リゾート会員権販売事業に関して、特定商取引法の要件を満たす契約書をサポートした事案
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リゾート会員権販売事業に関して、特定商取引法の要件を満たす契約書をサポートした事案

リゾート会員権販売事業に関して、特定商取引法の要件を満たす契約書を作成した事案

この成功事例を紹介する弁護士

  • 弁護士  片山 琢也
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  片山 琢也

    出身地:大阪府。出身大学:京都大学法学部。主な取扱い分野は、「労働関連(組合との団体交渉、就業規則や契約書作成・チェック、残業代請求・解雇トラブルへの対応、従業員のメンタルヘルスから職場復帰へのアドバイス、従業員間のトラブルへの対応等)、債権回収、システム開発トラブル、建築業の顧客トラブル対応、インターネット上の悪質記事の削除請求など」です。

1,業種

 

「リゾート会員権販売事業」の事例です。

 

2,事案の概要

 

ご相談者は、リゾート施設の運営と会員権販売をされている法人です。

以前から使用されている契約書を見直されたいとのことで、咲くやこの花法律事務所にご相談がありました。

 

(1)リゾート会員権販売事業における契約書の重要性について

 

リゾート施設会員権には、その内容としてかなり長期間にわたって施設等を利用できる権利が設定されていることがほとんどです。

そのため、会員権の価格も相応に高額になります。そして、会員権販売で得た金銭は、通常、既存施設の維持や、新たな施設の開発の原資に充てられます。

そのため、事業者が顧客から購入契約を解約して支払った代金を返還してほしいと主張され、実際に返還しなければならなくなると、事業者としてはかなりの痛手となってしまいます。

後述しますが、契約書に不備があると、仮に契約書に解約ができないことが書いてあり、また、事業者側に特に落ち度がなくとも、購入者からの解約に応じて購入代金を全額返還しなければならない事態となってしまうことがあります。

本件のご相談者もそのような不安から咲くやこの花法律事務所にご相談にこられました。

 

3,問題の解決結果

 

結論として、ご相談者の事業は特定商取引法が適用される事業でした。

しかし、契約書が特定商取引法に対応するものとなっておらず、それが理由でいつでも、また特に理由がなくてもクーリングオフ(解約)ができる状況になってしまっていました。

そのため、早急に、特定商取引法に対応する契約書へと作り替える作業が必要になりました。

弁護士に契約書の作成をご依頼いただき、特定商取引法に対応した契約書を作成することができました。

 

 

4,問題の解決における争点

 

本件で弁護士が取り組んだ対応内容について、以下で詳しく解説いたします。

特定商取引法は、トラブルが多発しやすい特定の販売方法を規制し、購入者側(主に一般消費者)の利益を保護するための法律です。

特定商取引法が適用される販売方法の代表例は「訪問販売」や「通信販売」です。

ですので、このような販売方法を採用している事業者は、自社の業務が特定商取引法の適用を受けるかどうかを検討し、適用がある場合は特定商取引法に対応できるように自社の業務や契約書を見直す必要があります。

 

(1)特定商取引法が適用されるかどうかについては弁護士による専門的な判断が必要

 

特定商取引法の適用があるかどうかは、簡単には判断ができません。

一般的に使われている「訪問販売」や「通信販売」という言葉の意味と、法律で規定されているこれらの言葉の意味が必ずしも一致しないからです。

そのため、一般的には訪問販売に該当するように思われるが、特定商取引法が適用されない場合もあれば、一見該当しないように思われるが、実は訪問販売に該当し、特定商取引法が適用される場合もあります。

そこで、特定商取引法が適用され、その対応が求められるのか否かについては、専門家である弁護士が事業者の業務を詳しく聞き取って、判断する必要があります。

本件では、以下の点が重要な問題点になりました。

 

  • ●(1)ご相談者の事業が特定商取引法上の「訪問販売」にあたるかどうか
  • ●(2)販売先が法人の場合でも、特定商取引法の適用があるのかどうか

 

5,担当弁護士の見解

 

以下では、担当弁護士の方針について解説していきます。

 

(1)特定商取引法上の訪問販売にあたるかどうか

 

特定商取引法にいう訪問販売とは、おおまかにいうと、売主の店舗等以外の場所(顧客の自宅等)で、契約を行う販売形態を指します。

 

 

ご相談者の事業を確認するために、パンフレットや営業日報等の社内資料も拝見しました。

結果、ご相談者の事業は、広告やダイレクトメールでリゾート会員権を宣伝し、興味をもった人から問い合わせが入ると、アポイントを取って営業マンが自宅を訪問して商談するという販売方法を採用していました。

特定商取引法では飛び込み訪問などではなく、顧客が自ら自宅で取引をしたいと要望して訪問した場合には、一定の条件で特定商取引法のクーリングオフ制度の適用が除外されることが規定されています。

本件では、営業マンは顧客から問い合わせを受け、それにこたえる形で自宅を訪問していましたが、この場合にクーリングオフ制度の適用が除外されるかどうかが問題になりました。

 

▶参考情報:特定商取引法26条6項1号

6 第四条から第十条までの規定は、次の訪問販売については、適用しない。

一 その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売

 

1,クーリングオフの適用除外の要件にあたるかどうかは慎重な判断が必要

 

まず、少し興味がある程度の顧客に対して、事業者側が積極的に営業を行い、多少強引に自宅訪問のアポイントを取った場合は、クーリングオフ制度の適用は除外されません。

この結論は、納得がいきやすいと思います。特定商取引法が適用除外の場面として規定する「顧客が自ら自宅での取引を要望した」とは言えないからです。

では、顧客側が購入したいという気持ちをもって、「購入するつもりなので、自宅まで説明しに来てほしい」といった場合はどうでしょうか。

結論としては、この場合でも特定商取引法が適用される可能性が高いです。

現在の裁判例では、クーリングオフ制度が除外される場面を狭く判断しているためです。

例えば「契約すると決めている。契約書をもって自宅まできてほしい。」といった程度のかなりはっきりとした購入意思が顧客から示されていなければ、クーリングオフ制度の適用除外が認められません。

 

以上を踏まえて、本件では多くの場合は「訪問販売」に該当するため、特定商取引法に対応する契約書に作り替える必要があると判断しました。

 

(2)法人への販売でも、特定商取引法が適用されるかどうか

 

次に、ご相談者は、個人だけでなく法人に対してもリゾート会員権を販売していましたが、法人に対する販売にも特定商取引法が適用されるかが問題となりました。

法律では、購入する側が「営業のために契約を締結する」場合は、特定商取引法が適用されないとされています(特定商取引法26条1項1号)。

そして、法人の行為は原則として営業のためにするものといえます。よって、法人間の取引については原則として特定商取引法が適用されないと言えそうです。

 

1,本件では法人への販売でも特定商取引法が適用される可能性が高かった

 

しかし、結論としては、本件では法人への販売であっても特定商取引法が適用される可能性が高いと言えました。

裁判例では「営業のために契約を締結する」という場面についても限定して狭く判断しています。

すなわち、法人の行う契約でも、その法人の事業とは直接関係しない契約の場合は、「営業のために」行った契約ではないと判断して特定商取引法の適用を認めています。

 

▶参考例:自動車販売・修理を行う事業者が、消火器等の消防用設備の点検作業契約についてクーリングオフを求めた事例

 

この事例では、裁判所は自動車販売・修理事業者は消防用設備を営業の対象とする会社ではないから、営業のために行った契約とはいえないと判断し、特定商取引法の適用を除外せず、クーリングオフを認めました。

 

本件でも、リゾート会員権は従業員の福利厚生等のために購入されることが多いと考えられ、そうであるなら直接事業とは関係ない目的で購入されるといえます。

この場合は、営業のための購入とはいえず、特定商取引法が適用される可能性が高いと考えられました。

これらの点から、法人向けの販売契約についても特定商取引法に対応する契約書に作り替える必要があると判断しました。

 

(3)特定商取引法の要求を満たさない場合のリスク

 

これまで、特定商取引法に対応する契約書に作り替えなければならないと何度も述べてきましたが、対応していないと具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。

 

1,正しい契約書が作られていないといつでもクーリングオフ可能になってしまう

 

特定商取引法は訪問販売についていろいろな規制を定めていますが、最も重要なことはクーリングオフ制度が定められていることです。

訪問販売におけるクーリングオフ制度とは、契約書の取り交わしから8日間は、購入者は事業者側にまったく落ち度がなくても、自由に契約を解約することができる制度です。

そして、訪問販売の場合、法律が定める記載事項(法定記載事項といいます。)が記載されている契約書を購入者に交付したときから、クーリングオフ期間の8日間のカウントがスタートします。

つまり、法定記載事項がすべて記載された契約書を使用していないと、販売後いつまでたってもクーリングオフ期間の8日間のカウントがスタートしません。

結果として、どれだけ時間がたっても自由に解約(クーリングオフ)されてしまう恐れがあるということになります。

もし、契約書に法定記載事項が1つでも書かれていないと、たとえ契約から10年たっていても、何ら理由なく解約されてしまうおそれがあります。

そして、その場合、事業者は、受取った購入代金を原則として全額返還しなければなりません。

しかも、この間に購入者が商品を消費したり、サービスを受けていたとしても、その対価を要求することはできません。

このようなリスクがあることから、訪問販売を行う事業者においては、法定記載事項がもれなく記載されている契約書を使用することが非常に重要です。

 

(4)実際の契約書の作成

 

相談内容を踏まえて、契約書の作成を開始しました。

まずは、これまで使用されていた契約書を拝見して記載が漏れている法定記載事項を確認しましたが、いくつか漏れている記載がありました。

ここで、特定商取引法の求める法定記載事項はかなり細かい内容となっています。

 

例えば、ご相談者の以前の契約書では、契約担当者の名前を記載する項目はありましたが、名字だけの記載でもよい状態になっていました。しかし、特定商取引法は、担当者のフルネーム(名字と名前の両方)を記載することが求められています。

 

そのような細かい点も確認して、ご依頼者と一緒に完全な契約書を作っていきました。

 

1,法律の要件を満たすことと、事業での使いやすさの両立

 

このように特定商取引法に対応した契約書の作成を進めていきましたが、法律の規定通りの契約書を作っても、それが実際の事業で使いやすいかどうかは別の問題です。

実際の事業においては、契約書の内容や書式によっては、営業がしにくい、契約が取りにくいといった事態が生じます。

そこで、法律の要件を満たしつつ、実際の事業での使いやすさという点にも配慮した契約書に仕上げることも大切です。

今回のご相談では、用紙が増えればそれだけ書式の準備が複雑になり、用紙が欠ける等のミスも発生しやすくなるため、できるだけ契約書を1枚におさめてほしいとの要望がありました。

しかし、特定商取引法上、契約書の記載項目の一部については、文字の大きさも指定がされており、文字を小さくして1枚におさめるという点にも制限がありました。

そこで、弁護士とご相談者で協議を重ね、レイアウトや項目ごとの文字の大きさを調整するなどして、ベストな書式となるように工夫しました。

 

6,まとめ

 

以上の通り、特定商取引法の適用がある事業を行っている場合、法律の要件を満たした契約書を用いることが非常に重要です。

契約書に不備があれば、それ以前の契約をすべて解約されてしまう恐れがあります。

しかし、特定商取引法が適用されるかどうか、適用されるとして法律の要件を満たす記載とするには具体的にどう記載すべきかなどは、なかなか判断が難しいところです。

訪問販売、通信販売を代表として、いまや特定商取引法が適用される事業はごく一般的なものとなっており、決して特殊な事業ではありません。そのため、本来は特定商取引法への対応が必要なのに、それに気づかずに事業を進めてしまい、トラブルになってから初めて法律の適用に気づく事業主も多いのが実情です。

自社の事業の中で、特定商取引法が適用される可能性が少しでもある事業がある場合は、早期に弁護士に相談し、対策が必要かどうかを判断する必要があります。

お心当たりのある事業者の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

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