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労働審判は弁護士に相談すべき?費用はどのくらい必要?相場などを解説

労働審判は弁護士に相談すべき?費用はどのくらい必要?相場などを解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

労働審判の対応について弁護士に依頼した場合、いくらくらいの費用がかかるのでしょうか。

労働審判にかかる弁護士費用の内訳は、労働者側と企業側で少し異なりますが、一般的には以下の通りです。

  • 1.相談料
  • 2.着手金
  • 3.報酬金
  • 4.実費

 

この記事では、企業側、労働者側両方の立場について労働審判にかかる弁護士費用についてご説明します。労働審判において望んだ結果を得るためには、専門の弁護士に依頼することが重要になります。この記事では、費用をかけても弁護士に依頼することの必要性についても解説します。

 

弁護士西川暢春からのワンポイント解説

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所では労働審判について企業側からのご相談のみ承っています。会社宛に労働審判申立書が届くと、そこから約3週間ほどで、答弁書の作成や証拠の提出を済まさなければなりません。企業側の労働審判対応は、第1回目の期日において、いかに説得力のある主張ができるかが勝負となりますので、申立書が届いたらできるだけ早急に労働審判対応に精通した弁護士にご相談いただくことが重要です。

労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応については以下で解説していますのでご参照ください。

労働審判を起こされた会社側の対応について解説

 

また、咲くやこの花法律事務所の労働審判対応に関する解決実績は以下をご参照ください。

 

試用期間満了後に本採用せずに解雇した従業員から復職を求める労働審判を起こされたが退職による解決をした事例

従業員に対する退職勧奨のトラブルで労働審判を起こされたが、会社側の支払いなしで解決した事例

元従業員から不当解雇として労働審判を起こされ最低限の支払いで解決をした事例

 

▼労働審判について弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

1,労働審判の弁護士費用とは?

労働審判の弁護士費用とは?

労働審判とは、「不当解雇トラブル」や「未払い残業代トラブル」など、従業員と会社のトラブルを通常の裁判より簡略的な手続で解決する裁判所の手続です。労働審判のメリットとして、短期間で一定の解決を目指せることや、事案に応じて柔軟な解決をすることができることがあげられます。

労働審判は専門的な対応が必要になるため弁護士に依頼することが通常であり、その際にかかる費用が労働審判の弁護士費用です。

 

▶参考:労働審判全般についての解説は以下の参考記事をご参照ください。

労働審判とは?手続きの流れや費用、解決金の相場などをわかりやすく解説

 

2,労働審判にかかる弁護士費用の内訳について

では、労働審判を弁護士に依頼する場合、どういった費用がかかるのでしょうか。

一般的にかかる費用の項目は、労働者側と企業側で大きく変わらず、以下のものを支払う必要があります。

 

▶参考:弁護士に依頼する場合の費用一覧

1 相談料 法律相談の対価として相談事に支払う費用
2 着手金 弁護士に依頼した時点で最初に支払う費用

事件の結果に関係なく支払う必要がある

3 報酬金 事件の解決時に、その事件の成功の程度に応じて支払う弁護士費用
4 実費・諸費用 事件解決のために必要となる裁判所に納める印紙や郵便切手、交通費などの費用

 

この点を詳しくご説明すると以下の通りです。

 

(1)相談料

相談料は、労働者側なら労働審判の申立てを弁護士に依頼する前に、企業側なら労働審判の対応を弁護士に依頼する前に、弁護士に解決方針や進め方について法律相談をした際に発生する費用のことです。

ほとんどの場合、「30分5000円」などの、時間あたりの料金が定められており、相談にかかった時間に応じて費用が計算されます。

 

(2)着手金

着手金は、弁護士に事件の依頼をした際に最初に支払う費用です。

労働審判は、通常の裁判とは異なり、たった3回の期日で結論が出るため、第1回目の期日において、ほとんど裁判官や労働審判員の心証が決まることになります。そのため、第1回目の期日で、どれだけ説得力のある主張を網羅的にできるかが重要となります。そこで、企業側の弁護士も労働者側の弁護士も第1回期日までにしっかりした準備をしなければなりません。

着手金はこのような弁護士への依頼に対して支払う費用であり、事件の結果にかかわらず、返還されません。

 

(3)報酬金

報酬金は、事件の解決時に、その成功の程度に応じて支払う費用です。

従業員が残業代や慰謝料といった金銭を請求する目的で労働審判を起こすケースでは、報酬金の額を、労働審判の結果得られた回収額の何%、などと定めることが多いです。

一方、従業員側が企業に解雇を撤回させて復職することが目的で労働審判を申し立てる場合や、企業が従業員を退職させたいと考えている場合など、金銭の回収ではなく、従業員としての地位が争いになる事案においては、報酬金の額を「復職できた場合は給与の何か月分」(従業員側)としたり、「退職合意に至った場合は〇万円」(企業側)などと定めていることが多いです。

 

(4)実費

実費は、労働審判において実際にかかる費用のことです。

従業員側が労働審判を申し立てる際に裁判所に納める印紙や、弁護士が裁判所に出廷する際の交通費、また書類を送付する際の切手代などが含まれます。

これらの実費は、依頼者が、依頼する最初の時点で一定の金銭を弁護士に預けておきそこから弁護士が実費の支払いに充てる方法と、一旦弁護士の事務所で費用を立替え、後でまとめて依頼者が支払う方法などがあります。

これらの費用については、弁護士に事件を依頼する時に作成される「委任契約書」によって、金額や支払方法、支払いのタイミングなどが決められます。そのため、「委任契約書」をよく確認することが大切です。

 

3,労働者側の弁護士費用の相場

では、労働審判の弁護士費用はいくらくらいが相場なのでしょうか?

以下では、まず、労働者側の弁護士費用についてご説明したうえで、企業側の弁護士費用についてもご説明します。

 

※以下の表は令和5年3月現在、インターネット上で掲載されている情報を整理したものです。詳細は各法律事務所にお問い合わせいただくか、各事務所のホームページを参照してください。ホームページで確認できなかった部分については、空欄としています。

 

(1)不当解雇の労働審判の事案の場合

従業員が企業に解雇されたことが不当解雇だとして労働審判を申し立てる不当解雇に関する労働審判の弁護士費用例は以下のようになっています。

 

法律事務所 相談料 着手金 報酬金
A 初回60分/無料

(2回目以降は5,500円/30分)

無料 回収額の33%(最低報酬金33万円)
※金銭換算できない場合は給与支給月額の3ヶ月分(年俸制の場合は年俸の4分の1)+消費税
B 初回1時間/無料

(1時間を超過した場合は30分ごとに5,500円)

22万円 ① 解雇無効が認められ復職した場合:33万円~+バックペイ(※1)の11%

 

② 解決金支払いで合意退職した場合:解決金の22%~

C 初回30分毎に5500円 ① 賃金1.1か月分の80%を目安に協議(最低額は16万5000円)

 

② 賃金が月額50万円を超える場合:44万円+αを目安に協議

① 金銭解決で終結した場合

(1)回収金300万円以下の場合:回収金の17.6%

(2)回収金300万円以上3000万円以下の場合:回収金の11%+19万8000円

 

② 地位確認、職場復帰で終了した場合

バックペイ全額と 年収の3年分を合わせた額から上記の基準で算出

D 無料 無料 経済的利益の33%
E 着手金10万円~ 報酬金30%(最低報酬金30万円)

復職できた場合、給与支給月額の3か月分が加算

F 初回30分/無料

(30分を超えた場合は以降30分5,500円)

10万円 調停の成立又は審判で復職が認められた場合に限り、給与支給額の2か月分相当額

 

※1:バックペイとは、労働審判等で解雇が無効と判断された場合に企業側が支払を命じられる金銭です。企業側は、解雇の時点にさかのぼって解雇期間中、本来支払うべきであった賃金の支払を命じられます。バックペイについては、以下で解説していますのでご参照ください。

▶参考情報:バックペイとは?意味や計算方法、目安となる相場を解説

 

表のように、大きく分けて、着手金が必要なタイプの事務所「B~F」と、着手金が不要なタイプの事務所「A」にわけられます。

「A」のような成功報酬型は解雇されて金銭面に行き詰っている労働者からみれば依頼しやすいというメリットがあるでしょう(ただし、結果にかかわらず支払う必要があると思われる最低報酬金が設定されていることから、成功報酬制というよりは着手金について後払いを認めているという理解が正しいでしょう)。

 

弁護士西川暢春からのワンポイント解説

企業側の立場から見れば、初期費用無料で労働者側の労働審判に対応する事務所があることから、労働者として弁護士費用の準備ができなくても、労働審判の申立てが起こされる可能性があることに留意する必要があります。

 

(2)残業代請求の労働審判の事案の場合

次に従業員が企業に対して未払い残業代を請求する場合の労働審判にかかる弁護士費用の例は、以下のとおりです。

 

法律事務所 相談料 着手金 報酬金
A 何度でも相談無料 無料 回収額の33%

(最低報酬金33万円)

B 初回1時間/無料

(1時間を超過した場合は30分ごとに5,500円)

11万円~ 相手方からの回収額の27.5%

(最低報酬金33万円)

C 何度でも相談無料 無料 38万5,000円 + 回収額の17.6%
D 初回30分/無料 無料 経済的利益の27.5%
E 無料 無料 経済的利益の33%
F 30分/5500円 無料 回収額の20%
G 10万円~ 報酬金30%

(最低報酬金30万円)

H 初回30分/無料

(30分を超えた場合は以降30分5,500円)

10万円 調停の成立又は審判で認められた残業代の20%相当額

 

残業代請求の労働審判については、他の事案と比べて、着手金を無料とする法律事務所が多いようです。また、他の事案では相談料がかかる事務所であっても、残業代請求に関する相談のみ相談料を無料とする法律事務所もあります。

ただし、結果にかかわらず支払う必要があると思われる最低報酬金が設定されている法律事務所が多くなっています。この最低報酬金は実質的に見れば着手金の後払いであり、着手金無料というよりは後払いを認めているという理解が正しいでしょう。

 

(3)パワハラの労働審判の事案の場合

次に、パワハラによる慰謝料請求等の労働審判についての労働者側の弁護士費用例をご紹介します。

 

法律事務所 相談料 着手金 報酬金
A 30分/5,500円 ① 請求額300万円以下の場合:請求額の11%(最低着手金22万円)

 

② 請求額300万円〜3000万円の場合:請求額の5.5% + 16万5,000円

① 回収額300万円以下の場合:回収額の22%

 

② 回収額300万円〜3000万円の場合:回収額の11% + 33万円

B 無料 無料 経済的利益の33%
C 着手金10万円~ 報酬金30%(最低報酬金30万円)
D 初回30分/無料

(30分を超えた場合は以降30分5,500円)

15万円 + 税 獲得した経済的対価の20%相当額 + 税

 

パワハラの労働審判については、他の事案に比べてホームページ上に具体的な金額を記載している法律事務所が少ないようです。これはパワハラのトラブル自体は多いものの、パワハラのトラブル単体で労働審判を申し立てるケースが少ないことが原因であると思われます。

パワハラの慰謝料請求等は、不当解雇に関する労働審判や未払い残業代請求に関する労働審判の中であわせて行われることが多いのが実情です。

 

(4)労災の労働審判の事案の場合

労災について企業に対する損害賠償請求の労働審判を申し立てる際の弁護士費用例は以下の通りです(労災の事案においては、企業に損害賠償を請求する場面と、労災保険に請求する場面がありますが、以下の表は、企業に請求する場面についてのものです。)

 

法律事務所 相談料 着手金 報酬金
A 初回/無料 無料 ① 回収額が300万円以下の場合:回収額の22%(最低報酬額11万円)

 

② 回収額が300万円超~3000万円以下の場合:回収額の19.8% + 6万6000円

 

③ 回収額が3000万円超の場合:回収額の16.5% + 105万6000円

B 無料 無料 経済的利益の33%
C 20万円~ 経済的利益の20%
D 初回30分/無料

(30分を超えた場合は以降30分5,500円)

20万円 実際に損害賠償がなされた場合に限り、賠償額の15%相当額

 

特にすでに労災認定されている事案についての労災に関する労働審判は、企業側からの支払を見込みやすいという側面があり、この点を踏まえて相談料や着手金を無料で対応する法律事務所もあります。

 

4,会社側の弁護士費用の相場

ここまで、労働者側の弁護士費用をご紹介いたしました。

次に、労働審判において、企業側が支払う弁護士費用についてご説明したいと思います。

結論から言えば、会社が弁護士に労働審判の対応を依頼する場合、一般的には合計100万円程度が1つの目安といえます。

以下で詳しく見ていきたいと思います。

 

(1)相談料

会社側の初回の相談は30分あたり「5,000円~10,000円」の相談料が通常です。

ただし、自社が顧問契約をしている法律事務所に相談する場合は、相談については顧問契約の中で対応してもらえることが多く、費用がかからないことが通常でしょう。

 

▶参考情報:弁護士との顧問契約とは、以下の記事で詳しく弁護士の顧問契約について解説していますので、ご参照ください。

顧問弁護士とは?費用と相場、役割や必要性について解説

 

(2)着手金

会社が弁護士に労働審判の対応を依頼する場合、第1回期日までに十分な答弁書の作成と、会社側の証拠の提出を弁護士において行っていく必要があります。そのうえで弁護士が会社担当者や経営者と一緒に第1回期日、第2回期日、第3回期日に出席して、会社側の主張を十分に行い、解決結果に反映できるように活動していきます。

労働審判では短い期間で十分な対応をしなければならない負担の大きな手続であり、会社側の着手金は「50万円程度」が目安となっています。

ただし、具体的な着手金の額は、以下の点を考慮した個別見積もりとなります。

 

1,労働審判において請求されている項目の数

例えば、不当解雇トラブルにあわせて未払い残業代請求やパワハラの請求がされるなどしている場合、請求されている項目の数だけ反論が必要になります。そのため、請求されている項目が1つではないことは、弁護士費用が高くなる要素になり得ます。

 

2,請求の額

一般的に労働者側からの請求額が多額であるほど、大きい事件という扱いになり、弁護士費用が高くなる要素になることが通常です。

 

3,申立書の分量や提出された証拠の分量

労働者側から提出された労働審判申立書の分量や、提出された証拠の分量が多い場合は、その分だけ反論を要することになり、弁護士費用が高くなる要素になる傾向があります。

 

(3)報酬金

労働審判で事件が解決した場合は、その結果に応じて報酬金が発生することが通常です。

報酬金についての定め方は弁護士によってさまざまですが、主に「労働者側からの請求額を減額した場合にその減額の額に委任契約書で設定したパーセンテージをかけて計算する方式」と「労働審判で解決が得られた場合にあらかじめ定額の報酬が発生することを委任契約書で取り決める方式」の2パターンがあります。

残業代請求の労働審判など労働者側の請求額が明確な場合は上記の両方のパターンが考えられます。これに対し、不当解雇トラブルの労働審判などは労働者側の請求額が明確とは言えないケースもあり、後者の「労働審判で解決が得られた場合にあらかじめ定額の報酬が発生することを委任契約書で取り決める方式」のほうがわかりやすいと言えます。

 

(4)日当

弁護士によっては、裁判所への出廷回数に応じて、「1回の期日につき〇万円」のように日当がかかる場合もあります。

ただし、この点は、着手金の中に日当分も含む形で費用が設定されていることも多いです。着手金と別に日当が発生するのかどうかについては、依頼する弁護士に確認し、かつ、弁護士から交付される委任契約書でもよく確認するようにしてください。

 

(5)具体的な会社側の弁護士費用の相場

労働審判における具体的な会社側弁護士費用の相場については、日本弁護士連合会がアンケートを取っています。

そのアンケートによると、会社側の弁護士費用の相場は以下の通りです。

 

1,着手金

  • 30万円程度:46.1%
  • 50万円程度:18.8%

 

2,報酬金

  • 30万円程度:25.0%
  • 50万円程度:33.2%

 

▶参照元:日本弁護士連合会 アンケート結果にもとづく「中小企業のための弁護士報酬目安」【2009年アンケート結果版】の17ページ

 

なお、このアンケートで調査されたのは労働審判制度と似た労働仮処分手続の場合の弁護士費用ですが、回答した弁護士のうち約7割が労働審判と労働仮処分とで弁護士費用の金額が変わらないと回答しているため、労働審判にかかる会社側弁護士費用としても十分に参考になるでしょう。

ただし、このアンケートは、2009年のアンケート結果であり、ずいぶん前のものであることに注意する必要があります。

現在では、会社側の労働審判の弁護士費用は、着手金50万円程度、報酬金50万円程度が通常といえるでしょう。

 

5,労働審判にかかる費用の実費について

労働審判においては、弁護士に支払う相談料や着手金、報酬金のほかに、実費も依頼者が負担する必要があります。

労働審判の際にかかる実費としては、以下のものがあげられます。

 

(1)交通費

労働審判は、弁護士や会社関係者が裁判所に出廷する必要があるため、それにかかった交通費が実費として発生します。

 

(2)通信費

通信費は、切手代やレターパックの費用など、労働審判について依頼を受けた弁護士が、裁判所や相手方宛に書類を送る時に発生する費用です。

 

(3)印紙代

印紙代は、労働審判を申し立てる段階で、裁判所に納める費用のことで、申立人、つまり通常は労働者側が支払う必要があります。

印紙代の金額は、労働審判で請求する額によって異なります。

 

▶参考情報:例えば、100万円を請求する場合は、5,000円分の印紙を納める必要があります。

 

印紙代の基準については、裁判所のホームページからもご確認いただけます。

裁判所「手数料額早見表(単位:円)」(pdf)

 

6,労働審判は弁護士なしでも対応可能か?

ここまで、労働審判を弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用についてご説明しました。

では、労働者側は弁護士に依頼せずに、自分で労働審判をすることはできるのでしょうか。

この点については、「労働者側が労働審判を申し立てるにあたって絶対に弁護士に依頼しなければならない」、という決まりはありません。そのため、労働者本人が労働審判を申し立ててくるケースは存在します。

ただし、労働者が本人で労働審判を申し立てることは、とても大変な作業になります。

労働審判は、迅速な解決を図ることができる点が魅力的な手続ですが、逆に言うと、本人もその専門性の高い手続に、同じ速度でついて行かなければなりません。また、労働審判は約3回の期日で結論が出ますが、実際には第1回目の期日において、裁判官や労働審判員の大体の心証は決まってしまいます。

そのため、初回期日において、証拠を用いて、いかに分かりやすく、説得力のある主張を網羅的にできるかが勝負となります。これらの点を踏まえると、弁護士に依頼しないで労働審判を申し立てることは、労働者側から見て決して得策とは言えません。

一方、企業側から見ると、労働者側が弁護士に依頼しない場合、意味がよくわからない整理されていない書面が提出されるなどして、それに対応しなければならないという意味において、通常以上の負担が生じるケースも多いです。

いずれにしても労働者側が弁護士に依頼するかどうかは企業側ではコントロールできないため、企業としては、申立書が届き次第適切な弁護士に依頼して粛々と対応していくことになります。

 

7,企業が労働審判において弁護士の代理を依頼する必要性について

一方、会社側は労働審判を申し立てられた場合、弁護士に依頼することがほとんどです。

会社側は前述の通り、第1回期日までに十分な答弁書の作成と、答弁書での主張を根拠づける証拠の提出を行なう必要があります。

具体的には以下の通りです。

 

(1)不当解雇の労働審判の事案

解雇の経緯や理由を答弁書で説明したうえで、解雇の正当性を基礎づける主張と証拠の提出を準備していく必要があります。

 

(2)残業代請求の労働審判の事案

会社が把握している労働時間の記録をもとに答弁書で反論し、また反論を基礎づける証拠の提出を準備していく必要があります。

 

(3)パワハラの労働審判の事案

会社において事実関係の調査をしたうえで、その結果をもとに答弁書で反論し、また反論を基礎づける証拠の提出を準備していく必要があります。

 

(4)労災の労働審判の事案

労災の事案でも同様に、会社において事実関係の調査をしたうえで、その結果をもとに答弁書で反論し、また反論を基礎づける証拠の提出を準備していく必要があります。

 

▶参考:これらの会社側の反論の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

労働審判の答弁書の書き方!5つのケースにわけて反論方法を解説

 

労働審判の申立書が会社に届いてから答弁書の提出期限までおよそ3週間程度しかないのが通常であり、このような限られた期間内に十分な準備をするためには、弁護士への依頼は必須であると考えるべきでしょう。また、実際の労働審判の期日で、労働者側に対して適切な反論や質問をするためにも弁護士の出席は必須であると考えるべきでしょう。

 

8,弁護士費用についての考え方

会社が労働審判の対応を依頼する弁護士を探す場合、弁護士費用は弁護士を決めるにあたって確認しておきたい1つの重要な要素です。

しかし、弁護士費用よりも重要なことは、労働審判対応に精通した熱意ある弁護士に依頼することで、企業側の意向に沿った解決を実現することであることも忘れてはなりません。

弁護士のサービスは、どの弁護士でも一律ではなく、弁護士によって大きな差があります。解決結果もどの弁護士に頼むかによって大きな差が生じ得ます。

そのため、弁護士を選ぶ際は、その専門性や方針を基準に判断することが適切であり、弁護士費用を重要な判断基準に弁護士を選ぶことは必ずしもおすすめではありません。

 

▶参考:企業側の弁護士の探し方については、以下の記事で解説していますのでご参照ください。

労働問題・労務トラブルに強い弁護士の探し方と相談の流れ、弁護士費用

 

9,労働審判について弁護士に相談するまでの流れ

会社側は、依頼したい弁護士を決めたら、早急に相談の予約を取ることが必要です。労働審判の申立書が会社に届いてから答弁書の提出期限まで通常は3週間程度しかないため、相談するまでに時間をロスしてしまうと、十分な準備ができなくなってしまいます。

 

(1)相談を予約する際のポイント

相談は、実際に弁護士に会って行う方法と、ZoomやMicrosoft Teamsなどのテレビ電話で行う方法があります。打ち合わせ自体は実際に会ってしなくても問題はありません。実際に会って打ち合わせをすることより、早く打ち合わせをすることを優先した方が良いことが多いです。

また、弁護士の相談を予約する際は、必ず、労働審判の期日を弁護士に伝えてその日に相談担当弁護士が出廷できるかどうかを確認しておくことをおすすめします。せっかく弁護士に相談したけれども、労働審判の第1回期日にその弁護士に先約がある場合、相談が無駄になる危険があるので注意してください。

 

(2)相談の際のポイント

実際に弁護士に会って相談する際は、必ず、労働審判の申立書を持参するか、事前に弁護士に送付しておきましょう。申立書の内容を踏まえて打ち合わせをする必要がありますので、打ち合わせの際に申立書は必須です。

 

(3)相談から反論着手までの流れ

相談の結果、その弁護士に依頼すると決めたら、弁護士と委任契約書を取り交わしたうえで、弁護士に委任状を提出して、着手金を支払い、申立書への反論に着手してもらうことになります。相談後も弁護士から提供を依頼された証拠等は、できるだけ早く弁護士に提供して確認してもらうことで、十分な準備を進める必要があります。

 

10,咲くやこの花法律事務所の弁護士費用の事例紹介

以下では咲くやこの花法律事務所に労働審判の対応をご依頼いただいた場合の実際の費用例をご紹介します。

 

(1)不当解雇トラブルの労働審判について

10年間勤務し、毎月30万円の月給を支給していた従業員を解雇したところ、解雇した従業員が不当解雇だとして会社への復職と解雇した後の賃金の支払いを求めて、労働審判の手続きを申し立てた事例。弁護士に労働審判の対応を依頼し、従業員が退職する内容で解決した場合。

 

  • 着手金:45万円 + 税
  • 報酬金:45万円 + 税

 

このように、不当解雇トラブルの労働審判は、おおむね着手金45万円+税を目安として費用を設定させていただいています。また、解決時の報酬金も金45万円+税を目安とさせていただいています。

 

(2)残業代請求の労働審判について

退職した従業員から残業代500万円の支払いを求める労働審判を申し立てられ、弁護士に対応を依頼し、250万円の支払いで解決した場合。

 

  • 着手金:45万円+税
  • 報酬金:40万円+税

 

着手金は労働審判による請求額にもよりますが、おおむね45万円+税を目安とさせていただいています。また、解決時の報酬金は、労働者からの請求額からの減額幅が300万円以内の場合は減額分の16%+税(減額幅が300万円を超える場合は18万円+減額分の10%+税)を目安とさせていただいています。

 

(3)パワハラの労働審判について

退職した従業員からパワハラについて慰謝料300万円の支払いを求める労働審判を申し立てられ、弁護士に対応を依頼し、50万円の支払いで解決した場合。

 

  • 着手金:45万円+税
  • 報酬金:40万円+税

 

着手金は労働審判による請求額にもよりますが、おおむね45万円+税を目安とさせていただいています。また、解決時の報酬金は、労働者からの請求額からの減額幅が300万円以内の場合は減額分の16%+税(減額幅が300万円を超える場合は18万円+減額分の10%+税)を目安とさせていただいています。

 

(4)労災トラブルの労働審判について

退職した従業員から労災事故について700万円の支払いを求める労働審判を申し立てられ、弁護士に対応を依頼し、450万円の支払いで解決した場合。

 

  • 着手金:45万円+税
  • 報酬金:40万円+税

 

着手金は労働審判による請求額にもよりますが、おおむね45万円+税を目安とさせていただいています。また、解決時の報酬金は、労働者からの請求額からの減額幅が300万円以内の場合は減額分の16%+税(減額幅が300万円を超える場合は18万円+減額分の10%+税)を目安とさせていただいています。

 

11,労働審判に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所は、多くの企業から、労働審判対応のご依頼をお受けし、企業側の立場に立って解決してきました。最後に、咲くやこの花法律事務所の労働審判対応に関するサポート内容をご紹介致します。

 

▶参考動画:咲くやこの花法律事務所の「労働審判の対応に強い弁護士への法人向け相談サービス」を動画で解説しています!

 

(1)労働審判を起こされた時の企業側対応の相談・依頼

咲くやこの花法律事務所では、企業が、従業員から労働審判を申し立てられた際の対応についてご相談を承っております。

労働審判申立書が会社に届いたら、初回期日までは約1か月程しかなく、その期間で答弁書を作成しなければならず、また、その第1回期日に出廷できる弁護士に依頼する必要があります。

咲くやこの花法律事務所は、労働審判対応に精通した弁護士が、ご相談、ご依頼をお受けいたします。労働審判対応は、時間との勝負ですので、申立書が届いたらできるだけ早く弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

労働問題に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

 

(2)顧問弁護士サービス

労働問題のトラブルは、トラブル後の対応も大切ですが、そもそもトラブルが起こらないように事前に予防することが最も大切です。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスでは、残業代トラブル、不当解雇トラブルを予防し、労務管理の整備を進め、労働問題に強い企業づくりをお手伝いさせていただきます。顧問弁護士サービスをご利用のお客様は普段から予約なしで弁護士にご相談いただくことが可能です。トラブル発生時もすぐに弁護士に相談することにより、問題が小さい段階で解決することができるようになります。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの詳細は以下をご参照ください。

 

 

(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

12,まとめ

この記事では、労働審判について弁護士に依頼した際にかかる費用についてご説明いたしました。

労働審判を弁護士に依頼する場合、一般的には以下の費用が発生することになります。

 

  • 1.相談料
  • 2.着手金
  • 3.報酬金
  • 4.実費

 

労働者側が弁護士に依頼した場合は、相談料や着手金は無料としている法律事務所も多いようです。特に、残業代請求については、相談料や着手金を無料とする法律事務所が多くなっています。

一方、企業側の弁護士費用については、概ね100万円程度となるのが一般的です。ただし、弁護士費用は弁護士を選ぶ際の要素の1つにすぎません。費用だけでなく、弁護士の専門性や弁護士の方針を確認したうえで、依頼する弁護士を決めることが大切です。

 

13,【関連情報】労働審判に関するお役立ち記事一覧

この記事では、「労働審判は弁護士に相談すべき?費用はどのくらい必要?相場などを解説」について、わかりやすく解説してきました。労働審判については、他にも基礎知識など知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ重大なトラブルに発展してしまいます。

以下ではこの記事に関連する労働審判のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

労働審判で会社が受けるダメージとは?会社側に不利?わかりやすく解説

 

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記事作成日:2024年10月29日
記事作成弁護士:西川 暢春

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
    小田 学洋 弁護士
    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
    池内 康裕 弁護士
    池内 康裕(いけうち やすひろ)
    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
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    片山 琢也(かたやま たくや)
    大阪弁護士会/京都大学法学部
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    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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