こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
従業員や退職者から労働審判が申し立てられた場合に、会社はどのようなダメージを受けることになるのでしょうか?また、労働審判の制度は会社側に不利なのでしょうか?
もちろん、労働審判が起こされるとその対応に費用や時間をかけざるを得ないことにはなり、その意味ではダメージと言わざるを得ません。しかし、会社側に不利な制度かというと決してそうではないと筆者は感じます。
通常の労働訴訟とは違う「労働審判ならでは」の特徴をうまく活かしていけば、会社にとって納得のいく解決を目指すことができる制度です。
そのためには、労働審判を起こされた場合の具体的な会社側のダメージや、それを回避・軽減させるための詳しい方法などを正しく知っておく必要があります。
この記事では、労働審判が起こされたことによって会社が受ける影響やデメリットをご説明したうえで、その回避策や対応方法についてもご説明したいと思います。
それでは見ていきましょう。
▶参考:なお、労働審判の制度内容や手続きの流れ、費用についてなど全般的な解説は以下の参考記事をご参照ください。
労働審判は申立書が会社に届いた後およそ3週間で答弁書等を提出したうえで、第1回の期日の準備をしなければならない非常にタイトな手続です。限られた準備期間の中で十分な準備をするためには、裁判所から申立書を受け取ったらできる限り早く、企業側の労働審判対応に精通した弁護士に対応を依頼することが重要です。
労働審判の対応を弁護士に相談すべきかどうかや、弁護士費用についてなどは、以下の参考記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
▶参考記事:労働審判は弁護士に相談すべき?費用はどのくらい必要?相場などを解説
咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしていますので、お困りの際は早めにご相談ください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士への相談については以下をご参照ください。
咲くやこの花法律事務所の労働審判に関する解決実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。
▼【関連動画】西川弁護士が「労働審判を申し立てられた!会社が受けるダメージとは?企業の顧問弁護士が解説」を詳しく解説中!
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,労働審判で会社が受けるダメージとは?
労働審判で会社が受けるダメージには以下のものがあります。
- 金銭面のデメリット(労働審判を申し立てた労働者への支払いや労働審判対応のための弁護士費用の負担)
- 労力面の負担(反論のための書面作成や証拠収集、会社関係者の出席の負担)
- 社内の労務管理に与える影響(労務管理見直しの負担や会社に対する信頼の低下、他の従業員への波及)
労働審判は在職中の従業員ではなく退職者から申し立てられるケースがほとんどであり、現在の事業を進めるうえでは、避けたい「やっかいごと」であることは間違いありません。一方で、紛争を訴訟にまで発展させずに労働審判で解決してしまう機会という側面もあります。
以下では、まず会社が受けるダメージの内容を詳しく見たうえでその解決策や対応についての考え方をご説明したいと思います。
(1)金銭面のデメリット
まず、労働審判を申し立てられたことによる金銭面のダメージを見ていきたいと思います。
1,労働審判を申し立てた労働者への支払い
解雇のトラブルや残業代のトラブルについて労働審判が起こされた場合、会社がそれに対して金銭を支払わなければならないかどうかやその額については、当然ながらケースバイケースということになります。
筆者の経験上も、例えば、解雇のトラブルについて労働審判を申し立てられたケースで、解雇について十分な理由があったことが認められ、金銭支払いなしで労働審判を解決することができた例もあります。また、残業代トラブルについても、管理監督者である旨の主張が認められ、ごくわずかの金銭支払のみで解決できた例があります。
しかし、多くの労働審判の事案では、会社から一定の金銭を支払うことで解決せざるを得ないこともまた事実です。
どのくらいの金額を支払わなければならないかについては、もちろん、ケースバイケースですが、解雇トラブルなど雇用の終了に関するトラブルの労働審判の解決金の額については、令和4年の厚生労働省による調査結果が参考になります。
この調査結果によれば、雇用の終了に関するトラブルの労働審判における解決金の平均額は285万円となっています。
▶参考情報:厚生労働省の調査結果は以下の10頁をご参照ください。
一方、残業代トラブルに関する労働審判については、解決金の額についての調査結果は見当たらないものの、請求額については平均約220万円とする厚生労働省の調査結果があります。
▶参考情報:厚生労働省の調査結果は以下の表19-1残業代請求額(労働審判(調停又は審判)をご参照ください。
2,弁護士費用
労働者への支払いとは別に負担が必要になるのが、弁護士費用です。
会社側弁護士費用はケースバイケースではあるものの、90万円から100万円くらいはかかることが一般的です。なお、会社の主張が認められなかったとしても、従業員側の弁護士費用を会社が負担する必要は通常ありません。
(2)労力面でのダメージ
次に、労力面でのダメージについて見てみましょう。
労働審判は、会社に労働審判の申立書が届いてから約2か月くらいの間に、原則として最大で3回まで裁判所で期日が開かれます。
このうち、最も大変なのは、申立書が会社に届いてから、第1回期日までの準備です。第1回期日までの準備として、会社側の主張を記載した反論書面(答弁書)や会社側の主張を裏付ける証拠の提出が必要になりますが、申立書が会社に届いてから答弁書の提出期限までは、3週間程度しか期間がないことが通常です。
この期間中に素早く、充実した答弁書を作成して提出することが、労働審判で会社側の主張を認めてもらうための重要なポイントです。
答弁書の作成自体は弁護士が行いますが、会社側の担当者も弁護士との打ち合わせや、弁護士の依頼に基づき必要な資料を収集することなど、労力面の負担は大きいのが実情です。
また、少なくとも第1回期日には会社関係者の出席が必要で、期日への出席や、期日当日の対応のための弁護士との打ち合わせにも時間を割かざるを得ません(期日の2回目以降は弁護士に対応を依頼し、会社担当者は出席しないことも通常は可能です)。
このように、申立書が届いてから1か月くらいは、労働審判の対応のための準備に、会社も弁護士も忙殺されることになります。
▶参考:労働審判を起こされた場合に会社側で必要になる対応については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(3)社内の労務管理への影響
さらに、労働審判は、社内の労務管理にも小さくない影響を与えることがあります。以下で見ていきたいと思います。
1,労務管理見直しの負担
労働審判の申立やその結果を踏まえて、今までの会社の労務管理を見直さなければならないといったことが起こります。
例えば、固定残業代制度を採用していたが、労働審判においてその効力が認められなかったような場合は、残業代支払方法の見直しが必要になります。また、自社では管理監督者として扱い、残業代を支払っていなかった管理職について、裁判所で管理監督者にあたらないと判断されたときは、管理職への残業代支払いについて検討する必要が生じます。
さらに、例えば、社内でパワハラがあったとして労働審判が起こされ、労働審判でパワハラが認められたような場合は、改めて自社のパワハラ防止措置の改善が必要になるでしょう。
2,会社に対する信頼の低下
労働審判で会社がした解雇の有効性が否定されたり、残業代の未払いが認められたりした場合、会社のこれまでの労務管理について裁判所から問題を指摘されたということになり、従業員の会社に対する信頼の低下という問題が起こり得ます。
3,他の従業員への波及
特に未払い残業代の支払いを求める労働審判については、労働審判で会社側が未払いについて支払いをしなければならない見込みになると、他の従業員にこれが伝わり、他の従業員による残業代請求に波及する例があります。
2,労働審判における会社側ダメージを回避・軽減させる方法
では、労働審判における会社側のダメージを回避し、または軽減するためにはどのようにすればよいのでしょうか。
以下で見ていきたいと思います。
(1)労働審判の対応に精通した弁護士に依頼する
繰り返しになりますが、限られた期間内で十分な準備をするためには、裁判所から申立書を受け取ったらできる限り早く、企業側の労働審判対応に精通した弁護士に対応を依頼することが重要です。
労働審判は、通常の裁判とは要求される対応スピードが違いますので、普段その取扱いをしていない弁護士が、短期間のうちに十分な対応を行うことは簡単ではありません。
そして、第1回の期日までに、しっかりとした答弁書の作成と証拠提出によって、会社側の主張を十分に裁判官や労働審判員に理解してもらうことが、会社側の主張を認めてもらうために重要になります。
▶参考:労働審判における答弁書の作成については以下でも解説していますのでご参照ください。
また、労働審判ならではの特徴として、例えば固定残業代の制度について会社側で厳密な制度設計ができておらず通常の訴訟になれば固定残業代としての効力を認めてもらえないことが予想されるような場合でも、労働審判における話し合いの場では、固定残業代として認めたうえで話し合いができることが多いといった傾向があります。
このように労働審判では、通常の訴訟とは違う、労働審判ならではの特徴があり、そのような特徴をうまくつかんで対応していくこともケースによっては必要になってきます。
(2)早期解決マインドを持つ
労働審判における会社側のダメージを回避・軽減させるためには、正義感や個人的感情よりも早期の合理的解決を優先するという考え方も必要になってきます。
会社側においてなんらかの支払義務があると考えられる事案については、解決までの期間が長引けば長引くほど、支払額が多額になってしまうことが、労働事件の大きな特徴です。そのため、正義感から細部にこだわってしまったり、個人的な感情にとらわれすぎて、解決の機会を逃してしまうことは、企業にとってよりダメージを大きくすることになりがちです。
合理的な妥協点を探り、早期に解決するというマインドで臨むことが、労働審判における会社側のダメージを最小限に食い止めるためのポイントの1つです。
(3)秘密保持・誹謗中傷禁止を誓約させる
労働審判で会社が何らかの形で支払いを余儀なくされた場合、そのことが他の従業員に伝わると、他の従業員からも同様の労働審判が起こされたり、会社の労務管理について従業員の信頼が失われたりといったことにつながりかねません。
紛争を完全に終わらせるためには、会社から一定の金銭を支払う場合は、それと引き換えに、解決内容や紛争内容についての秘密保持と会社に対し今後誹謗中傷をしないことを誓約させるべきでしょう。
労働審判では統計上約7割の事件が「調停成立」によって終了します。この「調停成立」は要するに労働審判委員会から示される調停案に会社側も従業員側も承諾して紛争を終了させることを意味しますが、その調停条項の中に、秘密保持や誹謗中傷禁止の条項を入れてもらうように要望することが可能です。
ただし、このように秘密保持や誹謗中傷禁止を誓約させることは、紛争を完全に終了させる手段にすぎず、労働審判の過程で見えてきた労務管理の問題点をそのまま放置しても良いということではありません。
秘密保持や誹謗中傷禁止を誓約させることで会社側のダメージを最小限にとどめつつ、労働審判の過程で指摘された会社の労務管理の問題点はしっかりと改善していくことが必要です。
3,労働審判が訴訟に移行するとどうなるのか?
(1)訴訟に移行するのは労働審判のうち10.5パーセント程度
前述の通り、労働審判が申し立てられた事件の約7割の事件が「調停成立」によって解決して終了します。一方、調停がまとまらなかった場合、「審判」という形で労働審判委員会の判断が示されます。
この「審判」に対して、双方ともに異議が出なければ、この「審判」に双方が従うことになり、紛争が解決します(下のグラフでいう「労働審判(異議申立なし)」の部分にあたり、統計上6.5%程度)。
一方、「審判」に対してどちらかが異議を出した場合は、労働審判は訴訟に移行します。労働審判について異議が出るのは、統計上、労働審判事件全体の10.5%程度です。
▶参考:労働審判事件の結果の内訳
・参照元:労働審判制度15周年〜労働審判制度のこれまでの歩み〜
(2)訴訟に移行した場合は労働審判の資料が引き継がれる
訴訟に移行した場合は、労働審判の資料が訴訟に引き継がれます。
そして、1か月半から2か月おきを目途に裁判期日が設けられ、労働者側、会社側が交互に書面での主張を提出する流れとなることが一般的です。そのうえで、争点について、当事者や証人を裁判所に呼んで尋問する人証調べ手続きが行われて、判決に至るというのが基本的な流れになります。
労働審判の平均審理期間は統計上77日程度ですが、訴訟に移行した場合は長期化し、1年以上かかることが通常です。
▶参考情報:訴訟については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
4,労働審判は会社側に不利なのか?
では、労働審判は会社側に不利な制度なのでしょうか?
結論から言うと、労働審判制度自体が、会社にとって不利ということはなく、むしろ、通常の訴訟の方が、会社にとってはデメリットが大きいため、労働審判の中で紛争を解決してしまうことが会社側にとってメリットであることが多いです。
以下で詳しくご説明します。
▶【関連動画】西川弁護士が「労働審判は会社に不利なのか?弁護士がわかりやすく解説」を詳しく解説中!
(1)従業員側には「労働審判」と「訴訟」の2つの選択肢がある
労働事件について裁判所で解決する制度としては、労働審判と訴訟があります。
これらの制度を会社側から利用して申し立てることもできますが、実際には、労働者側から労働審判が申し立てられるか、訴訟が起こされることがほとんどです。つまり、「労働審判」と「訴訟」のどちらを利用するかは、ほとんどの場合、労働者側が選択することになります。
現在、「労働審判」と「労働関係の訴訟」の件数はほぼ同数になっています。そのほか、前述の通り、「労働審判」から「訴訟」に移行する例があります。
(2)訴訟に移行すると会社側がより不利になることが多い
そして、「労働審判」と比べて「訴訟」は会社側にとってより不利な結果となることが多いです。
これを「解雇など雇用終了のトラブル」と「残業代など賃金のトラブル」に分けてご説明すると以下の通りです。
1,解雇など雇用終了のトラブルの場合
解雇など雇用終了のトラブルについて、会社側が勝訴見込みの事案では、労働審判でも訴訟でも結論は大きく変わりません。ただし、解決までの必要対応期間は、訴訟のほうが圧倒的に長くなるので、弁護士費用などは訴訟のほうが高くなることが通常です。
これに対して、会社側敗訴見込みの事案では、労働審判と訴訟で大きく差が出ます。
解雇の事案で会社側が敗訴すると、会社は解雇後に支払っていなかった賃金を解雇の時点にさかのぼって支払うことが命じられます。これをバックペイと言います。
労働審判よりも訴訟の方が結論が出るまでに長期間を要するため、このバックペイの支払必要期間も、訴訟の方が長くなります。令和4年の厚生労働省の調査によると、労働審判で解決した場合に会社側が支払う解決金は平均285万円ですが、訴訟を起こされて和解した場合に会社側が支払う解決金は平均613万円です。
▶参考:バックペイについて、計算方法など詳しくは以下の記事を参考にご覧ください。
以上の点をまとめると以下のようになり、金銭的なダメージは労働審判のほうが少なくて済みます。
▶参考:労働審判と訴訟の金銭的なダメージの比較表
労働審判 | 訴訟 | |
相手に支払う額 | 労働審判で解決した場合の解決金の平均金額は285万円 | 訴訟で和解した場合の解決金の平均金額は613万円 |
弁護士費用 | 短期間の対応で済むため訴訟よりは低額 | 長期間の対応が必要になり高額化しやすい |
2,残業代など賃金のトラブルの場合
残業代など賃金関係のトラブルについても、会社側が勝訴見込みの事案では、労働審判でも訴訟でも結論は大きく変わりません。ただし、解決までの必要対応期間は、訴訟のほうが圧倒的に長くなるので、弁護士費用などは訴訟のほうが高くなることが通常です。
これに対して、会社側敗訴見込みの事案では、労働審判と訴訟で大きく差が出ます。
訴訟では残業代など賃金関係のトラブルについては、裁判所で残業代等の賃金不払いについての制裁として、本来支払うべき額と同額までの範囲の「付加金」の支払を命じる制度が設けられています。一方、労働審判ではこの「付加金」の制度がありません。そのため、訴訟になると、「付加金」の支払いが命じられ、最大で倍額まで支払が膨らむ危険を負うことになります。
さらに、労働審判と訴訟のどちらでも、労働者側は「遅延損害金」の請求をすることができますが、訴訟の場合は、解決までの期間が長くなるため、遅延損害金もその分高額になります。
以上の点をまとめると以下のようになり、金銭的なダメージは労働審判のほうが少なくて済みます。
▶参考:労働審判と訴訟の金銭的なダメージの比較表
労働審判 | 訴訟 | |
相手に支払う額 | 付加金はつかない。 遅延損害金についても遅延期間が短い段階で解決できるため高額になりにくい。 |
付加金が付くことで最大で倍額まで膨らむ危険がある。遅延損害金についても遅延期間が長くなるため高額化する傾向になる。 |
弁護士費用 | 短期間の対応で済むため訴訟よりは低額 | 長期間の対応が必要になり高額化しやすい |
(3)労働審判が選択されたことはむしろチャンスととらえるべき
以上のことから、筆者としては、解雇のトラブルや残業代のトラブルで労働審判が申し立てられたことは、むしろチャンスととらえるべきだと考えています。
会社としては、どうせ労働審判か訴訟に対応しなければならない状況であったと思われるところ、訴訟を選択されるよりは労働審判を選択されたほうがずいぶん会社のダメージが小さくて済むからです。労働審判が選択されたことを前向きにとらえ、訴訟に移行させないで、労働審判の中で解決してしまうことを目指すべきケースがほとんどです。
5,傍聴やマスコミによる報道について
労働審判を申し立てられた場合にマスコミ報道を心配される方もおられます。
しかし、労働審判は、非公開の手続で行われ、原則として傍聴も認められません。労働者側が記者会見をするなどの特殊なケースを除いて、マスコミ報道されることはないでしょう。
これに対して、訴訟を起こされた場合は、誰でも傍聴ができます。この点からも、労働審判が申し立てられた場合は、訴訟に移行させずに労働審判の中で解決してしまう利点は大きいといえるでしょう。
6,【補足】パワハラの労働審判を起こされた場合の会社のダメージ
補足として、パワハラの労働審判を起こされた場合の会社のダメージについてもご説明したいと思います。
▶参考:パワハラの定義や種類、訴えられた際の対応などについて詳しくは、以下の参考記事で解説していますのでご覧ください。
(1)パワハラによる精神疾患の訴えがある場合は慰謝料額が高額化する傾向
パワハラの労働審判が起こされた場合に、まず気になるのは、会社が支払いをしなければならないのかどうかという点だと思います。
もし、労働審判でパワハラが認められた場合でも、パワハラの慰謝料は、パワハラの内容や被害の程度によって大きく異なります。
通常は30万円~100万円くらいになることが多いですが、被害者がパワハラの結果、精神疾患になって休業が必要になったり、自殺してしまったりというケースでは、賠償額が非常に高額になります。
▶参考:パワハラの慰謝料については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)調査未了の場合は調査が必要になる
事業主は、職場におけるパワハラ被害の申出があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認することが義務づけられています(厚生労働省パワハラ防止指針)。
そのため、労働審判でパワハラの主張がされた場合に、まだ社内における事実関係の調査が行われていないときは、事業主は事実関係の調査を行うことが必要になります。
この点は労働審判の答弁書を作成するためにも必要なことです。また、事実関係の調査の結果を踏まえ、社内でのパワハラ防止措置の内容を見直すことも必要になります。
▶参考:厚生労働省のパワハラ防止指針や、社内においてとるべきパワハラ防止の対策については以下をご参照ください。
・厚生労働省のパワハラ防止指針「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)[PDF:199KB]」
(3)労働審判とは別に労災申請がされることもある
労働審判とは別に、従業員からパワハラにより精神疾患にり患したとして、労災の申請がされることもあり、その場合は、労災申請への対応が必要になります。
▶参考:従業員から労災申請があった場合の会社側の対応については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
7,咲くやこの花法律事務所の労働審判に関するサポート内容
咲くやこの花法律事務所でも、年間を通して多くの労働審判に関する会社側のご相談をいただいており、労働審判制度の経験豊富な弁護士がスピーディーに対応しております。
咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容は以下の通りです。
(1)労働審判に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、労働審判を申し立てられてお困りの企業様から、常時ご相談をお受けしています。
咲くやこの花法律事務所では労働審判について経験豊富な弁護士がそろっており、ご相談の中でお客様にとってベストな解決策を明示し、ご提案します。
咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート費用
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
(2)弁護士による労働審判対応
咲くやこの花法律事務所では、ご相談後に労働審判の対応のご依頼を受け、答弁書の作成、裁判所への出頭から事案の最終解決までを弁護士が行っております。労働審判について経験豊富な弁護士による対応で、迅速かつ有利に労働審判のトラブルを解決します。
労働審判対応は咲くやこの花法律事務所においても最も重点をおいて取り組んでいる分野です。企業側弁護士としての労働審判での力量や対応能力には自信をもっており、全国の企業から咲くやこの花法律事務所に多くのご相談をいただいております。ぜひ、早めにご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート費用
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
●弁護士による労働審判対応着手金:45万円+税程度~
(3)顧問弁護士サービス
咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルを日ごろから弁護士に相談するための顧問弁護士サービスを事業者向けに提供して、多くの事業者をサポートしてきました。顧問弁護士サービスをご利用いただくことで、問題が小さいうちから気軽に弁護士に相談することができ、問題の適切かつ迅速な解決につながります。
また、顧問弁護士サービスを利用することで、日ごろから労務管理の改善と予防法務の取り組みを継続的に進め、トラブルに強い会社をつくることができます。咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの具体的な内容については以下をご参照ください。
8,咲くやこの花法律事務所の労働審判に関する解決事例
咲くやこの花法律事務所の労働審判に関する解決実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。
・試用期間満了後に本採用せずに解雇した従業員から復職を求める労働審判を起こされたが退職による解決をした事例
・雇止め無効を主張する契約社員から起こされた復職を求める労働審判に対応し、復職を認めない内容での和解を成立させた事例
・従業員に対する退職勧奨のトラブルで労働審判を起こされたが、会社側の支払いなしで解決した事例
・退職した従業員による残業代未払い請求のケースで、支払金額を請求額の半額程度に減額に成功した事例
9,まとめ
この記事では、労働審判で会社が受けるダメージとして、金銭面のデメリット、労力面でのダメージ、社内の労務管理への影響の3つにわけてご説明しました。
そのうえで、労働審判における会社側ダメージを回避・軽減させる方法についてもご紹介しています。労働審判は、訴訟に比べれば、決して会社側に不利な制度というわけではなく、むしろ労働審判が選択されたことをチャンスととらえて労働審判の中で解決していくべきであるという筆者の考え方をご説明させていただきました。
労働審判では、通常の訴訟とは違った対応が必要になってきますし、その点をうまくとらえて会社側の主張に活かしていくことで、会社側も納得できる解決を得やすくなります。労働審判を申し立てられたときは、そのダメージを最小限にとどめるためにも、直ちに労働審判対応に精通した弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
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記事更新日:2024年11月6日
記事作成弁護士:西川 暢春