「違法残業」や「36協定違反」がニュースで取り上げられることが増えてきました。
36協定は、労働基準監督署の定期監督においても主要な調査項目の1つとなっており、毎年、東京都内だけでも、「2,000件」を超える36協定の不備やルール違反による違法残業が労働基準監督署から指摘がされています。(▶参考データ:東京労働局「東京都内の労働基準監督署における平成30年の定期監督等の実施結果」(pdf)はこちら)
36協定の制度は、長時間労働対策、過重労働対策に対する社会の関心が高まるに伴って、注目を集めており、今後も違反事例の摘発がすすめられることが予想されます。
そこで、今回は、「36協定」と「36協定に関連する特別条項制度」について、基本的なルールをご説明したうえで、ルール違反による罰則や書類送検事例などもご紹介したいと思います。
それでは、以下で詳しく見ていきましょう。
※36協定の制度は、2019年4月(中小企業については2020年4月)に改正されて、新様式が採用されており、本記事はこの制度変更を踏まえた記事です。
筆者が所属する咲くやこの花法律事務所でも、36協定の締結に関するご相談や、違反してしまった場合の対応に関するご相談を承っています。特に違反を指摘された際は、迅速な対応が必要です。お困りの際は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
▶【参考情報】労務分野に関する「咲くやこの花法律事務所の解決実績」は、こちらをご覧ください。
▶【動画で解説】西川弁護士が「残業があるなら必須?36協定について」詳しく解説中!
▼36協定など残業に関して今スグ相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,36協定(さぶろく協定)とは?
「36協定」とは、企業が従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合に従業員の過半数代表らとの間で締結することが義務付けられている労使協定です。ここでいう、「時間外労働」とは、原則として「1日8時間、週40時間」を超える労働を指します。そして、36協定が締結できない場合は、企業は従業員に時間外労働や休日労働をさせてはならないというのが法律のルールです(労働基準法第32条)。
36協定が締結できていないにもかかわらず、企業が従業員に時間外労働・休日労働をさせた場合、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金の刑罰」が法律上定められています。
この「36協定」は、正しくは、「時間外労働・休日労働に関する協定」と呼ばれます。「36協定」と通称されるのは、労働基準法36条により締結が義務付けられていることに由来します。そして、この「36協定」を締結したときは、企業は労働基準監督署に「時間外労働・休日労働に関する協定届」を提出して届出をすることが義務付けられています。
このように、企業は従業員との36協定を締結せずに従業員に時間外労働や休日労働をさせてはいけないことをおさえておきましょう。
▶参考情報:時間外労働や休日労働の労働基準法のルールについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶参考情報:労働基準法第32条
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
▶参考情報:労働基準法第36条
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
・参照元:「労働基準法」の条文はこちら
(1)新様式の記入例
冒頭でも触れた通り、労働基準法が改正され、36協定については「新様式」と呼ばれる新しい書式が厚生労働省が提供されています。大企業は2019年4月以降、中小企業は2020年4月以降、この新様式を使用する必要があります。
▶参考:記載例(一般条項)
・参考URL:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000833429.pdf
2,36協定の特別条項とは?
「36協定」に関連する用語として、「特別条項」という用語があります。ここでは、「特別条項」の意味についても確認しておきたいと思います。
(1)36協定の「特別条項」とは?
「特別条項」とは、あらかじめ労使協定で定めた特別な事情がある場合に限り、36協定で定めた通常の時間外労働の上限時間を超えて、企業が従業員に時間外労働をさせることを認める制度です。
36協定を締結して届出をした場合は、企業は従業員に合法的に時間外労働させることができますが、過重労働を防止するために、36協定で「時間外労働の上限」を定めることが義務付けられています。
具体的には、例えば、「1か月あたりの時間外労働の上限」や「1年あたりの時間外労働の上限」を定めることが義務付けられています。
この上限時間は、月45時間、年360時間までの範囲で設定しなければなりません。
しかし、特別な事情がある場合に限り、この36協定で定めた通常の上限を超える時間外労働を例外的に認める制度が「特別条項」の制度です。
特別条項を設けた場合は、月100時間未満、年間720時間までの範囲で、時間外労働を延長することが可能です。
▶注意:年間720時間の上限の計算方法について
年間720時間の制限については休日労働を含まない時間数で計算します。そのため、実際は「年720時間+休日労働」が年間の時間外労働・休日時間の上限です。これに対して、単月100時間未満の制限については休日労働も含めて100時間未満にすることが必要です。
残業の上限規制については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)特別条項で定めることが義務付けられている6つの項目
特別条項には、以下の6つの項目を定めることが義務付けられています。
項目1:
36協定の通常の時間外労働の上限を超えて時間外労働させることがある特別の事情
例えば、「通常の受注量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫したとき」などのように具体的に記載します。
「業務の都合上必要な場合」、「業務上 やむを得ない場合」といった抽象的な記載は認められません。
項目2:
特別条項を適用するための労使間の手続
特別条項を適用することにより、36協定の通常の時間外労働の上限を超えて、時間外労働をさせる場合の手続を記載します。
例えば、「労使の協議を経る」とか「労働者代表者に対する事前申し入れ」などといった記載をします。
項目3:
特別条項を適用する場合の時間外労働の上限
特別条項を適用する場合の1か月の時間外労働の上限と1年間の時間外労働の上限を記載します。
1か月の時間外労働は休日労働とあわせて100時間未満が法律上の上限であるため、「100時間」という記載は認められず、99時間が上限となります。
1年間の時間外労働は720時間という記載が上限になります。
項目4:
特別条項を適用することができる回数
36協定の期間中(通常は1年間)に、特別条項を適用して、通常の時間外労働の上限を超える時間外労働をさせることができる回数を記載します。
これは、6回までが法律上の上限となるため、1回~6回の範囲で記載します。
項目5:
特別条項を適用して36協定の通常の時間外労働の上限を超えて時間外労働させる場合に支給する割増賃金の割増率
通常の上限を超えて臨時的な時間外労働をさせた場合の割増賃金率について記載します。
通常は、法定の割増率である「25%」と記載しますが、25%を超える記載をすることも可能です。
▶参考情報:割増賃金について詳しくは、以下の記事や動画で解説していますのであわせてご参照ください。
・割増賃金とは?労働基準法第37条や時間外・休日・深夜の計算方法を解説
・西川弁護士が「割増賃金(時間外労働・休日労働・深夜労働など)のルール」を詳しく解説中!
項目6:
労働者に対する健康確保措置
特別条項を適用することにより通常の時間外労働の上限を超えて時間外労働をさせる場合に、従業員の健康のために企業がとる措置を記載することが必要です。
具体的には以下の10個の選択肢の中から1つ以上を選択して、その具体的な内容を記載する必要があります。
1,労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること
例)月の時間外労働が80時間を超えた場合は医師による面接指導を実施する
2,深夜労働をさせる回数を1ケ月について一定回数以内とすること
例)深夜労働は月2回を限度とする
3,終業から始業までに連続した休息時間を確保するインターバル制度を設けること
例)終業から始業までに連続して11時間の休息時間を確保するインターバル制度を設ける
4,勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
例)7日以上の連続出勤の場合は特別休暇を付与する
5,勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること
例)月の時間外労働が60時間を超えた従業員から申出があり、産業医が必要と認めるときは、健康診断を実施する
6,年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
例)年に2回以上連続して5日以上の有給休暇を取得することを奨励する
7,心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
例)人事部にプライバシーを確保した健康問題についての相談窓口を設置する
8,勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
例)一部の従業員について月の時間外労働が60時間を超えたときは、業務が特定の従業員に偏らないように業務の分配を見直す
9,必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること
例)月の時間外労働が80時間を超えた場合は産業医による面接指導を実施する
10,その他
例)取締役会において従業員の労働時間について継続的にモニタリングを行い、時短についての取り組みを進める。
特別条項を盛り込む場合は、上記の6つの項目を明記した条項を36協定に記載する必要があります。
そして、「特別条項」が盛り込まれた36協定は、「特別条項付き36協定」などと呼ばれます。
ここでは、特別条項の制度の内容と、特別条項において定めることが義務付けられている項目をおさえておきましょう。
(3)特別条項の記入例
特別条項を付ける場合の書式についても、法改正に伴い、厚生労働省から新様式が提供されています。
▶参考:記載例(特別条項)
・参考URL:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/000833434.pdf
3,36協定を適用する場合の残業時間の上限
それでは、36協定や特別条項の意味をおさえたうえで、「36協定を適用する場合の残業時間の上限についてのルール」についてご説明したいと思います。
以下の4つのルールをおさえておきましょう。
- ルール1:時間外労働・休日労働のあるすべての事業所について36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。
- ルール2:36協定を締結した場合も「通常時の時間外労働」は月45時間、年360時間までにすることが法律上義務付けられています。
- ルール3:特別条項を設ける場合は、年6回まで月45時間を超える「臨時的残業」が許容されます。
- ルール4:特別条項を利用して「臨時的残業」を行う場合でも、時間外労働はトータルで単月100時間未満、年720時間までが上限です。
これらの残業規制については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
(1)建設業、運送業、病院の場合の注意点
建設業に従事する従業員や、運送業等で自動車運転の業務に従事するドライバー、病院の医師については、ルール4の特別条項の場合の上限規制(単月100時間未満、年720時間)が2024年3月まで適用されません。
これらの業種については人手不足の状況にあることが考慮され、2024年3月までは特別条項を適用した場合の時間外労働について法律上の上限がありません。
そのため、これらのケースでは、通常の36協定の様式とは別の書式が厚生労働省から提供されています。
4,36協定の締結方法と届出の手続
それでは、36協定と特別条項に関するルールを踏まえたうえで、「36協定の締結方法と届出の手続」についてみていきましょう。
36協定の締結と届出の手続の流れは以下の通りです。
- 手続1:36協定の案を作成する。
- 手続2:従業員の過半数代表を選出する。
- 手続3:過半数代表と会社との間で36協定を締結する。
- 手続4:労働基準監督署への届出をする。
以下で順番に説明していきたいと思います。
手続1:
36協定の案を作成する。
36協定の書式や記入例については下記をご利用ください。
▶参考情報:36協定の書式は、以下よりダウンロードが可能です。
4つのパターンの書式が掲載されていますのでどの書式を使用するかの選択を間違わないようにしてください。
1,通常の会社で特別条項を付けない場合(月45時間以内の残業の場合)
「時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)様式第9号」
2,通常の会社で特別条項をつける場合(月45時間以上の残業がある場合)
「時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)様式第9号の2」
3,研究開発業務の従業員に36協定を適用する場合
「時間外労働・休日労働に関する協定届(新技術・新商品等の研究開発業務)様式第9号の3」
4,自動車運転者、建設業、医師等に36協定を適用する場合
「時間外労働・休日労働に関する協定届(適用猶予期間中における、適用猶予事業・業務。自動車運転者、建設業、医師等。)様式第9号の4」
まずは、これをもとに、36協定の案を会社側で作成しましょう。
手続2:
従業員の過半数代表を選出する。
労働基準法で、36協定については、事業場の労働者の過半数を代表する者を従業員が選出した上で、選出された従業員の過半数代表と会社が36協定を締結することとされています。
ただし、事業場の従業員の過半数が加入する労働組合がある場合は、その労働組合と会社が36協定を締結します。
そして、この従業員の過半数代表の選出については、以下の3つのポイントが重要です。
ポイント1:
事業場ごとに選出する。
従業員の過半数代表の選出は事業場ごとに行う必要があります。
ポイント2:
民主的な手続で選出する。
従業員の過半数代表は投票や挙手などによる民主的な手続で選出される必要があり、会社が一方的に指名することはできません。
ポイント3:
管理監督者は過半数代表にはなれない。
他の従業員を管理しあるいは監督する立場にある管理職は、過半数代表になることができません。
これらの点を踏まえて、従業員の過半数代表を選出することが必要です。
手続3:
過半数代表と会社との間で36協定を締結する。
過半数代表が選出されたら、事業場ごとに過半数代表と協議し、36協定を締結します。
なお、36協定の書式には、過半数代表の署名欄のほかに、過半数代表の「職名」を記載する欄があります。
この「職名」欄については、所属部署名だけでなく、「営業」・「販売」・「事務」等の具体的な職名も記入する必要がありますので注意しましょう。
手続4:
労働基準監督署への届出をする。
36協定が締結出来たら、「時間外労働・休日労働に関する協定届」を、その事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
以上、36協定の締結と届出の手続をおさえておきましょう。
▶参考:電子申請をする場合の注意点
以前は、36協定を労働基準監督署に持参または郵送して届け出ていました。
今でも持参または郵送で届け出ることは可能ですが、電子申請でネット上で申請を済ませることも可能になっています。
電子申請については以下から行うことができます。
電子申請の場合も記載事項は、紙媒体で提出する場合と同じです。
ただし、紙媒体の場合には過半数代表の署名、捺印が必要ですが、電子申請では過半数代表の署名、捺印は必要ありません。
逆に言えば、電子申請をするだけでは過半数代表の同意を得たことが記録上残らないことになります。
そこで、電子申請をする場合でも、過半数代表の同意を得たことをしっかり記録として残しておくために、紙媒体でも労使協定を作り過半数代表の署名、捺印をもらっておくことが必要です。
5,違反してしまった場合の対応
例えば、36協定で時間外労働は45時間までと定めていたが、管理ミスにより、一部の従業員の時間外労働が50時間になってしまうといったケースがあります。
このような場合、企業としては、二度と36協定違反を起こさないように管理方法を改善しなければなりません。
(1)違反時の報告義務について
上記の改善は原則として企業内で対応すればよく、36協定違反について企業側から積極的に労働基準監督署等に報告することを義務付ける制度はありません。
ただし、労働局や労働基準監督官は企業等に対して報告を求めることができ、その場合は、報告義務が生じます(労働基準法第104条の2)。
労災事故が発生した場合の労働基準監督署の調査の際や、従業員との未払い残業代トラブルについて労働基準監督署の調査を受けた際に、36協定違反が見つかり、報告を求められることも多くなっています。
(2)従業員による通報について
労働基準法は労働者が労働基準法違反について労働基準監督署に申告することができることを定めています(労働基準法第104条)。
そのため、会社が36協定に違反した時間外労働や休日労働を従業員にさせていると、従業員から労働基準監督署に通報されるケースがあります。
この場合、労働基準監督署から調査が行われ、36協定違反が見つかれば、是正勧告がされることになります。
労働基準監督署による調査と是正勧告については以下をご参照ください。
6,違反時の罰則と対象者について
36協定や特別条項に関するルール違反は、労働基準法違反として、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の刑罰が法律上定められています(労働基準法32条違反)。
(1)罰則の対象者
36協定違反については、企業だけでなく、工場長や部門長など現場の労務管理を担当する責任者が企業とともに罰則の対象となります。
▶参考例1:令和元年9月 デンソー工業の36協定違反について工場長が書類送検
▶参考例2:パナソニックの36協定違反について労務管理を担当していた幹部2人を書類送検
(2)企業名公表の制度
労働基準監督署は、毎年、労働基準法違反について送検事例を公表しており、書類送検されると企業名を公表されることにあります。この中で、36協定違反を理由とする送検事例も公表されています。
▶参考情報:労働基準法違反については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
7,違反による書類送検事例
最近は、36協定や特別条項に関するルール違反について、労働基準監督署から指摘され、企業の代表者らが書類送検されるニュースが増えています。
そこで、以下では、36協定や特別条項に関するルール違反による書類送検事例について4つの事例をご紹介したいと思います。
- 事例1:36協定で定めた上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
- 事例2:36協定の締結時に過半数代表を会社が一方的に指名していたとして書類送検された事例。
- 事例3:36協定の特別条項をすでに年6回適用しているにもかかわらず、36協定の上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
- 事例4:36協定の特別条項で定めた上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
以下で順番に見ていきましょう。
事例1:
36協定で定めた上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
靴の販売店「ABCマート」を運営する株式会社エービーシー・マートが36協定で定めた上限を超える残業をさせていたとして書類送検されたケースなどがあります。
この事例では、株式会社エービーシー・マートは残業代は支払っていました。
しかし、残業代の支払いの有無にかかわらず、36協定で定めた時間外労働・休日労働の上限を超えているケースは労働基準法違反として罰則の対象となることに注意が必要です。
事例2:
36協定の締結時に過半数代表を会社が一方的に指名していたとして書類送検された事例。
静岡県の印刷会社である東洋印刷株式会社が、会社側で一方的に従業員の過半数代表を指名して、36協定を締結した点について書類送検されました。
「36協定の締結と届出の手続」のところでご説明したとおり、過半数代表は民主的手続きで選出される必要があり、従業員の過半数代表者を会社側が指名することはできませんので、注意しましょう。
事例3:
36協定の特別条項をすでに年6回適用しているにもかかわらず、上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
この事例は、年に6回までしか適用が許されない特別条項を、いわば7回適用してしまったことにより、書類送検されたケースです。
特別条項付きの36協定であれば、36協定で定めた通常の上限を超える時間外労働も許容されます。
しかし、「36協定と特別条項に関する基本的なルール」の「ルール3」としてご説明した通り、特別条項付き36協定であっても、特別条項の適用は年6か月までに限られますので注意が必要です。
事例4:
36協定の特別条項で定めた上限を超える残業をさせていたとして書類送検された事例。
製本業を営む会社が、特別条項付きの36協定を締結していたが、特別条項における時間外労働の上限も超えて、従業員8名に対し、「104時間~190時間」の残業をさせていたケースなどがあります。
「特別条項で定めることが義務付けられている5つの項目」の項目3でご説明した通り、特別条項を締結する場合は、特別条項を適用する場合の時間外労働の上限を明記することが義務付けられています。
そして、特別条項に明記した時間外労働の上限を超えて残業をさせた場合は、当然に労働基準法違反として罰則の対象となりますので注意が必要です。
▶【補足】書類送検とは?
上記の4つの事例でいう「書類送検」とは、労働基準監督署が会社関係者について労働基準法違反として捜査し、逮捕はしないまま、事件を検察庁に送ったことをいいます。
書類送検の後、検察庁の検察官が、労働基準法違反について起訴して刑事責任を問うか、それとも軽微事案として不起訴処分にするかを決めることになります。
このように、逮捕まではされないことが多いですが、いずれも「犯罪」として扱われていますので、ルール違反のトラブルには十分に注意する必要があります。
以上、36協定や特別条項に関するルール違反による書類送検事例についてご紹介しました。
8,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」
最後に、「咲くやこの花法律事務所」における、36協定や残業トラブル対策のご相談についてのサポート内容をご紹介したいと思います。
サポート内容は以下の2点です。
- (1)残業代トラブルの事前予防のご相談
- (2)36協定の作成、リーガルチェックのご相談、提出代行のご依頼
以下で順番にご説明します。
(1)残業代トラブルの事前予防のご相談
「咲くやこの花法律事務所」では、最近急増している残業代トラブルの問題について、企業から雇用契約書や就業規則の見直しのご相談や残業代支払い方法に関する各種ご相談をお受けしています。
残業代トラブルを発生させないためには、事前の対策がなによりも重要です。
残業代トラブルの予防対策は、これまで数多くの残業代トラブルを解決してきた「咲くやこの花法律事務所」の弁護士におまかせください。
咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
●未払い残業代トラブルの際の従業員との交渉:着手金15万円程度+税~
(2)36協定の作成、リーガルチェックのご相談、提出代行のご依頼
「咲くやこの花法律事務所」では、この記事でご紹介した「36協定の作成」や「36協定のリーガルチェック」のご相談も承っております。
協定書の作成内容はもちろん、36協定を有効に締結するために重要なポイントとなる従業員の過半数代表の選出の方法についてもご相談を承っています。また、労働基準監督署への36協定の提出の代行についても、弁護士がご依頼も承っております。
36協定や残業代トラブル対策について不安がある企業様は、ぜひ「咲くやこの花法律事務所」のご相談サービスをご利用ください。
咲くやこの花法律事務所の労務問題に強い弁護士の対応料金
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
(3)「咲くやこの花法律事務所」の労働問題に強い弁護士へ問い合わせる方法
「36協定」など残業に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」のページをご覧下さい。
また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
9,【関連記事】36協定などの残業に関するお役立ち情報一覧
今回の記事では、「36協定とは?違反したらどうなる?制度の内容と罰則について」解説していきましたが、残業に関わる
36協定などに関する残業については、その他にも確認しておくべき重要な情報があり、「咲くや企業法務.NET」のサイト内でも残業時間や残業代に関する他のお役立ち記事を公開しています。その他の残業関連のお役立ち記事は、以下をご覧ください。
・残業代とは?労働基準法のルールや計算方法、未払いのリスクについて
・固定残業代制度(みなし残業代)とは?注意点や計算方法などを解説
・従業員から未払い残業代を請求されたら!企業側の反論方法を弁護士が解説
また36協定の整備など残業に関する労働時間の管理は、社内の労務管理において重要な項目のひとつのため、労働問題や労務管理に精通している顧問弁護士のような専門家に相談しながら整備されておくことをおすすめします。
顧問弁護士の役割など具体的な解説については、以下の解説記事をご覧ください。
また、現在、自社で顧問弁護士をお探しの方は、以下を参考にご覧下さい。
▶【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年7月9日
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