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部下からパワハラで訴えられたら?パワハラと言われた時の必要な対応

部下からパワハラで訴えられた時、パワハラと言われた時に必要な対応について
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

「部下に指導や注意をしたら、パワハラだと言われた。」

こんなご相談が増えています。

このような「パワハラ(パワーハラスメント)」の訴えは、対応を誤ると、「パワハラでうつ病になったとして、労災を申請される」とか、「会社に対して慰謝料を請求される」など、大きな労働問題のトラブルに発展することが多いです。

もちろん、必要な指導をするべきことは当然であり、いわれのないパワハラで訴えられた場合は毅然とした対応が必要です。

今回は、「部下からパワハラで訴えられた時どのような対応が必要なのか」について、弁護士が重要なポイントのみをわかりやすくご説明します。

なお、パワハラの基礎知識をはじめとする全般的な説明や、パワハラ発生時の会社側の対応方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご覧ください。

 

 

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1,パワハラ(パワーハラスメント)とは?

パワハラとは?

パワハラで訴えられた時やパラハラだと言われた時の正しい対応方法についてご説明する前に、まず「パワハラ(パワーハラスメント)」についてその定義をご説明しておきたいと思います。

パワハラ(パワーハラスメント)の定義については以下の通りです。

 

(1)パワハラ(パワーハラスメント)の定義

『パワハラ(パワーハラスメント)とは、同じ職場で働く者に対して、地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、適正な範囲を超えて、「精神的・身体的苦痛を与える行為」または「職場環境を悪化させる行為」をいいます。』

パワハラの定義については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照下さい。

 

 

また具体的な行為がパワハラにあたるかどうかの判断基準やについては、以下で詳しく解説していますので、合わせて確認しておきましょう。

 

 

2,パワハラで訴えられたらまず会社に報告が必要。

あなたが部下にパワハラだと言われた時は、「まず会社に報告すること」が必要です。

会社に報告せずに済ませたいと考える人も中にはいるようですが、そのような考えは間違いです。

特に、会社に報告せずに個人的に部下に対して金銭支払いなどの提案をしてしまうと、後日の裁判で「パワハラと言われて個人的に隠ぺい工作を行った」と主張されます。

その結果、裁判所に「パワハラがあった」と判断される重要な理由になりかねません。

個人的に対応することは絶対に避けましょう。

会社との関係でも、部下とトラブルになっていることをあなたから会社に伝えたほうが、結果としてあなたに有利になります。

トラブルの内容をあなたから会社に伝えることによって、あなたの言い分を会社に正確に早く伝えることが可能だからです。また、自分からトラブルを報告することによって会社からの信頼も得られる可能性が高まります。

そして、あなたが部下とトラブルになっていることを会社が把握することによって、あなたは会社の協力を得て部下とのトラブルを解決していくことが可能になるのです。

ただ、そうはいっても、会社に伝えた時に、会社でどのような対応をすることになるのかが気になると思います。

以下で、部下からパワハラで訴えられたことを会社に伝えた後の流れについて見ていきましょう。

 

3,パワハラで訴えられたときの会社の対応の流れ

パワハラのトラブルについて報告を受けた時に、「会社が行う基本的な対応の流れ」は以下の通りです。

 

(1)会社があなたと部下の双方からヒアリングを行う。

会社は、パワハラの訴えの報告を受けた時に、まず、パワハラが事実かどうかを確認するために、ヒアリングを行います。

まず、会社がパワハラを訴えた部下からヒアリングを行い、パワハラと主張する内容や経緯を確認することが通常です。

その後、会社があなたからもヒアリングを行い、部下の言い分が事実かどうかをあなたに確認することになります。

 

(2)あなたと部下のメールのやりとりについても調査が行われる。

パワハラの有無を確認する重要な手段の1つが、あなたと部下のメールのやりとりの調査です。

パワハラは「言った、言わない」という証拠のない話になることが多いですが、メールは客観的に残っている記録であり、パワハラがあったかどうかの重要な判断基準になります。

あなたが部下に行った対応に問題がなく、部下とのやりとりがメールで残っている場合は、メールの履歴を積極的に会社に提出して、会社にあなたの対応に問題がなかったことを説明しましょう。

 

(3)あなたの同僚にも調査が行われることが多い。

あなたの同僚にも、あなたがあなたの部下にとった対応について、会社からヒアリング調査が行われることが通常です。

 

(4)会社としてパワハラの有無についての判断をする。

ヒアリング調査やメールの調査の結果も踏まえて、会社が、パワハラの有無を判断することになります。

判断に迷うときは、会社が顧問弁護士に相談のうえ判断することが通常です。

会社がパワハラを事実と考えた場合は、あなたに対して戒告や減給あるいは降格などの処分がされることもあります。

 

4,いわれのないパワハラで訴えられた時の反論のポイント

いわれのないパワハラで訴えられた時の反論のポイント

以下では、あなたが部下から、「いわれのないパワハラで訴えられたときに反論するべきポイント」についてご説明したいと思います。

反論のポイントは以下の通りです。

 

ポイント1:
部下が主張する内容について事実と異なる点があれば、事実を時系列に沿って説明する。

まず、部下がパワハラと主張する内容をあなたが会社から伝えられたときに、部下の主張内容に事実と異なる点がないかをよく確認することが必要です。

部下が主張する内容が事実と異なる場合は、事実をわかりやすく時系列に沿って説明しましょう。前述のとおり、メールなどの客観的な証拠に基づいて説明することが有効です。

 

ポイント2:
従業員を育てる目的で行った正当な指導であることを説明する。

あなたが正当な指導を行ったが、部下がパワハラだと主張してきた場合は、正当な指導であることを説明する必要があります。

具体的には以下の点を説明してください。

 

  • まず、指導の原因となった部下のミスや業務態度の問題を詳しく説明します。
  • あなたが部下に行った指導が、部下に対する人格的な攻撃や嫌悪感によるものではなく、部下の業務の改善のためのものであることを説明します。

 

過去のパワハラの裁判をみると、正当な指導か、パワハラかの判断基準は以下の通りです。

 

1,「正当な指導か、パワハラかの判断基準」について

  • 判断基準1:言動が、部下を育てる目的で行われたものか、それとも嫌悪の感情や退職に追い込む目的によるものか。
  • 判断基準2:言動の内容が業務の改善のために合理的なものか。
  • 判断基準3:言動の内容に部下に対する人格的な攻撃を含んでいるかどうか。

 

これらの判断基準を意識して、指導が必要であったことや、指導の内容が的確なものであったこと、部下に対する嫌悪の感情によるものではないことなどを説明して、反論を行いましょう。

 

▼【参考動画】西川弁護士が「その発言「パワハラ」かも?判断基準について」を詳しく解説中!

 

いわれのないパワハラについては、以下で詳しい解説をしていますのであわせてご覧下さい。

 

 

5,1時間半以上の叱責についてパワハラに該当しないと判断した裁判例のご紹介

パワハラについては、訴訟や労働審判といった裁判所の手続きに発展するケースが急増しています。

しかし、いわれのないパワハラを主張された場合、正しい対応をすれば、裁判でもパワハラを否定し、勝訴することが可能です。

以下では、指導に対してパワハラとの主張があった場合に、パワハラであることを裁判所が否定した判例をご紹介します。

 

【裁判例】
平成28年10月7日東京地方裁判所判決

 

事件の概要:

診療所勤務の看護師が上司4名から指導、叱責を受けたことがパワハラであるとして、合計440万円の損害賠償を請求した事件です。

 

争点:

この事件では、例えば以下の叱責が、パワハラにあたるかどうかが争点になりました。

日ごろからミスを繰り返していた看護師が処方箋の指示の2倍量の薬を用意したミスをしたのに対して、上司らが1時間半以上にわたり叱責をしました。

その叱責の中で特に問題とされた点は以下の2点です。

 

  • 仕事をいつまでにできるようになるのかという期限の目標について繰り返し質問した。
  • 3か月あるいは6か月たっても仕事ができるようにならなければ、この病院で働くことは無理だと納得して辞めるということを考えられるのか等と発言した。

 

このような叱責について、看護師はパワハラにあたるとして慰謝料の支払いを求めました。

 

裁判所の判断:

裁判所は、1時間半以上の叱責について、発言が穏当さを欠く面はあるが、指導の範囲内であり、パワハラとまではいえないと判断しました。

 

裁判所の判断の理由:

裁判所はパワハラにはあたらないと判断した理由として、以下の点をあげています。

 

  • 理由1:発言が指導を目的に行われたものであり、発言の目的が正当であること
  • 理由2:退職を促すような発言についても、改善ができなければ勤務継続が難しくなることを自覚させるためであったこと
  • 理由3:1時間半以上に及んだという点はあるが、終始落ち着いた口調で話しかけていること

 

このように、指導のために必要な叱責であり、声を荒げるようなものでなければ、裁判所もパワハラではないと判断しています。

いわれのないパワハラ主張に対しては、会社と協力して、反論していくことが必要です。

 

6,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、咲くやこの花法律事務所において、行っているパワハラのトラブルについてのサポート内容をご紹介しておきたいと思います。

咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容は以下の通りです。

 

  • (1)パワハラのトラブルに関する対応方法のご相談
  • (2)パワハラのトラブルに関する裁判、労働審判への対応
  • (3)パワハラのトラブルに関する団体交渉への対応

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

(1)パワハラのトラブルに関する対応方法のご相談

咲くやこの花法律事務所では、従業員や部下からパワハラであると主張された場合の対応方法に関するご相談を承っています。

パワハラのトラブルは、その後、パワハラを受けたと主張する従業員から、うつ病になったと主張して労災請求がされたり、慰謝料の請求がされたり、上司に対する処分を求める主張がされるなど、さまざまな法的な要求に発展するケースがほとんどです。

咲くやこの花法律事務所では、これまでパワハラのトラブルについて企業側で多くの実績を有しており、過去の裁判経験も踏まえて、パワハラ主張がされた時に、トラブル拡大防止のためのベストな対応方法をアドバイスします。

 

(2)パワハラのトラブルに関する裁判、労働審判への対応

パワハラについては裁判や労働審判に発展するケースが急増しています。

咲くやこの花法律事務所では、パワハラについて裁判や労働審判を起こされた場合も、労働裁判、労働審判に精通した実績豊富な弁護士が全力で対応し、相談者にとってもっとも有利な解決を導きます。

なお、労働審判におけるパワハラの主張に対する基本的な対応方法は、以下の労働審判についての解説記事の「答弁書のポイント5:パワハラ(パワーハラスメント)トラブルのケース」でも解説していますのであわせて確認してください。

 

 

(3)パワハラのトラブルに関する団体交渉への対応

パワハラをきっかけに、パワハラを主張する部下や従業員が、ユニオンと呼ばれる外部の労働組合に加入して、団体交渉を求めてくるというケースも増えています。

咲くやこの花法律事務所では、これまでも数多くのユニオンとの団体交渉に対応してきました。団体交渉の申入れがあった場合もあわてずに咲くやこの花法律事務所にご相談ください。弁護士が団体交渉に同席してもっとも有利な解決を導きます。

 

パワハラトラブルは早めの対策、対応が必須です。パワハラで訴えられたとき、パワハラと言われた時は、ぜひ早めに「労働問題に強い弁護士」にご相談ください。

 

 

7,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士へのお問い合わせ方法

咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士によるパワハラトラブについて、今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

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9,まとめ

今回は、部下からパワハラで訴えられた時、パワハラと言われた時に必要な対応についてご説明しました。

まず、最初に、パワハラで訴えられたらまず会社に報告が必要なことをご説明し、その後、パワハラで訴えられたときの会社の対応の流れやいわれのないパワハラで訴えられた時の反論のポイントを解説しました。

さらに、1時間半以上の叱責についてパワハラに該当しないと判断した裁判例をご紹介しています。

必要な指導に対してもパワハラであると主張されるケースが増えており、そのようなパワハラ主張についてはきっちりと反論していくことが必要です。

 

注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2022年12月19日

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    小田 学洋 弁護士
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