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平成29年職業安定法改正!求人トラブル防止のための4つの注意点

平成29年職業安定法改正!求人トラブル防止の注意点
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

平成29年3月に職業安定法が改正されました。職業安定法は、企業が求人をする際のルールを定める重要な法律です。今回の職業安定法の改正では、企業が求人をする際の「求人情報」に関するルールが従来よりも具体化、厳格化され、要注意の内容になっています。

今回の記事では「法改正を踏まえて、企業が求人トラブル防止のためにおさえておく必要がある4つの注意点」について解説します。

法改正後も従来通りの求人をしていると、知らないうちに法律違反になってしまい、雇用が決まってから求人票に掲載していた給与や仕事内容と実際の労働条件に関して、求職者とトラブルになる危険があります。

求職者が当初の求人通りの待遇を求めて、企業に対して訴訟などの法的手続きをとるトラブルが発生しています。また、求人に関する法律違反は、労働局による改善命令や企業名公表の対象となり、これらの措置を受けると求人自体が難しくなるため、企業としての存続も困難になりかねません。

必ず確認しておきましょう。

 

▶【参考情報】労務分野に関する「咲くやこの花法律事務所の解決実績」は、こちらをご覧ください。

 

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1,求人トラブルとは?

求人トラブルとは?

求人トラブルとは、企業が求人媒体やハローワークに提示した求人情報が、実際の労働条件と違うことにより発生する、企業と求職者の間のトラブルです。

具体的には、「雇用が決まってから、求人票に掲載していた給与よりも低い給与を提示するケース」や、「雇用が決まってから、求人票に掲載していた仕事内容と違う仕事内容を説明するケース」などが「ブラック求人」などと呼ばれ社会問題化しています。

このような求人トラブルの件数は、ハローワークでの求人に関するものだけでも、求職者側から全国で「10,937件」の苦情がハローワークにあったことが公表されています(平成27年の統計)。

 

2,求人トラブル防止対策!
平成29年職業安定法改正で企業がおさえておくべき4つの注意点

求人トラブル防止対策!平成29年職業安定法改正で企業がおさえておくべき4つの注意点

求人トラブルが社会問題化した経緯を踏まえて、平成29年3月に職業安定法が改正され、企業が求人する際の求人情報に関するルールが従来よりも厳しく定められました。

この職業安定法の改正により企業がおさえておくべき注意点は以下の4つです。

 

  • 注意点1:固定残業代制度の内容の明示が義務化
  • 注意点2:裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化
  • 注意点3:試用期間中の労働条件の明示が義務化
  • 注意点4:求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化

 

以下でその内容を見ていきましょう。

 

3,注意点1:
固定残業代制度(みなし残業代)の内容の明示が義務化

まず、最初の注意点として、企業が固定残業代制度(みなし残業代)を導入している場合は、求人情報の掲載にあたり、その内容を明示することが企業に義務化されました。

これにより、固定残業代制度を導入している会社が求人媒体や自社サイトに求人情報を掲載する際は以下の点を明示することが必要です。

 

固定残業代制度(みなし残業代)の導入に関して明示が必要な内容

  • (1)固定残業代の金額
  • (2)対象となっている残業時間数
  • (3)固定残業代の計算方法
  • (4)固定残業代を除外した基本給の額
  • (5)対象となる時間数を超える残業の場合は残業代を支払うこと

 

このように固定残業代制度の内容の明示が義務付けられたのは、固定残業代制度を採用し、固定残業代も含めた月給が「30万円」という場合でも、求人情報では単に「基本給30万円」などと表示されているケースがあったためです。

固定残業代制度が採用されている場合、残業をしても固定残業代の範囲内であれば別途残業代は支給されません。

そのため、「残業をした場合は基本給30万円とは別に残業代がつく」と考えて応募している求職者と企業の間で、求人トラブルが発生するおそれがありました。

そこで、今回の改正で固定残業代制度の内容の明示が義務付けられたのです。

また、固定残業代以外でも、賃金関係では、以下の点について、求人情報掲載時に明示することが企業に義務付けられています。

 

  • 月給、日給、時給などの賃金形態の区分
  • 基本給の額
  • 通勤手当に関する項目
  • 昇給に関する項目

 

この法改正は平成30年1月から施行されます。

そのため、平成30年以降に固定残業代制度を設けている会社が求人をする際は固定残業代制度の内容を求人情報において明示しなければならない点をおさえておきましょう。

固定残業代(みなし残業代)制度について詳しくは以下の記事をご覧下さい。

 

 

4,注意点2:
裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化

次に、2つ目の注意点として、企業が裁量労働制を採用している場合は、求人情報でそのことを明示することが義務化されました。

このような義務が設けられたのは、従来は、裁量労働制を採用している場合でも、求人情報では単に「始業時刻午前9時、就業時刻午後6時、休憩時間1時間」などと表示されているケースがあったためです。

裁量労働制を採用している場合、終業時刻以降に仕事をしても、原則として、残業代はつきません。

そのため、企業が裁量労働制を採用している場合、それが求人情報で明示されていなければ、「終業時刻を超えて残業をした場合は残業代がつく」と考えて応募している求職者と企業の間で、求人トラブルが発生するおそれがありました。

そこで、今回の改正で裁量労働制についての明示が義務付けられたのです。また、裁量労働制以外でも、労働時間の関係では、以下の点についての求人情報における明示が企業に義務付けられています。

 

  • 始業時刻
  • 終業時刻
  • 残業の有無
  • 休憩時間
  • 休日

 

平成30年以降に裁量労働制を採用している会社が求人をする際は、裁量労働制を採用していることを求人情報において明示しなければならない点をおさえておきましょう。

 

5,注意点3:
試用期間中の労働条件の明示が義務化!

次に、3つ目の注意点として、企業が試用期間を設ける意味合いで最初に有期雇用契約を結ぶときは、正社員として採用後の労働条件ではなく、試用期間である有期雇用の期間中の労働条件を求人情報に掲載することが義務付けられました。

これは、例えば、企業が正社員として従業員を採用する前に、試用期間の意味合いで、まずは6か月だけ有期雇用の契約をするケースなどを想定したものです。

このような求人の場合は、試用期間である有期雇用の契約期間中は、賃金等が正社員採用後と比べて低く設定されることが多くなっています。

それにもかかわらず、求人情報として、正社員採用後の賃金を掲載すると、その賃金が試用期間中からもらえると思って応募した求職者との間で求人トラブルが発生するおそれがありました。

そこで、企業が試用期間を設ける意味合いで最初に有期雇用契約を結ぶときは、正社員として採用後の労働条件ではなく、試用期間である有期雇用の期間中の労働条件を求人情報に掲載することが義務付けられたのです。

いったん有期雇用で採用してから、正社員雇用を検討するという採用のしかたをしている企業は求人情報の掲載時に注意が必要です。

 

▶参考情報:試用期間についての基本的なルールや注意点は、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

試用期間とは?労働基準法におけるルールや注意点を詳しく解説

 

6,注意点4:
求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化!

最後に、4つ目の注意点として、企業が求人の際に提示した労働条件を変更したり、あるいは削除や追加をする場合は、応募者に労働条件の変更内容を明示することが義務付けられました。

また、応募者の要求があれば最初の求人情報で提示した労働条件を変更した理由の説明をすることが必要になりました。

これは、求人情報が後から変更されると、変更前の求人情報を見て応募した求職者と企業の間で求人トラブルが発生するおそれがあることから、義務付けられた内容です。

求人情報で掲載した労働条件を変更する場合の変更内容の明示の方法については以下の4通りとされ、変更が決まったらできる限り早く明示することが企業に義務付けられています。

 

  • (1)変更前の労働条件と変更後の労働条件を比較対照できる書面を応募者に交付する方法
  • (2)雇用契約書や労働条件通知書において、変更部分にアンダーラインを引いて応募者に交付する方法
  • (3)雇用契約書や労働条件通知書において、変更部分を着色して応募者に交付する方法
  • (4)雇用契約書や労働条件通知書において、変更内容について注意書きをして応募者に交付する方法

 

なお、応募者が新卒者の場合は、原則として求人情報の変更は許されず、やむを得ず変更する場合は、内定を出すまでに上記4つの方法のいずれかで変更内容を伝えなければならないとされました。

このように求人情報に掲載した労働条件を後日変更することが全く許されないわけではありませんが、変更する場合は書面でその内容を明示することが義務付けられましたのでおさえておきましょう。

 

7,まとめ

今回は、平成29年に改正された職業安定法により、企業が求人を行う場合の求人情報に関するルールが厳格されたことについて以下の点をご説明しました。

 

  • 注意点1:固定残業代に対応する労働時間数の明示が義務化!
  • 注意点2:裁量労働制を採用する場合は求人情報での明示が義務化!
  • 注意点3:試用期間中の労働条件の明示が義務化!
  • 注意点4:求人情報変更の場合は変更内容の明示と理由説明が義務化!

 

この改正は平成30年1月に施行されることが決まっています。

今回の改正により求人情報に掲載することが義務化された項目は、固定残業代制度や雇用契約書の整備ができていなければ、掲載すること自体が困難です。

そのため、今回の改正は、固定残業代制度や雇用契約書の整備ができていない企業は求人が困難になるということを意味しているといえるでしょう。

固定残業代制度や雇用契約書の内容にあいまいな点が残っている会社は、必ず平成29年中に、整備をしておきましょう。

なお、固定残業代制度や雇用契約書については、以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらの記事もあわせてご参照ください。

 

 

8,「咲くやこの花法律事務所」の労務管理の相談に強い弁護士へのお問い合わせについて

労務に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労務管理や労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」のページをご覧下さい。

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9,【関連情報】職業安定法や求人トラブルに関連する他のお役立ち記事一覧

今回は、「平成29年職業安定法改正」における「求人トラブル防止のための注意点」について詳しく弁護士が解説しました。

最後に、ここではに「職業安定法」や「求人トラブル」に関連してくるその他のお役立ち情報についてもご紹介しておきますので、合わせてご確認下さい。

労務管理を弁護士に相談するべき理由と弁護士選びの注意点

 

また、今回の「職業安定法改正」に関わる固定残業代制度(みなし残業代)や裁量労働制の採用をしている企業は、雇用契約書の整備など「労務管理」について、日ごろから自社で見直しや改善を行っておくことが一番重要です。

これらは急に対応できるものではありません。

固定残業代制度(みなし残業代)や裁量労働制、雇用契約書などを整備しておくためにも自社にあった「労働問題に強い弁護士」や、また「顧問弁護士」に相談して日ごろから取り組んでおきましょう。

「顧問弁護士プラン(大阪をはじめ全国対応可能)」について

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年7月9日

 

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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    著者:弁護士 西川 暢春
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    価格:9,680円


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