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懲戒解雇とは?6つのケース例とリスクや進め方を解説。

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  • 懲戒解雇について詳しく解説。
    • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    • この記事を書いた弁護士

      西川 暢春(にしかわ のぶはる)

      咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
    • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

    こんにちは。弁護士法人咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

    会社が従業員を懲戒解雇する場合、どのような点に注意が必要でしょうか?

    懲戒解雇については、後日、解雇された従業員が不当解雇として会社に裁判を起こすケースが増えています。

    裁判の結果、不当解雇と判断され、企業側が以下のように多額の支払いを命じられるケースも多くなっています。

     

    事例1:
    日本ヒューレット・パッカード事件

    (平成23年1月26日東京高等裁判所判決)

     

    懲戒解雇が不当解雇と判断され、「約1600万円」の支払い命令

     

    事例2:
    りそな銀行事件

    (平成18年1月31日東京地方裁判所判決)

     

    懲戒解雇処分が不当解雇と判断され、「約1400万円」の支払い命令

     

    この記事では、このような裁判例の内容も踏まえ、具体的なケース例をあげながら、懲戒解雇の基本的な知識とリスク、進め方などについてご説明します。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    会社が従業員の懲戒解雇を行った後に、不当解雇であるとして従業員から訴訟を起こされ、敗訴するケースが増えています。不当解雇であると判断されて敗訴した場合、中小企業でも1000万円を超える支払いをしたうえで、元従業員を復職させることを命じられるケースが少なくありません。

    懲戒解雇を検討する場面は、会社にとって大きなリスクを伴う場面ですので、必ず事前に弁護士にご相談ください。

    咲くやこの花法律事務所への相談方法はこちら

     

    従業員に不正行為が有った場合の対応に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は以下をご参照ください。

    不正をした従業員について、弁護士が責任追及をし、退職してもらった事案

     

    横領の疑いがある従業員に対して、弁護士が調査を行って横領行為を認めさせ、退職させた解決事例

     

    ▼【動画で解説】西川弁護士が「懲戒解雇とは?具体例や企業側のリスクを弁護士が解説!」を詳しく解説中!

     

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    ▼【関連情報】懲戒解雇については、こちらの関連記事も合わせて確認してください。

    「解雇とは?」わかりやすく解説しています。

    解雇予告についての解説のまとめ

    懲戒処分とは?種類や選択の基準など詳しく解説

     

    ▼懲戒解雇について今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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    【全国顧問先300社以上】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

    【大阪の企業様向け】顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)について詳しくはこちら

     

     

    1,懲戒解雇とは?

    解雇には大きく分けて、「懲戒解雇」と「普通解雇」があります。

    懲戒解雇とは、解雇の中でも、従業員の「規律違反」に対する制裁として行われる解雇をいいます。

    社内の不正行為やルール違反に対する制裁として行われる点が、「普通解雇」との根本的な違いです。

     

    (1)典型的な懲戒解雇の事例6つ

    懲戒解雇は典型的には以下のような場面で行われます。

     

    1,業務上横領や金銭的な不正行為

    会社内で横領行為があったり、その他の金銭的な不正行為(経費の架空請求や発注先からのリベートの受領など)があったときに、その従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    2,転勤の拒否など重要な業務命令の拒否

    転勤命令など会社の重要な業務命令に従わない場合に、従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    3,無断欠勤

    無断欠勤が続いた場合に、従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    4,セクハラ

    他の従業員に対し、セクハラ行為をしたことを理由に、従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    5,パワハラ

    他の従業員に対し、パワハラ行為をしたことを理由に、従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    6,経歴詐称

    「職歴を偽っていたケース」など、入社時に会社に申告していた経歴が虚偽であったことを理由に、従業員を懲戒解雇するケースです。

     

    (2)懲戒解雇と普通解雇の違い

    以上のような懲戒解雇に対して、普通解雇は、「能力不足」や「病気による就労不能」などの場面で行われる解雇であり、「ルール違反に対する制裁」ではありません。

    そして、解雇の効果の面でも、懲戒解雇は、以下のように、普通解雇よりも、解雇される側にとってデメリットが大きいという特徴があります。

     

    • 懲戒解雇では対象者の退職金が減額されたり不支給になることがある
    • 懲戒解雇では対象者に解雇予告手当が支払われない場合がある
    • 懲戒解雇では対象者が失業保険の受給の面で不利になる。
    • 懲戒解雇されると再就職や転職の場面でも不利になる。

     

    詳細は以下で解説していきますが、最初に普通解雇との比較をまとめると以下の通りです。

     

    (3)懲戒解雇と普通解雇の比較一覧

    普通解雇 懲戒解雇
    主な解雇理由 ・病気による就業不能
    ・能力不足、成績不良
    ・協調性の欠如
    ・業務上横領
    ・重要な業務命令の拒否
    ・無断欠勤
    ・セクハラ、パワハラ
    ・経歴詐称
    目的 対象者との雇用関係の終了 対象者との雇用関係の終了+組織の規律維持、引き締め
    解雇予告手当 30日分の支払必要 支払不要の場合あり
    失業保険の給付日数 会社都合退職として給付日数について有利な扱いを受けることが多い 自己都合退職と同じ扱いとなり給付日数が短い
    退職金 退職金規程どおり 減額や不支給の場合あり
    転職への影響 懲戒解雇されたことを申告する義務があり、転職に不利

     

    なお、懲戒解雇と普通解雇の違いは以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

     

     

    2,懲戒解雇の目的

    懲戒解雇は普通解雇とは異なる目的があり、その内容は以下の通りです。

    「従業員全員に、懲戒解雇の原因となったセクハラ、パワハラ、横領などの問題行動に対して企業として厳しく対処することを明確に示し、企業秩序を維持する目的」

     

    このように、懲戒解雇は、企業全体の秩序を維持するという目的で行われるものである点で、解雇対象者個人との契約終了のみを目的として行われる普通解雇とは異なります。

     

    3,会社が懲戒解雇をするときのリスク

    会社が懲戒解雇をするときのリスク

    懲戒解雇は、解雇する側の会社にとっても大きなリスクがあります。

    会社は、「正当な理由」と「正当な手続」で懲戒解雇しなければ、あとで「不当解雇である」として、元従業員から訴えられるケースがあるためです。

    裁判所で「不当解雇」と判断されてしまうと、法律上、懲戒解雇が無効になります。

    そして、「懲戒解雇が無効となる」ことの具体的な意味は、以下の2つです。

     

    (1)不当解雇と判断されると従業員を復職させなければならない

    「懲戒解雇が無効となる」というのは、「懲戒解雇ははじめからなかったのと同じことになる」という意味です。

    つまり、懲戒解雇された従業員と会社は現在も雇用契約が続いていることになります。

    その結果、会社は従業員を復職させ、給与の支払いを再開する義務を負います。

     

    (2)不当解雇と判断されると給与をさかのぼって支払わなければならない

    会社は懲戒解雇の後、当然、解雇した従業員に給与を支払っていません。

    しかし、不当解雇と判断されると、懲戒解雇ははじめからなかったのと同じことになるので、「会社が従業員を解雇した後、従業員に給与を支払わなかった期間」について、さかのぼって、会社は従業員に給与を支払う義務を負います。

    これをバックペイといいます。バックペイ(back pay)とは「さかのぼって支払う」という意味です。

    このように、懲戒解雇が不当解雇であると判断された場合、会社は「従業員を復職させ、給与の支払いを再開すること」と「解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間についてさかのぼって給与を支払うこと」を義務付けられます。

    不当解雇については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてチェックしておきましょう。

     

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    会社が従業員を懲戒解雇して、従業員が不当解雇だとして会社に裁判を起こした場合、裁判は通常1年半くらいかかります。

    そして裁判の結果、不当解雇だということになれば、会社は「懲戒解雇後の従業員に給与を支払わなかった期間についてさかのぼって給与を支払うこと」、つまり、1年半分の給与を支払うことを命じられるのです。

    バックペイの金額は、冒頭の事例のように1000万円を超えるケースも珍しくなく、このバックペイの支払いが、会社が従業員を懲戒解雇する場合の大きなリスクです。

     

    参考事例1:
    日本ヒューレット・パッカード事件(平成23年1月26日東京高等裁判所判決)

     

    懲戒解雇が不当解雇と判断され、バックペイ「約1600万円」の支払い命令

     

    参考事例2:
    りそな銀行事件(平成18年1月31日東京地方裁判所判決)

     

    懲戒解雇処分が不当解雇と判断され、バックペイ「約1400万円」の支払い命令

     

    4,懲戒解雇する際の重要なチェックポイント

    懲戒解雇する際の重要なチェックポイント

    懲戒解雇があとで「不当解雇」とされないためには、以下の点をチェックしておく必要があります。

     

    (1)問題行動について十分な調査を行い証拠を確保できているか

    懲戒解雇は規律違反や問題行動に対する制裁として行われるものです。

    懲戒解雇が後日裁判トラブルになった時は、懲戒解雇の理由となった規律違反や問題行動について証拠があるのかということが必ず問題になりますので、事前に十分な調査と証拠の収集が必要です。

     

    1,具体例:横領での懲戒解雇の場合

    横領については、本人に対する事情聴取を行い、本人が横領を認める場合は、その手口や金額を書面に整理して本人に署名、捺印させ、横領の事実を証拠化する必要があります。

    また、もし、本人が横領を認めない場合は、書類や帳簿、預金の動きなどをもとに横領が証明できるかどうか、解雇対象者以外が犯人である可能性がないかどうか、などについて十分検討しておく必要があります。

     

    ▶参考情報:業務上横領での解雇についての注意点は、以下の記事もご参照ください。

    従業員の業務上横領での懲戒解雇に関する注意点!支払誓約書の雛形付き

     

    2,具体例:ハラスメントでの懲戒解雇の場合

    セクハラ、パワハラについては、解雇対象者本人や被害者、目撃者の事情聴取を行う必要があります。

    そのうえで、本人がハラスメントをした事実を認める場合は、その内容や日時を書面に整理して本人に署名、捺印させ、事実を証拠化する必要があります。

    また、もし、本人が認めない場合は、被害者や目撃者の証言が重要になりますので、これらについて書面で証拠化したうえで、セクハラあるいはパワハラがあったことを裁判でも証明できるかを検討しておく必要があります。

     

    ▶参考情報:セクハラやパワハラを理由とする解雇についての注意点は、以下の記事もご参照ください。

    セクハラ(セクシャルハラスメント)をした社員の解雇の手順と注意点

    パワハラ(パワーハラスメント)を理由とする解雇の手順と注意点

     

    3,具体例:無断欠勤での懲戒解雇の場合

    無断欠勤のような一見すると明らかに従業員側に落ち度があるような懲戒事由であっても、調査をするとハラスメントを受けて出勤できない状況に陥っていたケースなど、欠勤の原因が職場環境にあったことが発覚することもあります。

    このような場合は、会社側にも原因があるため、懲戒解雇しても不当解雇と判断される可能性が高いです。そのため、無断欠勤による懲戒解雇のケースでも、無断欠勤に至った経緯についてきっちりと調査をして証拠化しておくことが必要です。

     

    ▶参考情報:無断欠勤を理由とする解雇についての注意点は、以下の記事もご参照ください。

    無断欠勤社員への対応と解雇する場合の重要な注意点7つ

     

    (2)懲戒解雇理由に該当するかを検討する

    次に調査の結果判明した事実が、懲戒解雇理由に該当するかを検討する必要があります。

    以下の3点に特に注意して検討してください。

     

    1,就業規則の懲戒解雇事由を確認する

    過去の判例上、懲戒解雇は、就業規則に書かれている懲戒解雇事由に該当しない限りできないことが原則です(最高裁判所平成15年10月10日判決)。

    就業規則には懲戒解雇事由が列挙されている箇所があります。

    その部分を必ず確認して、懲戒解雇の対象としようとしている問題行動が就業規則の懲戒解雇事由にあたるかどうかを確認してください。

    就業規則については以下の記事(13,作成方法9: 「就業規則違反の場合の懲戒に関する規定」の作成方法)を参考にご覧ください。

     

     

    2,懲戒解雇が重すぎないかを検討する

    就業規則の懲戒解雇事由に該当しても、その問題行動の程度に対して懲戒解雇が重すぎる場合は、解雇後に従業員から訴訟を起こされた場合、裁判所で不当解雇と判断されてしまいます。

    そのため、事案の内容に照らして懲戒解雇が重すぎないか検討することが必要です。

    例えば、以下の事例では、懲戒解雇は重すぎるとして裁判所で不当解雇と判断されています。

     

    ▶参考例1:

    女性従業員に対してこれまでに性交渉をもった男性の人数を尋ねたり、枕営業をしているのかと発言した男性従業員をセクハラを理由に懲戒解雇したケース(東京地方裁判所平成28年7月19日判決)

     

    ▶参考例2:

    国立大学で部下9名のうち5名からパワハラ被害の申告があり、多くの部下が退職あるいは精神疾患に罹患するなどしたことを理由に、教授を懲戒解雇したが、パワハラの内容自体は軽微であったケース(前橋地方裁判所平成29年10月4日判決)

     

    どの程度重大な問題行為であれば懲戒解雇の正当な理由になるかについては、以下の解雇理由に関する記事でご説明していますのであわせてご確認ください。

     

     

    3,過去に懲戒した問題を理由に懲戒解雇はできない

    過去にすでに懲戒処分戒告や出勤停止、降格処分など)をした事実については懲戒解雇はできないというルールがあります。

    同じ事実について2回懲戒することは二重処罰となるためです。

    そのため、今回、懲戒解雇の対象としようとしている事実について、すでに懲戒処分が行われていないかを確認する必要があります。

     

    以上の3つの注意点を踏まえて、今回の問題行為が懲戒解雇理由に該当するかを検討してください。

     

    (3)就業規則上の手続きを確認する

    就業規則の中には懲戒について、以下のような手続が定められているケースがあります。

     

    ▶参考例1:

    「懲戒をする場合は懲戒委員会で審議する」などと定められているケース

     

    ▶参考例2:

    「懲戒をする場合は事前に従業員代表者あるいは労働組合と協議する」などと定められているケース

     

    懲戒解雇も懲戒の1種ですから、このように就業規則で懲戒についての手続きが定められているケースでは、その手続きを守ることが必要です。

    就業規則で決められている手続きを守らなければ、不当解雇になります。

    懲戒解雇に進む前に、懲戒について就業規則で手続が定められていないか確認しておく必要があります。

     

    (4)本人に弁明の機会を与える

    懲戒解雇では、懲戒解雇をする前に、本人に弁明の機会を与えることも重要です。

    「弁明の機会」とは、本人を呼んで、現在、問題行為(例えば「横領」や「セクハラ行為」など)について懲戒を検討していることを伝え、それについて本人の言い分を聴くことです。

    懲戒解雇後に、万が一不当解雇であるとしてその従業員から訴えられたときに、懲戒解雇の前に弁明の機会を与えたかどうかは、裁判所が不当解雇かどうかを判断するポイントの1つになります。

    本人の弁明を聴かずに懲戒解雇したケースでは、以下のように不当解雇と判断されているケースが多数存在します。

     

    ▶参考例1:

    出張拒否や正当な理由のない欠勤による懲戒解雇の事例で、解雇前に弁明の機会を与えなかったことなどを理由として不当解雇と判断し、会社に約710万円の支払いを命じたケース(平成20年2月29日東京地方裁判所判決)

     

    ▶参考例2:

    請求明細の改ざんなどを理由とする懲戒解雇の事例で、事情聴取は行っているものの最終的な弁明の機会を与えていないとして、不当解雇と判断し、会社に480万円の支払いを命じたケース(平成22年7月23日東京地方裁判所判決)

     

    このように、弁明の機会を与えたかどうかは裁判でも問題になります。

    弁明の機会を与えたことが証拠として残るように、本人から口頭で弁明を聴いた後、本人の言い分を記載した「弁明書」を提出させるのがベストです。

     

    5,従業員側のデメリットについて

    では、懲戒解雇された従業員側はどのようなペナルティを受けることになるのでしょうか?

    以下では、懲戒解雇された従業員側のデメリットについて確認しておきたいと思います。

     

    (1)解雇予告手当が支払われないケースがある

    一般に、企業が従業員を解雇する場合、30日前に「解雇予告」するか、30日分の「解雇予告手当」を支払うことが義務付けられています(労働基準法第20条)。

     

     

    しかし、懲戒解雇の場面では「労働基準監督署の解雇予告除外認定」という制度があり、一定の場合に、労働基準監督署の認定を受けることにより、30日前の予告や解雇予告手当の支払いの義務が免除されます。

     

     

    この制度が適用されるのは以下のケースです。

     

    ●労働基準監督署の除外認定の対象となるケース

    1,会社内の盗みや横領を理由とする解雇
    2,会社内で暴力をふるい、けがをさせたことを理由とする解雇
    3,経歴詐称を理由とする解雇
    4,2週間以上の無断欠勤による解雇

     

    これらのケースでは労働基準監督署の認定を受ければ、従業員を解雇言い渡しの当日に懲戒解雇することができます。

    そして、その場合に解雇予告手当の支払いは必要はありません。 そのため、懲戒解雇された従業員には、解雇予告手当が支払われないケースがあります。

     

    (2)懲戒解雇後は有給休暇は使えない

    懲戒解雇の言い渡し当日に従業員を解雇する場合、従業員に有給休暇が残っていることがあります。

    しかし、この場合でも有給休暇を取らせたり、あるいは有給休暇の残日数を買い取ったりする必要はありません。

    有給休暇はあくまで在職中にとるべきものであり、懲戒解雇をした日に消滅するためです。

     

    (3)退職金が減額されたり不支給となることがある

    懲戒解雇の場合、退職金を減額したり、あるいは支払わないことを退職金規程に定めている会社が多くあります。

    その場合、解雇された従業員は退職金が減額されたり、あるいは不支給とされるというデメリットを受けます。

    退職金規程を定めている会社では、懲戒解雇の前に、自社の退職金規程で懲戒解雇の場合に退職金を減額あるいは不支給とする条項が入っているかを確認しましょう。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    懲戒解雇の場合の減額や不支給の規定がない場合は、懲戒解雇であっても退職金を減額することはできませんので注意してください。

    また、減額や不支給に関する規定がある場合であっても、裁判所は、「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背信行為」があった場合に限り減額を認めるという考え方をとっています(大阪高等裁判所昭和59年11月29日判決)。

     

    このように、退職金規定に減額や不支給の規定があっても、実際に減額あるいは不支給としていい場面かどうかについては判例上の制限がありますので、事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

    不支給とするべきではないのに不支給とした場合、後で裁判所から支払いを命じられ、その際は年6%の利息が課されますので注意してください

    退職金の減額や不支給については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

    懲戒解雇の場合に退職金の不支給は違法か?詳しく解説します!

     

    (4)懲戒解雇されると転職・再就職でも不利になる

    懲戒解雇されると、転職や再就職の場面でも、ハンディキャップがあります。

    なぜなら、転職や再就職の場面で、懲戒解雇された従業員は、懲戒解雇されたことについては履歴書に記載するなどして転職先に申告する義務があるからです。

    懲戒解雇されたことを黙って転職すると、あとで転職先から解雇されることがあります。

    過去の判例上も、前職での懲戒解雇歴を隠して就職した場合、そのことは、転職先において正当な解雇理由になると判断しているケースが多くなっています(名古屋高裁昭和51年12月23日判決、大阪地裁昭和62年2月12日決定、横浜地裁川崎支部昭和48年11月21日判決など)。

    このようなことから、懲戒解雇されると、従業員は転職にあたり不利になります。

     

    「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
    会社としては、懲戒解雇の対象者が競合他社に転職する場合、情報の持ち出しなどがないように十分注意する必要があります。

    退職者により情報の持ち出しについては、以下の参考情報も合わせてご覧ください。

    顧客情報・顧客名簿の情報持ち出しから会社を守る正しい管理方法

    退職者による機密情報、顧客情報の持ち出しで会社が取るべき対応とは?

     

    (5)失業保険の受給でも普通解雇より不利になる

    解雇された従業員は、失業保険(雇用保険)から「基本手当」の支給を受けることができます。

    この「基本手当」の給付日数は、従業員の年齢、雇用保険に加入していた期間の長さ、離職の理由などによって決定され、「90日~360日」の間でそれぞれ決められます。

    普通解雇による離職者は、通常、「特定受給資格者」(いわゆる「会社都合」)として扱われ、自己都合退職の場合よりも給付日数が優遇されます。

    しかし、自己の責めに帰すべき重大な理由による懲戒解雇のケースでは、この優遇がなく、自己都合退職と同じ扱いになります。

    このように、懲戒解雇された従業員は、失業保険の受給の面でも、普通解雇された場面よりも不利な扱いをうけることになります。

    なお、基本手当の給付日数については、以下「ハローワーク」の公式サイトで詳しく説明されていますのでご参照ください。

     

     

    (6)従業員の家族の生活にも影響が出る

    このように懲戒解雇は、解雇予告手当や退職金が支払われないことも多く、また失業保険の受給についても一般の解雇よりも不利です。

    そのため、解雇対象者に扶養する家族がいる場合は、従業員の家族の生活にも大きな影響が出ることがあります。

     

    6,即日行うべき!手続きの流れを解説します。

    懲戒解雇手続きの一般的な手続きの流れは以下の通りです。

     

    (1)懲戒解雇前の事前検討と弁明の機会の付与。
    (2)懲戒解雇通知書を作成する。
    (3)従業員に懲戒解雇を伝える。
    (4)職場内で懲戒解雇を発表する。
    (5)失業保険の離職票などの手続きをする。

     

    なお、懲戒解雇についても、「予告解雇」といって、例えば解雇の30日前に従業員に懲戒解雇を予告してから解雇することもできます。

    しかし、それでは、懲戒解雇の予告を受けた後も、解雇対象者が社内にとどまることになり、社内の他の同僚に会社のネガティブな噂を流したり、あるいは社内の機密情報を持ち出そうするなど様々なリスクがあります。

    そのため、懲戒解雇は予告せずに、懲戒解雇を告げたその日に解雇することを原則とするべきです。

    これを即日解雇と言います。

    以下では、即日解雇を前提に懲戒解雇の手続きの流れを説明します。

     

    (1)懲戒解雇前の事前検討と弁明の機会の付与

    まず、懲戒解雇の前に以下の点を検討する必要があります。

     

    • 問題行動について十分な調査を行い証拠を確保できているか
    • 懲戒解雇理由に該当するかどうか
    • 就業規則上、懲戒解雇の手続きについて定めがないかどうか
    • 本人に弁明の機会を与えたかどうか

     

    これらの点については、「4,懲戒解雇をする際の重要なチェックポイント」で解説しましたので確認してください。

     

    (2)懲戒解雇通知書を作成する

    次に、解雇通知書を作成します。

    これは、従業員に懲戒解雇を言い渡した後に、解雇通知書を渡す必要があるためです。

    「解雇通知書の記載例」を以下からダウンロードできますので参照してください。

     

    「解雇通知書の記載例」をダウンロードはこちらから

     

    (3)従業員に懲戒解雇を伝える

    従業員を別室に呼んで懲戒解雇を伝えます。

    具体的な伝え方を以下の記事で解説していますので参照してください。

     

     

    懲戒解雇通知書は事前にコピーをとっておき、従業員に受け取りのサインをもらいましょう。

    なお、従業員が出勤していない場合は、内容証明郵便で自宅に送付します。

    内容証明郵便についてはこちらで詳しく解説していますのでご確認ください。

     

     

    (4)職場内で懲戒解雇を発表する

    本人に解雇を通知したら、職場内で懲戒解雇を発表します。

    「懲戒解雇」には、単に本人に制裁を加えるという目的だけでなく、会社として問題行動や就業規則違反については厳正な対応をすることを本人以外の従業員にも示すことで、企業秩序を引き締めるという意味があります。

    そのため、懲戒解雇の理由についても、職場内で簡潔に発表することが適切です。

     

    (5)失業保険の離職票などの手続きをする。

    解雇後は失業保険受給のための離職票発行などの手続きを行います。

    解雇後に一般的に必要となる手続きは以下のとおりです。

     

    (1)離職票等「ハローワーク」の手続き
    (2)会社の社会保険から出る手続き(健康保険と年金)
    (3)源泉徴収票の交付
    (4)住民税の特別徴収を停める手続き
    (5)最後の給与の支払い
    (6)除外認定を受けない場合の解雇予告手当の支払い
    (7)退職金規定があり、不支給とならない場合の、退職金の支払い
    (8)従業員から請求があった場合の解雇理由証明書の交付

     

    これらの手続きについては以下の記事で詳しく解説していますのでご確認ください。

     

     

    (6)【補足】懲戒解雇の場合の離職票の手続きについて

    離職票については会社が離職理由を記載する欄がありますが、懲戒解雇の場合、通常は、離職理由欄を4(2)の「重責解雇」とした離職票を発行してハローワークに送付します。

     

     

    懲戒解雇された従業員も失業保険を受け取ることはできますが、その内容は、前述の通り、普通解雇の場合よりも不利なものになります。

    失業保険が出るまでの期間が長くなり、かつ、失業保険をもらえる日数が減ることになります。

     

    以上が、懲戒解雇手続きの流れです。

     

    7,不当だとして訴えられたときの対処方法

    では、懲戒解雇後に、会社が不当解雇で訴えられた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

    以下でみていきたいと思います。

     

    (1)「訴えられた」種類をまずは確認する

    不当解雇で訴えられたといっても、以下のように様々なケースがあります。

    どのケースかによって、会社として準備するべき内容が違うため、まずはどのケースかを正確に確認することが必要です。

     

    訴えられた「種類」 会社の対処方法、準備事項
    ・本人から不当解雇だという文書が届いた場合

    弁護士から不当解雇だという内容証明郵便が届いた場合

    すぐに弁護士に相談して対処方針を決定する必要があります。

    ・裁判に発展するリスクを覚悟のうえで会社としての正当な解雇であることの主張をしていくのか

    ・裁判前に一定の金銭を支払うことと引き換えに雇用契約を終了する方向で和解することを目指すのか

    を決める必要があります。
    本人が労働組合に加入し、労働組合から懲戒解雇について団体交渉を申し込まれた場合 組合が指定する団体交渉の日時に応じるかどうか、場所や出席者をどうするか、会社側弁護士に立ち会ってもらうかなどを検討する必要があります。

    また、団体交渉の中で、懲戒解雇の理由を説明していくことが必要になるため、その準備を進める必要があります。

    労働審判を起こされた場合 裁判所の書類の中に答弁書の提出期限がかかれた用紙が入っています。その提出期限までに十分な会社側の反論書面と反論証拠を提出することが必要です。

    労働審判は、日程が非常にタイトな手続のため、早急に弁護士に相談してください。

    訴訟を起こされた場合 裁判所の書類の中に答弁書の提出期限がかかれた用紙が入っています。その提出期限までに会社側の反論書面を提出することが必要です。

    労働訴訟は1年から2年かかる長期戦になることも多いです。会社側で出せる証拠、証人を洗い出したうえで、会社側の反論を整理していく必要があります。

     

    上記で記載の「団体交渉」や「労働審判」については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にご覧下さい。

     

     

    (2)いずれにしても重要なのはすぐに弁護士に相談すること

    前述の通り、裁判所で懲戒解雇が不当解雇と判断された場合、会社は従業員を復職させたうえで、「バックペイ」を支払う必要があります。

    このバックペイは、「会社が従業員を解雇した後、従業員に給与を支払わなかった期間の給与」の支払いを会社に命じるものです。

    そのため、「解雇から日がたてばたつほど、支払額がふくらむ点」に特徴があります。

    このように、不当解雇であるとして訴えられた場合のリスクは、日を追うごとに増えていくという特徴があります。

    そのため、できる限り早く、できれば裁判になる前の段階で弁護士に相談することによって、早期にトラブルを解決することが非常に重要になります。

    不当解雇であるとして訴えられたら一刻も早く、専門の弁護士に相談するべきです。

    なお、不当解雇で訴えられた場合の、裁判での会社側の対応のポイントについては以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

     

     

    8,咲くやこの花法律事務所なら、「こんなサポートができます」

    咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

    最後に、咲くやこの花法律事務所の弁護士による、懲戒解雇に関する企業向けサポート内容についてご説明したいと思います。

    咲くやこの花法律事務所のサポート内容は以下の通りです

     

    (1)問題行為の調査や解雇の進め方についてのご相談
    (2)懲戒解雇の際の面談の立ち会い
    (3)懲戒解雇後のトラブルに関する交渉、裁判

     

    以下で順番に見ていきましょう。

     

    (1)問題行為の調査や解雇の進め方についてのご相談

    「咲くやこの花法律事務所」では、問題行為の調査や解雇の進め方についてのご相談を、企業から常時お受けしています。

    具体的には以下のような項目について、各企業からご相談をいただいています。

     

    • 懲戒解雇前の問題行為の調査や証拠収集に関するご相談
    • 解雇予告通知書や解雇理由書の作成に関するご相談
    • 懲戒解雇した場合のリスクの程度に関するご相談
    • 懲戒解雇の具体的な方法に関するご相談

     

    懲戒解雇は、後日裁判トラブルに発展することも多く、敗訴すると、冒頭で裁判例をご紹介した通り、1000万円を超える支払いを命じられることもあります。

    自社でよく検討しているつもりでも、思わぬところに落とし穴があることが常ですので、必ず解雇前にご相談いただくことをおすすめします。

     

    咲くやこの花法律事務所の解雇問題に強い弁護士への相談料

    ●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

     

    (2)懲戒解雇の際の面談の立ち会い

    「咲くやこの花法律事務所」では、企業のご要望に応じて、懲戒解雇を言い渡す際の従業員との面談への立ち会いも行っております。

    解雇の問題に精通した弁護士が立ち会うことで自信をもって懲戒解雇を進めることが可能になります。

    また、弁護士が面談内容を記録することにより、後で「言った、言わない」の問題になることを防ぐことができます。

    不安がある方はぜひ気軽にご相談ください。

     

    咲くやこの花法律事務所の解雇問題に強い弁護士への相談料や立ち会い費用

    ●初回相談料:30分5000円+税
    ●弁護士による立ち会い:10万円程度~

     

    (3)懲戒解雇後のトラブルに関する交渉、裁判

    「咲くやこの花法律事務所」では、懲戒解雇した従業員とのトラブルに関する交渉や裁判のご依頼も常時承っています。

    懲戒解雇した従業員が不当解雇であるとして復職を求めたり、会社に金銭を請求してくるという場面では、弁護士が従業員との交渉を会社に代わって行います。

    解雇トラブルに精通した弁護士が交渉にあたることで、御社に最大限有利な内容での解決が可能です。

    また、解雇トラブルが裁判に発展してしまった場合においても、咲くやこの花法律事務所の解雇トラブルに精通した弁護士がこれまでの豊富な経験を生かしてベストな解決に導きます。

    問題が深刻化する前のスピード相談がポイントです。懲戒解雇後のトラブルでお困りの方は、早めに「咲くやこの花法律事務所」までご相談下さい。

     

    咲くやこの花法律事務所の解雇問題に強い弁護士への相談料や解雇トラブルの対応料金

    ●初回相談料:30分5000円+税
    ●解雇トラブルに関する交渉:着手金20万円程度~
    ●解雇トラブルに関する裁判:着手金40万円程度~

     

    9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

    懲戒解雇に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」をご覧下さい。

    また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

    【お問い合わせについて】

    ※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

    「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

     

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    記事作成弁護士:西川 暢春
    記事更新日:2020年02月05日

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