こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
懲戒事由についてわからないことがあり、悩んでいませんか?
懲戒事由とは、どのような行為があれば事業主による懲戒処分の対象となるのかを定めたものです。経歴詐称、無断欠勤、業務命令違反、機密情報漏洩、無許可での副業などが、懲戒事由の代表例です。最高裁判所の判例により、事業主はあらかじめ就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合でなければ、懲戒処分を行うことはできないとされています。
そのため、就業規則で懲戒事由をどのように定めるかは非常に重要です。また、懲戒処分を実際に行う際は、本当に就業規則に定めた懲戒事由に該当するのかを慎重に確認することが必要です。
裁判で懲戒事由の定め方や解釈について問題になった事例として以下のものがあります。
事例1:
時事通信社事件(東京高等裁判所判決平成11年7月19日)
懲戒解雇事由として「再三の懲戒にもかかわらず改心の情がないとき」と定めていた事案
→ 裁判所は、「再三」とは「一、二回に止まらず何回も」という意味合いの強い用語であると判断し、従業員が過去に2回の懲戒処分を受けていただけでは「再三の懲戒」には該当しないとして、懲戒解雇を無効と判断しました。
事例2:
岩国市農業協同組合事件(山口地方裁判所岩国支部判決平成21年6月8日)
農業協同組合が懲戒解雇事由として「個人情報を組合外に漏らしたり、漏らそうとしたとき」と定めていた事案
→裁判所は、農協の職員が、農協の理事や監事の候補者ら14名に対して、個人情報を漏らした事案について、候補者らも組合員であることから、「組合外に漏らした」にあたらないと指摘し、懲戒解雇を無効と判断しました。
このように、懲戒処分が裁判で争われると、就業規則で定めた懲戒事由の意味について、厳密な議論がされることになります。
事業主としては、懲戒事由を必要以上に限定しすぎないようにその記載方法を工夫することが必要です。
この記事では、懲戒事由の意味のほか、懲戒事由の種類や、就業規則での定め方についてご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただくことにより、就業規則で懲戒事由を定める際にどのような点に注意すればよいか、また、実際に懲戒処分を行う場合にどのような点に注意すればよいかを理解していただくことができます。
それでは見てきましょう。
従業員に対し、懲戒処分を科す場面では、懲戒処分の撤回を求めて、従業員が外部の労働組合に加入して団体交渉を申し入れたり、あるいは会社に対して懲戒処分の無効を確認する訴訟を起こすなどのトラブルが想定されます。
そのようなトラブルにも対応できるようにするためには、懲戒処分の理由についての証拠を十分に確保すること、懲戒処分の選択を間違えないこと、懲戒処分の手続を正しく行うことが重要です。
後から不備が指摘されることのないように懲戒処分については必ず弁護士に事前にご相談ください。
懲戒処分全般の解説は以下をご参照ください。
▼懲戒事由に関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,懲戒事由とは?意味や定義を解説
懲戒事由とは、どのような行為があれば事業主による懲戒処分の対象となるのかを定めたものです。
懲戒事由の代表例としては、経歴詐称、無断欠勤、業務命令違反、機密情報漏洩、無許可での副業、ハラスメント行為、業務上横領、私生活上の犯罪行為などがあります。
労働基準法第89条9号により、会社が懲戒制度を設ける場合は、「その種類及び程度」を就業規則に定めることが義務付けられており、懲戒事由についても就業規則に定める必要があります。
懲戒事由を就業規則に定めることは、従業員に対して、事前に事業主による懲戒処分の対象となる非違行為を明示し、警告することで、非違行為を防止する意味があります。また、就業規則で定めた懲戒事由にあてはまらない場合は懲戒処分は行えないことから、懲戒事由を就業規則に定めることにより、事業主の懲戒処分を縛る意味合いもあります。
2,懲戒事由の例(10項目)
懲戒事由の例としては以下のものあげることができます。
(1)経歴詐称
採用時に申告した職歴や学歴について、後日、虚偽があったことが判明した場合は、経歴詐称として懲戒事由に該当することを定めている就業規則がほとんどです。
また、採用時の履歴書の賞罰欄に「なし」と記載していた場合に、後日、前科が発覚したときも同様に経歴詐称に該当する可能性があります。
厚生労働省のモデル就業規則においても、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」が懲戒解雇事由として定められています。厚生労働省のモデル就業規則は以下をご参照ください。
経歴詐称を理由とする懲戒処分については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(2)勤怠不良
頻繁な遅刻や欠勤、または無断欠勤が勤怠不良の懲戒事由に該当します。
厚生労働省のモデル就業規則でも、以下のように、勤怠不良を懲戒事由として定めています。
▶参考:厚生労働省のモデル就業規則
(1)けん責、減給、出勤停止となるもの
・正当な理由なく無断欠勤が 日以上に及ぶとき。
・正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき。
・その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき
(2)懲戒解雇となるもの(ただし、平素の服務態度その他情状によっては、普通解雇、減給又は出勤停止)
・正当な理由なく無断欠勤が 日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。
・正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、 回にわたって注意を受けても改めなかったとき。
・その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき
▶引用元:厚生労働省「モデル就業規則について」
なお、上記の規定例では日数が空欄になっていますが、無断欠勤については、一般に2週間以上の無断欠勤から懲戒解雇の理由となります。
また、欠勤について連絡がない事情として、その社員の精神疾患の影響がうかがわれるときは、無断欠勤扱いとして懲戒解雇することは認められないとした裁判例(日本ヒューレット・パッカード事件 最高裁判所判決平成24年4月27日)があることにも注意を要します。
無断欠勤社員への対応や、遅刻が多い従業員の懲戒の注意点については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
上記の厚生労働省のモデル就業規則の規定では、懲戒解雇事由として明確に定められているのは、無断での遅刻、早退、欠勤等のケースのみです。
このような規定の仕方では、無断ではなく、連絡があるけれども、正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返すというケースでは、その程度がどんなにひどくても懲戒解雇事由に該当しない可能性があります。そのようなケースについては「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」にあたるという解釈もできなくないですが、明確ではなく、実際に懲戒解雇をしようというときには対応に困ることになるでしょう。
就業規則を作成する際は、このような懲戒解雇事由の漏れが生じないように整備することが重要です。就業規則の作成については以下もご参照ください。
(3)業務命令違反
上司による日常的な業務の指示に従わない場合のほか、転勤や出向、人事異動等を拒否する場合もこれに該当します。
厚生労働省のモデル就業規則では、「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」が懲戒解雇事由として定められています。
ただし、実際に業務命令違反を理由に懲戒解雇する際は、業務命令を出した事実について証拠が残っているかどうか、従業員の側に業務命令を拒否する正当な理由がないか、上司が業務命令の趣旨について説明して理解を得る努力をしたかなどの点に注意する必要があります。
業務命令違反を理由とする懲戒解雇が無効と判断されて企業が多額の支払いを命じられているケースも多いので注意してください。
業務命令違反を理由とする解雇については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(4)業務上横領や背任、会社備品の窃盗
会社の金銭を横領する、会社の仕入先からリベートを受け取る、会社備品を盗んで他に転売するなどのケースがこれに該当します。
厚生労働省のモデル就業規則でも、以下の内容が懲戒解雇事由として定められています。
- 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき
- 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く)
- 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき
業務に関連した横領や背任、窃盗は、犯罪行為であり、通常、懲戒解雇事由になりますが、懲戒処分にあたってはこれらの犯罪行為が懲戒対象者によって行われたことの証拠を十分確保しておくことが重要です。
従業員を業務上横領等の理由で懲戒解雇した場面では、その後従業員から訴訟を起こされ、業務上横領についての証拠が不十分であることを理由に、不当解雇と判断されている裁判例も多数存在し、注意を要します。
業務上横領を理由とする懲戒解雇の注意点や、社内で業務上横領が起きたときの証拠の集め方、業務上横領が発生した時の対応方法や対策については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶参考情報:従業員の業務上横領での懲戒解雇に関する注意点!支払誓約書の雛形付き
▶参考情報:社内で業務上横領が起きたときの証拠の集め方。4つのケースを解説
▶参考情報:業務上横領についてわかりやすく解説!
(5)機密保持義務違反
顧客情報の漏えいや社内の重要な技術上の秘密の漏えいなどの機密保持義務違反についても、懲戒事由として定めておくことが必要です。
厚生労働省のモデル就業規則でも、「正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき」が懲戒解雇事由として定められています。
ただし、従業員の機密保持義務違反を懲戒処分の対象とするためには、従業員がどういった情報について機密保持義務を負うのかを明確にしておくことが必要です。
具体的には、機密保持義務の対象となる情報の範囲を就業規則に明記したり、従業員から提出させる秘密保持誓約書の中で明記していくことになります。この点が明確にされていない場合、機密保持義務の内容がばくぜんとしたものになる結果、機密保持義務違反を理由とする懲戒処分が無効になる危険があることに注意してください。
従業員の秘密保持誓約書の作成について以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(6)無許可での副業
従業員の副業について許可制をとり、無許可での副業を懲戒事由として定めている会社も多いでしょう。
ただし、本業に差支えのない副業については、会社は許可をする義務があり、会社が不合理に不許可とした場面では、会社に対する損害賠償請求が認められている事案もありますので注意が必要です(マンナ運輸事件 京都地方裁判所平成24年7月13日判決)。
無許可での副業を理由とする懲戒解雇の注意点については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
(7)セクハラ、パワハラ
セクハラ、パワハラについては、厚生労働省のハラスメント関係指針でも、就業規則において懲戒事由として規定し、事業主として厳正に対処する方針を明確にすることが求められています。
そのため、セクハラ、パワハラは懲戒事由として必ず規定しておく必要があります。
厚生労働省の「職場におけるハラスメントに関する関係改正指針等」は以下からご参照ください。
ただし、実際にセクハラやパワハラを理由に懲戒処分をする場面では、セクハラやパワハラの事実について証拠を確保する必要があること、事案の内容に応じて重すぎない処分とすること、懲戒対象者に弁明の機会を与えるなど適切な手続を踏むことの3つを必ず守る必要があります。
特に、セクハラやパワハラを理由とする懲戒解雇や諭旨解雇は裁判で争われ、無効と判断されて、企業が敗訴している事案が多くなっています。必ず事前に弁護士に相談してください。
セクハラ、パワハラを理由とする懲戒解雇や諭旨解雇については以下もご参照ください。
(8)私生活上の犯罪行為
私生活上の犯罪行為も懲戒事由として定められることが通常です。
私生活での飲酒運転や、通勤中の痴漢行為などがその典型例です。厚生労働省のモデル就業規則においても、「私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき」が懲戒解雇事由として規定されています。
ただし、私生活上の犯罪行為は、社内での業務上横領や備品の窃盗などとは異なり、あくまで私生活の問題であることに注意が必要です。
私生活上の犯罪行為が報道されるなどして会社の名誉信用に影響した場合や会社の業務に支障を生じさせた場合は懲戒処分の対象となりますが、会社への影響がなく完全に私生活での問題にとどまる時にまで懲戒処分を科すことはできません(国鉄中国支社事件 最高裁判所昭和49年2月28日)。
従業員逮捕時の懲戒解雇の注意点を以下の記事で解説していますのでご参照ください。
(9)服務規律違反
就業規則に「服務規律」の項目を設け、服務規律の違反も、懲戒事由として定めることが通常です。
服務規律では、就業時間中は職務に専念するべきことや、会社の備品を私的な目的で使用しないこと等を定めているケースが多いと思います。
例えば、会社のパソコンを使用して就業時間中に長時間、無関係のWebサイトを閲覧する行為(ネットサーフィン)等は、服務規律違反として懲戒処分の対象になり得ます。
(10)いわゆるバスケット条項
懲戒事由として、多くの就業規則で最後に挙げられているのが「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」という条項です。
このような条項は、懲戒事由とするべきあらゆる行為をすべて列挙することが難しいことを踏まえ、懲戒事由の定めに漏れが生じないようにするためにおかれる条項であり、「バスケット条項」と呼ばれます。
懲戒事由を就業規則で規定する際は、懲戒事由に漏れが生じないように、このようなバスケット条項は必ず設けておくべきでしょう。
ただし、実際にこのバスケット条項を適用して懲戒処分を科す際は、本当に「前各号に準ずる不適切な行為があったとき」に該当するかどうかについて、慎重な判断が必要です。
「前各号に準ずる」というためには、前に列挙された懲戒事由に匹敵する程度の非違行為であることが必要であると解釈されることが通常です。
中央交通事件(大阪地方裁判所決定平成5年4月6日)は、観光バス会社が、過失で同僚バスガイドの足を轢き全治6か月の重傷を負わせた運転手を懲戒解雇した事案です。
この会社は就業規則で懲戒解雇事由として「飲酒居眠りをして事故を惹起したる者」等を列挙したうえで最後に「其の他前各号に準ずる行為のあった者」と定めており、会社はこのバスケット条項を適用して運転手を懲戒解雇しました。
しかし、裁判所は、バスケット条項を適用するためには、列挙された懲戒解雇事由である飲酒居眠りと同程度の非違行為が必要であり、この事案の事故は飲酒居眠りと同程度の悪質さがあるとはいえないとして、懲戒解雇を無効と判断しています。
3,就業規則での定め方の2つの注意点
懲戒事由について就業規則で定める際は以下の点に注意しましょう。
(1)網羅的にもれなく列挙する
会社は就業規則に定めた懲戒事由以外の理由で、従業員を懲戒することはできません。
判例上も「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」とされています(フジ興産懲戒解雇事件 最高裁判所判決平成15年10月10日)。
そのため、就業規則において懲戒事由を網羅的に漏れがないように定めることは重要です。
漏れがあるケースの例
例えば、厚生労働省のモデル就業規則の規定では、業務命令違反について明確に懲戒事由として定められているのは、「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」のみです。
このような規定の仕方では、転勤や人事異動などの重要な業務命令を拒否した場合でも、拒否が一度のみであれば、「しばしば」には該当しないため、なんらの懲戒処分もできないという結論になりかねません。
一度のみの業務上の指示・命令の拒否は、モデル就業規則で、けん責、減給、出勤停止の懲戒事由として定められている「その他この規則に違反し又は前各号に準ずる不都合な行為があったとき」にあたるという解釈もできなくないですが、明確ではありません。
就業規則を作成する際は、このような懲戒事由の漏れがないように整備することが重要です。
(2)懲戒事由を限定しすぎない
懲戒事由を規定するときに、「再三の指導にもかかわらず~したとき」とか「しばしば指導を受けたにもかかわらず~したとき」などと記載すると懲戒事由を限定する方向に働くことになります。
問題の程度が大きい行為であっても、かなり指導をした後でなければ、これには該当しないことになるからです。
また、「~したにもかかわらず、改善の見込みがないとき」とか、「~して重大な損害を与えたとき」などと記載する場合も同じことがいえます。
問題の程度が大きい行為であっても、改善の見込みが残っていたり、会社に重大な損害を与えたとまでは言えない場合は、これには該当しないことになるからです。
もちろん、懲戒処分というのは、従業員に対して重い制裁を科すものですので、その場面を適切なものに限定することは必要ですが、一方で限定しすぎないということにも注意が必要です。
懲戒事由を限定しすぎると、以下の危険があります。
- 問題行動に対して懲戒処分が必要な時も、なかなか懲戒事由に当てはまらず、懲戒処分をすることができなくなる
- 会社が懲戒処分をした時も、懲戒事由を限定しすぎているため、懲戒事由にあてまらないとして、懲戒処分が無効と判断されるケースが増える
限定しすぎているケースの例
例えば、厚生労働省のモデル就業規則はでは、勤務態度不良による懲戒解雇については、「数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。」と規定しています。
しかし、数回にわたり懲戒を受けてそれでも改善の見込みがないときになってはじめて懲戒解雇の対象となるというのは、懲戒解雇事由を極限まで限定した表現です。
「数回」というのは、国語辞典によると「2、3回か5、6回程度」とされています。そうすると、かなりの回数の懲戒処分を重ねたうえで、それでもまだ改善の見込みがないことを立証できる状態にならないと懲戒解雇対象とはならないことになります。
このように懲戒事由を限定しすぎると、実際に必要な場面で懲戒解雇ができなくなったり、あるいは会社がした懲戒解雇が後で無効と判断される原因になることに注意してください。
4,退職後に懲戒事由が発覚した場合は懲戒できない
退職後に懲戒事由が発覚したとしても、すでに雇用契約が終了している以上、その従業員に懲戒処分を科すことはできません。
退職後に従業員を懲戒解雇したうえでそれを全社員に公表した事案では、懲戒解雇の理由が実際にあったとしても、退職後は懲戒解雇ができない以上、公表は不法行為になるとして、会社が損害賠償を命じられています(東京地方裁判所判決平成14年9月3日)。
懲戒事由が発覚した段階で、その従業員が退職の申し出をしてくるケースがあります。
従業員から退職の申し出があった後、2週間たてば、会社が退職を承諾していなくても、退職の効力が発生することが民法627条1項に定められています。
▶参考情報:「民法627条1項」の条文はこちらをご参照ください。
そのため、退職の申し出があれば2週間以内に懲戒処分をしないと、退職の効力が発生してしまい、懲戒処分ができなくなることにも注意してください。退職の申し出があった場合は、2週間という期限を意識して速やかに懲戒手続を進める必要があります。
5,退職金の不支給は注意が必要
多くの会社の退職金規程では、懲戒解雇事由に該当した場合は退職金が不支給となったり、あるいは減額されることが定められています。
しかし、懲戒解雇の際の退職金の不支給や減額については、解雇後に従業員から不支給や減額が不当であるとして訴訟を起こされ、裁判所で企業側が支払いを命じられる事例が少なくありません。
社内での業務上横領や強制わいせつに該当するようなセクハラによる懲戒解雇の場面では、判例上も、退職金を不支給とすることが認められる傾向にありますが、業務に直接関係のない私生活での犯罪行為を理由とする懲戒解雇の場面では、退職金不支給とするのは違法として会社に支払いを命じた判決が多くなっています。
そのため、退職金規程で、不支給や減額の規定があっても、実際に不支給や減額の処理をすることは慎重を期すことが必要です。
懲戒解雇の場合の退職金不支給については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
6,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」
咲くやこの花法律事務所では、企業の経営者、人事担当者から、懲戒事由、懲戒処分についてのご相談をお受けしています。
咲くやこの花法律事務所のサポート内容についてもご説明したいと思います。
(1)懲戒事由を定める就業規則の整備のご相談
必要な時に従業員に適切な懲戒処分を科すことができるようにするためには、就業規則において、懲戒事由を適切に定めておくことが非常に重要になります。この記事でも解説した通り、網羅的に漏れなく列挙し、かつ、懲戒事由を限定しすぎないことが必要です。また、ひな形を使いまわすのではなく、自社の業界や自社の実情にあった懲戒事由の設定が重要になります。
咲くやこの花法律事務所においても、懲戒事由の定め方や就業規則の整備についてのご相談をお受けしています。実際に、労務トラブルや労働裁判を経験してきた弁護士の視点から、懲戒事由の整備についてのご相談を承ります。
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●30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(2)懲戒事由発覚時の懲戒処分のご相談
従業員に対して懲戒処分を検討するときは、まず、就業規則の懲戒事由の文言を1つずつ丁寧に正しく解釈したうえで、就業規則の懲戒事由に該当するかどうかを確認することが重要になります。そのうえで、事案の内容に照らして軽すぎず重すぎない処分を選択することや、懲戒処分の手続を正しく進めることが非常に重要です。
咲くやこの花法律事務所でも、懲戒事由発覚時の懲戒処分についてご相談をお受けしています。懲戒処分は、懲戒対象者とのトラブルに発展しやすい場面の1つです。後日不備を指摘され、懲戒処分の撤回を余儀なくされたり、訴訟で敗訴することがないように、必ず事前に弁護士に相談したうえで懲戒手続を進めてください。
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7,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
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9,【関連情報】この記事の関連記事について
この記事では、「懲戒事由とは?わかりやすく解説します」について解説してきましたが、懲戒事由など懲戒処分に関するおさえておくべき重要な情報については、他にもこの記事で紹介していないお役立ち情報を以下でご紹介していますので、こちらもあわせてご覧ください。
・減給について解説!法律上の限度額は?労働基準法上の計算方法とは?
・懲戒委員会(賞罰委員会、懲罰委員会)とは?進め方や議事録について解説
記事更新日:2024年9月25日
記事作成弁護士:西川 暢春