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普通解雇とは?わかりやすく徹底解説

普通解雇についてわかりやすく徹底解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所、弁護士の西川暢春です。

普通解雇とは、解雇のうち、懲戒解雇以外のものを指します。従業員の能力不足や協調性の欠如、就業規則違反などの規律違反行為、余剰人員の整理の必要性等を理由とする解雇がこれに該当します。普通解雇は、従業員の同意を得ることなく、企業側の一方的な通知により、従業員としての身分を失わせるものであるため、労働者保護の観点から、厳しい制約が科されています。

普通解雇が、訴訟トラブルになり、企業側が敗訴し、以下のように、「多額の金銭の支払い」と、「雇用の継続」を命じられるケースは少なくありません。

 

事例1:東京地方裁判所判決平成27年9月30日

医療法人が経理の事務職員を試用期間中の著しい能力不足を理由に普通解雇したことが、不当解雇とされ、約500万円の支払いと雇用継続を命じられた事例

 

事例2:東京地方裁判所判決平成31年2月27日

通信会社が業務命令違反や業績不良を理由に従業員を解雇したことが不当解雇とされ、約2600万円の支払いと雇用継続を命じられた事例

 

この記事を最後まで読んでいただくことにより、普通解雇が有効となる要件や、普通解雇と懲戒解雇の違い、普通解雇の具体的な進め方、普通解雇の場合の退職金や失業保険の扱いなどについて理解していただくことができます。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

前述の裁判例からもわかるように、普通解雇は、企業にとって重大なリスクを伴う場面です。解雇理由について十分な証拠を集めたうえで行わなければ、後日、裁判所で不当解雇と判断され、「多額の金銭の支払い」と「解雇した従業員を復職させること」を命じられる危険があります。

会社の判断として当然、正当な解雇だと思っていたとしても、裁判所で不当解雇と判断されるケースが後を絶ちません。必ず、解雇の前に問題社員対応に強い弁護士に相談してから進めてください。

従業員の解雇について会社が弁護士に相談する必要性や弁護士費用などについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:従業員の解雇について会社が弁護士に相談する必要性と弁護士費用

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応についての解決実績は以下をご参照ください。

 

遅刻を繰り返し、業務の指示に従わない問題社員を弁護士の退職勧奨により退職させた成功事例

不当解雇を主張する従業員との間で弁護士立ち合いのもと団体交渉を行ない合意退職に至った事例

従業員の退職理由が会社都合か自己都合かでトラブルになったが、会社の主張を認めてもらうことができた事例

 

▼【関連動画】西川弁護士が「普通解雇とは?4つの条件や手順について弁護士が解説【前編】」「普通解雇について!懲戒解雇との違いやリスク【後編】」について動画で解説中!

 

 

▶普通解雇に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

問題社員対応に強い弁護士への法律相談サービス

 

1,普通解雇とは?

普通解雇とは?

まず、解雇とは、従業員の同意なく、会社側の一方的な通知により、従業員との雇用契約を終了させることをいいます。解雇の全般的な基礎知識について知りたい方は、以下の記事で網羅的に解説していますので、ご参照ください。

 

 

そして、普通解雇とは、従業員の能力不足や協調性の欠如、就業規則違反、余剰人員の整理の必要性等の理由で行われる解雇をいいいます。このうち、就業規則違反などの規律違反行為を理由とする解雇は、懲戒解雇の対象にもなりえますが、普通解雇は、懲戒処分としての解雇ではない点で、懲戒解雇とは区別されます。

 

(1)整理解雇も普通解雇の一種

普通解雇のうち、余剰人員の整理の必要性から行われる解雇は、「整理解雇」と呼ばれます。

整理解雇については、以下の記事で解説し、この記事では、整理解雇以外の普通解雇について解説します。

 

 

2,普通解雇の4つの要件

普通解雇の4つの要件

会社が普通解雇を有効に行うためには、以下の4つの要件を満たすことが必要です。

 

  • (1)正当な解雇理由があること
  • (2)法律により解雇が制限される場面に該当しないこと
  • (3)原則として30日前に解雇予告するか、または30日分の解雇予告手当の支払いをすること
  • (4)従業員に普通解雇を通知すること

 

以下で順番にご説明していきたいと思います。

 

(1)能力不足、業務命令違反などの正当な解雇理由があること

普通解雇には、正当な解雇理由があることが必要です。

 

 

労働契約法で、以下の通り、正当な解雇理由のない解雇は、効力が認められないことが定められています。

 

▶参考情報:労働契約法第16条

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

・参照:「労働契約法」の条文

 

どのような理由があれば、正当な解雇理由にあたるかは、裁判所の判断になります。

例えば、能力不足を理由とする普通解雇については、単に能力不足であるというだけでは、正当な解雇理由があるとは認められず、会社側が十分な指導をしたけれども改善の見込みがないといえる場合でなければ正当な解雇理由は認められないことが通常です。

また、業務命令違反を理由とする普通解雇についても同様に、単に業務命令に違反したというだけでは正当な解雇理由があるとは認められず、業務命令の趣旨を十分従業員に説明したうえで、それでも業務命令に従わない場合は懲戒処分などをして改善の機会を与え、それでも改善されない場合に初めて普通解雇における正当な解雇理由が認められるとされることが通常です。

このように、日本の裁判所では、「正当な解雇理由」があったと認めてもらうためのハードルはかなり高いものになっています。

解雇の各場面でどのような事情があれば、「正当な解雇理由」が認められるかについては、以下で解説していますのでご参照ください。

 

1,よくある各場面ごとの正当な解雇理由について

 

正当な解雇理由については、以下の動画でも詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

 

▶【動画で解説】この記事の著者 弁護士 西川 暢春が「正当な解雇の条件とは?」3つの解雇理由ごとに詳しく解説中!

 

(2)法律により解雇が制限される場面に該当しないこと

正当な解雇理由がある場合でも、以下の時期の解雇は労働基準法第19条により、禁止されています(労働基準法第19条)。

 

  • 従業員が労災による治療のために休業している期間とその後30日間
  • 従業員の産休中(産前6週間と産後8週間)と産休明け後30日間

 

 

これらの時期に解雇することは違法となりますので注意が必要です。

 

▶参考情報:解雇が制限される場面や法律上のルールについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

解雇制限とは?法律上のルールについて詳しく解説します

 

ただし、労災による治療のために休業している従業員については、治療開始から3年が経過した後は、1200日分の賃金を支払うことにより解雇が認められます。

これを打切補償といいます。

打切補償について詳しくは以下の解説記事をご覧ください。

 

 

(3)解雇予告または解雇予告手当の支払いをすること

普通解雇は、原則として、30日前に予告して行うことが必要です。ただし、30日分の賃金を解雇予告手当として支払うことにより、予告せずに、解雇を言い渡す当日に解雇することも可能です(労働基準法第20条)。

これを即日解雇といいます。

 

 

解雇予告や解雇予告手当の計算については、以下をご参照ください。

 

 

なお、普通解雇のうち以下の場合については、例外として、解雇の予告や解雇予告手当の支払いは不要とされています。

 

  • 日雇いの従業員で雇用開始後1か月以内に解雇する場合(労働基準法第21条)
  • 試用期間中の従業員で雇用開始後14日以内に解雇する場合(労働基準法第21条)

 

(4)従業員に通知して行うこと

普通解雇は従業員に通知して行うことが必要です。

通知の方法としては、「解雇通知書を作成して本人に手渡しする」、「解雇通知書を本人に郵送する」などの方法があります。解雇通知書を内容証明郵便で送る場合、本人が解雇通知書を受け取らずに、通知書が返送されてくることがあります。返送されてきた場合は、解雇の効力が認められませんので注意が必要です。

 

3,普通解雇の具体的な手順

普通解雇の具体的な手順

普通解雇の具体的な進め方は以下の通りです。

 

(1)社内で解雇の方針を共有する

解雇にあたっては、会社の幹部や、解雇対象となる従業員の上司との間で、その従業員を解雇するという方針を共有し、理解を求めておくべきです。

このように、社内で意思統一しておくことで、解雇対象となる従業員に対して、解雇が社内の一部の個人的な意向で行われているわけではなく、会社全体の意思であることを示すことができます。

それによって、仮に解雇対象者が解雇を争うような行動をしても、会社が受け入れる余地がないということを、解雇対象者に印象付けることができます。

 

(2)予告解雇か即日解雇かを決定する

普通解雇には、大きく分けて、予告解雇と即日解雇の2通りがあります。

予告解雇は、解雇を伝えた日の30日以上後に解雇日を設定することで、解雇の30日以上前に解雇を予告する方法です。これに対して、即日解雇は、30日分の解雇予告手当を支払って解雇を伝える当日に解雇する方法です。

解雇にあたっては、このどちらの方法で解雇を進めるかを決める必要があります。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

予告解雇を選択して、30日以上先に解雇日を設定しても、解雇日までの間、誠実に就業してもらうことは期待しづらく、むしろ、情報の持ち出しや、他の従業員へのネガティブな発言などの悪影響が懸念されます。

そのため、特別な事情がない限り、予告解雇ではなく、即日解雇が適切です。

 

(3)解雇の理由を整理する

次に、解雇の理由を整理する作業が必要です。

これは、従業員に解雇を言い渡す場面で、解雇の理由を伝える必要があるためです。具体的には、以下の内容を整理したうえで、「会社の指導にもかかわらず問題点が改善されていないということ」を解雇理由として伝えることになります。

 

  • 本人がこれまでどのような問題を繰り返してきたのか
  • それに対して、会社からどのように指導してきたのか

 

本人のこれまでの問題点や、それに対する会社の指導の履歴について、整理したメモを作成し、解雇の言い渡しの際に、本人に伝えることができるように準備する必要があります。

 

(4)解雇通知書を準備する

解雇の理由が整理できたら、解雇通知書を準備します。

解雇通知書には以下の点を記載します。

 

1,解雇通知書の記載内容

  • 解雇する従業員の氏名
  • 社名、代表者名
  • 解雇の通知日
  • 解雇日
  • 「解雇します」という確定的な解雇の意思表示の文言
  • 解雇の具体的な理由
  • 該当する解雇理由を定めた就業規則の条文

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

解雇をあらかじめ予告して行う「予告解雇」の場合の「解雇予告通知書」のひな形を以下の記事に掲載していますのでご参照ください。

▶参照:解雇予告通知書・解雇通知書とは?書式の書き方などを解説【雛形付き】

 

(5)従業員に解雇を伝える

以上の準備ができたら、従業員を別室に呼んで解雇を伝えることになります。

解雇通知書のコピーを事前にとっておき、そのコピーに従業員の受領のサインをもらってください。

解雇の具体的な伝え方については、以下でご説明していますのでご参照ください。

 

 

(6)解雇後の退職手続きを行う

解雇後は、社会保険の喪失手続を行い、離職票や源泉徴収票を解雇対象者に交付する必要があります。また、即日解雇の場合は、解雇予告手当の支払をする必要があります。

解雇後の手続の詳細は以下をご参照ください。

 

 

4,懲戒解雇との違い

普通解雇と懲戒解雇の違いについてもご説明しておきたいと思います。

最初に概要を表にまとめると以下の通りです。

 

1,懲戒解雇と普通解雇の比較

普通解雇 懲戒解雇
主な解雇理由 ・病気による就業不能
・能力不足、成績不良
・協調性の欠如
・業務上横領
・重要な業務命令の拒否
・無断欠勤
・セクハラ、パワハラ
・経歴詐称
目的 対象者との雇用関係の終了 対象者との雇用関係の終了+組織の規律維持、引き締め
解雇予告義務 原則として30日分の予告が必要 予告不要の場合あり
失業保険の給付日数 会社都合退職として給付日数について有利な扱いを受けることが多い 自己都合退職と同じ扱いとなり給付日数が短い
退職金 退職金規程どおり 減額や不支給の場合あり
転職への影響 懲戒解雇されたことを申告する義務があり、転職に不利

 

懲戒解雇については以下の解説記事もあわせてご覧ください。

 

 

(1)解雇理由の違い

普通解雇は、主に「能力不足」や「病気による就労不能」、「協調性の欠如」などの場面で、従業員が雇用契約に基づく義務を果たす見込みがないことを理由に行われる解雇です。

これに対し、懲戒解雇は、従業員による就業規則違反等の規律違反行為に対する制裁としての解雇です。

就業規則違反等の規律違反行為については、普通解雇を選択することも可能であり、普通解雇、懲戒解雇の両方の対象となりえます。

また、普通解雇と懲戒解雇では、解雇理由に関して、以下の違いもあります。

 

1,解雇後に解雇理由を付け足すことができるかどうかの違い

普通解雇では、普通解雇後に別の解雇事由が新たに判明した場合、新たに判明した事情も解雇理由に付け足すことが可能です(参考判例として東京地方裁判所八王子支部判決平成16年9月30日)。

 

普通解雇の場合

例えば、能力不足を理由に従業員を普通解雇した後に、その従業員の業務上横領が発覚した場合、業務上横領を解雇理由に付け足すことが可能です。

 

懲戒解雇の場合

これに対して、懲戒解雇の場合、懲戒解雇後に判明した規律違反行為を解雇理由に付け足すことができません(山口観光事件最高裁判所判決)。

 

2,過去に懲戒した事実を解雇理由にできるか?

普通解雇であれば、既に戒告譴責訓告減給降格処分出勤停止などの懲戒処分を行った事実を普通解雇の理由とすることも可能です。

例えば、過去に業務命令違反で懲戒処分を受けたことがある従業員について、再度、業務命令に違反したことを理由に解雇する場合、再度の業務命令違反だけでなく、すでに懲戒処分を受けている過去の業務命令違反についても普通解雇の理由に加えることができます。

これに対して、懲戒解雇では過去に懲戒した事実を解雇理由とすることはできません。

 

3,就業規則上の解雇事由に該当する必要があるか?

普通解雇については、就業規則に定めた解雇事由に該当しない場合も行うことができるとされています(東京地方裁判所決定平成12年1月21日、大阪地方裁判所判決平成13年3月30日等)。

これに対して、懲戒解雇は就業規則上の懲戒解雇事由に該当しなければ行うことができないとされています(フジ興産事件最高裁判所判決)。

 

(2)目的の違い

普通解雇は、解雇対象者が雇用契約上の義務を果たさない場合に、解雇対象者との雇用契約を終了させることが目的です。

これに対して、懲戒解雇については、解雇対象者との雇用契約の終了だけでなく、企業が重大な規律違反行為があった従業員に制裁を科すことで、企業としての規律を回復する目的があります。

 

(3)解雇予告義務に関する違い

前述の通り、普通解雇では、「解雇予告手当の支払い」か、「30日前の解雇予告」が原則として必要となります。これに対し、懲戒解雇では、「労働基準監督署の解雇予告除外認定」の制度が設けられており、この認定を受ければ、解雇予告手当の支払いや30日前の解雇予告が必要ありません。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

「労働基準監督署の解雇予告除外認定」は、会社内での横領などの重大または悪質な事情があって従業員を解雇する場合に、労働基準監督署の認定を受けることにより、解雇予告手当の支払いや解雇予告の義務から除外する制度です。

解雇予告除外認定制度については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:解雇予告除外認定とは?制度の基準や手続きの方法をわかりやすく解説

 

(4)退職金支給に関する違い

普通解雇では、会社の退職金規程の定め方にもよりますが、退職金は通常通り支払われることが原則です。

これに対し、懲戒解雇では、退職金を減額したり、あるいは支払わないことを退職金規程に定めている会社が多くあります。

 

(5)失業保険では会社都合の退職として扱うのが原則

普通解雇と懲戒解雇では、失業保険(雇用保険)における扱いも異なります。

雇用保険においては、「解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者」は、特定受給資格者として扱われます。

 

 

「特定受給資格者」というのは、いわゆる「会社都合退職」です。普通解雇は通常はこの「特定受給資格者」にあたり、雇用保険の給付日数において自己都合退職者よりも優遇されます(以下の表及び参照サイト先の「1. 特定受給資格者及び一部の特定理由離職者」の表が適用されます)。

 

●「特定受給資格者」の雇用保険の給付日数

特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の所定給付日数

 

これに対し、懲戒解雇の場合、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」と判断されたときは、自己都合退職者と同じ扱いになります(以下の表及び参照サイト先の「2.1及び3以外の離職者」の表が適用されます)。

 

●「懲戒解雇」の場合の給付日数

懲戒解雇の場合の給付日数

 

 

(6)転職・再就職の影響の程度の違い

懲戒解雇については次の就職の際に履歴書などに記載して申告しなければならず、懲戒解雇された従業員が次の就職で不利になるという側面があります。

これに対して、普通解雇については、通常は、次の就職の際に履歴書に記載する義務はありません。

 

(7)告知聴聞の手続の必要性の違い

告知聴聞の手続とは、懲戒解雇の対象者に対して、懲戒解雇の理由となる内容を伝え(「告知」)、それについて対象者の言い分を聴く(「聴聞」)の手続です。

懲戒解雇については、企業による制裁を科す目的で行われる非常に重い処分であるという観点から、多くの裁判例において、懲戒解雇については告知聴聞の手続が必須であるとされています。

これに対し、普通解雇では必ずしも告知聴聞の手続を要しないとされています。

告知聴聞の機会を与えずに行われた普通解雇について、「手続上違法であるとする理由は見当たらない」とした裁判例として、大阪地方裁判所判決平成14年11月29日があります。

 

5,諭旨解雇との違い

諭旨解雇(諭旨退職)は、会社が従業員に退職を勧告し、従業員に退職届を提出させたうえで解雇する懲戒処分をいいます。

諭旨解雇処分を受けても、従業員が退職届を提出しない場合は、懲戒解雇に進むことが予定されています。諭旨解雇も懲戒解雇と同様に懲戒処分の一種であり、その内容としても、懲戒解雇と大きく変わらないものです。

そのため、普通解雇と懲戒解雇の違いとしてご説明した点が、普通解雇と諭旨解雇の違いについてもすべてあてはまります。

諭旨解雇処分については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

6,普通解雇はリスクが大きい

ここまで普通解雇についてご説明してきましたが、企業による普通解雇はリスクが大きく、合意による退職での解決ができない場合の最後の手段とするべきです。

以下で、普通解雇のリスクについてご説明したいと思います。

 

(1)敗訴した場合は1000万円を超える支払いの可能性

普通解雇は、冒頭でもご説明したとおり、企業側のリスクが大きく、裁判所で不当解雇と判断されて敗訴した場合に、企業が「多額の金銭の支払い」と「解雇した従業員の雇用の継続」を命じられるケースも少なくありません。

このうち、「多額の金銭の支払い」は「バックペイ」と呼ばれます。

普通解雇が不当解雇と判断されると解雇は無効となり、解雇していなかったのと同じ扱いになります。その結果、会社は、解雇の時点までさかのぼって賃金の支払いを命じられることになるのです。

解雇についての裁判は1年以上かかることが多いです。

例えば、解雇した後、2年たってから、裁判所で不当解雇と判断されると、2年分の賃金を「バックペイ」として支払うことを命じられることになり、その金額が1000万円を超えることも珍しくありません。

不当解雇やバックペイについて詳しくは以下の参考記事もご覧ください。

 

 

(2)不当解雇と判断されるかどうかの明確な予測が困難

普通解雇した場合に、裁判所で不当解雇と判断されるか、あるいは正当な解雇と判断してもらえるかの事前の予測が困難であることも普通解雇のリスクの1つです。

例えば、能力不足を理由とする普通解雇については、会社側が十分な指導をしないまま従業員を能力不足と判断して解雇した場合、不当解雇と判断されることが通常です。

しかし、では、企業側からどの程度の教育指導を施したうえでの解雇であれば、解雇が有効と認められるのかについて、判例上の明確な基準はありません。

また、業務命令違反を理由とする普通解雇についても、同様に、普通解雇の前に、業務命令の趣旨を十分説明して業務命令に応じるように説得すべきだったとか、あるいは、普通解雇の前に業務命令違反に対して懲戒処分を科して改善を求めるべきだったとかいった理由で、企業が敗訴しているものが多いです。

しかし、では、企業側からどの程度従業員に機会を与えたうえでの普通解雇であれば有効と認められるのかにつて、判例上の明確な基準はありません。

このように、普通解雇について、裁判所で不当解雇とされるかどうかの判断基準は明確でなく、裁判官によって結論が異なりうることも、普通解雇のリスクとして認識しておく必要があります。

 

(3)訴訟の労力や費用も大きい

普通解雇が裁判トラブルになれば、会社としても弁護士に依頼して対応しなければならず、会社にとって労力や費用の負担は小さいものではありません。

 

(4)原則として退職勧奨で問題を解決するべき

このように、普通解雇は、企業のリスクが大きく、企業としては、普通解雇は最後の手段と考え、できる限り、従業員を退職に向けて説得する「退職勧奨」によって問題を解決することが重要です。

退職勧奨は、従業員の同意を得て雇用契約を終了させる方法であり、一方的に従業員の同意なく雇用を終了させる「普通解雇」とは法的な意味が違います。

同じように従業員との雇用を終了させる方法であっても、退職勧奨は従業員の同意を得ていることから、法的リスクが低い手段です。普通解雇を検討する前にまずは退職勧奨により解決できないかを検討することが重要です。

退職勧奨については以下の記事で詳しくご説明していますのでご参照ください。

 

 

7,普通解雇について弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、問題社員の普通解雇について企業からのご相談を常時承っています。

普通解雇は、企業にとって大きなリスクを伴う場面ですので、必ず弁護士に事前にご相談いただきますようにお願いいたします。

企業の経営者、担当者の方から、ご事情を詳しくお聞きした上で、以下の点のご相談に対応します。

 

  • 普通解雇の具体的な進め方のご相談
  • 普通解雇した場合の企業側のリスクについてのご相談
  • 普通解雇か懲戒解雇かの選択についてのご相談
  • 普通解雇ではなく退職勧奨で問題を解決する方法についてご相談
  • 普通解雇の後のトラブルについてのご相談

 

咲くやこの花法律事務所では、これまで、問題社員対応について企業から多くのご相談をお受けして、解決してきた実績と経験がある弁護士が多くそろっています。

安心してご相談いただきますようにお願いいたします。

 

 

また、問題社員への対応に関連して、いつでも弁護士に予約なしでご相談いただける、顧問弁護士サービスも提供しております。

顧問弁護士サービスをご利用いただくことで、日々の従業員とのトラブルについて、弁護士に直接電話でご相談いただきながら、対応を進めることができます。

顧問弁護士サービスについては以下をご参照いただきますようにお願いいたします。

 

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8,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

普通解雇に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるサポート内容については「労働問題に強い弁護士のサポート内容」をご覧下さい。

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年9月18日

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    著者:弁護士 西川 暢春
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