他社から著作権侵害の主張を受けたが、弁護士が文書で反論し、損害賠償請求を断念させた事例
著作権の解決実績

他社から著作権侵害の主張を受けたが、弁護士が文書で反論し、損害賠償請求を断念させた事例

この成功事例を紹介する弁護士

  • 代表弁護士  西川 暢春
  • 咲くやこの花法律事務所  代表弁護士  西川 暢春

    咲くやこの花法律事務所の代表弁護士。出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、病院・クリニック関連、顧問弁護士業務、その他企業法務全般」です。

1,事件の概要

 

本件は、依頼者がホームページに掲載していたイラストについて、他社から「このイラストは自社のイラストの模倣であり、著作権侵害である」として損害賠償などを求められた事件です。

事件の依頼者は、男性が様々なポーズを取っているイラストを、自社のホームページに掲載していました。

ところが、某イラスト制作会社(相手方)から、このイラストが著作権侵害であるとして、損害賠償を求める内容の内容証明郵便が依頼者宛てに届きました。その中で、相手方は、依頼者がホームページに掲載していたイラストが、相手方のイラストを模倣したものであるから、著作権侵害にあたると主張していました。

そこで、弁護士が依頼を受けて、相手方の内容証明郵便に反論することになり、最終的には「損害賠償請求を断念させた」という事例です。

 

2,問題の解決結果

 

弁護士が依頼を受けて、「著作権侵害にあたらない」旨の反論文書を送付し、以降の追求を断念させることに成功しました。

 

3,問題解決における争点

 

この事件では、「依頼者がホームページに掲載したイラストが、相手方のイラストと類似しており、著作権侵害にあたるかどうか」が争点となりました。

この点について弁護士がイラストを見比べたところ、確かにイラストの男性のポーズ自体は似ているものの、顔など細部については、相手方のイラストと異なる部分が多くありました。

そこで、弁護士が依頼者の代理人として、これらの点を指摘して反論していくことにしました。

 

4,担当弁護士の見解

 

著作権には複数の権利が含まれますが、今回は特に「翻案権」が問題になりました。

 

▶参考:「翻案権」とは?

 

翻案権とは、他人に作品を模倣されることを禁止する権利、つまり、いわゆる「盗作」を禁止する権利です。

 

今回は、依頼者のイラストが相手方の翻案権を侵害し、盗作といえるかが大きな問題でした。

この点、盗作(翻案権侵害)と言えるためには、当然ながら、それぞれの作品が似ている必要があります。仮に、作品をつくるときに、他人の作品を参考にしたとしても、他人の作品と似ていなければ、盗作(翻案権侵害)にはあたりません。

 

(1)本件に関する担当弁護士の主な見解

 

弁護士が依頼者のイラストと相手方のイラストを比較して、詳細に検討したところ、確かに、全体的な印象やイラストの男性のポーズ自体は似ていましたが、「目鼻口など顔の細部の作り」、「髪型」などは異なっていました。

人物に関する作品では、表情や目鼻立ちは作品自体の印象を大きく変えるものです。

そのため、過去の裁判例でも、「全体的な作品の構成やイメージが似ていても、表情や目鼻立ちが異なることを理由に著作権侵害にあたらない」と判断したケース(東京地方裁判所平成20年7月4日判決など)があります。

また、似ている部分である「男性のポーズ」についても、相手方独自の特殊なポーズとはいえませんでした。

これらの点を踏まえ、弁護士は、依頼者のイラストは細部を検討すれば類似しているとは言えず、盗作(翻案権侵害)にはあたらないと判断しました。

そのため、弁護士から相手方に2つのイラストの相違点を詳細に列挙した文書を送付し、盗作(翻案権侵害)にはあたらないと主張しました。

あわせて、似ている部分である「男性のポーズ」についても、相手方独自の特殊なポーズとはいえず、ありふれたものであることを主張しました。

その上で、著作権侵害にあたらないため、相手方からの損害賠償請求等には応じるつもりはない旨の回答をしました。

 

▶参考:イラストや画像の類似に関する「著作権侵害の判断基準について」の解説も合わせてご覧下さい。

 

作品の類似が著作権侵害であると主張されてトラブルになるケースは少なくありません。このようなケースでの類似性の判断の基準については、「イラストや画像の著作権侵害の判断基準は?どこまで類似で違法?」の記事で詳細に解説しておりますので、あわせてご参照ください。

 

5,解決結果におけるまとめ

 

弁護士が反論の文書を送付した結果、相手方からの再反論はなく、裁判も回避することができました。

今回のようなケースで、著作権侵害と言えるためには、以下の2つの条件の両方を満たす必要があります。

 

(1)著作権侵害と言えるための2つの条件

 

  • 1,他人の作品を参考にして自分の作品を作ったこと(依拠性)
  • 2,他人の作品と自分の作品が似ていること(類似性)

 

そして、仮に裁判になれば、裁判所は「2」の「類似性」があれば、「1」の「依拠性」もあると判断することがほとんどです。 そのため、結局は「2」の「類似性」の有無が主要な争点になります。

この「類似性」の有無の判断については、裁判所の主観にも左右され、個別の事案では裁判官によって判断がわかれる可能性のあるところです。

そのため、裁判になった場合にどのように判断されるか予想しにくいという面があり、できれば、「裁判になる前の段階で弁護士に依頼し、相手方の主張に詳細な反論をして解決してしまうこと」がベストです。

今回は、裁判になる前の段階で弁護士が依頼を受け、2つのイラストの相違点を詳細に説明して反論しました。

その結果、相手方に対して、仮に裁判をしても勝ち目が薄いことを理解させることに成功し、結果として裁判を断念させることができました。

今回のケースのように相手方から内容証明郵便が届いたケースでは、すぐに弁護士に相談し、裁判になる前に解決することが、トラブルの早期解決や弁護士費用の節約の点で効果的ですので参考にしてください。

 

6,咲くやこの花法律事務所の著作権侵害トラブルについてのお問い合わせ

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咲くやこの花法律事務所では、「画像や原稿の無断利用」、「Webサイトの模倣に関する著作権トラブル」、「プログラムの著作権トラブル」など、最近多くなっている著作権トラブルの事件についても多くの実績を積み重ねています。そのため、著作権に関するお困りごとでお悩みの方は、「著作権侵害に強い弁護士への相談サービス」のページをご覧下さい。

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