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労働基準法違反とは?罰則や企業名公表制度について事例付きで解説

労働基準法違反とは?罰則や企業名公表制度について事例付きで解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
労働基準法に違反するとどうなるのかご存じですか?

労働基準法違反は、賃金未払い、残業代未払いのほか、36協定の不備、法令に違反するような長時間労働、有給休暇に関する違反などが典型例です。

労働基準法には労働条件の最低基準が定められており、労働者を保護するための法律となっています。これに違反すると、罰則を受けたり、罰則まではいかなくとも、労働基準監督署から是正勧告等を受けることになります。

また、労働基準法違反をした企業は企業名が公表されることもあるため、違反して罰則を受けてしまうと、信用低下につながり、採用や事業活動が困難になる恐れがあります。特に残業代未払などの賃金に関する違反については、罰則とは別に、従業員との労使紛争に発展するリスクもあります。

そのため、企業は労働基準法違反に関するリスクをしっかり理解しておくことが必要ですし、また万が一、労働基準法違反を指摘された場合は、決して放置せず、すぐに正しい対応をすることが重要です。

この記事では、労働基準法違反の事例やそれについての罰則、発覚から罰則を受けるまでの流れについてご説明します。この記事を最後まで読めば、労働基準法に違反するとどうなるのかについて詳しく知ることができるはずです。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

事業者として労働基準法違反を指摘されたときは、決して放置せず、是正に向けた行動をとる必要があります。咲くやこの花法律事務所でも、労働基準法違反の是正や労働基準監督署による調査への対応、送検されないようにするための対応、送検された場合の対応等について、ご相談をお受けし、事業者をサポートしています。お困りの際は、早めにご相談いただきますようにお願い致します。

 

▶参考情報:この記事内で紹介している労働基準法の根拠条文については、以下をご参照ください。

「労働基準法」の条文はこちら

 

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1,労働基準法違反とは?

労働基準法違反とは?

労働基準法は、労働契約や賃金、労働時間、休日、休暇といった労働条件の最低基準を定めた法律であり、労働基準法違反はこれに違反することをいいます。労働基準法に違反した場合、使用者は労働基準監督署による是正勧告を受けるだけでなく、刑事責任を問われるおそれもあります。

労働基準法は正社員だけに適用されるものではなく、アルバイトやパート、契約社員、派遣社員等の使用者の指揮命令を受けて働く労働者全てが適用の対象となります。

 

(1)労働基準法違反となる例

労働基準法違反の典型例としては以下のものがあげられます。

  • 賃金を期日通りに支払わない
  • 解雇予告をしない・解雇予告手当を支払わない
  • 36協定を締結していないのに、時間外労働や休日労働をさせる
  • 36協定に違反して長時間労働をさせる
  • 残業代を適切に支払わない
  • 休憩を適切に与えない
  • 産休を取得させない
  • 有給休暇を取得させない

 

(2)労働者は労働基準法違反をどこに相談する?

労働基準法違反については、労働局や労働基準監督署内に設置されている「総合労働相談コーナー」に、労働者から多くの相談が寄せられています。

厚生労働省が公表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和4年度の労働基準法違反の疑いに関する相談件数は「18万8,515」件でした。

労働者の相談内容はまちまちですので労働基準法違反について相談したからといって、すぐに労働基準監督署が動くわけではありませんが、これらの相談がきっかけになって、事業者に労働基準監督署による調査が入ることはあります。

なお、労働者が労働基準監督署に相談したからといって、その労働者に対し不利益な取り扱い(減給や解雇など)をすることは労働基準法104条2項で禁止されていますので、絶対にしてはいけません。これに違反して不利益な取り扱いをした場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される恐れがあります(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:労働基準法104条2項

第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
② 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

(3)「守らなくてもいい」という考えは時代遅れ

以前は、労働基準法をまじめに守っていたら会社がつぶれるとか、守らなくても実際上問題にならないといった誤解が多くありました。その結果、サービス残業がある会社や有給休暇がとれない会社も少なくありませんでした。しかし、時代は完全に変わっており、労働基準法を守らない会社は、社内の従業員からだけでなく、取引先等社外の第三者からも厳しい評価を受け、その事業はいずれ行き詰まることになります。従業員や労働基準監督署から、労働基準法違反の指摘をうけたときは、それが事実であるかを調査し、違反の事実があるときは、改善に向けて取り組む必要があります。

 

2,労働基準法に違反するとどうなる?罰則の具体的な内容

ここからは、労働基準法の主な規定と、その違反に対する罰則の具体的な内容についてご説明します。

 

(1)賃金に関する主な規定と罰則

まずは賃金に関する主な規定と罰則をご紹介します。

 

1,「割増賃金に関する規定」に対する違反

従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合は、それぞれ所定の割増率によって増額された賃金を払う必要があります(労働基準法37条 ※3)。

違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:割増賃金について詳しくは、以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

割増賃金とは?労働基準法第37条や時間外・休日・深夜の計算方法を解説

 

2,「賃金の支払いに関する規定」に対する違反

賃金の支払いについては、労働基準法上、以下の規定があります。

これらの規定に違反した場合、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条1号 ※5)。使用者が賃金を支払わなかったり、賃金の支払いを遅延した場合、労働基準監督署による調査が行われたり、場合によっては送検される可能性もあります。

 

●通貨払の原則

賃金は通貨により支払わなければならないことが原則です(労働基準法24条1項 ※1)。法令や労働協約に別段の定めがある場合に限り、現物給与が認められます。また、労働基準法施行規則7条の2により、労働者の同意を得ることを条件に、労働者が指定する銀行等の本人名義の預貯金口座または証券総合口座に振り込むことが認められています。さらに、令和5年4月以降は、一定の要件のもとで賃金のデジタル払いも認められています。

 

●直接払の原則

賃金は労働者に直接支払わなければならないことが原則です(労働基準法24条1項 ※1)。

 

・全額払の原則

労使協定がない場合の賃金からの控除は原則として認められず、全額支払わなければならないとされています(労働基準法24条1項 ※1)。

 

・毎月1回以上一定期日払の原則

賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないことが原則です(労働基準法24条2項 ※1)。

 

▶参考情報:労働基準法第24条に定められている賃金支払いのルールについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

労働基準法第24条とは?賃金支払いの5原則について詳しく解説

 

3,「非常時払に関する規定」に対する違反

労働者が出産や疾病等の非常の場合の費用に充てるために賃金を請求された場合は、支払期日前であっても支払わなければならないとされています(労働基準法25条 ※2)。

なお、労働基準法25条の「非常の場合」については、労働基準法施行規則9条により、下記の通り定められています。

 

  • ①労働者の収入によつて生計を維持する者が出産した場合
  • ②労働者の収入によつて生計を維持する者が疾病にかかった場合
  • ③労働者の収入によつて生計を維持する者が災害(地震等)を受けた場合
  • ④労働者またはその収入によつて生計を維持する者が結婚し、または死亡した場合
  • ⑤労働者またはその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたって帰郷する場合

 

この規定に違反した場合は、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条1号 ※5)。

 

▶参考情報:労働基準法の各条文

 

※1:労働基準法24条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

 

※2:労働基準法25条

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

 

※3:労働基準法37条

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 

※4:労働基準法119条1号

次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者

 

※5:労働基準法120条1号

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、第二十三条から第二十七条まで、第三十二条の二第二項(第三十二条の三第四項、第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。)、第三十二条の五第二項、第三十三条第一項ただし書、第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。)、第三十九条第七項、第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条、第八十九条、第九十条第一項、第九十一条、第九十五条第一項若しくは第二項、第九十六条の二第一項、第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

(2)労働時間や休憩に関する主な規定と罰則

次に、労働時間や休憩、休日に関する主な規定と違反した場合の罰則についてご紹介します。

 

1,「労働時間に関する規定」や「休日に関する規定」に対する違反

労働基準法上、使用者は1日に8時間、1週間に40時間を超えて、労働者に労働させてはならないことが原則です(労働基準法32条 ※6)。また、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません(労働基準法35条)。

上記の時間を超えて働かせることは原則として違法ですが、従業員の過半数代表者との間で36協定を締結している場合は違法にはなりません。36協定を締結せずに上記の規定に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:労働基準法で定められた休日に関するルールや、36協定については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

労働基準法で定められた休日とは?年間休日の日数は最低何日必要か?

36協定とは?違反したらどうなる?制度の内容と罰則について

 

なお、労働基準監督署の定期監督等で指摘される労働基準法違反で最も件数が多いのが、この労働基準法32条違反です。厚生労働省労働基準局が公表した「令和3年労働基準監督年報」によると、労働基準監督署の定期監督等で指摘された労働基準法違反のうち、およそ20%が労働基準法32条違反です。労働基準法32条違反の指摘の大半が36協定を締結しないまま時間外労働や休日労働をさせている事例であると思われます。

 

2,「残業の上限規制」に対する違反

前述の36協定を締結した場合でも、上限なく残業を命じることが許されるわけではありません。労働基準法上、時間外労働、休日労働には上限規制があります。時間外労働の原則的上限は、月45時間、年360時間です(労働基準法36条4項)。臨時的な必要性がある場合はこの原則的上限を超えることも許されますが、その場合も青天井ではなく、上限規制があります(労働基準法36条5項、6項)。

これらの規定に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:残業の上限規制については、以下の記事で詳しく解説しますので、あわせてご参照ください。

新しい残業規制とは?残業の上限と違反時の罰則について解説

 

3,「休憩時間に関する規定」に対する違反

労働基準法上、使用者には、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える義務があります(労働基準法34条1項 ※7)。

この規定に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:休憩時間の基本的なルールについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

労働基準法34条の休憩時間!必要な時間など法律上のルールを解説

 

▶参考情報:労働基準法の各条文

 

※6:労働基準法32条

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

※7:労働基準法34条

使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

・参照元:「労働基準法」の条文こちら

 

(3)有給休暇に関する主な規定と罰則

次に、有給休暇に関する規定と違反した場合の罰則についてご紹介します。

使用者は、労働者が6ヶ月間継続勤務し、その6ヶ月間の全労働日の8割以上を出勤した場合は、10日の有給休暇を与える義務があります(労働基準法39条1項 ※8)。また、その後は、継続勤務1年ごとに以下の日数の有給休暇を与える義務があります(労働基準法39条2項 ※8)。

 

▶参考:継続勤務年数と有給休暇の日数について

6箇月経過日から起算した
継続勤務年数
有給休暇の日数
1年 11日
2年 12日
3年 14日
4年 16日
5年 18日
6年以上 20日

 

使用者がこれらの規定に違反して、従業員の有給休暇を与えなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。また、従業員から不法行為(民法709条)または債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償を請求される可能性があります。

 

▶参考情報:有給休暇の基本的なルールについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

有給休暇とは?労働基準法第39条に基づく付与日数や繰越のルールなどを解説

 

さらに、平成31年4月施行の労働基準法改正により、有給休暇の日数が年10日以上の従業員に対しては、使用者がそのうち年5日について時季を定めて与えることが義務付けられました(労働基準法39条7項 ※8)。使用者がこの規定に違反して、年5日について時季を定めて与えることをしなかった場合は、30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法120条1号 ※5)。

 

▶参考情報:使用者の年5日の時季指定義務については詳しくは以下で解説していますのであわせてご参照ください。

有給休暇の義務化とは?!5日以上取得について企業の対応を解説

 

▶参考情報:労働基準法の各条文

 

8:労働基準法39条

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
② 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

六箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
一年 一労働日
二年 二労働日
三年 四労働日
四年 六労働日
五年 八労働日
六年以上 十労働日

 

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

(4)就業規則の作成義務に関する罰則

次に、就業規則の作成義務に関する主な規定とその違反に対する罰則についてご紹介します。

常時10人以上の従業員を雇用する使用者は就業規則を作成する義務があります。就業規則には、労働基準法により、必ず記載しなければならない項目が定められています。これらの項目は「絶対的必要記載事項」と呼ばれ、以下の11項目があります(労働基準法89条)。

 

就業規則の絶対的必要記載事項
  • ①始業時刻
  • ②終業時刻
  • ③休憩時間
  • ④休日
  • ⑤休暇
  • ⑥(労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合は)就業時転換に関する事項
  • ⑦賃金の決定、計算の方法
  • ⑧賃金の支払の方法
  • ⑨賃金の締切り及び支払の時期
  • ⑩昇給に関する事項
  • ⑪退職に関する事項、解雇事由

 

▶参考情報:就業規則の記載事項については、以下の記事を参考にしてください。

就業規則の記載事項をわかりやすく解説

 

就業規則を作成していなかったり、作成していても必要な項目を就業規則に記載していない場合は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金の対象となります(労働基準法120条1号 ※5)。

 

▶参考情報:就業規則の作成義務や作成方法については以下の記事をご参照ください。

就業規則とは?義務や作成方法・注意点などを弁護士が解説

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

労働基準法92条1項により、就業規則の内容は法令に違反してはならないと定められています。例えば、賃金などの労働条件の規定が労働基準法の規定を下回っているなど、就業規則の内容が労働基準法に違反している場合、それ自体について罰則を受けることはありませんが、就業規則のうち違法な内容の部分は無効となります(労働基準法13条)。

 

▶参考情報:就業規則と労働基準法の関係については以下でも解説していますのでご参照ください。

就業規則と労働基準法の関係とは?違反する場合などを詳しく解説

 

(5)パート社員の雇用に関するよくある労働基準法違反と罰則

次に、パート社員の雇用においてよくある労働基準法違反とその罰則についてご紹介します。

 

1,パート社員にも有給休暇を取得させる必要がある

有給休暇は、正社員だけでなく、パート社員やアルバイトといった正社員よりも勤務日数が少ないや勤務時間が短い従業員についても、与える必要があります(労働基準法39条1項から3項 ※8)。

パート社員やアルバイトなどの正社員よりも勤務日数が少ない従業員の場合、法律上与えなければならない有給休暇の日数は正社員よりも少なく、以下の表の通りです。

 

▶参考:勤務日数が少ない従業員に対して付与が義務付けられる有給休暇の日数


所定労働日数
1年間の
所定労働日数
雇入れ日から起算した継続勤務期間
(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3 3

 

このような有給休暇を与えない場合は、労働基準法違反となり、正社員の場合と同様に、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:パート社員の有給休暇に関しては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

アルバイトやパートも労働基準法の適用あり!労働時間や有給などルールを解説

 

2,予告なしに解雇してはいけない

正社員だけでなく、アルバイトやパート社員であっても、基本的には予告なしに解雇してはいけません(労働基準法20条1項)。

非正規労働者であっても、原則として解雇日の30日前までに解雇を予告する必要があり、もし予告をせず言い渡し当日に解雇する場合は、解雇予告手当として30日分の賃金を支払う必要があります。

この解雇予告または解雇予告手当の支払いの義務に違反した場合は、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法119条1号 ※4)。

 

▶参考情報:解雇予告については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

解雇予告とは?わかりやすく徹底解説

解雇予告手当とは?計算方法、支払日、所得税、源泉徴収票の処理を解説

 

3,労働基準法に違反した事例一覧

次に、労働基準法に実際に違反して送検された事例をいくつかご紹介します。

 

(1)長時間労働に関する事例

神戸市東灘区の病院に勤務していた26歳の男性医師の過労自殺の事案について、西宮労働基準監督署による調査の結果、男性が亡くなる前の1か月の間に、36協定で定められた上限を超える113時間56分の時間外労働をさせており、労働基準法36条違反の疑いがあることが判明しました。

西宮労働基準監督署は当該病院の運営法人と院長、男性医師の労務管理を行っていた元上司を令和5年12月19日に書類送検しました。

 

(2)残業代未払に関する事例

鉄道会社が労働者4名に、36協定を超える時間外労働をさせたうえ、割増賃金を支払わなかった事案です。令和5年3月30日、大阪中央労働基準監督署は鉄道会社と同社の人事部担当課長、営業部担当課長を労働基準法第36、37条違反等の疑いで大阪地検に書類送検しました。労働者の中には、最長で月108時間の時間外労働をした人がいたとのことです。

 

(3)有給休暇に関する事例

令和5年5月10日、茨城・龍ヶ崎労働基準監督署は、年次有給休暇取得の時季指定を怠ったとして、飲食業を営む有限会社とその代表取締役を労働基準法第39条違反の疑いで書類送検しました。平成31年4月1日から令和4年3月31日までの期間において、年10日以上の年休が付与される労働者全員に対して時季指定を怠り、有給休暇を取得させていなかった疑いがあるとされています。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

東京労働局の発表によると、令和4年度の労働基準法違反・最低賃金法違反による送検は東京労働局管内では39件でした。そのうち、主なものは、賃金・退職金不払いが14件、解雇予告の義務違反が5件、労働時間・休日に関する違反が4件、割増賃金不払いが4件であったとされています。

 

4,企業名公表の対象となるケースもある

労働基準法に違反して送検された場合、企業名公表の対象となる場合もあります。

例えば、東京労働局は以下のように公表を行っています。

 

 

また、以下は令和4年11月1日から令和5年10月31日までの各都道府県労働局の労働基準法違反による企業名公表分を厚生労働省がまとめたものです。ご参照ください。

 

 

企業名公表の対象となると、社会からもブラック企業と認知されることになり、従業員採用が困難になったり、自治体の入札に参加できなくなる、コンプライアンスを重視する取引先から取引を打ち切られるなど、事業への悪影響が出ます。

 

5,労働基準法違反は従業員による告発や通報から発覚することが多い

労働基準法違反は労働者による労働基準監督署への通報や告発による発覚が最も多いです。そのほか、労働基準監督署が毎年ランダムに行う定期監督により発覚するケースや、労災発生時の災害調査により発覚するケースもあります。

例えば大阪の場合、大阪労働局が発表した令和4年度の送検状況を見ると、労働基準法違反等の送検件数26件のうち20件が告訴・告発によるものとなっています。

 

▶参考:「令和4年における送検状況について」端緒別件数

「令和4年における送検状況について」端緒別件数

・参照元:厚生労働省大阪労働局「令和4年における送検状況について」(pdf)

 

6,労働基準法違反の発覚から罰則までの流れ

2,労働基準法違反に対する罰則の具体的な罰則の内容」でご説明した通り、違反した場合には罰金等の罰則が定められてはいますが、通常は違反が発覚したからといって直ちに罰則が科されるわけではありません。基本的には以下のような流れになります。

 

(1)労働基準監督署による調査

労働基準法違反の疑いがある場合、労働基準監督官による事業所への立ち入り調査が行われます。この調査は臨検監督と呼ばれます。調査では、タイムカード、有給休暇管理簿、労働条件通知書、賃金台帳等の確認や、使用者や従業員への聞き取りが行われます。

なお、調査を拒んだり、書類を偽造する、聞き取り調査に対して虚偽の内容を述べる等した場合は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労働基準法120条4号 ※10)。労働基準監督署からの調査があるからといって、タイムカードを書き換えるなどの行為は絶対にしないでください。

 

▶参考情報:労働基準監督署の立ち入り調査に対する正しい対応方法については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご参照ください。

労働基準監督署の立ち入り調査と是正勧告を乗り切る対策を弁護士が解説

 

▶参考情報:労働基準法の各条文

 

※9:労働基準法101条

労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。

 

※10:労働基準法120条4号

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
四 第百一条(第百条第三項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者

・参照元:「労働基準法」はこちら

 

(2)是正勧告

調査により労働基準法違反が認められた場合は、労働基準監督署から是正勧告が行われます。この是正勧告に従わず放置していると、送検され罰則を受ける恐れがあります。そのため、是正勧告を受けた場合は、速やかに指摘事項の改善に向けた対応を取る必要があります。

 

(3)送検

労働基準監督官は労働基準法違反事件について、警察官と同じ権限が与えられています(労働基準法102条)。 そのため、是正勧告を無視して違反を放置していた場合は、刑事事件として立件され、送検される恐れがあります。こうした状況になってしまうと、場合によっては企業名を公表されます。新聞やニュースに大きく取り上げられることもあり、信用低下など、会社が受けるダメージは計り知れません。

 

(4)時効

労働基準法違反の罪も時効があります。労働基準法に違反した場合の罰則の公訴時効期間時効はいずれも以下の刑事訴訟法250条2項6号により3年と定められています。つまり、3年間起訴されなかった場合は処罰の対象ではなくなります。

 

▶参考情報:刑事訴訟法第250条第2項

時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

・参照元:「刑事訴訟法」の条文はこちら

 

(5)罰則の対象者は誰か?

労働基準法に違反した場合に、罰則の対象となるのは使用者です。使用者とは労働基準法10条により、「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定められています。法人の場合は、役員や取締役といった経営者、実質的な業務権限を持つ部長や課長、工場長等の管理職も処罰の対象とされることがあります。また、法人自体も処罰の対象となります(労働基準法121条1項)。

 

7,労働基準法違反を指摘された場合の対応

労働基準監督署や従業員から労働基準法違反を指摘された場合は、速やかにその指摘が事実かどうかの調査をして、違反の事実があるときは指摘事項の改善に向けた対応をすることが必要です。

労働基準法違反が発覚し、労働基準監督署から是正勧告がされた場合、通常は是正勧告書を交付されます。是正勧告書が交付されたら、速やかに指摘事項の改善を行い、期日までに是正報告書を提出しましょう。

なお、是正報告書に虚偽の内容を記載した場合、労働基準法104条の2に違反し、労働基準監督署から書類送検されるおそれがありますので、注意してください。

 

8,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

労働基準法違反の指摘を受けた場合に、早急な対応が必要なことはこの記事でお伝えした通りですが、自社だけで対応することはなかなか難しいのが実情です。

労働基準監督署や従業員から労働基準法違反を指摘された場合は、できるだけ早く専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしています。以下では咲くやこの花法律事務所のサポート内容をご紹介します。

 

(1)労働基準法違反が発覚した場合の対応に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では、労働基準法に関して、以下のようなご相談を承っています。

 

  • 労働基準監督署の立入調査への対応のご相談
  • 立入調査への立ち会い
  • 是正勧告への対応に関するご相談
  • 就業規則や労務管理の見直し

咲くやこの花法律事務所の人事労務分野に強い弁護士へのご相談費用

●初回相談料:30分5000円+税

 

(2)顧問弁護士サービス

違反を指摘されたときに迅速に改善することが重要なのはもちろんのことですが、労働基準法違反を未然に防ぐために、日頃から就業規則や社内の労務管理の整備の見直し・改善を進めておくことも大切です。また、労働基準法違反にならないためには、頻繁に行われる労働基準法の改正にも対応していく必要があります。

咲くやこの花法律事務所では、事業者の方向けに顧問弁護士サービスを提供しております。日頃から弁護士によるサポートを受け、整備を進めることで、労働基準法違反のない健全な体制を作ることができるだけでなく、労使紛争の防止にもつながります。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下で詳しくご説明していますのでぜひご覧ください。

 

 

9,まとめ

この記事では労働基準法に違反した場合の罰則や、労働基準法違反の具体的な事例をご紹介しました。

また、違反発覚から罰則までの流れについて、以下の通りご説明しました。

 

  • (1)労働基準監督署による調査
  • (2)是正勧告
  • (3)送検

 

記事でもご説明した通り、労働基準法に違反したからといって、通常はただちに送検されるわけではありません。しかし、対応を誤り送検されてしまうと、会社が致命的なダメージを受けることになり、場合によっては事業活動を続けていくことすら困難になる恐れがあります。

もし労働基準法違反が発覚・指摘された場合は、できる限り早く弁護士にご相談いただき、早めに問題の改善と適切な対応することが重要です。咲くやこの花法律事務所でも、労働基準法違反の改善や労働基準監督署への対応について専門的なサポートを提供してきた実績があります。お困りの際は早めにご相談ください。

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年5月21日

 

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