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固定残業代制度(みなし残業代)とは?注意点や計算方法などを解説!

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  • 固定残業代制度(みなし残業代)とは?注意点や計算方法などを解説!
    • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    • この記事を書いた弁護士

      西川 暢春(にしかわ のぶはる)

      咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
    • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

    就業規則や賃金規程を改訂し、固定残業代の制度(みなし残業代)を設ける会社が増えています。

    しかし、就業規則や賃金規程で固定残業代を設けていたのに、裁判所がこれを認めず、企業が多額の残業代の支払いを命じられるケースが相次いでいます。

    たとえば、以下のような事例です。

     

    事例1:
    マーケティングインフォメーションコミュニティ事件

    (東京高裁平成26年11月26日判決)

    ガソリンスタンドの運営会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代「約651万円」の支払いを命じられたケース

     

    事例2:
    リンクスタッフ事件

    (平成27年2月27日東京地方裁判所判決)

    人材紹介会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約770万円の支払いを命じられたケース

     

    事例3:
    イーライフ事件

    (平成25年2月28日東京地方裁判所判決)

    ポータルサイトの運営などを事業とするIT企業で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約365万円の支払いを命じられたケース

     

    事例4:
    ファニメディック事件

    (平成25年7月23日東京地方裁判所判決)

    動物病院の経営などを事業とする会社で設けていた固定残業代制度が裁判では認められず、残業代等約95万円の支払いを命じられたケース

     

    このように、固定残業代制度は、きちんとした制度設計をしなければ、従業員から未払い残業代の請求を受けたときに、企業は多額の残業代支払いを命じられることになります。

    今回は、固定残業代制度(みなし残業代)を導入する際に必ず確認しておいていただきたい注意点や固定残業代の計算方法についてご説明します。

     

    ※この記事は固定残業代に関する「国際自動車事件最高裁判所判決(令和2年3月30日)」や「日本ケミカル事件最高裁判所判決(平成30年7月19日)」を踏まえたものです。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    固定残業代制度を導入する際には、常に「裁判所で認められる内容になっているか」を確認することが必要です。

    未払い残業代問題の裁判対応を常時行っている弁護士であれば、固定残業代制度が裁判で争われたときの裁判所の着眼点や企業側の守り方を知り尽くしており、最新の判例の傾向にあった裁判所でも通用する固定残業代制度を制度化することが可能です。

     

    ▶【参考情報】残業代トラブルに関する「咲くやこの花法律事務所の解決実績」は、こちらをご覧ください。

     

    ▼関連情報:残業代については、こちらも合わせて確認してください。

    新しい残業規制の解説。残業の上限と違反時の罰則について。

    36協定と特別条項について!違法な残業時間の違反摘発例多数

    従業員から未払い残業代を請求されたら!会社側の反論方法を弁護士が解説

     

    ▼固定残業代制度(みなし残業代)に関して今スグ相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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    また顧問弁護士をお探しの方は、以下を参考にご覧下さい。

    【全国顧問先300社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

     

     

    1,固定残業代(みなし残業代)とは

    固定残業代とは、毎月の残業時間にかかわらず、定額の残業代を支払う制度をいいます。

    企業によって、みなし残業代、固定残業手当、みなし残業手当など様々な名称がつけられています。

    固定残業代はあくまで見込み額を支給するものですので、実際の残業時間に応じて計算した残業代が固定残業代の額を超えた場合は、企業はその超過額を支払う必要があります。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    過去の最高裁判所判決でも、固定残業代の制度自体は合法であるとされています。

     

    ・参考情報1:国際自動車事件最高裁判所判決(令和2年3月30日)

    ・参考情報2:日本ケミカル事件最高裁判所判決(平成30年7月19日)

     

    2,固定残業代(みなし残業代)の導入のメリット

    固定残業代(みなし残業代)の導入のメリットとしては以下の点があげられます。

     

    (1)求人広告を出す際に給与が高いことをアピールしやすい

    たとえば、初任給が20万円で残業代が月に5万円くらい発生することが通常の会社の場合の求人を例に考えてみましょう。

    この場合、もし、固定残業代がなければ、「月給20万円(別途残業代支給)」として求人することになります。

    しかし、残業代の見込み額を固定残業代とすることによって、「月給25万円(基本給20万円、固定残業代5万円)」という内容で求人を出すことができます。

    このような求人の出し方をすることにより給与が高い会社であることをアピールしやすいというメリットがあります。

     

    (2)未払い残業代問題を解決できる

    いままで残業代を支払っていなかった企業が、残業代請求に対する対策のため、固定残業代の制度を利用するケースも多くみられます。

    たとえば、基本給40万円の従業員について、給与の内訳を「基本給30万円、固定残業代10万円」と変更することによって、いままでの人件費の枠内で、残業代の不払いを解消しようとするケースです。

    この場合、人件費を増やさないまま、未払い残業代問題を解決できるという点がメリットになります。

    なお、この方法は基本給の減額を伴うことになる点が重要な注意点ですが、その点については後述します。

     

    (3)仕事の効率化につながる場合もある

    固定残業代制度は、従業員の立場から見た場合、残業をしてもしなくても固定残業代が支給されるということになります。

    そのため、仕事をできるだけ早く終わらせ残業なしで退社しようという動機づけになり、仕事の効率化につながる場合があります。

     

    例えば、2017年にはトヨタ自動車が仕事の効率化を目指す目的で固定残業代制度を導入した事例があります。

    トヨタ自動車の固定残業代制度について詳細は以下の記事をご覧ください。

     

     

    最近、固定残業代制度を導入する企業が増えている背景には、ここまでご説明した以下の3つのメリットを得る目的で導入する企業が増えていることがあります。

     

    固定残業代(みなし残業代)導入の3つの目的

    • 求人で高待遇をアピールする目的
    • 未払い残業代問題を解決する目的
    • 仕事の効率化につなげる目的

     

    3,固定残業代(みなし残業代)の導入のデメリット

    固定残業代制度(みなし残業代)導入のデメリットとして、裁判所で有効と認められないケースがあるということがあります。

    冒頭で裁判例をご紹介した通り、就業規則や賃金規程で固定残業代を設けていたのに、裁判所がこれを認めず、企業が多額の残業代の支払いを命じられるケースが相次いでいます。

    固定残業代が裁判所で認められなければ、支給していた固定残業代が基本給と同じように扱われ、残業代の単価を増やすだけの結果になります。

    このように、固定残業代制度は正しく制度設計しなければ、未払い残業代問題の解決どころか、むしろ未払い残業代を増やすだけの結果になるという重要な注意点があります。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    このようなデメリットに陥らないようにするためには、固定残業代の導入時に、労務問題について経験豊富な弁護士に相談して、就業規則や賃金規程を整備しておくことが重要です。

    また、固定残業代制度のもう1つのデメリットして、固定残業代は、実際に残業代が発生したかどうかを問わずに支払うことになるので、企業の人件費負担を増加させる側面もあるということも踏まえておく必要があります。

     

    4,導入時に必ず確認しておきたい注意点とは?

    固定残業代(みなし残業代)制度の注意点

    最初に結論からご説明しますと、固定残業代制度(みなし残業代)の導入時に必ず確認しておかなければいけない注意点は4つ存在します。

    その具体的な4つの注意点は、以下の通りです。

     

    導入時に必ず確認しておきたい4つの注意点

    注意点1:
    金額の決め方についてのポイント

    注意点2:
    就業規則や雇用契約書の作成についてのポイント

    注意点3:
    固定残業代導入時に基本給を減額する場合のポイント

    注意点4:
    求人広告での表記についてのポイント

     

    これら4つの注意点について、以下で順にご説明していきたいと思います。

     

    4−1,注意点1:
    金額の決め方についてのポイント

    固定残業代制度(みなし残業代)導入時に必ず確認しておきたい1つ目の注意点は、「金額の決め方に関するポイント」です。

    以下の3つのポイントを踏まえて固定残業代の金額を決めることをおさえておきましょう。

     

    金額の決め方についての3つのポイント

    ポイント1:
    固定残業代の金額はそれ以外の賃金項目とは分けて明示が必要。

    ポイント2:
    固定残業代は月45時間分までとするべきか?

    ポイント3:
    固定残業代導入に伴い基本給を減額するときは、最低賃金を下回らないように注意する。

     

    順番に詳しくみていきましょう。

     

    ポイント1:
    固定残業代の金額はそれ以外の賃金項目とは分けて明示が必要。

    固定残業代の「金額」は、それ以外の賃金項目(基本給や手当など)と分けて明記することが絶対的なルールです。

    たとえば、「基本給には●時間分の残業代を含む」といった規定の仕方は、時間数は明示されていますが、固定残業代の「金額」がいくらなのかが明示されていません。

    このようなケースでは、未払い残業代トラブルになれば、裁判所は、基本給の中に記載された時間分の残業代が含まれていたとは認めず、改めて残業代の支払いを企業に命じることが通常です。

    裁判でも通用する固定残業代の制度にするためには、固定残業代の「金額」は、それ以外の賃金項目(基本給や手当など)と分けて明記してください。

     

    • NG:「月給30万円(30時間分の残業代込み)」
    • OK:「月給30万円(基本給25万円、固定残業代5万円)」

     

    ポイント2:
    固定残業代は月45時間分までとするべきか?

    固定残業代を支給する際に、あまりに長時間の残業をこれに含ませることは、そもそも会社として、長時間労働が当然であるという建前をとっていると受け取られかねません。

    このような観点から、平成20年代の後半には、「月45時間を超える固定残業代の制度は無効」と判断した判例が多くありました(冒頭の「事例1」のマーケティングインフォメーションコミュニティ事件等)。

    しかし、その後の日本ケミカル事件平成30年7月19日最高裁判所判決では、定額残業代の設定にあたり、基本給と定額残業代の金額のバランスが適切であることは必須ではないとしつつ、定額残業代の有効性の判断にあたって、定額残業代の対象時間数が実際の時間外労働の状況と大きく乖離しないかを考慮するとされました。

    このような判例の流れからすると、現在は必ずしも固定残業代を月45時間分までとすることにこだわる必要はありません。

    ただし、最高裁判所の判決にあるように、固定残業代が実際の時間外労働の状況と大きく乖離しないように設定することが必要です。

    残業のある企業は毎年、残業の上限時間について36協定で取り決めて、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

    そのため、36協定で取り決めた残業時間の上限を超えるような固定残業代の設定は、実際の時間外労働の状況との乖離が大きく、上記の最高裁裁判所判決からは妥当ではないといえるでしょう。

     

    結論としては以下の通りです。

     

    • 36協定で残業時間の上限を月45時間までとしている会社は、固定残業代も45時間までの範囲内で設定することが適切です。
    • 36協定で残業時間の上限について月45時間よりも少ない時間、例えば、月30時間までとした場合は、固定残業代はおよそ30時間分までの額を目安とすることが合理的です。
    • 36協定で月45時間を超える残業についても認めている場合(例えば月60時間の場合)、固定残業代をおよそ60時間分までつけることも合理的であると考えれらます。

     

    なお、36協定については残業のある会社で必ず締結することが義務付けられている労使協定です。

    36協定については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

     

     

    ポイント3:
    固定残業代導入に伴い基本給を減額するときは、最低賃金を下回らないように注意する。

    従来の人件費負担を増やさずに固定残業代制度の導入しようとする場合は、従業員の基本給やそれまで支給してきた手当を減額することになります。

    その場合、基本給と諸手当(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除く手当)の合計額が、最低賃金を下回らないかチェックしておきましょう。

     

    ▶参考情報:最低賃金について

    最低賃金は厚生労働省のホームページに掲載されています。

    http://goo.gl/fXn5IL

     

    上記の3つのポイントに注意して、適正な固定残業代の金額を決めることが、固定残業代制度導入の第一歩となります。

     

    4−2,注意点2:
    就業規則や雇用契約書の作成についての注意点

    固定残業代制度(みなし残業代)の導入時に必ず確認しておきたい2つ目の注意点は、「就業規則や雇用契約書の作成についての注意点」です。

    固定残業代制度については、就業規則あるいは雇用契約書に必ず規定を設ける必要があります。

    就業規則あるいは雇用契約書に規定せず、口頭で「月給には〇〇時間分の残業代が含まれている」などと説明していただけでは、万が一、残業代請求の訴訟等が起きた場合に、裁判所で、「月給の中に残業代を含めて支給していた」と認められることはほとんどありません。

    そして、固定残業代制度について就業規則あるいは雇用契約書に規定を設ける際のポイントは以下の4つです。

     

    就業規則あるいは雇用契約書に規定を設ける際のポイント

    ポイント1:
    固定残業代が、割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであることを明確に規定する。

    ポイント2:
    固定残業代を上回る割増賃金が発生した時は、超過分を支払うことを明確に規定する。

    ポイント3:
    固定残業代が時間外割増賃金の支払いにのみ充てられるのか、それとも、深夜割増賃金や休日割増賃金にも充当されるのかを明確に規定する。

    ポイント4:
    毎月の給与明細に、固定残業代の金額を記載する。

     

    順に詳しくみていきましょう。

     

    ポイント1:
    固定残業代が、割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであることを明確に規定する。

    固定残業代が残業代の支払いとして認められるためには、「固定残業代が割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであること」が明確に就業規則あるいは雇用契約書に書かれていることが大前提になります。

    まずはこの点を確認しておきましょう。

     

    ポイント2:
    固定残業代を上回る割増賃金が発生した時は、超過分を支払うことを明確に規定する。

    固定残業代の制度を設けていても、会社は、従業員の残業時間を管理し、もし、固定残業代の金額を上回る割増賃金が発生したときは、超過分を支払う必要があります。

    裁判例でも、冒頭の「事例3」のイーライフ事件では、超過分の支払いについて就業規則等で明示されておらず、また実際にも残業時間を管理する体制がとられていなかったことが一つの理由となって、固定残業代の制度が無効であると判断されています。

    固定残業代を上回る割増賃金が発生したときは超過分を支払う旨の規定を就業規則や雇用契約書に明記しておきましょう。

     

    ポイント3:
    「固定残業代が時間外割増賃金の支払いにのみに充てられるのか」、それとも、「深夜割増賃金や休日割増賃金にも充てられるのか」を明確に規定する。

    残業代には、法律上以下の3種類があります。

     

    (1)「時間外割増賃金」

    1日8時間、週40時間を超えた場合に支払われる割増賃金

     

    (2)「深夜割増賃金」

    午後10時以降の残業について支払われる割増賃金

     

    (3)「休日割増賃金」

    法定休日の就業について支払われる割増賃金

     

    冒頭の「事例4」のファニメディック事件では、固定残業代が(1)の「時間外割増賃金」に宛てられるのか、それとも(2)、(3)の「深夜割増賃金」、「休日割増賃金」の支払いにも充てられるのかが、明確になっていなかったことが、固定残業代の制度が無効と判断された理由の一つになっています。

    固定残業代の制度を作る場合は、固定残業代が「時間外割増賃金」のみの支払いに充てられるのか、それとも、「深夜割増賃金」、「休日割増賃金」の支払いにも充てられるのかを、就業規則や雇用契約書で明確にしておく必要があります。

     

    ポイント4:
    毎月の給与明細に、「固定残業代の金額」を記載する。

    固定残業代の制度では、「固定残業代の金額」の明示が必要です。

    毎月の給与明細にも必ず固定残業代の金額を明記しておきましょう。

     

    4−3,注意点3:
    固定残業代(みなし残業代)導入時に基本給を減額する場合の注意点

    固定残業代制度(みなし残業代)導入時に必ず確認しておきたい3つ目の注意点は、「固定残業代(みなし残業代)導入時に基本給を減額する場合の注意点」です。

    総人件費の負担を増やさないまま固定残業代制度を導入するケースでは、基本給を減額することが必要になります。

    そして、基本給を減額するためには、各従業員一人ずつの同意が必要になります。

    基本給の減額に同意する書面を作成し、従業員に署名、捺印して提出してもらう手続きが必要になります。

    このような手続が必要になることから、基本給を減額しなければならない場合は、固定残業代制度の導入の成否は、社長ないしは経営陣が、従業員に対し、基本給を減額することについて理解を求め、納得を得ることができるかにかかっています。

    「これまでは残業代の支給ができていなかったが、今後は、残業代はきちんと支払う制度にしたい。ただ、残業代を今の基本給のまま支給すると、会社の人件費負担が増えすぎるので、基本給の減額を了解してほしい。」などと率直に従業員に話をして理解を得ることが必要です。

    各従業員からの同意の書面をもらっておかないと、従業員から減額前の基本給との差額を請求された場合に、請求に応じざるを得なくなりますので、注意しましょう。

    このように、固定残業代導入時に基本給を減額する場合は、各従業員一人ずつから書面で同意してもらう必要があることを、おさえておきましょう。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    固定残業代の導入に伴い、基本給を減額することは、「労働条件の不利益変更」に該当し、従業員への説明の方法や同意の取り方について慎重な対応が必要です。

    労働条件の不利益変更については、以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

     

    労働条件の不利益変更とは?5つの方法とそれぞれの注意点を解説

     

    4−4,注意点4:
    求人広告での表記についての注意点

    固定残業代制度(みなし残業代)導入時に必ず確認しておきたい4つ目の注意点は、「求人広告での表記についての注意点」です。

    平成29年に職業安定法という法律が改正され、企業が固定残業代制度を導入している場合は、求人情報の掲載にあたり、その内容を明示することが企業に義務化されました。

    固定残業代制度を導入している会社が求人媒体や自社サイトに求人情報を掲載する際は以下の点を明示することが必要です。

     

    固定残業代制度の導入に関して明示が必要な内容

    (1)金額
    (2)対象となっている残業時間数
    (3)計算方法
    (4)固定残業代を除外した基本給の額
    (5)固定残業代の対象となる時間数を超える残業の場合は残業代を支払うこと

     

    このように固定残業代制度の内容の明示が義務付けられたのは、固定残業代制度を採用し、固定残業代も含めた月給が「30万円」という場合でも、求人情報では単に「月給30万円」などと表示されているケースがあったためです。

    固定残業代制度が採用されている場合、残業をしても固定残業代の範囲内であれば別途残業代は支給されません。

    そのため、「残業をした場合は基本給30万円とは別に残業代がつく」と考えて応募している求職者と企業の間で、求人トラブルが発生するおそれがありました。

    このような経緯から、求人の際にも固定残業代制度の内容の明示が義務付けられたましたので、注意してください。

    なお、職業安定法で定められている求人のルールについては以下の記事で詳しくご説明していますのであわせてご参照ください。

     

     

    入社時に固定残業代の金額を説明しなかったことが原因で敗訴した事例

    さらに、裁判所でも、固定残業代の金額を入社時までに説明しなかったことを理由に固定残業代の有効性を否定して、残業代の支払いを命じる判例が複数でています。

    例えば、平成28年9月30日京都地方裁判所判決は、賃金規程に固定残業代制度を定めたうえで、給与明細で月給25万円のうち6万2000円が固定残業代であることを給与明細に表示して支給していました。

    しかし、入社時の雇用契約書には、「月給250,000円残業含む」と総額が記載されているのみであり、入社時に固定残業代の額が説明されていなかった事案です。

    この事件で、裁判所は「労働契約時に月額給与の中に含まれている固定残業代部分の金額または時間外労働時間数が明確にされていることが必要」と判断し、企業側を敗訴させています。

    このように裁判でも、入社前に固定残業代の金額を従業員に伝えていない場合、それだけで固定残業代制度が無効と判断される原因になりますので注意が必要です。

    厚生労働省ホームページにも「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」というような参考資料が公開されていますので、参考にご覧下さい。

     

     

    4−5,注意点5:
    就業規則での規程例

    就業規則あるいは雇用契約書に固定残業代(みなし残業代)の規定を設ける際は、ここまで述べたポイントをおさえた規程にすることが必要です。

    たとえば、下記のような条文を盛り込んでおくとよいでしょう。

     

    ▶参考情報:固定残業代に関する就業規則での記載例

    第〇条(固定残業手当)

    1 従業員には時間外労働に対する賃金及び時間外労働割増賃金の支払いに充てるものとして毎月定額の固定残業手当を支給することがある。

    2 会社が固定残業手当を支給するときは、1ヶ月の時間外労働に対する賃金及び時間外労働割増賃金の合計額が固定残業手当の金額を超えた場合に限り、超過額を別に支給する。また、深夜労働、休日労働に対する賃金が発生したときは、固定残業手当と別にこれを支給する。

    3 会社は従業員の時間外労働に対する賃金及び時間外労働割増賃金の合計額が固定残業手当の金額を下回る期間が続いたときは、固定残業手当を減額し、または廃止することができる。

     

    就業規則あるいは雇用契約書の固定残業代に関する規定が適切に定められているかは、裁判でもよく問題になる大変重要な点ですので、必ずチェックしておきましょう。

     

    5,固定残業代(みなし残業代)が違法と判断される場合

    ここまでご説明してきたように、以下のようなケースでは固定残業代(みなし残業代)が違法と判断される危険があります。

     

    • 36協定による残業の上限を大きく上回る固定残業代を支給している場合
    • 固定残業代が割増賃金の支払いの趣旨で支給されるものであることが就業規則や雇用契約書に明確に規定されていない場合
    • 固定残業代が時間外割増賃金の支払いにのみ充てられるのか、それとも、深夜割増賃金や休日割増賃金にも充当されるについて、就業規則や雇用契約書に明確に規定されていない場合
    • 固定残業代を上回る割増賃金が発生した時は、超過分を支払うことが、就業規則や雇用契約書に明確に規定されていない場合
    • 毎月の給与明細に、固定残業代の金額が記載されていない場合
    • 求人広告に固定残業代の金額その他固定残業代制度の内容についての記載がない場合
    • 固定残業代導入に伴い基本給を減額した結果、最低賃金を下回っている場合
    • 固定残業代導入に伴い基本給を減額したが、基本給の減額について従業員から同意書を取得していない場合

     

    すでに固定残業代制度を導入済みの場合は、これらの点を十分チェックしておいてください。

     

    6,固定残業代(みなし残業代)の計算方法

    次に固定残業代(みなし残業代)の計算方法についてご説明したいと思います。

    以下では、例として、月給制の従業員について、45時間分の固定残業代がいくらかということを計算する方法について見ていきたいと思います。

     

    (1)まず、年間の所定労働日数を確認する

    月給制の従業員について残業代の計算をする際には、月の平均所定労働日数(出勤日の数)を使用します。

    「平均」の所定労働日数を採用するのは、月によって、土曜日日曜日の並びや祝日の有無などにより、出勤日の数が異なるためです。

    そして、月の平均所定労働日数は、年間の所定労働日数を確認したうえで、12で割ることによって計算することができます。

     

    年間の所定労働日数÷12=月の平均所定労働日数

     

    (例)年間所定労働日数が252日の場合

    252日÷12=21日

     

    (2)次に、1時間あたりの賃金額を計算する

    月給額を月の平均所定労働日数で割り、さらに1日の所定労働時間数で割ることにより、1時間あたりの賃金額を計算します。

    この際、「家族手当」、「通勤手当」、「住宅手当」、「賞与」については、月給額に含めないで計算します(参照:労働基準法施行規則第21条)。

     

    (例)月給40万円うち家族手当5万円、月の平均所定労働日数が21日、1日の所定労働時間8時間の場合

    (40万円-5万円)÷21日÷8時間=2084円

     

    ただし、厚生労働省の通達により、「家族手当」、「通勤手当」、「住宅手当」の支給内容によっては、これらの手当も月給額に含めて計算しなければならないケースもあります。

     

    家族手当 残業代計算から除外できる場合 扶養家族の人数に応じて支給している場合
    家族手当 除外できない場合 扶養家族の人数に関係なく、一律支給している場合
    通勤手当 残業代計算から除外できる場合 通勤の費用に応じて支給している場合
    通勤手当 除外できない場合 通勤の費用や距離にかかわらず、一律に支給している場合

    (例)一律に1日あたり300円を支給

    住宅手当 残業代計算から除外できる場合 家賃や住宅ローンなど住宅に要する費用に定率を乗じた計算式で支給している場合
    住宅手当 除外できない場合 住宅の形態ごとに一律に定額支給している場合

    (例)賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円などとしている場合

     

    より詳しくは以下をご参照ください。

     

     

    (3)割増率を確認する

    次に割増率を確認します。

    時間外労働については労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(参考:労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令 )により25%以上の割り増しが義務付けられています。

    そのため、通常は割増率を25%としている会社が多いと思いますが、以下の点に注意してください。

     

    • 賃金規程などで25%よりも高い割増率を定めている会社ではそれに従う必要があります。
    • 60時間を超える時間外労働については割増率が50%以上にすることが義務付けられています(参考:労働基準法第37条1項但書)。ただし、中小企業については令和5年3月までは適用を猶予されます。

     

    (4)45時間分の金額を計算する

    1時間あたりの賃金額に割増率をかけ、それに固定残業代を支給する時間数をかけることにより、固定残業代の金額を計算することができます。

     

    (例)1時間当たりの賃金額が2084円で割増率が25%の場合

    2084円×1.25×45時間=117,225円

    このようにこの例では、45時間分の固定残業代は11万7225円と計算することができます。

     

    7,残業代トラブルに関する咲くやこの花法律事務所の解決実績

    咲くやこの花法律事務所では、残業代トラブルに関して多くの企業からご相談を受け、サポートを行ってきました。

    咲くやこの花法律事務所の実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。

     

     

    8,咲くやこの花法律事務所なら「こんなサポートができます!」

    咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

    「咲くやこの花法律事務所」では、固定残業代制度の導入や固定残業代に関するトラブルについて企業のご相談者のために以下のサポートを行っております。

     

    (1)固定残業代制度導入に伴う制度設計、就業規則作成のご相談

    この記事でもご説明した通り、固定残業代制度を導入してもそれが裁判所で認められず、多額の残業代支払いを命じられる裁判例が相次いでいます。

    そのため固定残業代に関する制度の設計や就業規則、賃金規程の作成は必ず弁護士のチェックを受けておく必要があります。

    咲くやこの花法律事務所では、実際に固定残業代トラブルの裁判対応を企業側で行っている弁護士が、制度設計、就業規則作成、賃金規程作成のご相談を承ります。そのため、万が一の裁判の際に裁判所が着目する点をおさえた制度設計が可能です。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金

    ●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

     

    (2)未払い残業代トラブルに関する弁護士へのご相談

    固定残業代を導入していても、それが無効だと主張され、残業代を請求されるケースが少なくありません。

    咲くやこの花法律事務所では未払い残業代の請求を受けてお困りの企業様からのご相談を承っております。

    未払い残業代問題について実績の豊富な弁護士がご相談を受けたうえで、「支払いが必要か否かについて」や「必要な支払額について」判断し、お客様の未払い残業代トラブルについての解決の道筋をしめします。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金

    ●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

     

    (3)未払い残業代に関する従業員との交渉

    咲くやこの花法律事務所では、裁判になる前の段階から、従業員からの未払い残業代請求について、弁護士への交渉の依頼を承っております。

    ご依頼いただいた後は、弁護士が企業側の立場で従業員からの請求に対して反論して従業員と交渉し、未払い残業代トラブルを解決します。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金

    ●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
    ●未払い残業代トラブルの際の従業員との交渉:着手金15万円程度+税~

     

    (4)未払い残業代に関する団体交渉、労働審判、労働裁判への対応

    未払い残業代の問題が団体交渉や労働審判、労働裁判に発展するケースもあります。

    咲くやこの花法律事務所では、これらの団体交渉への同席や、労働審判の対応、労働裁判の対応に豊富な実績があり、企業のお客様からのご依頼を積極的に承っております。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金

    ●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
    ●未払い残業代トラブルの際の団体交渉対応:着手金30万円程度+税~
    ●未払い残業代トラブルの際の労働審判対応・裁判対応:着手金40万円程度+税~

     

    9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのお問い合わせ方法

    「固定残業代制度(みなし残業代)」など残業に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」のページをご覧下さい。

    また、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

    【お問い合わせについて】

    ※個人の方(労働者側)からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

     

    10,残業に関するお役立ち情報配信中(メルマガ&YouTube)

    固定残業代制度(みなし残業代)など残業に関するお役立ち情報について、「咲くや企業法務.NET通信」のメルマガ配信や「咲くや企業法務.TV」のYouTubeチャンネルの方でも配信しております。

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    11,まとめ

    今回は、最近、トラブルが急増している「固定残業代(みなし残業代)」について、必ず確認しておきたい注意点をご説明しました。

    中小企業の経営者も残業代対策として固定残業代の制度導入をしている企業も増えてきておりますが、固定残業代の制度は、最近、裁判所で無効と判断する判決が相次いでおり、安易な制度導入は大変危険です。

    実際に咲くやこの花法律事務所の企業法務トラブルで相談数が多い未払い残業代トラブルの問題で、きちんと対策ができていなかったために多額の残業代を支払わなければならないという結果になることも少なくありません。

    固定残業代の制度を導入する際は、今回ご説明した注意点をきっちりと確認しておきましょう。

    また、少しでも現在の就業規則や賃金規定に不安がある場合は、労務問題に強い弁護士がそろっている咲くやこの花法律事務所までお気軽にご相談下さい。

    残業代の制度設計や従業員との残業代トラブルについては、「労働問題に強い弁護士」に相談するのはもちろん、普段から雇用契約書や就業規則など自社の労務環境の整備を行っておくために「労働問題に強い顧問弁護士」にすぐに相談できる体制にもしておきましょう。

    労働問題に強い「咲くやこの花法律事務所」の顧問弁護士内容について

    【全国顧問先300社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

    【大阪の企業様向け】顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)について詳しくはこちら

    顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

     

     

    記事更新日:2020年08月11日
    記事作成者弁護士:西川 暢春

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