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懲戒処分とは?種類や選択基準・進め方などを詳しく解説

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  • 懲戒処分とは?種類や選択基準・進め方などを詳しく解説
    • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    • この記事を書いた弁護士

      西川 暢春(にしかわ のぶはる)

      咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
    • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

    問題のある従業員を放置すると、他の従業員に示しがつかないと悩んでいませんか?

     

    例えば、以下のようなケースです。

     

    • 「遅刻や欠勤が多い従業員がいて、他の従業員に示しがつかない。」
    • 「業務上の指示に従わない従業員がいて、処分を検討したい。」
    • 「管理職の部下に対するパワハラに困っている。」

     

    こういったケースでは、会社が従業員に懲戒処分を行うことで、問題行動にけじめをつけさせ、社内の秩序を維持することができます。

     

    懲戒処分とは、企業が、従業員の就業規則違反や企業秩序違反行為に対して、正式に制裁を科す処分をいいます。多くの企業では、戒告、譴責、訓告、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分が制度化されています。このような懲戒処分を適切に活用することは、企業の秩序維持にとって非常に重要です。

     

    ただし、懲戒処分にも法律上のルールがあり、ルールに違反して懲戒処分をしてしまうと、従業員から裁判を起こされることになりかねません。

    懲戒処分をめぐり裁判になり企業側が敗訴した事例として、例えば以下の例があります。

     

    判例1:
    武富士事件(東京地方裁判所平成19年 2月26日判決)

    消費者金融の武富士が従業員らに対して行った減給・降格の懲戒処分が無効であるとして、合計「約150万円」の支払を命じられた事例

     

    判例2:
    カレーハウス事件(大阪地方裁判所平成19年10月25日判決)

    フランチャイズのカレー店舗を経営する会社が店長に対して行った降格処分が無効であるとして、「約236万円」の支払いを命じられた事例

     

    このような裁判トラブルを起こさないようにするためには、懲戒処分についての法律上のルールを知っておく必要があります。

    今回の記事では、懲戒処分の種類や選択の基準と、懲戒処分を行う際におさえておく必要がある法律上のルール・手続きの進め方などをわかりやすくご説明します。

    問題社員にお悩みの経営者、人事担当者の方はぜひ確認しておいてください。

     

    ▶参考情報:問題社員やモンスター社員については以下の記事も合わせてご覧下さい。

    モンスター社員、問題社員への具体的な対応方法を弁護士が解説

    問題社員を指導する方法をわかりやすく解説

     

    それでは早速みていきましょう。

     

    ▶参考:問題社員対応に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は、こちらをご覧ください。

     

    ▼懲戒処分について今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

    【お問い合わせについて】

    ※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

    また労働問題に強い顧問弁護士をお探しの方は、以下を参考にご覧下さい。

    【全国顧問先300社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

    【大阪の企業様向け】顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)について詳しくはこちら

    顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

     

     

    1,懲戒処分とは?その意味について解説

    懲戒処分とは、企業が従業員の企業秩序違反行為に対して科す制裁です。つまり、企業が従業員の問題行動に対して正式に罰を与えるのが懲戒処分です。

    企業には従業員に懲戒処分を科す「懲戒権」があるとされています。

    一方で、労働基準法第89条9号により、従業員10名以上の事業所が懲戒制度を設ける場合は就業規則にその内容を明記することが必要とされ、また、労働契約法第15条により、懲戒処分が無効になる場合があることが定められるなど、懲戒権が無制限のものではないことが明記されています。

     

    ▶参考情報:労働基準法第89条9号

    常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

    (略)

    九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項

    (略)

     

    ・参照:「労働基準法第89条9号」の条文

     

    ▶参考情報:労働契約法15条

    使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

     

    ・参照:「労働契約法15条」の条文

     

    2,懲戒処分の目的

    懲戒処分の主な目的として、以下の2つがあります。

     

    主な2つの目的

    目的1:

    問題行動を起こした本人に制裁を加えることで、企業秩序を維持する目的

     

    目的2:

    従業員全員に対し、懲戒処分を受けた従業員の問題行動が好ましくない行為であることを明確に示し、企業秩序を維持する目的

     

    このように、懲戒処分は問題行動を起こした従業員本人にのみ向けられたものではなく、従業員全員に向けられたものであることを意識しておく必要があります。

    適切な懲戒処分を行うことは、企業の一体性、規律性を高める効果があります。

     

    3,懲戒処分の種類6つ

    懲戒処分の種類6つ

    次に、懲戒処分の種類についてみていきましょう。

    各会社の就業規則で定められていますが、一般的に定められていることが多いのは、以下の6種類の懲戒処分です。

     

    (1)一般的な懲戒処分の6種類

     

    1,戒告・譴責・訓告

    従業員を文書で指導する懲戒処分です。

    会社によって、戒告、譴責、訓告などの名称が使用されていますが、いずれも同じ意味だと考えてさしつかえありません。内容としては指導するだけなので、経済的な意味での制裁にはなりません。ただし、懲戒処分として行う以上、全従業員に対して懲戒を受けた従業員の問題行動が好ましくない行為であることを示すという側面があり、個人的な指導とは異なります。

    多くの会社で、最も軽い懲戒処分として定められており、会社によっては、戒告、譴責、訓告の場合に始末書を提出させることを就業規則で定めているケースもあります。

    「戒告・譴責・訓告」については、以下の記事をご覧ください。

     

     

    2,減給

    問題行動に対する制裁として、従業員の給与を減額する懲戒処分です。

    この減給処分については、労働者保護の立場から、法律上の限度額が設けられており、1回の問題行動に対する減給処分は、1日分の給与額の半額が限度額です。

    実際に計算すると月給30万円の従業員なら5000円程度、月給40万円の従業員なら6700円程度の計算結果になることが多く、減給処分ではこの額を超えるような減給は法律上できません。

    また、1回の問題行動に対する減給処分で減給できるのは1回だけで、1年などの期間を定めて減給できるわけではありません。

    減給処分による減給の限度額については詳しくは以下の動画や記事をご覧ください。

     

    ▼【動画で解説】西川弁護士が「会社による減給!」法律上の限度を弁護士が詳しく解説中!

     

     

    3,出勤停止

    問題行動に対する制裁として、従業員に一定期間、出勤を禁じ、その期間の給与を無給とする懲戒処分です。

    出勤停止の懲戒処分の場合、通常は減給処分よりも本人が受ける経済的制裁の程度が大きくなります。例えば、30日の出勤停止という場合、30日分の給与が支給されないことになるからです。

    出勤停止の期間については、法律上の上限はありませんが、通常は就業規則で上限が決められています。

    出勤停止処分については詳しくは以下の記事をご覧ください。

     

     

    4,降格

    問題行動に対する制裁として、従業員の役職や資格を下位のものに引き下げる懲戒処分です。

    降格の懲戒処分の場合は、出勤停止処分よりもさらに本人が受ける経済的な打撃は大きくなることが多いです。降格すると、役職給などが下がることが通常で、その分、給与が減るためです。

    出勤停止処分の場合は出勤停止の期間が終わればもとの給与に戻りますが、降格処分で役職給が下がった場合は元の役職に戻るまでの期間ずっと下がった給与が支給されることになります。

     

     

    5,諭旨解雇、諭旨退職

    問題行動のあった従業員に対して退職届の提出を勧告し、退職届を提出しない場合は懲戒解雇するという懲戒処分です。

    これは懲戒解雇が従業員にとって不利益が大きいことから、退職届提出の機会を与えるものです。企業によって、諭旨解雇処分または諭旨退職処分と呼ばれますが、同じ意味と考えて差し支えありません。

    諭旨解雇または諭旨退職の場合に退職金が全額支払われるかどうかは会社の退職金規程によりますが、全額支払うとしている会社が多くなっています。

    諭旨解雇や諭旨退職については詳しくは以下の記事をご覧ください。

     

     

    6,懲戒解雇

    問題行動に対する制裁として、従業員を解雇する懲戒処分です。

    退職金の全部または一部が支払われず、解雇予告手当も通常支払われない、最も重い懲戒処分です。

     

    ▶参考:懲戒解雇については以下の関連情報もご覧下さい。

     

    ・【動画で解説】西川弁護士が「懲戒解雇とは?具体例や企業側のリスクを弁護士が解説!」を詳しく解説中!

     

    懲戒解雇とは?6つのケース例とリスクや進め方を解説。

     

    上記の6種類の懲戒処分は、処分が軽いものから順に1から6となります。

    以上、懲戒処分の種類について整理しました。

     

    表にまとめると以下の通りです。

     

    7,懲戒処分の比較表

    懲戒処分の内容 本人の経済的不利益
    戒告・譴責・訓戒 文書で注意する。会社によっては始末書を提出させる なし
    減給 給与を1回減給する 1回の問題行動に対しては半日分の給与が限度額
    出勤停止 一定期間、出勤を禁じ、その期間を無給とする 出勤停止30日なら30日分の給与
    降格 従業員の役職や資格を下位のものに引き下げる 降格処分に伴い、役職給が下がることが多い
    諭旨解雇・諭旨退職 退職届の提出を勧告し、提出しない場合は懲戒解雇する 退職金は通常通り支払われる会社が多い
    懲戒解雇 問題行動に対する制裁として、従業員を解雇する 退職金の全部または一部が支払われないことが多い。解雇予告手当も通常支払われない

     

    4,懲戒処分の理由

    就業規則には、通常、「懲戒」の項目が設けられ、自社において、懲戒処分の理由になりうる項目が定められています。

    一般的に定められる懲戒処分の理由としては以下のようなものがあります。

     

    懲戒処分の主な理由一覧

    • 正当な理由のない欠勤、早退、遅刻などの勤怠不良
    • 無断欠勤
    • 故意または過失により会社に損害を与える行為
    • セクハラ・パワハラ・マタハラなどハラスメントにより就業環境を悪化させる行為
    • 経歴詐称
    • 業務上横領など会社内の犯罪行為
    • 業務命令違反
    • 私生活での犯罪行為
    • 無許可で会社施設や会社備品を業務以外の目的で使用する行為
    • 会社に対する誹謗中傷
    • 機密情報の漏洩
    • 無許可での副業
    • 就業規則違反

     

    (1)懲戒処分には就業規則上の根拠が必要

    判例は、懲戒処分は従業員に重い制裁を科すものであるという観点から、会社はどのような行為が懲戒処分に該当するのかをあらかじめ就業規則で明確に定めておく必要があるとしています。

    そして、就業規則で規定した懲戒事由に該当した場合に限り、懲戒処分をすることができるとしています最高裁判所判決平成15年10月10日フジ興産事件)。

    そのため、懲戒処分を行う前に、まず、就業規則の懲戒の規定の確認が必要です。

    具体的には、処分の対象としようとしている問題行動が就業規則に記載された懲戒事由に該当するかを検討することが重要になります。

    就業規則に記載のない理由で従業員に懲戒処分をした場合、裁判を起こされれば、懲戒処分は無効と判断されます。

    例えば、バス会社が、バスの運転手による経歴詐称について譴責処分とした事案で、裁判所は、就業規則上、経歴詐称は譴責処分の理由とされていないことを指摘して、譴責処分を無効と判断し、会社を敗訴させています(東京高等裁判所平成2年7月19日判決)。

    経歴詐称自体は明らかに非難されるべきことですが、それでも就業規則に根拠がなければ敗訴しますので注意が必要です。

    なお就業規則について、正しい作り方などの解説は以下を参考にして下さい。

     

     

    5,法律上、おさえておく必要がある3つのルール

    法律上、おさえておく必要がある3つのルール

    次に、懲戒処分についてどのような法律上のルールがあるのかを見ていきたいと思います。

    冒頭でご紹介したように、ルールを守らずに懲戒処分をした場合、後で従業員から裁判を起こされて敗訴する原因になります。

    以下の3つのルールをしっかり確認しておきましょう。

     

    (1)二重処罰の禁止

    1回の問題行動に対して2回の懲戒処分を行うことはできません。

    このルールは「二重処罰の禁止」あるいは「一事不再理のルール」と呼ばれます。

    判例上も、例えば、バス運転手が、バスに乗り遅れたことを理由の1つとして懲戒解雇処分をしたケースで、裁判所は、この事実について運転手は過去に出勤停止処分を受けており、さらに懲戒解雇の理由とすることは許されないとした判断をしています(大阪地方裁判所平成5年12月24日決定)。

    すでに懲戒処分歴がある従業員に対して再度懲戒処分をする場合は、以前の懲戒処分と同じ問題行動を今回の懲戒処分の対象とすることがないように注意が必要です。

     

    (2)懲戒処分の相当性の原則

    懲戒処分が問題行動の内容と比較して重すぎてはなりません。

    このルールは「懲戒処分の相当性のルール」と呼ばれます。

    例えば、企業が、慰安旅行の酒席でのセクハラを理由に支店長を懲戒解雇した事件で、裁判所はセクハラ自体は事実だが懲戒解雇は重すぎるとして、懲戒解雇処分は無効であると判断しました(東京地方裁判所平成21年4月24日判決 椿本マシナリー懲戒解雇事件)。

    そして、裁判所は、この企業に対し、支店長が解雇のために受け取ることができなかった給与として、「約1300万円」の支払いを命じています。

     

    このように懲戒処分の選択を誤り、重すぎる懲戒処分をすることは場合によっては企業にとって重大なリスクになります。

     

    (3)平等処遇の原則

    懲戒処分を行うにあたっては、過去の自社の対応との公平性の観点も重要とされています。

    平等処遇の原則と呼ばれます。

    例えば、過去に会社が黙認し、懲戒処分を行ってこなかったような問題について、何の警告もなく、突然、会社の方針を変え、懲戒処分の対象とすることは、その行為が懲戒処分の対象になることが就業規則に定められていたとしても、懲戒処分が無効と判断される理由となります。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    懲戒処分にあたっては、過去の自社の懲戒処分事例を一覧で整理したうえで、過去の事例とバランスがとれるように処分を決めることが必要です。

    平等処遇の原則に関連する事例としては、業務外で酒気帯び運転をして罰金刑を受けたタクシー運転手の懲戒解雇について、会社が過去に比較的寛大に懲戒権を行使ししてきたことなどを指摘して、懲戒解雇を無効と判断した事例があります(最高裁判所判決昭和61年9月11日 相互タクシー株式会社事件)。

     

    6,問題行動のレベルに応じた判断が必要。懲戒処分を行う際の判断基準

    5章でご説明した3つのルールの中でも、特に重要なのが、「重すぎる懲戒処分は無効」という懲戒処分の相当性のルールです。

    しかし、一方で処分が軽すぎると、懲戒処分の目的を果たせず、他の従業員にも示しがつきません。

    そこで、以下では、具体的な場面で、どのように懲戒処分の種類を選択すればよいのかの具体的な判断基準をご説明したいと思います。

    最初におおまかな目安を表にまとめると以下のようになります。

     

    判断基準の目安一覧表

    懲戒処分の種類 該当する場面の例
    戒告・譴責・訓戒 ・1日の無断欠勤
    ・業務上のミスについてはじめて懲戒処分をするケースなど
    減給 遅刻や欠勤、業務上のミスについて、すでに戒告・譴責・訓戒などの処分をしたり、始末書を提出させたりしているにもかかわらず、さらに繰り返される場合
    出勤停止 ・職場内の暴力
    ・重要な業務命令の拒否
    ・職務の放棄により会社に損害を与えたケースなど
    降格 ・管理職による社内の重要なルールに対する違反
    ・部下に対するセクハラ、パワハラなど
    諭旨解雇・諭旨退職・懲戒解雇 ・業務上の横領や着服
    ・14日以上の無断欠勤
    ・強制わいせつに該当するような重大なセクハラなど

     

    「弁護士 西川暢春からのワンポイント解説!」
    上の表はあくまで目安として考えてください。実際に懲戒処分を行う場合は、裁判トラブルに発展したり、外部の労働組合から団体交渉を申し入れられたりするトラブルのリスクがありますので、必ず事前に弁護士にご相談ください。

     

    6-1,
    戒告・譴責・訓戒の処分が妥当なケース

    1日の無断欠勤や、業務上のミスについてはじめて懲戒処分をするケースでは、戒告処分や譴責処分で対応するべきことが多いでしょう。

    裁判例で、戒告・譴責・訓戒の懲戒処分を合法と判断した事例としては以下のケースがあります。

     

    (1)戒告・譴責・訓戒の処分を合法と判断した裁判例

     

    1,無断欠勤1日に対する譴責処分を合法とした裁判例

     

    NTT事件(東京高等裁判所平成13年11月28日判決)

     

    事案の概要:

    従業員が集合研修中に有給休暇の取得を希望し、これに対して会社側から集合研修中の有給休暇は研修に支障が生じるので認めない旨伝えられたにもかかわらず、欠勤した事例です。

     

    裁判所の判断:

    この従業員に対して会社が行った譴責処分を合法と判断しました。

     

    2,業務上のミスとその後の対応を理由とする戒告処分を合法とした裁判例

     

    株式会社日経ビーピー事件(東京地方裁判所平成14年4月22日判決)

     

    事案の概要:

    業務上のミスを繰り返した従業員が、それについて原因究明のための報告書の提出を会社から求められたが、提出を拒否した事例です。

     

    裁判所の判断:

    この従業員に対して会社が行った譴責処分を合法と判断しました。

     

    戒告・譴責・訓戒の懲戒処分は、処分を受ける従業員にとって、直ちに経済的なデメリットが生じる処分ではありません。

    しかし、戒告や譴責の懲戒処分を受けると、その後の昇給や賞与の査定で不利益を受けると考えられることが通常であり、場合によっては、従業員や労働組合が強く反発し、処分が無効であるとして、従業員から裁判を起こされるケースも少なくありません。

    戒告や譴責の処分については、以下の記事でさらに詳しく注意点等をご説明していますので、実際に処分を行う場合は必ず目を通しておいてください。

     

     

    6-2,
    減給の処分が妥当なケース

    減給の懲戒処分は、戒告・譴責・訓戒よりも重い懲戒処分です。

    遅刻や欠勤、業務上のミスについて、すでに戒告・譴責・訓戒などの処分をしたり、始末書を提出させたりしているにもかかわらず、さらに繰り返される場合には、減給処分を検討することが適切です。

    どのようなケースで、減給の懲戒処分をするのが妥当なのかを、実際の裁判例を通じて見てみましょう。

     

    減給の処分を合法とした裁判例

     

    1,遅刻や欠勤を理由とする減給処分を合法とした裁判例

     

    日光産業事件(大阪地方裁判所堺支部平成22年5月14日判決)

     

    事案の概要:

    従業員が無断欠勤により訓戒処分を受けた後も遅刻や欠勤を繰り返した事例です。

     

    裁判所の判断:

    従業員に対する減給処分を合法と判断しました。

     

    2,業務中の度重なる交通事故を理由とする減給処分を合法とした裁判例

     

    国際興業大阪事件(大阪地方裁判所平成23年1月28日判決)

     

    事案の概要:

    タクシー運転手として勤務する従業員が約2年間の間に13件の交通事故を起こし、会社の指示により始末書を提出していたところ、始末書提出の約1か月後に1日に2度の交通事故を起こした事例です。

     

    裁判所の判断:

    タクシー会社が従業員にした減給処分を合法と判断しました。

     

    減給の懲戒処分は、処分を受ける従業員にとって、経済的なデメリットが生じる処分です。そのため、従業員が減給処分が不当であり、無効であるとして、裁判を起こすケースが少なくありません。

    減給処分について、より詳しくは以下の記事でご説明していますのであわせてご確認ください。

     

     

    6-3,
    出勤停止の処分が妥当なケース

    出勤停止の懲戒処分は、減給処分よりもさらに重い懲戒処分です。

    職場内の暴力や、重要な業務命令の拒否、あるいは職務の放棄により会社に損害を与えたケースについては、出勤停止処分を検討するべき場合が多いでしょう。

    以下で、出勤停止の懲戒処分を合法と判断した裁判例を見ていきましょう。

     

    出勤停止の処分を合法と判断した裁判例

     

    1,上司に対する暴力を理由とする出勤停止処分を合法とした裁判例/出勤停止3日

     

    (東京地方裁判所平成23年11月9日判決)

     

    事案の概要:

    保険会社の従業員が人事考課の面談中に、上司の首をつかみ、上司のメガネをとりあげて投げるなどの暴行を加えた事例です。

     

    裁判所の判断:

    従業員に対する3日間の出勤停止処分を合法と判断しました。

     

    2,出張命令の拒否を理由とする出勤停止処分を合法とした裁判例/出勤停止9日

     

    三菱電機事件(静岡地方裁判所昭和46年8月31日判決)

     

    事案の概要:

    静岡工場勤務の板金工が神戸工場への3か月間の応援出張命令を拒否した事例です。

     

    裁判所の判断:

    従業員に対する9日間の出勤停止処分を合法と判断しました。

     

    3,職務の放棄を理由とする出勤停止処分を合法とした裁判例/出勤停止7日

     

    パワーテクノロジー事件(東京地方裁判所平成15年7月25日判決)

     

    事案の概要:

    ソフトウェア開発会社に勤務して客先に常駐する業務に従事していた従業員が、勤務先に相談することなく、体調が悪く作業を終了したい旨を顧客の社員に対して伝えた結果、顧客から契約を打ち切られた事例です。

     

    裁判所の判断:

    従業員に対する7日間の出勤停止処分を合法と判断しました。

     

    なお、出勤停止の期間について法律上の制限はありませんが、問題行動の程度と比較して長すぎる出勤停止処分は無効となる危険があります。

    通常は長くても30日程度までと考えておくべきでしょう。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    出勤停止の期間については、法律上の上限はありませんが、通常は就業規則で上限が決められています。

    過去の判例では、90日や180日の出勤停止処分を有効とした事例もあり、就業規則で規定を設ければ比較的長期の出勤停止処分も有効とされる余地があります(東京地方裁判所判決平成19年4月27日等)。

    ただし、いずれにしても、問題行動の程度と比較して長すぎる出勤停止処分は無効となることに注意する必要があります。

     

    6-4,
    降格処分が妥当なケース

    降格処分は、出勤停止よりもさらに重い懲戒処分です。

    管理職による社内の重要なルールに対する違反や、部下に対するセクハラ、パワハラについては、降格の懲戒処分を検討するべきケースが多いでしょう。

    以下で、降格の懲戒処分を合法と判断した裁判例を見ていきましょう。

     

    (1)降格の懲戒処分を合法とした裁判例

     

    1,社内ルールの違反を原因とする降格処分を合法とした裁判例

     

    京都電子工業事件(東京地方裁判所平成21年8月31日判決)

     

    事案の概要:

    社内ルールである作業手順を順守せず、また業務上のミスを報告しないなどの問題があった課長代理について、それまでの遅刻や居眠りといった勤務態度も踏まえて降格処分を行った事例です。

     

    裁判所の判断:

    会社が行った降格処分を合法と判断しました。

     

    2,パワハラを原因とする降格処分を合法とした裁判例

     

    (東京地方裁判所平成27年8月7日判決)

     

    事案の概要:

    役員補佐兼営業部長の職にあった管理職が成績があがらない部下に対して、教育的指導を施すのではなく、従業員らの能力等を否定する発言を繰り返し、退職を執拗に迫るなどのパワハラ行為をした事例です。

     

    裁判所の判断:

    会社が行った降格処分を合法と判断しました。

     

     

    3,セクハラを原因とする降格処分を合法とした裁判例

     

    (東京地方裁判所平成22年10月29日判決)

     

    事案の概要:

    タクシーの車内で女性の派遣社員のスカートをたくしあげるなどのセクハラ行為をした管理職に対して、降格処分を行った事例です。

     

    裁判所の判断:

    会社が行った降格処分を合法と判断しました。

     

     

    降格の懲戒処分は、本人からみると、かなり大きなペナルティです。

    役職給が将来にわたって下がることが通常ですし、会社から降格の懲戒処分を受けたということは、部下に対しても非常に体裁が悪いと考えるのが通常でしょう。

    そのため、降格の懲戒処分を受けた従業員が懲戒処分をきっかけに退職することも多く、退職後に降格が不当であるとして、訴訟が提起されるケースも少なくありません。

    降格の懲戒処分を実際に実施する場合は、万が一裁判になった場合でも敗訴することがないかどうかを慎重に検討したうえで、実行する必要があります。

    降格については、以下の記事でさらに詳しく注意点等をご説明していますので、実際に処分を行う場合は必ず目を通しておいてください。

     

     

    6-5,
    懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職が妥当なケース

    懲戒解雇は最も重い懲戒処分です。

    また、諭旨解雇、諭旨退職については懲戒解雇よりも軽い処分にはなるものの、その内容は懲戒解雇と大きな違いはありません。

    このような重い懲戒処分のため、企業にとって重大な問題行動に対してのみ懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職の処分が認められます。

    具体的には、業務上の横領や着服、14日以上の無断欠勤、強制わいせつに該当するような重大なセクハラでは懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職を検討すべきです。

    以下で、懲戒解雇処分を合法と判断した裁判例を見ていきましょう。

     

    (1)懲戒解雇処分を合法とした裁判例

     

    1,業務上の横領を理由とする懲戒解雇処分を合法とした裁判例

     

    ダイエー事件(大阪地方裁判所平成10年1月28日判決)

     

    事案の概要:

    従業員の慰労会の領収書を改ざんして会社に10万円を不正請求したことを理由に会社が懲戒解雇した事例です。

     

    裁判所の判断:

    会社が行った懲戒解雇処分を合法と判断しました。

     

     

    2,無断欠勤を理由とする懲戒解雇処分を合法とした裁判例

     

    (大阪地方裁判所昭和63年9月26日判決)

     

    事案の概要:

    欠勤当日に従業員の妻が「急病のために欠勤する」と連絡したのみで、会社の診断書提出命令にも従わずに1ヶ月半欠勤を続けたことを理由に、従業員を懲戒解雇した事例です。

     

    裁判所の判断:

    会社が行った懲戒解雇処分を合法と判断しました。

     

     

    3,重大なセクハラを原因とする懲戒解雇処分を合法とした裁判例

     

    (東京地方裁判所平成17年1月31日判決)

     

    事案の概要:

    男性上司が女性の部下2名に対し、飲食を共にした際に無理やりキスをしたり、深夜自宅付近まで押し掛けて自動車に乗せ車中で手を握る、残業中に胸をわしづかみにするなどしたケース。

     

    裁判所の判断:

    会社はこの男性上司を懲戒解雇し、裁判所も懲戒解雇は有効と判断しました。

     

     

    懲戒解雇処分は最も重い懲戒処分であり、従業員の不利益も大きいため、裁判トラブルに発展することが多くなっています。

    実際に懲戒解雇する際の注意点については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご確認ください。

     

     

    7,懲戒処分を行う際の手続きの流れ

    懲戒処分については手続きを正しく行うことも非常に重要です。

     

    (1)就業規則や労働協約の確認

    懲戒処分を行う際の手続きについては、まず、就業規則の記載を確認することが必要です。

    就業規則によっては、懲戒処分の際に、懲戒委員会を開いて審議するなどの手続きが定められているケースがあります。

    その場合は、就業規則に定められた手続きの通りに進めなければ懲戒処分が無効とされることがありますので注意が必要です。

    また、労働組合がある会社では、労働協約において、懲戒処分の際は労働組合と事前に協議することが定められていることがあります。

    このような場合は、必ず、事前に労働組合との協議を行う必要があります。

     

     

    (2)弁明の機会の付与

    懲戒処分にあたっては、対象従業員に対して、どのような問題で懲戒処分を予定しているかを通知したうえで、対象従業員の言い分(弁明)を聴く機会を与えることが必要であるとされています。

    これを「弁明の機会の付与」といいます。

    具体的には、会社から対象従業員に対して、懲戒対象として予定されている事実の内容を記載した「弁明通知書」を交付したうえで、対象従業員から「弁明書」を提出させることが必要です。

    最近の懲戒処分に関する裁判例では、このように対象従業員の言い分(弁明)を聴いたうえで、懲戒処分を決定したかどうかが、非常に重視される傾向にあります。

    弁明の機会を与えないでした懲戒処分は、裁判所で無効と判断されることが多いので、注意が必要です。

    筆者がご相談をお受けする中では、弁明の機会の付与を、簡単にメールなどで済ませてしまおうとするケースもありました。

    しかし、懲戒処分が裁判になれば、適切な方法で弁明の機会をあたえたかどうかについては、さかのぼって検証されることになりますので、弁明の機会の付与は必ず文書で行っておくべきです。

    また、簡単にメールで済ませるなどすると、会社の懲戒処分が軽くみられる原因になりかねません。その意味でも、弁明の機会の付与について文書で手続をすることは重要です。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    弁明の機会を付与するときは、単に弁明書を提出させればよいということではなく、弁明書を提出させる前提として、懲戒対象として予定されている事実の内容を具体的に懲戒対象者に通知することが必要です。

    この点に関連して、セクハラに関する懲戒処分を行う際には、被害者の氏名や被害者が訴えているセクハラ行為の内容やその日時を具体的に特定して懲戒対象者に伝えなければならないことを判示した裁判例として、京都市北部クリーンセンター懲戒免職控訴事件(大阪高等裁判所判決平成22年8月26日)があります。

    ・参照:「京都市北部クリーンセンター懲戒免職控訴事件」の判決内容

     

    (3)懲戒処分通知書の交付

    弁明の機会を与えた後は、対象従業員の弁明の内容も踏まえて、懲戒処分を決定し、懲戒処分通知書を従業員に交付することが必要です。

    また、譴責処分や減給処分、出勤停止処分などでは、懲戒処分の際に、対象従業員に始末書を提出させることが、就業規則に定められていることが多くなっています。

    その場合は、懲戒処分通知書に始末書の提出期限を記載して、始末書を提出させることが必要です。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    筆者がご相談をお受けする中では、懲戒処分の通知についても、簡単にメールなどで済ませてしまおうとされているケースがありました。

    しかし、本人に懲戒処分を受けたことを重く受け止めさせる意味でも、代表取締役名義の懲戒処分通知書を作成し、社印を捺印して、懲戒対象者に交付するべきです。また、懲戒対象者からは受領印をもらっておくべきです。

     

    8,社内での公表について

    懲戒処分を行った場合に、それを社内で公表することは、社内の従業員に、会社が規律違反行為に対しては制裁を科すことを明確に示して企業秩序を維持することに役立ちます。

    ただし、懲戒処分の公表については、公表が名誉棄損であるとして会社に損害賠償が命じられているケースが存在します。

    例えば、東京地方裁判所判決平成20年7月29日は、病院が医師に対して行った懲戒処分についてその内容を記載した書面を病院のホームページで公表したことは名誉棄損にあたるとして、200万円の慰謝料の支払いを命じています。

    懲戒処分の公表については、以下の点に注意してください。

     

    懲戒処分の公表時の注意点

    • 客観的事実のみを公表し、証拠がないことを公表したり、推測による公表をしない。
    • 社内の規律維持という観点から必要な範囲での公表にとどめ、懲戒対象者の氏名の公表は控える。また、詳細にわたる公表は控える。
    • セクハラ、パワハラなどの懲戒処分では、被害社員のプライバシーにも配慮する。
    • 社内での公表にとどめ、取引先等には通知しない。
    • 社内の掲示板などで公表する場合は、当日限りの掲示にとどめる。

     

    なお、懲戒対象者の氏名の公表を控えていても、公表内容から、事実上、誰が懲戒処分を受けたかが推測されてしまうケースもありますが、そういった事例でも、上記の注意点を守っていれば、名誉棄損にあたるとはされないのが最近の判例の傾向です。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    就業規則において、懲戒処分を社内で公表することがある旨の規定を事前に設けておくことも、社内での公表が違法とされないための重要なポイントの1つです。

    自社の就業規則をチェックしておきましょう。

     

    9,懲戒処分を受けた従業員の退職金はどうなるか?

    懲戒処分を受けた場合の従業員の退職金の扱いについては、自社の退職金規程を確認する必要があります。

     

    (1)けん責、戒告、減給、業務停止、降格などの場合

    けん責処分、戒告処分、減給処分、業務停止処分などの懲戒処分については、退職金には影響しないことが通常です。

    ただし、これらの処分に伴って、定期昇給が停止されるような制度を設けている会社は、懲戒処分を受けた場合に定期昇給が遅れる結果、懲戒処分を受けなかった場合と比較して退職金の額が減ることがあります。

    また、降格処分を受けた場合も、降格処分に伴い給与が減額されることにより、降格処分を受けなかった場合と比較して退職金の額が減ることがあります。

     

    (2)諭旨解雇や懲戒解雇の場合

    諭旨解雇や懲戒解雇の場合、退職金を減額したり、あるいは支払わないことを退職金規程に定めている会社が多くあります。

    その場合、諭旨解雇処分や懲戒解雇処分を受けた従業員は退職金が減額されたり、あるいは不支給とされるというデメリットを受けます。

    ただし、退職金の減額や一部不支給について、裁判所は、「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背信行為」があった場合に限り減額を認めるという考え方をとっています(大阪高等裁判所昭和59年11月29日判決)。

    このような考え方から、退職金規程に退職金の減額や不支給の規定があっても、裁判になれば、減額や不支給が認められず、会社が一部または全部の退職金の支払いを命じられるケースが多くなっています。

    退職金の減額や不支給に関する判例の状況については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

     

     

    なお、退職金規程や就業規則で、諭旨解雇処分や懲戒解雇処分の場合の減額や不支給の規定を設けていない場合は、諭旨解雇や懲戒解雇の場合であっても退職金を減額したり不支給とすることはできませんので注意してください。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    懲戒解雇や諭旨解雇の場面で、退職金の全部または一部を不支給とするケースでは、企業側が後日敗訴して退職金の支払いを命じられるケースも多いです。

    その際は、年6%の利息が付加されるうえ、訴訟対応の労力や費用を負担することになります。裁判トラブルにならないように、退職金の減額や不支給については必ず弁護士に事前にご相談いただくことをおすすめします。

     

    10,失業保険との関係

    懲戒解雇処分または諭旨解雇処分を受けた従業員は、失業保険(雇用保険)から「基本手当」の支給を受けることができます。

    普通解雇による離職者は、通常、「特定受給資格者」(いわゆる「会社都合」)として扱われ、自己都合退職の場合よりも給付日数が優遇されますが、自己の責めに帰すべき重大な理由による懲戒解雇や諭旨解雇のケースでは、この優遇がなく、自己都合退職と同じ扱いになります。

    基本手当の給付日数については、以下「ハローワーク」の公式サイトで詳しく説明されていますのでご参照ください。

     

     

    なお、けん責処分、戒告処分、減給処分、業務停止処分、降格処分など解雇を伴わない懲戒処分の場合は、懲戒処分を受けた対象者がその後に退職したとしても、通常は、失業保険の給付に影響することはありません。

    その際の退職の理由に応じて、いわゆる自己都合退職か、会社都合退職かが判断されることになります。

     

    11,履歴書への記載義務と転職への影響

    懲戒解雇処分や諭旨解雇処分を受けた従業員は、転職のための就職活動の際に、履歴書に記載して前職での処分歴を申告する義務があると理解されることが一般的です。

    過去の判例上も、前職での懲戒解雇歴を隠して就職した場合、そのことは、転職先において正当な解雇理由になると判断しているケースが多くなっています(名古屋高裁昭和51年12月23日判決、大阪地裁昭和62年2月12日決定、横浜地裁川崎支部昭和48年11月21日判決など)。

    そのため、懲戒解雇処分や諭旨解雇処分を受けたことが、転職や再就職の場面でハンディキャップになることがあります。

    一方、懲戒処分を受けた場合でも、けん責処分、戒告処分、減給処分、業務停止処分、降格処分などの処分にとどまる場合は、履歴書への記載や転職時の転職先への申告は義務ではないと理解されることが一般的です。

     

    12,懲戒処分に対する不服申し立てと裁判

    公務員に対する懲戒処分では、懲戒処分を受けた公務員からの不服申し立てを受け付ける制度を設けられています。

    一般の企業でも、公務員と同様に、就業規則で、懲戒処分を受けた場合の不服申し立て制度を設けているケースがあります。

    その場合は、従業員は、懲戒処分について不服申し立てをすることで、懲戒処分について、会社に再度の審査を求めることが可能です。

    また、懲戒処分を受けた従業員は、懲戒処分が不当であることを主張して、懲戒処分の無効の確認や、違法な懲戒処分をされたことについての損害賠償の請求を訴訟で求めることも可能です。

    実際に多くの訴訟が起こされ、冒頭でご紹介した事例のように、裁判所で企業が行った懲戒処分が無効と判断されたり、懲戒処分が違法であるとして企業に対して損害賠償が命じられるケースが多くあります。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

    懲戒処分について社内での不服申立制度を設けている会社は現状では一部に限られています。

    しかし、不服がある時にいきなり訴訟での判断を求めるのではなく、まずは、社内の不服申立制度の中で再審査することは、懲戒対象者にとっても、また企業にとってもメリットがあることであり、企業として、懲戒処分の不服申立制度を就業規則に明記することも検討に値します。

     

    13,懲戒処分について弁護士に相談したほうがよい理由

    懲戒処分について弁護士に相談したほうがよい理由

    従業員に問題行動があった場合、必要に応じて、懲戒処分を科すことは、社内の規律を維持するうえでも非常に重要であり、問題社員対応の基本でもあります。

    これをやらない会社は、会社の規律がルーズになり、経営者や上司の言うことを聴かずにモンスター化する社員が出てくるおそれがあります。

    しかし、一方で、懲戒処分は従業員に対する重い制裁であり、懲戒処分の撤回を求める従業員との間で訴訟トラブルに発展することは少なくありません。

    また、懲戒処分をきっかけに従業員が外部の労働組合(ユニオン)に加入し、処分の撤回を求める団体交渉を申し入れてくるというケースもあります。

     

     

    そのため、懲戒処分を行うにあたっては、まず、懲戒処分対象となる事実について十分な証拠を確保すること(「証拠の確保」)と、問題行動のレベルに応じた適切な懲戒処分を選択すること(「適切な懲戒処分の選択」)、正しい手続で懲戒処分を進めること(「正しい手続」)の3つが非常に重要になります。

    この3つができていないと、裁判で懲戒処分が無効であると判断されて、会社が懲戒処分をした従業員に対する慰謝料の支払いを命じられたり、あるいは、外部の労働組合からの団体交渉を申し入れられた結果、懲戒処分の撤回を余儀なくされるといった事態に至ります。

    しかし、この「証拠の確保」、「適切な懲戒処分の選択」、「正しい手続」について、企業の自己判断でやろうとしても、実際には間違いや抜けがあることが多いのが実情です。

    そのため、懲戒処分については、問題社員対応に強い弁護士に事前にご相談いただいたうえで、進めていただくことが必要です。

     

     

    (1)弁護士への相談により可能になること

    弁護士に事前に相談していただくことで、懲戒処分を行う前にどのような証拠を確保しておくべきか、すでに証拠を確保している場合は抜けがないかどうかという点を明確にすることができます。

    また、過去の裁判例や自社の過去の懲戒事例、あるいは同業他社の事例とのバランスを踏まえて、どのような懲戒処分を選択することが適切かを弁護士に相談することができます。

    さらに、懲戒処分を進める具体的な手順をどうすればよいかという点についても、明確にすることができます。

    これらの点は、懲戒処分があとで無効と判断されたり、あるいは外部の労働組合からの撤回要求で懲戒処分を撤回させられたりといった事態を防ぐために必要不可欠です。

    あわせて、懲戒処分の重要な手続きである「弁明の機会の付与」や「懲戒処分通知書の交付」の場面で、弁護士に同席を依頼することも可能です。

     

    14,問題社員対応に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績

    咲くやこの花法律事務所では、問題社員対応対応に関して多くの企業からご相談を受け、サポートを行ってきました。

    咲くやこの花法律事務所の実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。

     

     

    15,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら、「こんなサポートができます!」

    咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

    最後に、従業員の懲戒処分についての咲くやこの花法律事務所における企業向けサポート内容をご紹介します。

     

    (1)懲戒処分に関する事前相談

    前述の通り、懲戒処分については、 「証拠の確保」、「適切な懲戒処分の選択」、「正しい手続」の3つが重要です。

    咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルに強い弁護士が懲戒処分に関する事前相談を随時承り、個別の事情に応じて、証拠の確保や適切な処分の内容、行うべき手続等について具体的にわかりやすくアドバイスさせていただいております。

    懲戒処分をした後で、ご相談いただいても対応が難しいケースもあり、場合によっては、自己判断で進めた結果、懲戒処分を撤回せざるを得ない事態になってしまうこともあります。

    懲戒処分をご検討中の企業の方は、ぜひ事前にご相談ください。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士への相談料の例

    ●初回相談料:30分5000円+税

     

    (2)懲戒処分についての言い渡しの場への弁護士の同席

    懲戒処分の言い渡しは文書を交付して行いますが、手渡しする場合は従業員がその場で不満を述べたり反論をしてきたりすることがあります。

    そして、会社側の不用意な言葉がトラブルの原因となることもあり得ます。無用なトラブルを防止するためには、懲戒処分の言い渡しの場に専門家である弁護士も同席することが効果的です。

    咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルに強い弁護士が懲戒処分の言い渡しの場に同席し、会社側の立場で適切な応答をするなどして、懲戒処分の言い渡しをサポートしています。

    懲戒処分の言い渡しの際に従業員の反発が予想される場合や懲戒処分の言い渡しに不安があるときは、ぜひ咲くやこの花法律事務所のサポートサービスをご利用ください。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士による弁護士費用例

    ●初回相談料:30分5000円+税
    ●弁護士の同席費用:10万円程度~

     

    (3)懲戒トラブルの際の団体交渉への同席

    従業員に対して懲戒処分をした後、従業員が懲戒処分を不当であると考え、労働組合に加入して、団体交渉を求めてくるケースが増えています。

    ある日突然、労働組合から団体交渉を申し入れられて対応を迫られ、どのように対応すればよいかお困りの企業の方も多いと思います。

    団体交渉では、労働組合からの要求にどのように対応すべきか、団体交渉でまとまらずに裁判に発展したときにどのような見込みになるのかなど専門的な判断のもと、交渉に臨む必要があります。

     

    ▶参考:団体交渉については以下の記事も合わせてご覧下さい。

    ユニオン・労働組合との団体交渉の注意点と弁護士に相談するメリットや費用を解説

    合同労組との団体交渉の流れと進め方のポイントを会社側の視点で解説

     

    また、団体交渉には特有のルールがあり、それを守らなければ「不当労働行為」として組合から強い非難をあびることになります。

    咲くやこの花法律事務所では、これまで数多くの労働組合との団体交渉に同席し、対応してきました。

    団体交渉の申し入れがあった場合でも、咲くやこの花法律事務所にご相談いただければ、弁護士がベストな交渉戦略を提案し、団体交渉に同席してもっとも有利な解決を実現します。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士による弁護士費用例

    ●初回相談料:30分5000円+税
    ●懲戒トラブルに関する交渉:着手金30万円程度~

     

    (4)懲戒に関する裁判の際の企業側の対応

    咲くやこの花法律事務所では、懲戒処分後に従業員とトラブルになり、裁判を起こされた場合の対応について多くの実績があります。

    今回の記事でご紹介しましたように、懲戒処分に関するトラブルの対応には専門的な知識とノウハウが不可欠であるうえ、裁判所で懲戒処分が無効と判断されてしまうと、社内の規律を維持できません。

    このようなトラブルに発展してしまった場合でも、懲戒処分に関するトラブルに精通した弁護士がこれまでの豊富な経験を生かしてベストな解決に向けて対応します。

    懲戒処分に関するトラブルが生じたときは、ぜひ咲くやこの花法律事務所に対応をご依頼ください。労務トラブルに強い弁護士が迅速に対応し、適切な解決を実現します。

     

    咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士による弁護士費用例

    ●初回相談料:30分5000円+税
    ●懲戒に関する裁判対応:着手金40万円程度~

     

    16,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

    懲戒処分に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」のページをご覧下さい。

    また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

    【お問い合わせについて】
    ※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

     

    17,懲戒処分についてお役立ち情報も配信中(メルマガ&YouTube)

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    18,まとめ

    今回は、懲戒処分の種類と、懲戒処分をする際におさえておくべき3つのルールについてご説明しました。

    また、懲戒処分に関する最も重要なルールとなる「相当性のルール」に関し、具体的にどのようなケースでどの懲戒処分を選択するのがふさわしいのかについて、ご説明しました。

    重すぎず、軽すぎない、適切な処分をしなければならないことをおさえておきましょう。

     

     

    記事作成弁護士:西川 暢春
    記事更新日:2021年04月30日

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