【最新版】労働審判制度の手続の流れと解決金の相場、会社側弁護士費用の目安について

労働審判制度について

今回は、「不当解雇トラブル」や、「未払い残業代トラブル」を解決する制度として毎年「約3500件」もの申立てがある「労働審判制度」についてご説明したいと思います。

労働審判制度は、「第1回期日で、概ね、解決案の内容が決まる」という、非常にスピーディーな手続です。

そのため、労働審判制度の手続の流れについて十分に把握しておき、適切な時期に十分な対応をしなければ、自社の主張を通すことができません。そして、労働審判制度で会社から従業員に支払う「解決金」は、会社側の対応の仕方によって、「200万円」以上の差が出ることも珍しくありません。

今回は、労働審判制度の手続の流れと解決金の相場についてご説明し、あわせて会社側弁護士費用の目安についてなど、「労働審判制度についてのお役立ち情報」をご紹介したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

●最初にチェック!労働審判制度の概要について
●労働審判制度の手続の流れ
●労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント
●労働審判の答弁書のポイント1:未払い残業代トラブルのケース
●労働審判の答弁書のポイント2:不当解雇トラブルのケース
●労働審判制度の解決金の相場について
●労働審判制度の会社側弁護士費用の目安について
●労働審判の会社側弁護士の選び方のポイントについて

 

最初にチェック!
労働審判制度の概要について

まず、「労働審判制度の手続の流れ」のご説明に入る前に、労働審判制度のお役立ち情報の一つ目として「労働審判制度の概要」について確認しておきたいと思います。

労働審判制度とは?

『労働審判制度は、「不当解雇トラブル」や「未払い残業代トラブル」など、従業員と会社のトラブルを通常の裁判より簡略的な手続で解決する裁判所の手続です。』

この労働審判制度は、平成18年4月から開始され、平成18年度は「1200件」程度の申し立てでしたが、その後利用が急増し、平成21年度以降は毎年全国でおおむね「約3500件」程度、申し立てがされています。

不当解雇トラブルや未払い残業代トラブルを解決する裁判上の手続としては、「労働審判」とは別に「通常訴訟」があり、通常は労働者側がどちらの手続をとるか、選択することになります。

近年では、労働審判の件数は、通常訴訟の件数を上回っており、裁判所で不当解雇トラブルや未払い残業代トラブルを解決するための制度としては、労働審判が主流になってきています。
「労働審判」と「通常訴訟」の違いについて要点を整理すると以下のようになります。

労働審判と通常訴訟の違い

●労働審判

期間:短期間(平均70日程度)
手続:簡略的な手続
効果:最終的な強制権限がなく、労働審判の結果に対していずれかから異議が出れば通常訴訟に移行する。

●通常訴訟

期間:長期間(1年程度)
手続:正式な訴訟手続き
効果:最終的な強制権限がある。

 

このような比較を見ても、労働審判が通常の裁判よりも簡略的な手続であるという点をご理解いただけると思います。

なお、労働審判制度が利用されるトラブルの内容としては、「解雇・雇止めのトラブルが約45%」、「残業代をはじめとする賃金関係のトラブルが約39パーセント」を占めています。

以上、労働審判制度についてまずは概要をおさえておきましょう。

 

労働審判制度の手続の流れ

それでは、次に、労働審判制度のお役立ち情報の二つ目として「労働審判制度の手続の流れ」について見ていきましょう。

「労働審判制度の手続の流れ」は通常、以下の通りです。

労働審判制度の通常の手続の流れ

1,従業員側が裁判所に申立書を提出
2,裁判所から会社に申立書が郵送される
3,会社は指定された期日までに答弁書や反論の証拠を提出
4,第1回期日:裁判官や労働審判員が出席した当事者に直接質問するなどして審理
5,第2回期日・第3回期日:裁判所からの調停案の提示と双方の検討
6,調停がまとまらない場合は審判に進む

以下で順番に見ていきましょう。

1,従業員側が裁判所に申立書を提出

労働審判制度の手続は、通常は、従業員側が裁判所に「労働審判手続申立書」を提出することで開始されます。

2,裁判所から会社に申立書が郵送される

従業員側から裁判所に労働審判手続申立書が提出されると、裁判所から会社に申立書が郵送されます。

この段階で裁判所から第1回の期日を指定されます。裁判所から申立書が会社に届いてから、第1回の期日まで「約1か月」程度の期間があることが通常です。

3,会社は指定された期日までに答弁書や反論の証拠を提出

裁判所からは第1回の期日の1週間程度前までに、答弁書を提出するように指定されます。

会社は、指定された期日までに答弁書や反論の証拠を提出する必要があります。

4,第1回期日:裁判官や労働審判員が出席した当事者に直接質問するなどして審理

期日は、裁判官1名と労働審判員2名で行われます。その他従業員本人とその弁護士、会社側から社長や管理者と会社側弁護士が出席するのが通常です。

第1回期日では、裁判官や労働審判員が、従業員本人や、会社側で出席した社長や管理者に直接質問するなどして審理を行います。

この第1回期日で、「解決のおよその方向性が決まる」ため、第1回期日までには入念な準備をして臨むことが必要です。

●参考●

労働審判員とは?

労働審判は、裁判官1名のほか、労働審判員2名が加わった3名で担当されます。この「労働審判員」は、最高裁判所が労働紛争に精通した民間人から任命することになっています。 労働審判を担当する労働審判員2名のうち1名は、労働組合等が推薦する労働者側の労働審判員、もう1名は使用者団体等が推薦する使用者側の労働審判員です。 ただし、いずれの労働審判員も労使どちらかの立場に立つわけではなく、中立の立場で労働審判を担当します。

5,第2回期日・第3回期日:裁判所からの調停案の提示と双方の検討

第2回期日あるいは第3回期日では、裁判所から調停案が提示され、調停案の内容で合意できるかについて、裁判所から従業員側、会社側の双方に検討を求められることが通常です。

6,調停がまとまらない場合は審判に進む

以上の手続きを経て裁判所からの調停案の内容で合意に至らないときは、「労働審判」に進みます。
この場合、裁判所から「労働審判」という形で解決案が提示されます。

この「労働審判」の解決案は提示された翌日から2週間以内に、従業員側、会社側のいずれからも異議申し立てがなければ、確定します。

一方、この期間中に従業員側、会社側のいずれからから異議申し立てがあれば、「労働審判」として出された解決案は効力を失い、通常訴訟に移行します。

 

以上が、労働審判制度の手続の流れです。

特に、「第1回期日で解決のおよその方向性が決まる」という点をおさえておきましょう。

 

労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント

では、労働審判の申し立てがあった場合、会社側はどのように対応していけばよいのでしょうか?
以下では、労働審判制度のお役立ち情報の三つ目として、「労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント」をご説明したいと思います。

「労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応のポイント」としては、以下の4つのポイントをおさえておきましょう。

労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応の4つのポイント

ポイント1:
労働審判が開かれる裁判所の確認

ポイント2:
労働審判の第1回期日の確認

ポイント3:
労働審判の答弁書の提出期限の確認

ポイント4:
早急に答弁書作成にとりかかる

以下で順番に内容を見ていきましょう。

ポイント1:
労働審判が開かれる裁判所の確認

労働審判の申し立てがあった場合、裁判所から会社に申立書が郵送されます。
この申立書には、「労働審判手続期日呼出状及び答弁書催告書」という書面が同封されています。
どこの裁判所で労働審判が行われるかは、この書面に記載されていますので、まずは、裁判所がどこかを確認しましょう。

●参考●

労働審判の管轄について

「管轄」とは、「どの事件をどの裁判所で審理するのか」という裁判所の事件配分をいいます。
この「管轄」によって、「労働審判が実際にどの裁判所で開かれるのか」が決まります。

労働審判の管轄は、労働審判法2条で定められています。それによると、従業員が退職後に企業に対して労働審判を起こすという通常のケースでは、従業員は、企業側の本社所在地の地方裁判所だけでなく、従業員が退職時に就業していた事業所の住所地の地方裁判所等にも、労働審判を申し立てることができます。

このように従業員が退職時に就業していた事業所の住所地の地方裁判所等を選択することができますので、多数の支社や支店がある企業は注意する必要があります。

例えば、東京に本社がある企業に関する労働審判でも、たまたま、労働審判を起こした従業員が退職時に就業していた事業所が福岡であったという場合、従業員が福岡のほうが便利であれば、福岡で労働審判の申立てがされることになります。

この場合、会社側としては労働審判のために福岡まで出向かなければなりません。
このような場合に備えて、就業規則等であらかじめ労働審判や通常訴訟の場合の裁判所を合意により決めておくことも1つの方法です。

ポイント2:
労働審判の第1回期日の確認

申立書に同封される「労働審判手続期日呼出状及び答弁書催告書」には、第1回期日の日時も記載されています。

そして、期日には、労働審判を申し立てた従業員の上司や場合によっては社長などの会社関係者も出席することが必要です。
そのため、労働審判の第1回期日を確認し、出席予定者の当日の予定をおさえておきましょう。なお、第1回期日に要する時間は通常は2時間程度です。

ポイント3:
労働審判の答弁書の提出期限の確認

申立書に同封される「労働審判手続期日呼出状及び答弁書催告書」には、答弁書の提出期限が記載されています。

この期限までに裁判所に答弁書を提出することが必要ですので確認しておきましょう。

ポイント4:
早急に答弁書作成にとりかかる

申立書が会社に届いてから、答弁書の提出期限までは、3週間程度しか期間がないことが通常です。

この期間中にできるかぎり、充実した答弁書を作成して提出することが、労働審判で会社側の主張を認めてもらうための重要なポイントです。そのため、申立書が届いたら早急に弁護士に答弁書作成を依頼することが必要です。

 

以上、労働審判の申し立てがあった場合の会社側の対応のポイントとして、4つのポイントをおさえておきましょう。

 

労働審判の答弁書のポイント1:
未払い残業代トラブルのケース

次に、労働審判制度のお役立ち情報の四つ目として、「労働審判の答弁書の作成のポイント」についてご説明したいと思います。

以下では、「未払い残業代トラブルに関する労働審判のケース」と、「不当解雇トラブルに関する労働審判のケース」にわけて、説明していきたいと思います。

まず、「未払い残業代トラブルに関する労働審判のケース」に関する答弁書作成のポイントについてご説明します。

「未払い残業代トラブルに関する労働審判のケース」に関する答弁書作成のポイント

ポイント1:
何が請求されているかを正確に把握する。

ポイント2:
未払い残業代に関する反論のポイント

ポイント3:
付加金請求に関する反論のポイント

ポイント4:
遅延損害金に関する反論のポイント

以下で順番に内容を見ていきましょう。

ポイント1:
何が請求されているかを正確に把握する。

労働審判の答弁書は「従業員側の請求に対する反論」として作成するものです。

そのため、まずは従業員が何を請求しているのかを正確に把握しましょう。

未払い残業代トラブルの労働審判で請求されることが多いのは、「未払い残業代」、「付加金」、「遅延損害金」の3つです。

このうち、どれが請求されているかは、労働審判手続申立書に「申立ての趣旨」として記載されていますので、まずは、「申立ての趣旨」を確認して、何が請求されているのかを正確に把握することが必要です。

ポイント2:
未払い残業代に関する反論のポイント

未払い残業代に関する反論の方法は、ケースによってさまざまですが、主なものは以下のとおりです。

未払い残業代に関する反論方法

反論方法1:
従業員が主張している労働時間に誤りがある。

反論方法2:
残業を禁止していた。

反論方法3:
管理監督者であり、残業代が発生しない。

反論方法4:
固定残業手当により残業代は支払い済みである。

反論方法5:
残業代について消滅時効が完成している。

これらの反論内容については、下記で詳細を解説していますので、合わせて参照してください。

●参考●

従業員の未払い残業代請求における企業側の反論の重要ポイント!

 

ポイント3:
付加金請求に関する反論のポイント

付加金制度は、残業代を含む賃金の未払いについて、未払い額とは別に裁判所が制裁金の支払いを命じることができる制度です。

労働基準法上、未払いの賃金額と同額までを限度として、裁判所は企業に対して付加金の支払いを命じることができるとされています。労働審判でも従業員側から付加金が請求されることがありますが、ここでポイントとなるのは、労働基準法114条で、付加金の支払いを命じることができるのは、「裁判所」であるとされている点です。

労働審判は、場所は裁判所で行われますが、厳密には裁判官だけでなく労働審判員も加わった「労働審判委員会」が行うものです。そのため、この「労働審判委員会」は厳密な意味での「裁判所」にあたらず、付加金の支払いを命じることはできませんので、その旨を指摘することが付加金請求に対する反論のポイントとなります。

ポイント4:遅延損害金に関する反論のポイント

「遅延損害金」とは、本来残業代を支払うべき日に支払わなかったことによる損害の賠償として法律上支払いを義務付けられている金銭です。

未払い残業代については、原則として以下の利率による遅延損害金を支払う必要があります。

未払い残業代についての遅延損害金について

1,本来残業代を支払うべき日の翌日から退職日までの期間については、年6%の遅延損害金
2,退職日の翌日以降の期間については年14.6%の遅延損害金

ただし、このうち、「2」の退職日の翌日以降の年14.6%の遅延損害金の支払いについては、「未払い残業代の額について合理的な理由により裁判所で争っている場合」については、適用されません。

そのため、退職日以降の年14.6%の遅延損害金の支払いについては、「仮に未払い残業代があるとしても、その額について合理的な理由により裁判所で争っている」ことを理由に、14.6%の遅延損害金の適用外であることを主張することが反論のポイントとなります。

未払い残業代トラブルのケースの答弁書作成のポイントとして以上の4つをおさえておきましょう。

 

労働審判の答弁書のポイント2:
不当解雇トラブルのケース

次に、「不当解雇トラブルに関する労働審判のケース」に関する答弁書作成のポイントについても見ていきたいと思います。

以下の点をおさえておきましょう。

「不当解雇トラブルに関する労働審判のケース」に関する答弁書作成のポイント

ポイント1:
何が請求されているかを正確に把握する。

ポイント2:
復職請求に関する反論のポイント

ポイント3:
バックペイの請求に関する反論のポイント

ポイント4:
慰謝料請求に関する反論のポイント

以下で順番に内容を見ていきましょう。

ポイント1:
何が請求されているかを正確に把握する。

従業員側の請求に対する反論の答弁書を作るためには、まず、従業員が何を請求しているのかを正確に把握しておく必要があります。

不当解雇トラブルの労働審判では、一般的に、「復職請求」、「バックペイの請求」、「慰謝料請求」の3つのうち、1つまたは複数が請求されることがほとんどです。

この3つのうち、どれが請求されているかは、労働審判手続申立書に「申立ての趣旨」として記載されていますので、まずは、「申立ての趣旨」を確認して、何が請求されているのかを正確に把握することが必要です。

ポイント2:
復職請求に関する反論のポイント

復職請求とは、「解雇は不当で無効なので、現在も従業員であることの確認を求める」という請求です。

復職請求に対する反論としては、「解雇は正当である」という解雇の正当性に関する主張が必要になります。
解雇の正当性について主張すべき内容は、ケースバイケースとなりますが、主なケースごとのポイントは以下の通りです。

解雇の正当性について主張すべき内容の具体例

1,能力不足による解雇の場合

「能力不足」の事実として、過去の具体的なミスの内容や成績不良の事実と、それに対して会社が再三指導しても改善されなかった事実を主張することがポイントとなります。

2,協調性欠如による解雇の場合

「協調性欠如」の事実として、過去の同僚、上司、部下とのトラブルの具体的な内容と、それに対して会社が再三指導しても改善されなかった事実を主張することがポイントとなります。

3,従業員の横領や不正による解雇の場合

本人が行った横領や不正行為の具体的内容を、証拠を挙げて主張することがポイントとなります。

4,病気を理由とする欠勤による解雇の場合

病気により就労不能であり、合理的な休職期間を経ても復職が困難であることを主張することがポイントとなります。

 

これらの「解雇の正当性について主張すべき内容」についておさえておきましょう。

ポイント3:
バックペイの請求に関する反論のポイント

バックペイの請求とは、「解雇は不当で無効なので、解雇により支払いがされなかった給与をさかのぼって支払うことを求める」という内容の請求です。

「さかのぼって支払う」という意味で、「バックペイ」(back pay)と呼ばれます。

バックペイは不当解雇であることを前提とする請求ですので、これに対しても、解雇の正当性を主張して反論することが基本となります。

また、バックペイに関しては、仮に不当解雇であっても、他社に就職して給与を得ている場合は、その点を主張して減額を求めることができます。

そこで、万が一不当解雇と判断された場合に備えて、労働審判を申し立てた従業員が他社に就職してすでに給与を得ている場合は、その事実を主張することも重要なポイントとなります。

ポイント4:
慰謝料請求に関する反論のポイント

慰謝料請求とは、「不当解雇により被った精神的苦痛に対する賠償」を求めるものであり、バックペイとは別のものです。

この慰謝料請求も不当解雇であることを前提とする請求ですので、これに対しても、解雇の正当性を主張して反論することが基本となります。

また、慰謝料請求については、「万が一、不当解雇であるとしても慰謝料までは支払い義務がない」という主張も可能です。

例えば、東京地方裁判所平成18年9月29日判決は、「(解雇が不当解雇で無効であったとしても)不法行為を構成するかどうかはさらに慎重に検討を要するものである」としたうえで、「(解雇が)不法行為を構成するほど悪質であるとまでは評価できない」として慰謝料は認めていません。

そこで、万が一不当解雇と判断された場合に備えて、これらの判例も踏まえた反論もしておくことが必要です。

 

不当解雇トラブルのケースの答弁書作成のポイントとして以上の4つをおさえておきましょう。

 

労働審判制度の解決金の相場について

では、次に、労働審判制度のお役立ち情報の五つ目として「労働審判制度の解決金の相場」についてみていきましょう。

まず、「解決金」とは何か、ということからご説明したいと思います。

労働審判制度の解決金とは?

『労働審判制度の解決金とは、労働審判が申し立てられた、不当解雇トラブルや未払い残業代トラブルの解決のために、会社側から労働審判を申し立てた従業員に支払う金銭のことです。』

金銭の内容は、未払賃金であったり、慰謝料であったりと様々ですが、「解決のために支払う金銭」という意味で「解決金」と呼ばれます。

ここでは、最も労働審判の申立件数が多い、「解雇・雇止め関連のトラブルの解決金の相場について」ご説明したいと思います。以下では、「正社員の解雇に関し、解雇された従業員から不当解雇であるとして、労働審判の申立があったケース」を想定して、ご説明したいと思います。

「正社員の解雇に関し、解雇された従業員から不当解雇であるとして、労働審判の申立があったケース」の解決金の相場は概ね以下の通りです。

「正社員の解雇に関し、解雇された従業員から不当解雇であるとして、労働審判の申立があったケース」の解決金の相場

●解雇に正当性があると判断された場合:

従業員の給与の0~2か月分程度

●不当解雇であると判断された場合:

従業員の給与の6~10か月分程度

 

あくまでも目安ではありますが、上記のように、「解雇に正当性があると判断された場合」と「不当解雇であると判断された場合」で解決金の相場が異なってきます。

例えば月給30万円の従業員ですと、「解雇に正当性があると判断された場合」と「不当解雇であると判断された場合」では、「200万円」近く金額が異なることになり、「解雇に正当性があると判断してもらえるかどうか」が極めて重要なポイントとなります。

なお、どのような場合に解雇に正当性があると判断されるのかについて、例を挙げると以下の通りです。

【重要】解雇に正当性があると判断されるケースの例

・能力不足による解雇の事例:

「能力不足の事実」と「それに対して会社でも指導してきたが改善されなかった事実」について、会社側で十分な主張と資料を提出できた場合。

「能力不足による解雇について」は、以下の記事も参考にしてください。

▶参考:能力不足の従業員を解雇する前に必ず確認しておきたい5つのポイント

・協調性欠如による解雇の事例:

「協調性欠如の事実」と「それに対して会社でも指導してきたが改善されなかった事実」について、会社側で十分な主張と資料を提出できた場合。

・横領や暴力などを理由とする解雇の事例:

横領や暴力について、会社側で十分な主張と資料を提出できた場合。

一方で、不当解雇と判断されるケースについても、例を挙げると以下の通りです。

【重要】不当解雇であると判断されるケースの例

・能力不足による解雇の事例:

能力不足の事実について会社側で十分な主張と資料を提出できなかった場合。
能力不足があるが、それに対して会社側で必要な指導をしないまま解雇したと判断された場合。

・協調性欠如による解雇の事例:

協調性欠如の事実について会社側で十分な主張と資料を提出できなかった場合。
協調性欠如があるが、それに対して会社側で必要な指導をしないまま解雇したと判断された場合。

・横領や暴力などを理由とする解雇の事例:

裁判所が、横領や暴力の事実があるか疑わしいと判断した場合。

・従業員が組合に加入したことや未払い残業代の支払いを求めたことなどを理由として解雇したと判断された場合。

・従業員が妊娠したことや、育児休暇、介護休暇を請求したことなどを理由として解雇したと判断された場合。

そして、「解雇に正当性があると判断された場合」と「不当解雇であると判断された場合」のどちらにあたるかは、第1回期日で決まることがほとんどです。

そこで、第1回期日までに、会社側で十分な主張と資料を準備することが、会社が労働審判で自社の主張を認めてもらうためのもっとも重要なポイントとなるのです。

以上、ここでは、「労働審判の解決金の相場」についておさえておきましょう。

 

労働審判制度の会社側弁護士費用の目安について

続いて、労働審判制度のお役立ち情報の六つ目として、労働審判制度において、「会社が弁護士に依頼する際の会社側弁護士費用の目安」についてご説明します。

弁護士の費用は各弁護士が決めることになっており一律の基準はありません。
しかし、会社が弁護士に労働審判の対応を依頼する際の一般的な弁護士費用は、以下の通りです。

会社が弁護士に労働審判の対応を依頼する際の弁護士費用【一般的な目安】

一般的には「80万円~100万円程度」が目安です。

この点については、少し古い資料ですが、日本弁護士連合会が2009年に弁護士に実施したアンケートの結果が参考になります。

アンケート結果では、解雇トラブルに関する労働審判の会社側弁護士費用については、以下のように回答した弁護士が最も多くなっています。

●日本弁護士連合会による弁護士へのアンケートの結果

着手金:

30万円程度 46.1%
50万円程度 18.8%

報酬金:

30万円程度 25.0%
50万円程度 33.2%

以上のように、「着手金」、「報酬金」については、全体の6割程度の弁護士が、「30万円」程度あるいは「50万円」程度と回答しており、着手金と報酬金をあわせると、概ね、「80万円~100万円」程度となることが一般的です。

なお、正確には上記のアンケート結果は、労働審判制度と似た労働仮処分手続の場合の弁護士費用ですが、同じアンケートで、回答弁護士の7割程度が、労働審判制度の場合も同程度の弁護士費用と回答しています。また、弁護士によっては、上記以外に、裁判所への出廷回数に応じた日当等の費用が必要になることもあります。

依頼にあたっては、着手金、報酬金以外の金銭的負担がないかどうかを事前に弁護士に確認しましょう。

 

労働審判の会社側弁護士の選び方のポイントについて

最後に労働審判制度のお役立ち情報の七つ目として、労働審判に強い弁護士の選び方のポイントを確認しておきましょう。

労働審判に強い会社側弁護士の選び方のポイントとしては、以下の3点をおさえておきましょう。

労働審判に強い会社側弁護士の選び方のポイント

ポイント1:
労働事件に精通した弁護士であること

ポイント2:
会社側の立場で経営を理解してくれる弁護士であること

ポイント3:
第1回期日に出席できる弁護士であること

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
労働事件に精通した弁護士であること

労働審判では、申立書が会社に届いてから3週間程度で充実した答弁書を裁判所に提出しなければなりません。

これは、通常の訴訟と比べると非常にタイトなスケジュールです。

そのため、労働審判の依頼を引き受けてから、労働関係の判例を調べるというような方法では、十分な対応ができないことがあります。日ごろから労働事件を扱い、労働事件に精通した弁護士を選ぶことが大前提となります。

ポイント2:
会社側の立場で経営を理解してくれる弁護士であること

労働審判の分野では、一般に、労働者側の弁護士と会社側の弁護士にわかれており、「労働者側も会社側も扱う」という弁護士はまれです。

そのため、会社が労働審判に強い弁護士を選ぶ場合、会社側の立場で経営を理解してくれる会社側の弁護士を選ぶことも重要なポイントです。

また、顧問弁護士であれば会社側の立場で経営を理解してくれますので、自社に顧問弁護士がいて、顧問弁護士が労働事件に精通していれば、顧問弁護士に相談や対応を依頼するのも一つの方法です。

●参考●

正しい顧問弁護士の選び方について

 

ポイント3:
第1回期日に出席できる弁護士であること

弁護士を選ぶ場合は、第1回期日に出席できる弁護士かどうかにも注意が必要です。

「労働審判制度の手続の流れ」のところでご説明した通り、第1回期日は裁判所から一方的に指定される形で決まります。

そして、労働審判では、裁判官だけでなく民間出身の労働審判員の予定も踏まえて期日が決められていることから、いったん指定された期日を会社側の都合で変更することはなかなか認められません。

そのため、弁護士を選ぶ際は、その弁護士が第1回期日に出席できるかどうか確認しておくことが必要です。

 

労働審判に強い弁護士の選び方として、上記3項目をおさえておきましょう。

 

まとめ

今回は、企業の労務関係のトラブルで多数を占める「不当解雇トラブル」や、「未払い残業代トラブル」を解決する制度として毎年「約3500件」もの申立てがある「労働審判制度について」のお役立ち情報をピックアップしました。

まず、「労働審判制度の概要」についてご説明し、その後、「労働審判制度の手続の流れ」、「会社側の対応のポイント」、「答弁書作成のポイント」、「解決金の相場」、「会社側弁護士費用の目安」についてご説明しました。 そのうえで、最後に、「労働審判の会社側弁護士の選び方」のポイントについてもご説明しました。

労働審判は、「第1回期日で、概ね、解決案の内容が決まる」という、非常にスピーディーな手続です。

労働審判の申立書が会社に届いた場合は、迅速に対応する必要がありますので、すぐに弁護士にご相談いただくことが重要です。

咲くやこの花法律事務所でも、年間を通して多くの労働審判に関する会社側のご相談をいただいており、労働審判制度の経験豊富な弁護士がスピーディーに対応しております。

●参考:咲くやこの花法律事務所の労働審判における解決実績もご参考にしてください。

解雇した従業員から不当解雇であるとして労働審判を起こされ、1か月分の給与相当額の支払いで解決をした事例。

従業員に対する退職勧奨のトラブルで労働審判を起こされたが、会社側の支払いなしで解決した事例



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