こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
パワハラについて以下のような悩みを抱えていませんか?
- どのような行為がパワハラにあたるのかわからない
- パワハラの訴えがあったが、どのように対応するか悩んでいる
- 加害者に対してどのような処分をするべきか悩んでいる
令和元年6月に労働施策総合推進法が改正され、企業は、ハラスメント相談窓口の設置等のパワハラ防止措置を講ずることが義務になりました。パワハラとは、パワーハラスメントの略称で、職場において行われる抵抗や拒絶ができない関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されるような言動のことをいいます。
パワハラを防止するための措置をとらなかったり、調査を怠ったり、適切な対応をしなかった場合、会社の責任を問われ、被害者から損害賠償を請求されることになりかねません。
パワハラをめぐって裁判になり、企業が多額の金銭の支払いを命じられた事例として、以下の例があります。
判例1:名古屋地方裁判所判決平成26年1月15日
会社の代表取締役から、「バカ野郎」「てめぇ」等の罵倒、殴る・蹴る等の暴行、退職強要等を受けて従業員が自殺するに至ったことについて、会社の代表取締役によるパワハラを認定し、加害者及び会社に対して合計約5400万円の支払いを命じた事例
判例2:大阪高等裁判所判決平成31年1月31日
上司から「お前ほんまにいらんから帰れ。迷惑なんじゃ。」等の暴言や、降格的な配置転換、始末書の強要等を受けて、従業員がうつ病を発症し、退職を余儀なくされたことについて、上司によるパワハラを認定し、会社に対して合計約1117万円の支払いを命じた事例
近年では、一企業のパワハラ問題がニュース等で大きく取り上げられることも増えてきました。企業経営においてコンプライアンスが強く求められていることもあり、自社のパワハラ問題が世に出てしまえば、社会的な信用を失うことにもつながります。その点でも、パワハラへの取り組みは一層重要になっています。このようなリスクを避けるために、パワハラについての法律上のルールを理解し、企業として対策に取り組む必要があります。
今回の記事では、パワハラのまとめ記事として、パワハラの定義や種類、判断基準、パワハラが発生した時の対応手順、防止対策など、全般的にわかりやすく説明します。パワハラに関する法律上のルールは、企業経営において必ず知っておくべき知識です。ぜひこの記事を最後まで読んで、企業経営者、人事担当者として不可欠なパワハラの知識を身につけていただければと思います。
パワハラトラブルは早期に弁護士に相談して正しい対応を確認することが、もめない解決のポイントです。咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場でパワハラトラブルについてのご相談をお受けしています。お困りの際はご相談ください。パワハラについて弁護士に解決を依頼するメリットは以下の記事で解説していますのでご参照ください。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
- 1,厚生労働省のデータでは件数は増加傾向
- 2,パワハラとは?定義を確認
- 3,パワハラの6つの種類
- 4,パワハラ防止法とは?
- 5,パワハラに関する法律
- 6,パワハラとモラハラの違い
- 7,パワハラの基準
- 8,パワハラになり得る言ってはいけない言葉の例
- 9,パワハラの事例
- 10,職場のパワハラをチェック
- 11,会議での発言がパワハラとなる場合
- 12,パワハラの相談を受けた時の会社の対応
- 13,パワハラ加害者に対する処分
- 14,パワハラの防止対策として企業が取り組むべき内容
- 15,パワハラの慰謝料の相場
- 16,パワハラの証拠
- 17,パワハラと労災認定の関係
- 18,従業員から会社都合退職の申し出があった場合の対応
- 19,パワハラを訴える場合の手続きや時効、デメリット
- 20,パワハラの相談窓口まとめ
- 21,パワハラをする上司を生まないための対策
- 22,パワハラで訴えられたら?
- 23,パワハラトラブルは弁護士への相談がおすすめ!
- 24,パワハラに関して弁護士に相談したい方はこちら(法人向け)
- 25,咲くやこの花法律事務所の解決実績
1,厚生労働省のデータでは件数は増加傾向
厚生労働省が公表している令和3年度の都道府県労働局への労働相談件数のうち、「職場のいじめ・いやがらせ」に関する相談は「86,034件」にも上ります。
厚生労働省が公表しているデータについては、以下をご参照ください。
平成24年度の相談件数は「51,670件」だったので、約10年で「35,000件」近く増加していることになります。「職場のいじめ・いやがらせ」についての相談件数は、年々増加し続けており、労働局へ寄せられる相談の中で、10年連続でトップとなっています。それだけ、社内で発生するリスクが高い問題であることを示しています。
パワハラ増加の原因には以下のようなものがあると考えられます。
- パワハラ問題が広く認知されるようになったこと
- 働き方の変化
- 価値観の多様化
- 社内のコミュニケーション不足
- ハラスメントに関する管理職の理解不足
2,パワハラとは?定義を確認
パワハラとは、パワーハラスメントの略称で、職場において行われる抵抗や拒絶ができない関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されるような言動のことをいいます。暴力のほか、侮辱的・脅迫的な暴言や退職を強要するような発言、不合理に仕事を取り上げるといった行為が典型例です。
法律上、次の三要素をすべて満たすものがパワハラと定義されています(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。
- (1)職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
- (2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
- (3)労働者の就業環境が害されるような言動であること
この3つの要素について詳しくみていきましょう。
(1)優越的な関係を背景とした言動
「優越的な関係」とは、業務を行うにあたって、抵抗や拒絶をすることができない可能性が高い関係のことです。
パワハラといえば、上司から部下に対して行われるもの、というイメージを持っている方が多いかもしれませんが、上司と部下の間だけに限りません。同僚または部下が集団で行うものや、業務に必要な専門的な知識を持つ同僚または部下からの行為等、同僚同士や部下から上司に対して行われる行為も、優越的な関係にあてはまり、パワハラに該当する可能性があります。
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは、以下のようなものを指します。
- 業務上明らかに必要性のない言動
- 業務の目的を大きくはずれた言動
- 業務を行うための手段として適切でない言動
- 行為の回数や行為者の人数、その手段や状況が社会一般の常識からして許される範囲を超えた言動
(3)労働者の就業環境が害されるような言動
「就業環境が害されるような言動」とは、その言動によって、従業員が身体的または精神的に苦痛を感じて、職場環境が不快なものになり、仕事をする上で見過ごすことができない程度の支障が生じるような言動のことをいいます。
これは、言動を受けた本人が不快に感じたかどうか、ではなく、「社会一般の労働者が同じ状況で同じ言動を受けた時に就業環境が害されたと感じるかどうか」を基準に判断されます。
パワハラの定義については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
3,パワハラの6つの種類
厚生労働省は、代表的なパワハラに該当する言動を以下の6種類に分類しています。
- (1)身体的な攻撃
- (2)精神的な攻撃
- (3)人間関係からの切り離し
- (4)過大な要求
- (5)過小な要求
- (6)個の侵害
それぞれのパワハラの種類について説明します。
(1)身体的な攻撃
身体的な攻撃とは、暴行や傷害のことです。
身体的な攻撃の例
- 殴る、蹴る、たたく、小突く
- 胸ぐらや襟首、腕をつかむ
- 物を投げつける
殴る・蹴る・たたく等の直接的な行為だけでなく、物を投げつける等の行為も身体的な攻撃にあたります。腕をつかんで引っ張るといった比較的程度が軽い行為であっても、正当な業務指示とはいえない暴行行為であり違法と判断された事例があります。(大阪高等裁判所判決 平成15年3月27日 JR西日本吹田工場事件)
(2)精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、ひどい暴言や侮辱、脅迫や名誉棄損等のことをいい、言葉や威圧的な態度で、相手を傷つけたり、精神的な苦痛を与えたりする言動のことです。
精神的な攻撃の例
- 「無能」「給料泥棒」「病気なんじゃないか」等の人格を否定するような言動
- 「クビにする」等の職を失わせることをほのめかす言動
- 他の従業員もいる人前で大きな声で威圧的な叱責を繰り返す
- 能力を否定したり罵倒するような内容のメールを、本人だけでなく他の従業員も見ることができる形で送信する
- 必要以上に長時間にわたって厳しい叱責を繰り返す
(3)人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しとは、職場内で特定の従業員を無視したり、仲間外しにしたり、別室等に隔離して孤立させるような行為のことです。
人間関係からの切り離しの例
- 他の社員との接触や協力を禁止する
- 陰口を言ったり、悪い噂を流したりして特定の従業員を孤立させる
- 長期間にわたって、一人だけ別室で仕事をさせたり、自宅研修をさせたりする
(4)過大な要求
過大な要求とは、従業員の能力に対して明らかにレベルの高い業務を担当させたり、業務上の必要のない作業をさせたり、仕事の妨害をしたりすることです。
過大な要求の例
- 達成不可能なノルマを設定し、達成できなければ厳しく叱責する
- 業務とは関係のない私的な雑用をさせる
- 一人では処理できない量の仕事を押し付ける
- 連日、徹夜仕事を強要する
- 上司が誤った指示をしたのに始末書を書かせる
(5)過小な要求
過小な要求とは、業務上の合理性がないのに、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないことです。
過小な要求の例
- 管理職の従業員を退職させるために、誰でもできるような業務を行わせる
- 他の従業員に比べて著しく少ない件数の仕事しか与えない
- 専門職として採用した従業員を、専門性を必要としない部署へ異動させる
(6)個の侵害
個の侵害とは、私的なことに過度に立ち入ったり、プライベートに干渉したりすることです。
個の侵害の例
- 不在の時に机の上やかばんの中を勝手に物色する
- スマホを勝手にのぞきみる
- 家族や恋人のことをしつこく聞く
- 性的指向や性自認、病歴、不妊治療等の個人情報を他の従業員に勝手にばく露する
あくまでもパワハラの代表的な言動として6種類があげられているだけなので、この6種類にあてはまらない言動はパワハラにならない、ということではありません。
パワハラの種類については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
4,パワハラ防止法とは?
パワハラに関する重要な法律として「パワハラ防止法」があります。このパワハラ防止法により、大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月からパワハラ防止措置が義務化されました。
(1)法律の概要
正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(略称:労働施策総合推進法)」です。令和元年6月に改正され、新たに「パワハラの定義」や「パワハラ防止措置の義務化」等の条文が設けられたことから、「パワハラ防止法」とも呼ばれています。
(2)パワハラ防止法で義務化された3つの措置
パワハラ防止法では、企業に対し、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置」を行うことを義務付けました。
これに基づいて、厚生労働省が公表したガイドライン(パワハラ指針)では、以下の3つの措置を義務付けています。
- (1)パワハラについての方針の明確化、労働者への周知・啓発
- (2)相談窓口の設置と相談体制の整備
- (3)相談に対する迅速かつ適切な対応
3つの措置の具体的な内容は、「14,パワハラの防止対策として企業が取り組むべき内容」で解説していますのであわせてご覧ください。
(3)罰則の規定
パワハラ防止法には、違反した場合の罰則の規定はありません。
しかし、厚生労働大臣が必要があると認めた場合は、助言、指導または勧告の対象になり(労働施策総合推進法第33条第1項)、勧告に従わなかった場合は企業名が公表される可能性があります(労働施策総合推進法第33条第2項)。
(4)厚生労働省のガイドラインが重要
厚生労働省は、パワハラ防止法で義務付けられた措置を適切かつ有効に実施するためのガイドライン(正確には「指針」)を公表しています。このガイドラインは、パワハラ防止措置について規定した指針であることから、「パワハラ指針」とも呼ばれています。
この指針では、以下のような内容が定められています。
- パワハラを定義する3つの要素についての具体的な内容
- パワハラの種類とパワハラに該当する/該当しない行為の具体例
- 会社が行うべき措置の具体的な内容や注意点
実際の取り組みにあたっては、指針に沿って対応することが重要です。
パワハラ指針については以下をご参照ください。
また、パワハラ防止法については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
5,パワハラに関する法律
「4,パワハラ防止法とは?」でパワハラ防止法についてご説明しましたが、パワハラに関する法律はパワハラ防止法だけではありません。
パワハラに関連する法律には以下のようなものがあります。
(1)安全配慮義務違反
企業には、「従業員が安全かつ健康に働くことができるように必要な配慮をする義務」があります。これを安全配慮義務といいます(労働契約法第5条、労働安全衛生法第3条1項)。
企業には、職場のパワハラを防止するための措置をとる義務があります。パワハラの防止措置が不十分であった場合や、パワハラに対して適切な対応をしなかった場合等は、安全配慮義務違反を理由に、従業員から損害賠償や慰謝料を請求されるリスクがあります。
安全配慮義務違反については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)使用者責任
従業員が他人に損害を発生させた場合、従業員本人だけでなく、会社も、その従業員と連帯して、被害者に対して損害賠償責任を負います。これを使用者責任といいます(民法第715条)。
従業員が、パワハラをして、部下に怪我をさせたり、精神疾患を発症させたりした場合、従業員本人だけでなく、会社も、被害者に対する賠償責任を負うことになります。
使用者責任については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(3)不法行為責任
不法行為責任とは、「故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という民法の規定のことです(民法第709条)。
パワハラによって、相手の身体や、名誉感情、人格権などを侵害した場合、加害者は、被害者に生じた損害の賠償をする責任があります。
(4)労働基準法
労働基準法にパワハラに関する規定があるわけではありませんが、以下のような行為を伴うパワハラは労働基準法違反となる可能性があります。
- 休憩や休日を与えない
- 残業代の未払い
- 従業員への違約金の支払いの強制
- 有給休暇を与えない
- 法定の残業上限を超えた労働
▶参考情報:労働基準法違反については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(5)刑法上の責任
パワハラの内容によっては、刑法上の責任が問われる場合もあります。
例えば、殴ったり、足で蹴ったりする等の暴行をともなうパワハラは、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)にあたる可能性があります。相手を公然と誹謗中傷したり、侮蔑的な言葉を使ってけなしたりした場合は、名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)にあたる可能性があります。相手に危害を加えようとする言動をした場合は、脅迫罪(刑法第222条)にあたる可能性があります。
もし、起訴されて裁判になり、有罪判決を受けると、前科がつくことになります。
6,パワハラとモラハラの違い
パワハラとは異なり、モラハラには法律上の定義はありません。
パワハラは、職場で発生するハラスメントで、職場での優越的な関係が背景にあるものをいいます。パワハラは、言葉や態度等での嫌がらせに限らず、殴る・蹴るといった身体的な攻撃も含まれます。
それに対し、モラハラは道徳や倫理に反した嫌がらせ全般のことをいいます。モラハラは、言葉や態度等によって行われる嫌がらせで、身体的な攻撃は含まれません。また、職場に限らず、夫婦間や親子間等の家庭内でも発生するのがモラハラです。
(1)モラハラとは?
モラハラとは、道徳や倫理に反したいじめや嫌がらせのことです。
厚生労働省によるとモラハラとは以下のようなもののことをいいます。
▶参考情報:モラハラとは?
「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。パワハラと同様に、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。」
(2)職場におけるモラハラの例
職場で行われるモラハラには以下のようなものがあります。
- 無視をする
- 陰口を言ったり、能力や人格を否定したりする
- 人前で馬鹿にする
- 根拠のない噂を広める
- 特定の従業員と接する時だけあからさまに態度を変える(にらみつける、不機嫌な態度をとる等)
- 1人だけ飲み会や社内のイベントに呼ばない
- 雑用を押し付ける
- 仕事に必要な情報を伝えない
モラハラは法律で防止措置が義務付けられているわけではないため、パワハラやセクハラ、マタハラについては対策をしているけれど、モラハラについては何も対策していないという企業も多いのではないかと思います。
しかし、モラハラは、社内で発生しやすいハラスメントでもあります。
放置すると、職場の人間関係が悪化し、従業員の士気の低下や離職率の増加等をまねくことになりますし、場合によっては、被害者から損害賠償等を請求される可能性があります。
パワハラやセクハラ、マタハラといったハラスメントに比べると見落とされがちなモラハラですが、企業として対策に取り組むべき問題であるといえます。
7,パワハラの基準
どこまでが指導で、どこからがパワハラなのか、線引きがわからずお困りの方も多いのではないでしょうか。
ここからは、パワハラの判断基準について解説します。
(1)3つの判断基準
パワハラの判断基準は複雑ですが、簡易な判断基準として、まずは以下の3つの視点をおさえておきましょう。
- 判断基準1:従業員の指導を目的とする言動であるか
- 判断基準2:言動の内容が指導のために合理的なものであるか
- 判断基準3:言動に人格攻撃が含まれていないか
判断基準1:
従業員の指導を目的とする言動であるか
言動が、指導目的ではなく嫌悪の感情からくるものであったり、退職に追い込む目的で行われたものである場合は、パワハラに該当する可能性があります。
指導目的ではないと判断される言動の例
- 「辞めてしまえ」等の退職を強要する発言
- 「死んでしまえ」といった発言
- 「新人以下」等の侮辱的な発言
判断基準2:
言動の内容が指導のために合理的なものであるか
たとえ指導を目的とした発言であっても、行き過ぎた言動はパワハラにあたります。
必要以上に長時間にわたって叱責をしたり、大声を出したり、威圧的な態度での指導は、パワハラに該当する可能性があります。
指導方法として適切ではないと判断される言動の例
- 他の従業員がいる場所で大声で厳しい叱責を繰り返す
- 達成不可能なノルマを課す
- 具体的な指示や改善点を伝えることなく、結果に対してのみ叱責を続ける
判断基準3:
言動に人格攻撃が含まれていないか
容姿や国籍、信仰、病気等の業務とは無関係のパーソナルな部分を否定・攻撃する言動はパワハラにあたります。
より正確な判断基準は以下の記事や動画で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶【関連動画】その発言パワハラかも?判断基準を弁護士が詳しく解説中!
(2)パワハラのグレーゾーン
1,パワハラのグレーゾーン問題とは?
実際に職場で発生するパワハラが疑われる事案には、パワハラかどうかの判断が難しいものが数多くあります。
例えば以下のようなケースです。
- 指導・注意のために人前で叱責をする
- 問題行動がある部下に対して強い口調で叱責をする
- 指導を目的とする言動だが不適切な言葉を使っている
パワハラと指導の境界線は、「業務上必要かつ適正な範囲であるかどうか」です。
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラにはなりません。しかし、どこまでが「業務上必要かつ適正な範囲か」は人によってとらえ方が違います。このような、指導をする側と指導を受ける側の認識の違いから、パワハラのグレーゾーン問題が発生します。
2,「業務上必要かつ適正な範囲」の判断において考慮するべき要素
厚生労働省は、パワハラ指針において、「業務上必要かつ適正な範囲かどうか」を判断する際に考慮するべきポイントとして以下の項目をあげています。
- 言動の目的
- 言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む言動が行われた経緯や状況
- 業種・業態
- 業務の内容・性質
- 言動の態様・頻度・継続性
- 労働者の属性や心身の状況
- 行為者との関係性
実際の行為がパワハラにあたるかどうかは、上記のような要素を考慮しつつ、個別に判断していくしかありません。
グレーゾーンについて判断した裁判例を一つご紹介します。
高松高等裁判所判決 平成21年4月23日
不正経理の解消を指示したにも関わらず、1年以上是正しなかったこと等に対して、「会社を辞めれば済むと思っているのかもしれないが、辞めても楽にならない」等と叱責したことについて、パワハラにあたるかどうかが問題となった事案です。
裁判所は、指示をしてから1年以上経過しても不正経理が解消されていなかったことについて、ある程度厳しい指導をすることは正当な業務の範囲内であるとして、パワハラにはあたらないと判断しました。
ただし、たとえ部下に問題行動があったとしても、暴力や人格を否定する言葉や侮辱的な言葉を用いた場合は、パワハラに該当する可能性が高くなるので注意が必要です。
3,指導をする際の注意点
「指導のつもりがパワハラになってしまった」という事態を避けるために、正しい指導方法を理解しておく必要があります。指導する時は以下のような点に注意しましょう。
- 必要以上に長時間にわたって指導・叱責をすることは避ける
- 1つのミスに対して執拗に繰り返し叱責することは避ける
- 人格を否定する言葉や侮辱的な言葉は使わない
- 怒鳴りつける、にらみつける、机をたたく等の威圧的な行為をしない
- 指導・注意をする時はなぜ改善が必要なのか目的を説明する
- どうするべきなのかを具体的に説明する
8,パワハラになり得る言ってはいけない言葉の例
職場におけるパワハラの中でも、言葉によるパワハラは特に多い事案となっています。ここからは、実際にどのような言葉がパワハラに該当する可能性があるのかをご紹介します。
(1)パワハラにあたる言葉
パワハラになりうる言葉には以下のようなものがあります。
- 「クビにするぞ」
- 「辞めろ、辞表を出せ」
- 「給料泥棒」
- 「無能」
- 「新入社員以下」
- 「あんたなんかいなくたっていい」
- 「いるだけでみんなが迷惑している」
- 「頭おかしい」
このような、クビをほのめかしたり、金銭の支払いを強要するような脅迫的な発言、性別や国籍を揶揄するような差別的な発言、他者を馬鹿にしたり見下すような侮辱的な発言や人格を否定する発言はパワハラになる可能性が高い言葉です。
ただし、先に述べたような発言をすると、ただちにパワハラと判断されるわけではありません。
実際の発言がパワハラかどうかは、言動の目的や言動を受けた側の問題行動の有無、言動が行われた経緯等の様々な要素を考慮して判断されることになります。単に言葉そのものだけでは、パワハラに該当するかどうかを判断することはできません。
とはいえ、指導の際に、暴言や侮辱的な言葉を使うとパワハラに該当する可能性は高くなります。指導方法としても適切であるとは言えません。指導の際は、暴言や侮辱的な言葉を使うのは避け、落ち着いた態度で指導することが望ましいでしょう。
パワハラにあたる言葉については、より詳しくは以下の記事や動画で解説していますのでご参照ください。
▶参考動画:パワハラにあたる言葉とは?裁判例をもとに弁護士が解説【前編】
9,パワハラの事例
実際の裁判でどのような行為がパワハラと判断されているのか、パワハラの裁判例をご紹介します。
(1)「やる気がないなら会社を辞めるべき」等と記載したメールを送付したことについて不法行為にあたると判断された事例
1,東京高等裁判所判決 平成17年4月20日
この事案では、上司が「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SC(サービスセンター)にとっても、会社にとっても損失そのものです。」と記載したメールを、本人だけでなく、同じ職場の同僚十数人も宛先に含めて送信しました。
裁判所は、上司のメールの目的は従業員に対する𠮟咤激励であるものの、文章の内容や表現方法は指導の表現として許容される限度を超えるとして、不法行為にあたると判断しました。
(2)殴る、顔面を平手でたたく等の暴力行為に対してパワハラを認定した事例
1,福岡地方裁判所判決 平成27年11月11日
この事案では、神社で働く従業員が、上司から、継続的に、みぞおちを殴る、顔面を平手でたたかれるなどの暴力行為や、「いつかお前を本気でぶん殴りそうな気がする」などの暴言を受けていました。
裁判所は、これらの暴言・暴力について、指導方法として許容される範囲を著しく逸脱するとして、パワハラを認定し、100万円の賠償を命じました。
(3)担当業務から外して仕事を与えない行為について権利の濫用であると判断した事例
1,千葉がんセンター事件(東京高等裁判所判決 平成26年5月21日)
この事案では、がんセンターに勤める麻酔科医が、所属部の問題点を、上司を通さず上申したことをきっかけに、毎月17件程あった手術の担当を一切割り当てられなくなり、退職を余儀なくされました。
裁判所は、この仕事を与えない行為について、上司を通さずに上申したことに対する報復目的であり、麻酔科医に不利益を及ぼす目的で行われたものであるとして、違法行為に該当すると判断しました。
ここでは3つの事例をあげましたが、パワハラについての事例は、以下の記事でより詳しく解説していますのでご参照ください。
また、厚生労働省のホームページでもパワハラに関する裁判例が紹介されていますので、あわせてご覧ください。
10,職場のパワハラをチェック
筆者が代表をつとめる咲くやこの花法律事務所では、「パワハラを受けていないか」「パワハラをしていないか」「社内でパワハラが発生していないか」をチェックすることができるチェック項目を公開しています。
以下の記事からチェックシートをダウンロードしていただくことができますので、ぜひご活用ください。
11,会議での発言がパワハラとなる場合
パワハラが発生しやすい職場のシチュエーションの1つに「会議」があります。会議の場で行われるパワハラの例には以下のようなものがあります。
- 他の従業員がいる前で罵倒や侮辱をしたり、厳しい叱責を繰り返す
- 会議の出席者が多数で1人の従業員を吊し上げる
- 特定の従業員を会議や打ち合わせに参加させない
会議での叱責がすべてパワハラになるわけではありませんが、会議のような他の従業員もいる場で、長時間にわたって厳しく叱責をしたり、怒鳴りつけたりするとパワハラにあたる可能性が高くなります。
指導が必要な場合は、短時間で切り上げる、大声を出したり威圧的な態度をとることは避ける、会議が終わってから他の従業員がいない場所で行う等の配慮が必要です。
会議でのパワハラが問題となった裁判例をご紹介します。
裁判例:
公立病院の職員が上司のパワハラによって精神疾患を発症したことについて、約207万円の損害賠償が命じられた事例(東京地方裁判所立川支部判決 令和2年7月1日)
この事例では、以下のようなパワハラが行われていました。
- 会議の場で、ペンで机をたたく等の動作を交えて、「嘘つき」「偉そうに言っているからむかつく」「なめてるのお前」等の厳しい叱責や罵倒をする
- 他の職員が多数在席する事務室内で、人格否定や侮辱的な発言を用いて罵倒する
- 1時間弱にわたって、「精神障害者」「人として恥ずかしくないのか」「言い訳と嘘の塊」等と一方的に責め続ける
この裁判例の全文は下記からご覧いただけます。
12,パワハラの相談を受けた時の会社の対応
次に、従業員からパワハラ被害の相談を受けた時の会社の対応方法についてご説明します。
(1)会社がやるべき4つのこと
従業員からパワハラの相談があった時に会社がやるべきことは以下の4つです。
- 1.事実関係の調査
- 2.パワハラがあったと認められる場合は被害者のフォロー
- 3.パワハラがあったと認められる場合は加害者に対する処分等
- 4.再発防止措置
従業員からパワハラの訴えがあった場合、企業には事実確認の調査を行い、適切な対応をする義務があります。調査を行わず放置したり、調査の結果パワハラがあったことを確認したにも関わらず、適切な対応をしなかったりした場合、損害賠償請求の対象になります。
(2)パワハラの調査手順
実際にパワハラの相談があった場合にどのような流れで調査すればよいのか、具体的な手順をご説明します。
手順1:
調査担当者を決める
まずはパワハラについての調査を行う担当者を決めます。中小企業等の人数が少ない会社では1名で調査を担当することも多いですが、調査の客観性を担保するために複数名で担当することが望ましいです。
手順2:
事実確認の調査を行う
事実関係の調査は以下の順番で行います。
- 1.被害者からのヒアリング
- 2.録音やメールの履歴等の証拠を確認する
- 3.被害者の承諾を得たうえで加害者からのヒアリングを行う
- 4.目撃者や関係者からのヒアリングを行う
- 5.双方の言い分が食い違う場合は、再度ヒアリングを行う
手順3:
パワハラの有無の判断
調査が終了したら、被害者が主張する行為があったのかどうか、その行為がパワハラにあたるかどうかを判断します。
手順4:
調査報告書を作成する
調査報告書には以下のような内容を記載します。
- 調査を実施した調査担当者や調査委員会のメンバーやその独立性について
- 調査を実施した期間と具体的な調査方法
- 相談者からのパワハラの被害申告の経緯とその内容
- パワハラの有無に関する行為者の主張内容
- 調査により判明した事実関係
- パワハラの有無に関する事実認定と結論
- パワハラ防止のための改善点
パワハラの調査方法については以下の参考記事や動画で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶参考動画:西川弁護士が「ハラスメント調査のトラブル事例!重要な注意点を解説【前編】」について詳しく解説中!
(3)調査後の対応手順
調査後の対応手順は以下の通りです。
手順1:
被害者のフォロー
パワハラがあったことが確認できた場合は、被害者に対する配慮の措置を行う必要があります。
被害者に対して会社ができる配慮としては、以下のようなものがあります。
- 被害者と加害者を引き離すための部署異動
- 加害者への注意や指導
- 被害者のメンタルヘルスの不調への相談対応
- 被害者が休業を余儀なくされた場合、被害者が希望するときは、復職に向けた支援 等
手順2:
加害者に対する処分等
パワハラがあったことが確認できた場合は、就業規則等の社内のルールに基づいて加害者へ必要な処分を行う必要があります。
手順3:
再発防止対策を行う
相談に対応して終了、ではなく、パワハラが再発することを防ぐための取り組みも重要です。
再発防止対策の例
- パワハラをしてはいけないこと、パワハラをした場合は厳正に処分することを改めて従業員に周知する
- パワハラに関する研修や講習を行う
- 管理職向けにパワハラ事案が発生したことを周知し注意をうながす
- 加害者がパワハラを繰り返すことがないよう、研修や定期的な面談を行う
パワハラ発生時の対応については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
13,パワハラ加害者に対する処分
加害者の処分は、パワハラの調査をしっかり行い、パワハラ行為があったことが確認できていることが前提となります。
十分な調査を行わず、被害者の証言だけで安易にパワハラを認定したり、パワハラがあったことが確認できていないにもかかわらず懲戒処分をしてしまうと、処分した従業員が処分の無効を主張して裁判を起こす等のトラブルに発展する可能性があります。
さらに、事案に対して重すぎる処分をしてしまったり、処分の手続きに不備があったりした場合も、裁判で処分が無効と判断されてしまう可能性があります。
このようなトラブルを避けるため、パワハラで加害者を処分するときは、本当に処分の対象となるのか、どの程度の処分が適切なのか、を慎重に検討する必要があります。
(1)懲戒処分の種類
懲戒処分の種類は会社によって様々ですが、一般的には、軽い方から順番に以下の処分があります。
- (1)戒告、譴責、訓告:従業員を文書で指導する処分
- (2)減給:給与を減額する処分
- (3)停職(出勤停止):一定期間、出勤を禁じ、その期間の給与を無給とする処分
- (4)降格、降職:役職や資格を下位のものに引き下げる処分
- (5)諭旨解雇:退職届の提出を促し、退職届を提出しない場合は懲戒解雇する処分
- (6)懲戒解雇:従業員を解雇する懲戒処分
懲戒処分の種類については以下をご参照ください。
(2)懲戒処分の選択にあたって重要なポイント
次に、パワハラ加害者に対する懲戒処分を選択する時に考慮すべきポイントについて説明します。
どの程度の懲戒処分にするか検討する際は、以下のような点を考慮して処分を決定します。
- パワハラ行為の内容
- パワハラ行為の頻度、期間、常習性
- パワハラの被害者の数
- パワハラによる被害の程度
- 加害者の謝罪や反省の有無
- 加害者の過去の懲戒処分歴の有無
一般的に、加害者が反省していないケースや、会社から指導をしてもパワハラ行為を繰り返すケース等では、比較的重い懲戒処分が有効と判断されることが多いです。
一方で、加害者が反省し被害者に謝罪をしているケースや、過去にパワハラで注意や処分を受けたことがないケース等では、重すぎる処分は無効と判断される可能性があります。
パワハラ加害者の処分については、この記事の著者 弁護士西川暢春が、以下の記事や動画で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶参考動画:西川弁護士が「パワハラ加害者の懲戒処分!処分選択の目安を弁護士が解説」を詳しく解説中!
(3)パワハラ加害者を解雇するときの注意点
解雇は、加害者である従業員にとって不利益が大きいため、加害者が納得せず、裁判等に発展するリスクがあります。
そして、パワハラを理由に加害者を解雇する時は以下の点に注意する必要があります。
- 1.正当な指導であればパワハラにはあたらない(そもそもパワハラにあたるかどうかを正確に判断する必要がある)
- 2.過去の裁判例を踏まえると解雇が認められるのは、原則として、会社から指導や懲戒処分をしてもパワハラ行為を繰り返す場合のみ(指導をしないで最初のパワハラで解雇しても無効になることが通常である)
- 3.退職者が多い、被害者が精神科を受診した等の事情だけでは解雇はできず、加害者のパワハラ行為が解雇を正当化するほど重大なものだったのかを検討する必要がある
- 4.解雇について訴訟になった場合は、パワハラがあった事実について会社側で立証することが必要になる。
過去の裁判例でも、不当解雇と判断され、多額の金銭の支払いを命じられているケースがあります。
1,前橋地方裁判所 平成29年10月4日判決(国立大学法人群馬大学事件)
国立大学で複数名の部下からパワハラ被害の申告があり、多くの部下が退職あるいは精神疾患に罹患するなどしたことを理由に教授を懲戒解雇したことについて、不当解雇として大学に約1900万円の支払いを命じた事例
パワハラを理由とする解雇については以下の記事で詳しく解説していますので併せてご参照ください。
パワハラ加害者を解雇する時は、過去の裁判例も踏まえて、もし裁判になった場合に、解雇が有効と判断されるかどうか、という視点で検討する必要があります。
加害者と争いになる可能性が高い処分であるため、パワハラで加害者を辞めさせたいと考えている場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
14,パワハラの防止対策として企業が取り組むべき内容
「5,パワハラ防止法とは?」でご説明したとおり、パワハラ防止法では、企業に対してパワハラ防止措置を行うことを義務付けました。ここからは、パワハラ防止法で義務付けられた防止措置の内容を踏まえて、職場でのパワハラを防ぐために、企業が取り組むべき対策を紹介します。
(1)パワハラ防止法で義務付けられた10の対策
パワハラ防止法で義務付けられた対策は以下の10項目です。
対策1:
会社としてパワハラを許さないことを全従業員に周知・啓発する
パワハラを許さない、パワハラが発生したら厳正に対処するという会社の立場を明確にして従業員に周知します。
対策2:
就業規則等でパワハラの禁止とパワハラをした場合の懲戒処分を規定する
対策3:
パワハラの防止研修を実施する
対策4:
相談窓口を設置する
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正の一番大きなポイントは、相談窓口の設置が義務化されたことです。
単に窓口を設置すればよいというものではなく、実際に相談があった場合に適切に対応できるように、あらかじめ相談を受けた際の対応手順を決めてマニュアルを作成したり、相談担当者に対するカウンセリング方法についての研修などを行い、相談体制を整備しておく必要があります。
相談窓口の設置については以下をご参照ください。
対策5:
相談を受けたら迅速かつ正確に事実確認を行う
パワハラに関する相談を受けたら、速やかに、相談窓口の担当者または調査委員会などが、当事者からの聞き取り調査などを行い、事実関係を確認します。
当事者の間で言い分が食い違う点があれば、目撃者等の第三者からも聞き取りを行い、メールや録音等の客観的な証拠資料があるか確認します。
対策6:
被害者に対する適正な配慮の措置を行う
調査の結果、パワハラがあったことが確認できた場合は、速やかに被害者に対するフォローを行う必要があります。
被害者へのフォローの内容は、事案や状況に応じて様々ですが、当事者の関係改善のための援助や、配置転換、被害者の不利益の回復や、産業医等による被害者のメンタルヘルスの不調への対応等があります。
対策7:
加害者に対する適正な措置を行う
パワハラがあったことが確認できた場合は、加害者に対する処分や指導等の措置を行うことも必要です。
懲戒処分をする時は、就業規則等の社内のルールに基づいて処分の内容を検討します。あわせて、事案や状況に応じて、加害者に対する指導や、被害者への謝罪、被害者と引き離すための配置転換等の対応も必要です。
対策8:
再発防止措置を行う
パワハラに関する研修を実施したり、パワハラを許さないという会社の方針を改めて周知する等の対策を行いましょう。
相談窓口への相談を待つのではなく、従業員に対するアンケートの実施や面談等を通して、パワハラに発展しそうなトラブルがないかを確認することも、パワハラの事前防止策として効果的です。
対策9:
当事者のプライバシーを保護する
相談の対応、事実確認等の一連の対応において、被害者や加害者のプライバシーを保護するために十分な注意を払う必要があります。
対策10:
相談等を理由として不利益な取扱いをしない
パワハラ防止法では、従業員がパワハラに関する相談をしたことや、事実関係の調査に協力したこと等を理由として、解雇、減給、異動、降格等の不利益な扱いをすることを禁止しています(労働施策総合推進法第30条の2第2項)。
パワハラ防止の対策については、以下の記事でも詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)厚生労働省のマニュアルやポスターも活用
厚生労働省は、企業のパワハラ対策に使えるマニュアルやポスター、研修動画等の資料を多数公開しています。すべて無料で使えるので、これらの資料をパワハラ対策に活用するのもおすすめです。
▶参考:厚生労働省の職場のハラスメントの予防・解決に向けた周知・徹底のためのポスター
・出典元:厚生労働省 あかるい職場応援団「ハラスメント関係資料ダウンロード」
▶参考:厚生労働省のパワーハラスメント対策導入マニュアル
厚生労働省のパワーハラスメント対策導入マニュアルは、以下よりダウンロードが可能です。
15,パワハラの慰謝料の相場
パワハラの慰謝料とは、パワハラについての損害賠償の項目の1つで、精神的な被害についての賠償のことをいいます。
パワハラの慰謝料に決まった金額はありません。パワハラの内容や被害の程度等の様々な事情を考慮して決まりますが、一般的には「10万円~100万円程度」になることが多いです。
一方、被害者がうつ病や適応障害等の精神疾患を発症して休職を余儀なくされたり、自殺に追い込まれてしまったケースでは、以下のように被害者に支払う損害賠償が高額になる傾向があります。
事例1:
上司による「新人以下だ」「何で分からない。お前は馬鹿」等のパワハラ発言によってうつ病を発症した事案について、297万円の賠償金の支払いを命じた事例(サントリーホールディングス事件、東京地方裁判所判決平成26年7月31日)
事例2:
整形外科医が患者もいる前で上司に罵倒、暴行されたことや長時間労働が原因でうつ病を発症し、自殺に至った事案について、約1億3000万円の賠償金の支払いを命じた事例(広島高等裁判所松江支部判決平成27年3月18日)
パワハラの慰謝料について、詳しくは以下で解説していますのでご参照ください。
16,パワハラの証拠
パワハラの調査では、当事者の言い分が食い違ったり、言った言わないの水掛け論になり、事実を確認することが難しいケースも少なくありません。
そこで、重要になるのが、パワハラがあったことを裏付ける証拠です。
(1)証拠の種類
パワハラの証拠には以下のようなものがあります。
- 1.録音、録画、写真
- 2.メールやライン等のやりとりの履歴
- 3.診断書やカルテの記載
- 4.被害者の日記やメモ
- 5.目撃者等の第三者の証言
このうち、録音・録画やメールやLINE等の証拠は客観性があり、信用性が高い証拠です。
一方で、診断書や被害者の日記やメモ、第三者の証言は、単体ではパワハラがあったと判断するには弱い証拠です。これらの証拠は、他の証拠との整合性等を考慮して、証拠の信用性を慎重に判断することが必要になります。
(2)証拠がない時の対応方法
次に、証拠がなにもない時の調査方法について説明します。
証拠がない場合に重要になるのは、「当事者の主張」と「関係者の証言」です。
当事者双方にヒアリングを行い、当事者間で争いがない発言や行動については、通常は事実と認定することができます。
両者の主張が食い違う場合は、主張が食い違う点について再度ヒアリングを行い、当事者のどちらかが自分の主張を不自然に変更した点はないか、つじつまが合わない部分がないか等の点を確認します。
加えて、目撃者や同僚といった第三者からも聞き取りを行い、当事者の主張との整合性を確認することも必要です。
パワハラの証拠の集め方や注意点については以下で解説していますのでご参照ください。
17,パワハラと労災認定の関係
パワハラが原因でうつ病や適応障害といった精神疾患を発症した場合、従業員から労災申請がされることがあります。
パワハラによって精神疾患を発症した時の労災の認定基準は以下のとおりです。
- 要件1:発症前おおむね6ヶ月以内にパワハラ等による強いストレスを受けたこと
- 要件2:うつ病やストレス反応など労災認定の対象となる精神疾患と診断されたこと
- 要件3:業務外のストレスや個体側要因により発症したとはいえないこと
離婚や病気、家族の死亡等といった強いストレスや、過去に精神疾患で通院歴がある場合等は、パワハラが原因ではなく、業務外のストレスで精神疾患を発症したと判断されることがあります。
パワハラによって発症した精神疾患について労災が認定された場合、労災保険から従業員に対し、治療費や休業補償給付、障害補償給付等が支給されます。
労災が認定されると、従業員から会社に対する損害賠償請求が認められやすくなったり、従業員の解雇が制限されたり、行政の入札に参加できなくなることがある等の影響が生じます。
会社として労災には該当しないと考えている場合は、自社の主張とその根拠を労働基準監督署に積極的に伝えていくことが重要です。
パワハラの労災認定基準や、労災申請に対する会社の対応を以下で解説していますのでご参照ください。
18,従業員から会社都合退職の申し出があった場合の対応
従業員から、退職後に、「パワハラが原因で辞めることになったので退職理由を会社都合退職にしてほしい」という主張がなされるケースがあります。
会社都合退職(特定受給資格者)の判断基準として「(10)事業主又は当該事業主に雇用されている労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたことによって離職した者」という項目があり、パワハラ等が原因で退職せざるを得なかった場合も会社都合退職に該当します。
会社都合退職の場合、退職者は、雇用保険の失業給付において、待期期間が免除されたり、給付日数や給付金額が増える等、自己都合退職と比べて有利な条件で失業保険の給付を受けることができます。
一方、会社都合退職とすると、会社は、雇用関連助成金の支給を受けられなくなる等の不都合が生じてしまいます。
もちろん実際にパワハラを受けていたというケースもあると思いますが、中には有利な条件で失業保険を受給することを目的として、実際にはパワハラの事実がなくても、退職理由をパワハラと主張するケースも存在します。
そのため、会社と従業員側で退職理由に争いがある場合、会社としては、会社が考える実際の退職理由を離職証明書に記載してハローワークに提出することが必要です。
その後、ハローワークが会社や本人から事情聴取や客観的な証拠資料の確認等の調査を行い、離職理由を決定することになります。
従業員のパワハラが原因で退職したという主張が誤りである場合、会社として、正しい退職理由を主張していくことが重要になります。
19,パワハラを訴える場合の手続きや時効、デメリット
社内での解決や交渉等による解決ができなかった場合、従業員が加害者や会社に対して、損害賠償等を求めて裁判所に訴えを起こすケースがあります。
裁判になると、解決するまでに多くの時間と費用がかかるため、パワハラの解決方法としては最終手段と言えます。
(1)労働審判と民事訴訟の流れ
裁判所でパワハラについて争う場合は、主に以下の2つの方法があります。
1,労働審判
労働審判とは、従業員と会社の間に発生した労働問題を解決するための裁判所の手続きです。通常の裁判よりも簡単な手続きで行われ、短期間(約70日)で終了するのが特徴です。
労働審判の制度内容や流れについては以下で解説していますのでご参照ください。
2,民事訴訟
民事訴訟の場合は、解決までに、通常1年~1年半程度の期間がかかります。内容が複雑なものでは、2年以上の長期間に及ぶこともあります。
民事訴訟のおおまかな流れは以下のとおりです。
- 1.従業員が裁判所に訴状を提出する
- 2.裁判所から会社に呼出状と訴状が郵送される
- 3.会社は指定された期日までに答弁書を提出する
- 4.およそ月に1回の頻度で期日が開かれ、双方が主張を行ったり証拠を提出したりする
- 5.当事者尋問や証人尋問の実施
- 6.裁判所から和解案が提示され、和解が成立した場合は手続き終了
- 7.判決
- 8.判決に不服がある場合は控訴に進む
(2)パワハラの損害賠償の時効は3年
パワハラで損害賠償請求をする場合の法律上の根拠には以下の3つの種類があります。
- 加害者に対する不法行為に基づく損害賠償請求
- 会社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求
- 会社に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求
それぞれの請求について、時効は次のとおりです。
▶参考:パワハラでの損害賠償請求ごとの時効について
法律上の根拠 | 原則 | 生命、身体に損害が生じた場合 |
不法行為 (民法709条) |
3年 (損害及び加害者を知った時から) |
5年 (損害及び加害者を知った時から) |
使用者責任 (民法715条) |
3年 (損害及び加害者を知った時から) |
5年 (損害及び加害者を知った時から) |
安全配慮義務違反 (労働契約法5条、 労働安全衛生法3条1項) |
5年 (権利を行使できることを知った時から) |
(3)パワハラで訴訟を起こすことのデメリット(従業側から見た場合)
次に、従業員側から見た場合の、パワハラで会社や加害者を相手に裁判を起こすことのデメリットを説明します。
1,在職中の場合は会社に居づらくなる
会社を相手に裁判をするとなると、人によって程度の差はあるものの、やはり会社には精神的に居づらくなります。ただし、筆者の感覚としては、最近では在職中でもパワハラについて訴訟が起こされるケースが徐々に増えていると感じます。
2,裁判費用や弁護士費用で赤字になる可能性がある
パワハラの慰謝料は、パワハラにより精神疾患になったなどの事情がなければ、通常10~100万円程度で決して高い金額ではありません。それに対し、裁判手続きを弁護士に依頼するための費用は数十万円かかります。
そのため、相手から慰謝料を支払ってもらうことができたとしても、結果的に赤字になることもありえます。もし裁判で負けてしまうと、かかった弁護士費用や裁判費用は自分で負担することになります。
3,結果が出るまで時間がかかる
事案によりますが、一般的には、裁判が終わるまで半年~1年程度かかります。内容が複雑な裁判では4、5年かかることもあります。ある程度長期戦になることは覚悟しておかなければいけません。
4,証拠がなければ負ける可能性がある
裁判では、証拠が非常に重要になります。
裁判官は、公平な立場で、双方から提出された証拠をもとに、被害者が主張するような行為が実際にあったのか、その行為がパワハラに該当するか等を判断することになります。客観的な証拠が全くない場合は、裁判をしても負ける可能性があるのです。
5,精神的な負担が大きい
裁判は、思っている以上に時間や費用、労力がかかります。
パワハラを受けた時のことを何度も思い出す必要があったり、個人的な情報を開示する必要があったり、場合によっては裁判官や加害者の前でパワハラについて話をする必要がある等、精神的な負担は小さくありません。
20,パワハラの相談窓口まとめ
パワハラを受けたとき、相談ができる窓口は以下のような場所があります。
相談窓口によって対応内容やできることは様々です。電話相談ができる窓口や、無料で相談ができる窓口もありますので、自分にあった相談窓口を探してみてください。
▶参考:パワハラの相談窓口の一覧表
相談窓口 | できること | 電話 相談 |
メール 相談 |
対面 相談 |
LINE 相談 |
料金 |
社内のハラスメント相談窓口 | ・パワハラの調査 ・配置転換や労働条件上の不利益の回復 ・復職支援 ・加害者の処分 等 |
会社による | 会社による | 会社による | 会社による | 無料 |
労働局及び労働基準監督署(総合労働相談コーナー) | ・法令や裁判例などの情報提供 ・担当部署・関係機関の紹介 ・会社に対する助言・指導 ・紛争調整委員会によるあっせん |
〇 | × | 〇 | × | 無料 |
各都道府県の労働委員会 | ・個別労働紛争のあっせん | 〇 | 〇 | 〇 | × | 無料 |
法テラス | ・抱えているトラブルについて利用できる法制度の案内 ・適切な窓口の案内 ・無料相談の実施や裁判費用の立替え制度(民事法律扶助制度) |
〇 | 〇 | 〇 | × | 無料 |
弁護士 | ・会社への要望を代わりに交渉してもらえる ・加害者や会社に対する損害賠償請求 ・証拠収集に関するサポート ・労働審判や訴訟等の法的措置 |
事務所による | 事務所による | 事務所による | 事務所による | 有料 (初回無料の場合もあり) |
パワハラの相談について、より詳しくは以下で解説していますのでご参照ください。
21,パワハラをする上司を生まないための対策
社内にパワハラをする上司がいると、人材の流出や従業員のモチベーションの低下、業務効率の低下等を招くことになります。
さらに、このような上司を放置した場合、会社が、安全配慮義務違反や使用者責任によって、被害者から損害賠償を請求される事態にもなりかねません。
そのため、パワハラをする上司には厳正に対処し、パワハラ上司を生まないための取り組みが重要になります。
パワハラ上司を生まないために会社ができる対策には以下のようなものがあります。
- 1.パワハラについての理解を深める研修や正しい指導方法に関する研修を実施する
- 2.定期的にアンケートや面談を実施しパワハラが起きていないかチェックする
- 3.パワハラをすると懲戒処分の対象となることを周知する
パワハラをしてしまいやすい上司の特徴やその対策については、以下の記事で解説していますのでご参照ください。
22,パワハラで訴えられたら?
最近では、正当な指導であってもパワハラと主張をされることが増えています。
部下からパワハラで訴えられた時に、まずやるべきことは会社に報告をすることです。
個人的に対応することは、のちにパワハラの隠ぺい工作を疑われる原因になったり、感情的になって話がこじれてしまい問題が大きくなるおそれがあります。
ありもしないハラスメントの訴えは、いわゆる逆パワハラに該当する可能性もあるので、当事者だけで解決しようとせず、会社へ報告した上で、会社に調査をしてもらい、客観的に判断してもらうことが必要です。
部下のパワハラの主張が言いがかりである場合は、「部下の主張に事実と異なる点があれば事実を時系列に沿って説明」「従業員を育てる目的で行った正当な指導であることを説明」します。
その上で、自分の主張を裏付ける客観的な証拠(メールやLINEのやり取り等)があれば、あわせて提出します。
パワハラの濡れ衣を着せられると腹が立つと思いますが、感情的になって仕返しをするようなことは絶対にしてはいけません。
パワハラが冤罪であっても、訴えられたことに対する報復行為がパワハラにあたると判断される可能性があるからです。
会社は、上司からパワハラのトラブルについて報告を受けた時は、ただちに事実確認のために当事者からヒアリングを行う等の調査をする必要があります。
部下からパワハラで訴えられたときの対応や逆パワハラについての対策は以下で解説していますのでご参照ください。
23,パワハラトラブルは弁護士への相談がおすすめ!
パワハラが社会問題化し、従業員が会社に対して裁判を起こしたり、労働局や労働組合といった外部機関に相談したりするケースが増えてきています。
最近では、ハラスメント問題で裁判に発展した場合に、損害賠償金や弁護士費用を賄うためのハラスメント保険なるものもあるようです。
それだけ、ハラスメント問題が深刻化するリスクが高まっている証でもあります。
初期対応を誤り、問題が大きくなって裁判等に発展すれば、会社の負担は、労力的にも金銭的にも大きくなります。
問題が発生した時点で弁護士にご相談いただき、専門的なアドバイスを受けながら対応していただくことで、問題をより早く、より有利に解決することにつながります。
(1)パワハラトラブル解決のために弁護士ができること
社内でパワハラに関するトラブルが発生した場合、企業は、弁護士に、以下のような相談・依頼をすることができます。
- 1.パワハラの被害の訴えがあったときの対応方法の相談
- 2.パワハラの被害の訴えがあった場合の調査
- 3.被害者から損害賠償請求された場合の交渉対応
- 4.被害者から損害賠償請求の裁判を起こされた場合の対応
- 5.被害者が労働局や労働組合等の外部の機関に相談した場合の対応
- 6.被害者から労災請求があった場合の対応
- 7.パワハラの加害者に対する懲戒処分についての相談、紛争対応
- 8.逆パワハラ問題が発生した場合の対応
- 9.ハラスメント相談窓口の外部委託
- 10.パワハラ防止研修の講師の依頼
(2)弁護士へ依頼するメリット
パワハラトラブルの対応を弁護士へ依頼するメリットは、何よりも、弁護士の専門知識や経験を活かして、リスクを減らしたり、問題が大きくなることを避けることができたり、交渉や訴訟を有利に進めることができる点にあります。
当事者同士で解決しようとすると、どうしても感情的になってしまい、解決への道が遠のくことがあります。
その点、弁護士が対応をすることで、感情的な対立を避け、法律に基づいた合理的な解決へ導くことができます。また、弁護士が窓口となるので、相手と直接やり取りをする精神的な負担を軽減することができます。
特に、従業員側に弁護士がついている場合や、従業員が労働組合に加入して組合を通して団体交渉を求めてきているケース等では、弁護士に依頼せずに自己流で対応してしまうと、自社にとって不利な結果をまねく恐れがありますので、弁護士に依頼することを強くおすすめします。
(3)弁護士費用の相場
弁護士に依頼する際に必要となる費用の種類には、「相談料」「着手金」「報酬金」「日当」「手数料」「実費」等があります。弁護士費用は、弁護士が個々に定めるものであるため、相場というものを示すことは難しいのが実情です。
参考までに、パワハラトラブルについて、咲くやこの花法律事務所へご依頼いただく場合の弁護士費用の目安をご紹介します。
1,法律相談料
- 初回相談料30分5000円+税
2,パワハラの調査
- 調査費用30万円+税~
3,ハラスメント相談窓口の外部委託
- 従業員数300名未満:月額3万円+税
- 従業員数300名~999名:月額5万円+税
- 従業員数1000名~2999名:月額7万円+税
- 従業員数3000名~:月額8万円+税
4,パワハラ被害者との示談交渉
- 着手金15万円+税~
5,パワハラ被害者との労働審判・訴訟対応
- 着手金45万円+税~
※上記の金額はあくまでも目安であり、実際の弁護士費用は事件の内容や難易度によって異なります。やはり、相談よりも交渉、交渉よりも訴訟といった形で、問題が複雑化するにつれて弁護士費用も高くなります。早期に相談していただくことで、問題を小さくおさめることができ、弁護士に支払う弁護士費用も少なくすみます。パワハラトラブルが生じたら、できるだけ早くご相談いただくことをおすすめします。
パワハラトラブルについて弁護士に依頼する場合の費用の目安については、以下をご参照ください。
24,パワハラに関して弁護士に相談したい方はこちら(法人向け)
咲くやこの花法律事務所では、パワハラのトラブルについて、企業の人事担当者や経営者の方から、企業側の立場でのご相談を多くいただいております。
最後に、咲くやこの花法律事務所のパワハラトラブルについてのサポート内容をご紹介いたします。
(1)パワハラトラブルへの対応方法に関するご相談
咲くやこの花法律事務所では、社内でパワハラトラブルが発生した際の対応方法についてのご相談を承っております。
パワハラトラブルは、発生時においていかなる対応をとるかが非常に重要です。間違った対応をしてしまうと、当事者とトラブルになり、法的な紛争に発展してしまう可能性があります。
咲くやこの花法律事務所では、パワハラ問題に強い弁護士が、これまでの経験を活かして、最適な対応を行います。トラブル発生時の早期にご相談いただくことで、とれる手段が多くなるため、早期解決につながります。早めにご相談ください。
弁護士へのご相談費用
- 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(2)パワハラに関する事実関係の調査のご依頼
社内でパワハラ被害の訴えがあったときは、パワハラの事実があったかどうかを調査することが法律上義務付けられています。
当事者、関係者へのヒアリングを適切に行ったうえで、これを記録化し、証拠収集についてもタイミングを逃さずに行っていく必要があります。
咲くやこの花法律事務所では、パワハラ被害の訴えへの対応が必要になった企業から、パワハラに関する事実関係の調査のご依頼を承っております。
経験豊富な弁護士が、適切な方法で調査を行い、法的な判断をサポートします。
弁護士へのご相談費用
- 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(3)パワハラのトラブルに関する裁判、労働審判への対応
パワハラについては、裁判や労働審判に発展してしまうケースも少なくありません。
咲くやこの花法律事務所でも、パワハラトラブルについて、多くの裁判、労働審判の対応を企業側の立場でお受けし、実際に解決してきました。労働裁判、労働審判に強い、経験豊富な弁護士が真摯に対応し、依頼者にとってベストな解決を導きます。
弁護士へのご相談費用
- 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(4)顧問契約による労務管理サポート
咲くやこの花法律事務所では、企業の労務管理を継続的に改善し、また法改正への対応、新しい裁判例への対応を万全のものにするために、顧問契約による労務管理のサポートを提供しております。
トラブルがあったときも大きな問題に発展させることなく適切に解決できるようにするためには、日頃の継続的な労務管理改善が最も重要です。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下をご参照ください。
また、顧問弁護士の役割や必要性、弁護士費用の相場などについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(5)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
パワハラに関する相談などは、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
【お問い合わせについて】
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
25,咲くやこの花法律事務所の解決実績
最後に、咲くやこの花法律事務所におけるパワハラトラブルに関する企業向けのサポートの解決実績の一部をご紹介します。あわせてご参照ください。
・パワハラ被害を受けたとして従業員から会社に対し300万円の慰謝料が請求されたが、6分の1の慰謝料額で解決した成功事例
・教職員が集団で上司に詰め寄り逆パワハラが発生!学校から弁護士が相談を受けて解決した事例
・内部通報窓口に匿名で行われたハラスメントの通報について、適切な対処をアドバイスし、解決まで至った事例
注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年2月16日
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