いを求められれば、会社は再度支払いに応じる義務が出てきてしまいます。つまり、二重払いをさせられることになります。
賃金は直接本人に支払わなければ、有効な支払いとはならないからです。
退職した従業員に最後の給料を支払うときは、その従業員の本人名義の口座に振り込むか、本人に取りに来てもらって手渡しをし領収書をもらうか、のいずれかの方法をとるように心掛けてください。
従業員の退職をめぐるトラブル、解雇のトラブルでお困りの方は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所にご相談ください。
著者:弁護士 西川 暢春
発売日:2021年10月19日
出版社:株式会社日本法令
ページ数:416ページ
価格:3,080円