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労働基準法第20条とは?条文と内容についてわかりやすく解説

労働基準法第20条とは?条文と内容についてわかりやすく解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
労働基準法第20条の内容について調べていませんか?

労働基準法第20条は、解雇に関する以下の事項について定めています。

  • 解雇予告
  • 解雇予告手当
  • 解雇予告除外認定

 

そして、解雇の場面において、労働基準法20条が適用されるかどうかは、その従業員の雇用形態等によっても異なります。雇用形態によっては、雇い入れ後一定の期間、労働基準法20条の適用対象にならないことがあります。

この記事では、労働基準法第20条が定めるルールについて説明したのち、アルバイトや派遣社員、試用期間中の従業員などの解雇予告についても解説します。

従業員の解雇については、長期にわたる深刻な労使トラブルになる例が少なくありません。解雇の手続きに不備があったといわれないためにも、今一度、労働基準法第20条が定める解雇のルールについて、確認してみましょう。

 

▶参考情報:なお、解雇についての一般的な解説は、以下をご参照ください。

解雇とは?わかりやすく弁護士が徹底解説【まとめ】

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

この記事では、解雇の場面で守るべき労働基準法第20条のルールについて解説しています。しかし、解雇については労働基準法第20条のルールを守ればそれでよいわけではありません。有効な解雇をするには解雇に「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当である」と認められることが必要です。従業員が「不当解雇」であると主張し、解雇の有効性が裁判で争われた場合は、解雇の理由や解雇の相当性が厳しく判断されることに注意が必要です。

解雇予告期間を正しく設けて解雇をしたとしても、裁判で解雇が無効と判断された場合は、その従業員を復職させたり、働けなかった期間の賃金をさかのぼって支払わなければなりません。

従業員の解雇は企業にとってリスクの大きい場面なので必ず事前に弁護士に相談してください。咲くやこの花法律事務所でも解雇トラブルに精通した弁護士が事業者側の立場に立って専門的なサポートを提供していますので、お困りの際はご相談ください。

 

▶参考情報:従業員の解雇について会社が弁護士に相談する必要性と弁護士費用

 

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1,労働基準法第20条とは?条文を解説

労働基準法第20条とは?条文を解説

労働基準法第20条とは、使用者が労働者を解雇する際における、解雇予告のルールを定めています。

 

(1)労働基準法第20条の条文

労働基準法第20条の条文は以下の通りです。

 

▶参考情報:労働基準法第20条

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

このように、労働基準法第20条では、①解雇予告、②解雇予告手当、③解雇予告除外認定について定められています。

 

労働基準法第20条における解雇予告のルール

 

それぞれの内容は以下のとおりです。

 

1,解雇予告(労働基準法第20条1項)

会社は、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に解雇を予告する必要があります。これを解雇予告といいます。詳しくは「2,正社員への解雇予告について」でご説明します。

 

2,解雇予告手当(労働基準法第20条1項)

会社は、予告なしに従業員を解雇する場合に、30日分以上の平均賃金を支払うことが義務付けられています。これを「解雇予告手当」といいます。ただし、解雇を告げてから予告期間を設けた場合は、その予告期間の日数分を30日から引くことができます。

詳しくは「3,解雇予告手当のルールについて」でご説明します。

 

3,解雇予告除外認定(労働基準法第20条1項但書)

会社が労働基準監督署長に申請して解雇予告の除外認定を受けた場合は、解雇予告の義務や予告手当の支払義務は免除されます。これが解雇予告除外認定です。詳しくは「4,解雇予告除外認定とは?要件を解説」でご説明します。

 

(2)労働基準法第20条と民法の関係

民法第627条1項によれば、使用者あるいは労働者が労働契約を解約する際は、2週間の予告期間をおけば良いとされています。

 

▶参考情報:民法第627条1項

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

・参照元:「民法」の条文はこちら

 

一方で、使用者からの労働契約の解約、つまり解雇の際の予告期間については、労働基準法第20条で規定が設けられています。解雇の場面においては、通常、労働基準法の適用があり、その場合には、民法よりも労働基準法が優先され、労働基準法第20条が適用されます。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

労働基準法の適用の対象とならない雇用もあります。そのような雇用における解雇については、民法第627条1項が適用されます。

例えば、家事使用人の雇用や、同居の親族のみを使用する事業における雇用については労働基準法が適用の対象となりません(労働基準法第116条2項)。そのため、その解雇には民法第627条1項が適用されます。

 

(3)労働基準法第20条に違反した場合の罰則

労働基準法第20条に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑の対象になります(労働基準法第119条1号)。

 

2,正社員への解雇予告について

労働基準法第20条1項において解雇予告の義務が定められています。会社が従業員を解雇する場合は、原則として解雇日の30日前までに解雇を予告することが必要です。これを「解雇予告」といいます。

この30日の予告期間は、勤務日だけでなく休日も含まれます。例えば土日が休日の企業の場合は、この土日も予告期間に算入することができます。

また、以下に該当する場合は解雇予告義務の対象外であり、解雇予告をする必要がありません。

 

  • 解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払って解雇する場合(労働基準法20条1項)
  • 試用期間中の従業員で雇用開始後14日以内に解雇する場合(労働基準法第21条4号)
  • 解雇予告除外認定制度による除外認定を受けた場合(労働基準法第20条1項但書)

 

▶参考情報:解雇予告の具体的な方法や重要な注意点を以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

解雇予告とは?わかりやすく徹底解説

 

なお、解雇予告は、従業員が正社員でなくても必要です。ただし、アルバイト等については、一定の場合に解雇予告が不要となることがあります。詳しくは「5,アルバイトやパートの場合も解雇予告義務の対象?」でご説明します。

 

3,解雇予告手当のルールについて

労働基準法第20条1項は解雇予告手当についても定めています。「解雇予告手当」とは、従業員を予告なしに解雇する場合に、支払が義務付けられる金銭のことです。解雇は原則として30日以上前に予告する必要がありますが、解雇を伝えた当日に解雇する「即日解雇」も可能です。その場合は、予告期間を設ける代わりに、30日分の平均賃金を支払うことが義務付けられています。

 

▶参考情報:即日解雇については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

従業員を即日解雇する場合に会社が必ずおさえておくべき注意点

 

また、例えば、解雇日の10日前に解雇を予告した場合は、30日から10日を差し引くことができ、平均賃金の「20日分」を支払えばよいことになっています。つまり、解雇予告手当のルールは以下の通りとなります。

 

▶参考:解雇予告手当のルールについて

解雇を言い渡す日 解雇予告手当の支払額
解雇日の当日に解雇を言い渡す場合 平均賃金の30日分以上を支払う
解雇日の1日前から29日前に解雇を予告する場合 予告期間が30日に足りなかった日数分の平均賃金を支払う
解雇日の30日以上前に解雇を予告する場合 支払う必要がない

 

解雇予告手当の金額は、「平均賃金」に「予告期間が30日に足りなかった日数」をかけることで計算することができます。

 

「解雇予告手当 = 平均賃金 × 予告期間が30日に足りなかった日数」

 

解雇予告手当の具体的な計算方法や支払日、所得税の処理などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

 

4,解雇予告除外認定とは?要件を解説

労働基準法第20条1項但書は解雇予告の除外認定について定めています。「解雇予告の除外認定」とは、災害等のやむを得ない事情で事業を続けられなくなった場合や、解雇の理由が従業員の重大または悪質な行為等によるものである場合に、事前に労働基準監督署長の認定を受けることで、解雇予告をすることなく、労働者を即日解雇することができる制度のことです。

 

(1)解雇予告除外認定の要件(労働基準法第20条1項但書)

労働基準法第20条1項但書では、解雇予告除外事由として以下の2つの事由を定めています。2つのうちどちらかに該当する場合に解雇予告の除外認定を受けることができます。

 

  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合

 

この「天災事変その他やむを得ない事由」とは、火災や震災等による建物の倒壊・焼失など、使用者として社会通念上必要な対策等を講じていたとしても、改善しようがない状況のことをいいます。また、「労働者の責に帰すべき事由」とは、経歴詐称や、横領、2週間以上の無断欠勤など、重大かつ悪質な事由をいい、単に就業規則違反があるというだけでは必ずしも除外認定を受けられるとは限りません。

 

(2)労働基準監督署長の認定が必要(労働基準法第20条3項)

労働基準法第20条3項は、「前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。」と定めています。

ここでいう「前条第二項の規定」とは、労働基準法第19条2項のことであり、「前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。」と定める条文を指しています。つまり、この労働基準法第20条3項は、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に解雇予告もせず、解雇予告手当も支払わずに解雇する場合は、行政官庁の認定を受けなければならないことを定めています。ここでいう「行政官庁」は労働基準法施行規則第7条により、「労働基準監督署長」とされています。

ここまでご説明した点を整理すると、解雇予告義務から除外されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

 

① 以下のいずれかに該当する除外認定事由があること

  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能な場合
  • 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

② 労働基準監督署長の認定を受けていること

 

解雇予告除外認定が認められる基準や具体的な手続きについては、以下の記事で解説していますので、ご参照ください。

 

 

5,アルバイトやパートも解雇予告義務の対象?

では、アルバイトやパートの場合でも解雇予告は必要なのでしょうか。

 

(1)アルバイトやパートの場合でも、基本的には解雇予告が必要

アルバイトやパートも、労働基準法第20条における「労働者」に該当し、解雇の場合に予告が必要な対象となります。

というのも、労働基準法第9条で、労働基準法における「労働者」の定義は、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定められています。

 

▶参考情報:労働基準法第9条

第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

そのため、原則として、アルバイトやパートであっても、解雇する際には30日前の予告あるいは30日分の解雇予告手当の支払が必要となります(労働基準法第20条1項)。

 

(2)アルバイトやパートに解雇予告が不要となる場合

一方で、以下に該当するアルバイトやパートについては、解雇予告の義務の対象外となります(労働基準法第21条)。

 

  • 1.日雇いの労働者
  • 2.2か月以内の期間を定めて使用される者
  • 3.季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(例:冬における除雪作業や、夏の海水浴場での監視業務など)
  • 4.試用期間中の者

 

ただし、上記に該当する労働者であっても、以下の場合には、解雇予告義務の対象になります。

 

  • 1.日雇いの労働者が1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
  • 2.2か月以内の期間を定めて使用される者が2か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
  • 3.季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者が4か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
  • 4.試用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合

 

これをまとめると以下の通りです。

 

▶参考:アルバイトやパートの解雇予告義務について

以下に該当する労働者は、
解雇予告義務の対象外


ただし

ただし、以下の条件に該当する場合は、
解雇予告義務の対象になる
1.日雇いの労働者 1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
2.2か月以内の期間を定めて使用される者 2か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
3.季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者 4か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
4.試用期間中の者 14日を超えて引き続き使用されるに至った場合

 

▶参考情報:労働基準法第21条

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

6,労働基準法第20条に関する裁判例

次に、労働基準法第20条に関する裁判例をご紹介します。

 

(1)労働基準法第20条違反の解雇について、解雇予告手当の支払を命じつつも、解雇自体は有効と判断された事例

 

1,トライコー事件(東京地方裁判所判決平成26年1月30日)

●事案の概要

経理業務等の代行サービスを提供する会社に務めていた従業員が、即日解雇されたことを受けて、解雇は無効であり、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇された日から判決日までの賃金の支払および慰謝料120万円を請求した事件です。この従業員は、取引先への提出期限を守らず、連絡もしないなどの職務懈怠があり、取引先から担当者を変更するように言われるなど、社内で問題になっていました。問題行動があるたびに会社から指導をしたにもかかわらず、改善が見られませんでした。

 

●裁判所の判断

裁判所は、解雇は有効であり、即日解雇から30日後に効力を生じると判断しました。この事件における解雇は、労働基準法第20条所定の解雇予告期間を設けない即日解雇であったところ、会社側は解雇予告手当を支払っていませんでした。しかし、裁判所は「解雇予告期間をおかず、解雇予告手当の支払をしなかったこと、解雇理由を速やかに通知しなかったことから、直ちに解雇の効力が否定されるものではな」いとして、解雇は有効であると判断しました。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

労働基準法第20条に違反した解雇の効力について、最高裁判所判決昭和35年3月11日は、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、解雇の通知後30日を経過するか、通知後に予告手当の支払いをしたときから解雇の効力を生ずるとしています。上記のトライコー事件もこの最高裁判例に従って判断したものです。

・参照:「最高裁判所判決昭和35年3月11日」の判決内容はこちら

 

(2)解雇予告後に就労を取りやめたことを理由に解雇予告手当の請求をすることはできないとされた事例

 

1.医療法人大生会事件(大阪地方裁判所判決平成22年7月15日)

●事案の概要

医療法人で勤務していた従業員が、解雇予告を受けた後、給与を合意なく減額されるなどして就労が困難な状況に追い込まれたとして、就労を取りやめた日から解雇日までの期間における解雇予告手当の支払いを請求した事件です。

時系列は以下の通りです。

日付 使用者側の対応
3月10日 タイムカードを取り上げる
3月14日 従業員に対して解雇予告をする
3月27日 合意なく減額した給与明細を渡す
3月28日 従業員が就労を拒否
4月14日 解雇日

従業員は、この3月28日から4月14日までの期間の解雇予告手当を請求しました。

 

●裁判所の判断

裁判所は、法人によるタイムカード取り上げ等の行為は不法行為であると判断しましたが、解雇予告手当についての従業員の請求は認めませんでした。裁判所は、解雇予告手当は、解雇予告の期間が30日に満たない場合に発生するものであるところ、本件における解雇予告は解雇日の30日以上前に行われたものであるから、解雇予告期間中に労務の提供を取りやめたからといって解雇予告手当の請求をすることはできないと判示しました。

 

7,派遣社員にも労働基準法第20条が適用されるのか?

派遣社員の解雇についても労働基準法第20条が適用され、派遣元は30日以上前の解雇予告の義務または30日分以上の解雇予告手当の支払義務を負うことが原則です。

ただし、有期雇用の派遣社員の雇用を期間満了で終了することは、解雇ではなく「雇止め」になります。この雇止めには労働基準法第20条は適用されません。もっとも、有期雇用社員の雇止めであっても、以下の「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」によって、「契約を3回以上更新し、または1年を超えて継続勤務している者について雇用契約を更新しない場合」は、30日前に予告することが必要です。

 

▶参考情報:有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準

第二条 使用者は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。

・参照元:「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」の条文はこちら

 

また、派遣社員の解雇については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

8,試用期間中の解雇には予告は必要か?

前述のとおり、試用期間中の従業員を入社から14日以内に解雇する場合は、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いは義務付けられておらず、労働基準法20条の適用対象外です(労働基準法第21条4号)。一方で、試用期間中であっても、入社から14日を超えている場合は、解雇予告あるいは解雇予告手当の支払が必要となります(労働基準法第21条但書)。そして、この14日という期間は、勤務日のみではなく、休日も含まれることに注意が必要です。

なお、試用期間中の解雇は、試用期間を満了して本採用された従業員の解雇よりも広い範囲で有効性が認められますが、試用期間中の解雇を無効と判断した裁判例も数多く存在します。14日以内であれば解雇予告は必要ありませんが、だからといって安易に解雇すれば解雇は無効(不当解雇)であるとして敗訴する危険があります。試用期間中であっても解雇は必ず事前に弁護士に相談したうえで行ってください。

 

▶参考情報:試用期間中の解雇については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

試用期間中の解雇についておさえておくべき注意点を解説

 

9,フリーランスとの業務委託契約の解除と労働基準法第20条

労働基準法第20条は労働者の解雇の場合にのみ適用される条文です。そのため、会社がフリーランスに業務委託をしている場合にその業務委託契約を解除する場面では、労働基準法第20条の解雇予告義務は適用されません。

ただし、フリーランスについては、フリーランス保護法により、労働基準法と類似の保護をフリーランスに与える規定が設けられています。フリーランス保護法により、6か月以上の継続的業務委託契約を解除する場合は、災害その他やむを得ない事由により予告が困難な場合等を除き、30日以上前に予告することが義務付けられていますので注意してください。

 

▶参考情報:フリーランス保護法第16条1項

特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。次項において同じ。)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。

 

フリーランス保護法については以下で解説していますのでご参照ください。

 

 

10,咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所では、事業者から解雇に関連した種々のご相談・ご依頼を承っています。最後に、咲くやこの花法律事務所のサポート内容をご紹介します。

 

(1)解雇全般に関するご相談・ご依頼

咲くやこの花法律事務所では、解雇全般について、事業者側の立場からのご相談・ご依頼を承っています。

「今回の場合に解雇してもいいか相談したい」「退職勧奨をしたが拒否されたため解雇したい」など、解雇全般に関するご相談をお受けしています。解雇については、従業員から不当解雇であると主張されてトラブルになるケースも多く、企業側のリスクが高い場面です。事前に人事労務に精通した弁護士にご相談いただくことが必須です。また、「解雇した元従業員の弁護士から不当解雇であるとして内容証明郵便が送られてきた」「懲戒解雇した元従業員から訴状が届いた」といった、解雇後のトラブルのご相談もお受けしています。労使間で解雇トラブルになった際は、自己流の対応をする前に、早い段階で労働問題に詳しい弁護士に相談をし、正しい対応をすることが大切です。

咲くやこの花法律事務所では、問題社員対応や解雇トラブルの分野において、多くのご相談をお受けして解決してきた実績があります。解雇についてお困りのことがありましたら、咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分あたり5000円+税(顧問契約の場合は無料)

※事業者側のご相談のみお受けしています。

 

(2)解雇予告に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では、「解雇を検討しているが、このケースでは解雇予告は必要なのか」「従業員が横領していたため懲戒解雇するので、解雇予告除外認定を申請したいがどうすればよいか」など、解雇予告に関するご相談もお受けしています。労働問題に精通した咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士への相談料

●初回相談料:30分あたり5000円+税(顧問契約の場合は無料)

※事業者側のご相談のみお受けしています。

 

(3)顧問弁護士による日頃からの労務管理

咲くやこの花法律事務所では、事業者向けに顧問弁護士サービスを提供しており、現在500社以上の会社や事業主に対して顧問契約に基づくサポートを提供しています。

咲くやこの花法律事務所の顧問契約をご利用いただくことで、日頃から人事労務関係の整備・改善に取り組むことができ、労使トラブルがそもそも起こりにくい会社の体制作りを進めることができます。また、普段からトラブルや疑問点について、いつでも予約なしで弁護士に相談することができるため、大きなトラブルに発展する前に問題を解決することができるようになります。

咲くやこの花法律事務所では、顧問弁護士契約を検討されている事業者の方向けに弁護士から顧問弁護士サービスのご説明をする無料面談を実施しています。面談でご相談企業のニーズにあった顧問契約プランをご提案させていただきます。無料面談は、実際に事務所で弁護士にお会いしていただく方法のほか、電話やZoom等のWeb会議ツールでも可能です。顧問弁護士をご検討中の方はお気軽にお問い合わせください。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの詳細は以下をご参照ください。

 

 

(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

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11,解雇トラブルについての咲くやこの花法律事務所の解決実績

解雇トラブルについての咲くやこの花法律事務所の解決実績の一部を以下に掲載しています。あわせてご参照ください。

 

パワハラを繰り返す社員を解雇したところ、不当解雇であると主張されたが、弁護士が交渉して退職合意をし、訴訟回避した事例

不当解雇を主張する従業員との間で弁護士立ち合いのもと団体交渉を行ない合意退職に至った事例

成績・協調性に問題がある従業員を解雇したところ、従業員側弁護士から不当解雇の主張があったが、交渉により金銭支払いなしで退職による解決をした事例

 

12,まとめ

この記事では、労働基準法第20条についてご説明しました。

労働基準法第20条では、解雇に関する以下の事項について定められています。

 

  • 解雇予告
  • 解雇予告手当
  • 解雇予告除外認定

 

会社は、従業員を解雇する場合、少なくとも30日前に解雇を予告する必要があります。これを解雇予告といいます。また、予告なしに解雇をする場合は、少なくとも30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことが義務付けられています。ただし、解雇予告の除外認定を受けた場合は、解雇予告の義務や解雇予告手当の支払義務が免除されます。

このルールは、正社員はもちろん、アルバイトや派遣社員、14日以上にわたり雇用される試用期間中の従業員等についても適用されます。

一方で、以下に該当するアルバイトやパートについては、解雇予告の義務の適用対象外です(労働基準法第21条)。

 

  • 日雇いの労働者
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者(例:冬における除雪作業や、夏の海水浴場での監視業務など)
  • 試用期間中の者

 

ただし、上記の労働者であっても、以下の場合には、解雇予告義務の対象となります。

 

  • 日雇いの労働者が1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者が2か月を超えて使用されるに至った場合
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者が4か月を超えて引き続き使用されるに至った場合
  • 試用期間中の者が14日を超えて引き続き使用される至った場合

 

そして、非常に重要なことは、労働基準法第20条の解雇予告のルールを守っていても、解雇が後日無効(不当解雇)であると判断され、事業者側が解雇トラブルで敗訴するケースが数多く存在するということです。つまり、労働基準法第20条は、解雇について守るべきルールの1つにすぎません。事業者が解雇トラブルで敗訴した場合は多額の金銭の支払いを命じられ、大きなダメージを受けることが少なくありません。そのため、解雇については、必ず、人事労務分野に精通した弁護士に事前に相談してください。咲くやこの花法律事務所でも、事業者向けに専門的なサポートを提供していますのでご利用ください。

 

13,【関連情報】解雇に関するお役立ち記事一覧

この記事では、「労働基準法第20条とは?条文と内容についてわかりやすく解説」について、わかりやすく解説いたしました。

解雇については、前提として実際に従業員を辞めさせたい場面になった際は、解雇ができるかどうかの判断をはじめ、初動からの正しい対応方法など全般的に理解しておく必要があります。そのため、他にも解雇に関する基礎知識など知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ重大な解雇トラブルに発展してしまいます。

以下ではこの記事に関連する解雇のお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年12月5日

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
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    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
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