フランチャイズ本部からの依頼で弁護士がフランチャイズ契約書のリーガルチェックをした事例
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フランチャイズ本部からの依頼で弁護士がフランチャイズ契約書のリーガルチェックをした事例

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この成功事例を紹介する弁護士

  • 弁護士  池内 康裕
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  池内 康裕

    出身地:兵庫県姫路市。出身大学:大阪府立大学総合科学部。主な取扱い分野は、「労務・労働事件(会社側)、保険業法関連、廃棄物処理法関連、契約書作成・レビュー、新商品の開発・新規ビジネスの立ち上げに関する法的助言、許認可手続における行政対応、顧問弁護士業務など」です。

1,業種

 

「外食フランチャイズ本部」の事例です。

 

2,事件の概要

 

本件は、外食フランチャイズチェーンの本部からフランチャイズ契約書のリーガルチェックをご依頼いただいた案件です。

フランチャイズ契約書は、フランチャイズ本部が加盟店に対して、商標(店舗名やロゴマーク)や経営ノウハウを使用する権利、本部が開発したメニューやサービスの提供を受ける権利を与え、その見返りに加盟店が本部に対して代金を支払う内容の継続的な契約です。

今回は、フランチャイズ本部が作成した契約書について、本部からの依頼により、弁護士がリーガルチェックを行いました。

リーガルチェックでの指摘事項は多岐にわたりましたが、今回の記事では、加盟金と研修費に関する以下の契約条項について取り上げたいと思います。

依頼者作成の契約書では、この点の契約条項は以下の通り記載されていました。

 

●依頼者作成の契約条項

 

第○条(加盟金)
加盟店は、本契約締結日から●日以内に加盟金として〇〇〇万円(消費税別)を本部が指定する銀行口座に振り込み又は現金により支払うものとします。

第○条(研修費)
加盟店は、本契約締結日から●日以内に研修費として〇〇万円(消費税別)を本部が指定する銀行口座に振り込み又は現金により支払うものとします。

 

3,問題の解決結果

 

依頼者が作ったフランチャイズ契約書には、加盟店からの加盟金や研修費の支払に対して、本部が提供するサービスの詳細が記載されていないという問題がありました。

また、加盟店から本部に対して、加盟金や研修費の返還請求ができない旨の記載もありませんでした。

そのため、本部としては、加盟店と後日紛争になった場合に、加盟金や研修費の返還請求をされるリスクがある内容になっていました。

 

4,問題解決における争点(弁護士が取り組んだ課題)

 

加盟店が経営に行き詰ったときに、本部に対して、加盟金などの初期費用の返還を求めるトラブルは、フランチャイズ契約の分野で頻発する紛争の1つです。

このような紛争を事前に防ぐためには、本部が受けとる加盟金や研修費に対応して本部が提供するサービスの内容を契約書で明確にしておく必要があります。

また、本部は加盟金や研修費の返還義務を負わないことも契約条項に追記する必要があります。

 

5,担当弁護士の見解

 

加盟金、研修費に関する契約条項のリーガルチェックでは、以下の点が重要なポイントとなり、弁護士から依頼者に助言しました。

 

(1)加盟金が何の対価であるかを明記することが重要

 

依頼者が作成したフランチャイズ契約書では、「加盟金が何の対価か」つまり「加盟金の支払に対して本部が提供するサービスの内容」が記載されていませんでした。

これでは本部が何の対価かよくわらない金銭を受け取ったことになり、後日、加盟金を返還請求されるリスクにつながります。

そこで、弁護士から、加盟金が何の対価であるかを明確に記載することを助言しました。

実際の修正例は、以下のとおりです。

 

第○条(加盟金)

1.加盟店は、本契約締結日から●日以内に経営ノウハウの開示、本部所有の商標の使用許諾及び開店準備の支援の対価たる加盟金として150万円(消費税別)を本部が指定する銀行口座に振り込み又は現金により支払うものとします。
2.加盟店より本部に支払われた前項の加盟金は、理由のいかんを問わず返還しないものとします。

 

このように何の対価であるかを明確にしたうえで、後日の返還には応じないことを明確にしておくことが重要です。

 

1,費用の二重取りにならないように契約条項を作ることが必要

 

一般に、フランチャイズ契約における加盟金は、本部の加盟店に対する「ノウハウの開示」、「商標(店舗名やロゴマーク)の使用の許可」の見返りとして支払われるのが通例です。

また、フランチャイズ契約の内容によっては、本部による「店舗の企画」や「従業員の研修」あるいは「開業準備支援」の見返りとして、加盟金が支払われるケースもあります。

注意が必要なのは、例えば「従業員の研修」について、フランチャイズ契約書で加盟金とは別に研修費を徴収する内容になっている場合、加盟金条項に、加盟金が研修の対価であると記載してはいけないという点です。

それでは研修の費用を本部が二重取りしていることになるからです。

 

2,加盟金の金額にも注意が必要

 

加盟金があまりにも高額であれば、加盟店から返還請求を受けた場合に、裁判所で一部返金が命じられるリスクがあります。

そうなれば他の加盟店にも波及し、本部の経営に大きな打撃になりかねません。そのため、リーガルチェックの際には加盟金の金額についても弁護士から依頼者に助言しました。

「加盟金があまりにも高額かどうか」は、本部が提供するサービスとの関係で決まります。

 

▶参考例:

 

例えば、神戸地方裁判所平成15年7月24日判決では、本部が加盟店に使用を許可した店舗名について商標登録すらしておらず、加盟金800万円を支払わせたのはあまりにも高すぎるとして、本部が加盟金の4分の3の返還を命じられています(ステーキハウスのフランチャイズについて加盟店が本部に加盟金の返還を求めた事例)。

 

1,加盟金の額の相場について

 

加盟金の額としてどのくらいが相場かというご質問を良くいただきますが、結論としては、本部が加盟店に提供するノウハウや商標にどれくらいの価値があるかによります。

同業他社にないような独自のノウハウを提供する場合や、商標自体にお客さんを集める力がある場合、その分加盟金が高額でも法的な問題はありません。

外食のフランチャイズの場合、加盟金を一律に決めるのではなく、店舗の席数や面積によって加盟金の額を変えることもあります。

 

▶参考例:

 

例えば、カレーハウスCoCo壱番屋の場合、20席以下、21席以上30席以下、31席以上50席以下、51席以上80席以下、81席以上でそれぞれ加盟金の金額が異なります。

 

そのため一概には言えませんが、外食のフランチャイズチェーンの場合、加盟金の相場は、150万円~300万円くらいが一般的といえるでしょう。

 

(2)研修費条項では研修の日数や交通費の負担についての記載が重要

 

次に、依頼者が作成したフランチャイズ契約書では、研修費の支払いを加盟店に義務付ける契約条項がありましたが、本部が加盟店に何日間の研修を行うのかについては記載されていませんでした。

また研修を行う際の宿泊費、交通費について、本部負担なのか、加盟店負担なのかが不明確でした。

加盟店との紛争を避けるためには、「研修費が何日間の研修の対価なのか」、「宿泊費や交通費の負担をどうするのか」についてフランチャイズ契約書に記載しておく必要があります。

記載しておかなければ、「研修の期間が短すぎる」とか「宿泊費や交通費について、本部負担だと思っていた」など と後で言われて、加盟店との紛争の原因になるからです。

そこで、依頼者には研修費条項の修正を助言しました。

 

▶参考:修正例

 

第○条(開店前研修)

1.加盟店は、本契約締結後、開業に先立ち、本部の定めた教育訓練計画に従って、本件店舗責任者及び甲が定める一定の従業員をして、本部の指定する場所で、開店前研修訓練(原則5日間)を受講させなければなりません。
2.加盟店は、本契約締結日から●日以内に前項の研修費として30万円(消費税別)を甲が指定する銀行口座に振り込み又は現金により支払うものとします。
3.開店前研修訓練を受けるにあたって要する交通費、宿泊費、研修中の従業員の給与等研修にかかる実費は、加盟店の負担とします。
4.本条より支払われた研修費は、理由のいかんを問わず返還しないものとします。

 

1,適切な研修費の額

 

研修費についてもどのくらいが相場かというご質問を良くいただきます。

結論としては、本部の提供する研修の内容、研修の日数、研修を受ける人数によります。

外食のフランチャイズチェーンの場合、研修期間は1か月以内、相場としては、20万円から60万円くらいが一般的です。

加盟店が増えれば経営がうまくいかない加盟店もでてきます。本部としては、加盟店が経営に行き詰まるなどしてトラブルになれば研修費の返還を請求される危険があることも意識しておくべきです。

 

▶参考例:

 

研修について講義研修をほとんど行わず、実技研修だけで経営に関する指導がほとんど行われていなかった事案では、裁判所でも本部の研修義務違反と認定されています(たこ焼きフランチャイズチェーンの事案。千葉地方裁判所平成19年8月30日判決)。

 

研修を適切に行ったことを後日立証できるように、研修では必ず資料を準備し、また実際に行った研修の内容を記録に残しておく工夫が必要です。

 

2,直営店で研修を行う場合の注意点

 

研修の一環として、本部の直営店で実技研修を行う場合は、別の注意も必要です。

加盟店のオーナーや加盟店の従業員を本部の直営店で実技研修させるということは、見方によっては、本部が無償で加盟店のオーナーや従業員を直営店の店舗運営に使用しているともみられかねません。

 

▶参考例:

 

実際にも、本部の直営店での実技研修が加盟店に対する搾取行為だとして、加盟店から訴えられ訴訟に発展したケースもあります(焼き鳥居酒屋チェーンの事案。大阪地方裁判所平成2年11月28日判決)。

 

このようなトラブルを避けるために、本部の直営店で実技研修を行う際は、その期間や日数、研修時間などを明記したうえで、さらに研修に参加する加盟店の従業員らに本部から賃金が支払われないことをフランチャイズ契約書に記載しておくことが必要です。

 

6,解決結果におけるまとめ

 

本件では、弁護士によるリーガルチェックを受けないまま、依頼者作成の契約書を使用した場合、加盟店とトラブルになって裁判を起こされれば、本部として加盟金等の一部を返還しなければならなくなるリスクが高い契約内容でした。

この点について弁護士がリーガルチェックを行い、本部の提供するサービスを明確にするなど、本部の要望に沿った内容で、フランチャイズ契約書を作成し、改善することができました。

その他実際のリーガルチェックでの修正事項、指摘事項は多岐にわたりました。フランチャイズ契約書はフランチャイズ事業の肝となる書面であり、不備があると本部にとって大きな損害が発生します。必ず弁護士のリーガルチェックを受けることが必要です。

フランチャイズ契約書の作成については以下でも詳しく解説していますので併せてご参照ください。

 

 

また、咲くやこの花法律事務所における、フランチャイズ事業者向けのサポート内容は以下をご参照ください。

 

 

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