自社でパワハラがないかチェックしたいけれども、どのように取り組めばよいかわからず困っていませんか?
あるいは、あなた自身の言動についてパワハラかもしれないと感じているけど、パワハラに該当するのかわからず困っていませんか?
「相手がパワハラと感じたらパワハラ」と思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
パワハラに該当する行為かどうかのチェック項目を正しく理解しておくことは重要です。
パワハラのチェックはまずは以下の点を確認してみましょう。
- 「やめてしまえ」「新人以下だ」「給料泥棒」などの暴言がないか
- 椅子を蹴る、小突くなどの暴力がないか
- 隔離や仲間外しをしていないか
- 過大な業務を強制したり、逆に仕事を取り上げて与えないといったことをしていないか
- 従業員の性的指向や病歴など、プライベートに過度に立ち入る言動をしていないか
もし、あなたがパワハラをしている上司であれば、後に被害者から損害賠償を請求される可能性があります。
また、社内でパワハラが発生しているのにも関わらず放置した場合、会社も、従業員から損害賠償請求をされてしまう可能性があります。
そのようなリスクを避けるためには、どのような行為がパワハラにあたるのかを理解し、早期にパワハラを発見し、早めに対策を行うことが必要です。
この記事では、パワハラの定義や、パワハラに該当する行為のチェック項目を紹介しています。また、「パワハラを受けていないかをチェックするチェックシート」、「パワハラをしていないかをチェックするチェックシート」、「社内でパワハラが発生していないかをチェックするアンケートシート」等をダウンロードしていただくことができます。
この記事を最後まで読めば、どのような行為がパワハラにあたるのかや、パワハラが発生した時に会社がどのように対応するべきかがわかるはずです。
なお、パワハラの基礎知識をはじめとする全般的な説明については、以下の記事で詳しく解説していますので事前にご参照ください。
社内でパワハラがあった際、会社が、被害社員あるいは加害社員に対して必要な措置を講じなかったり、あるいは間違った対応をしてしまうことで、会社の責任が問われ、訴訟に発展するケースは少なくありません。
パワハラ発生時の初期段階で適切な対応をすることは、その後の二次トラブル防止の意味でも非常に重要です。
初期段階で対応を誤らないためにも、パワハラ被害の相談への対応は弁護士に相談しながら行っていただくことをおすすめします。また、パワハラかどうかの判断に迷った時も弁護士に相談して正確な判断をすることが重要になります。
パワハラに強い弁護士に依頼するメリットと費用の目安については以下をご参照ください。
▼パワハラチェックに関して今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,パワハラとは?
パワハラのチェックができるようになるためには、パワハラの定義を知っておくことがまず必要です。
以下では、パワハラの定義やどのような言動がパワハラにあたるのかを簡単にご説明します。
(1)パワハラの定義
法律上、次の3つの要素をすべて満たすものをパワハラと定義しています(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。
- 1.職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
- 2.業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
- 3.労働者の就業環境が害される言動であること
客観的にみて、業務上の必要があり、適切な方法で行われる業務指示や指導はパワハラにはなりません。
パワハラの定義については以下の記事や動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
▶参考動画:西川弁護士の「パワハラの定義とは?裁判例をもとに弁護士が解説【前編】」動画を公開中!
(2)パワハラの6つの種類
それでは、実際にどのような行為がパワハラになるのでしょうか。
厚生労働省は、パワハラの代表的な言動を以下の6つの種類に分類しています。
- 1.身体的な攻撃
- 2.精神的な攻撃
- 3.人間関係からの切り離し
- 4.過大な要求
- 5.過小な要求
- 6.個の侵害
それぞれのパワハラの種類について例をあげて簡単に説明します。
1,身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 殴ったり、足で蹴ったりする
- 物を投げつける
2,精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
- 人格を否定するような言動
- 必要以上に長時間厳しく叱責をする
- 他の労働者の前で大きな声で威圧的な叱責を繰り返す
- 能力を否定したり罵倒するような内容のメールを本人だけでなくその他の従業員も含めて送信する
3,人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 気に入らない労働者に対して、仕事を外し、長時間別室に隔離したり、自宅研修をさせたりする
- 1人の労働者を同僚が集団で無視をして職場で孤立させる
4,過大な要求(能力に対して達成不能な業務や不要な業務の強制)
- 長期間にわたって、肉体的苦痛をともなう過酷な環境下で、勤務に直接関係のない作業をさせる
- 新卒採用者に対して、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対して厳しく叱責する
- 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的にさせる
5,過小な要求(能力に対して程度の低い仕事をさせたり、仕事を与えないこと)
- 管理職である労働者を退職させるために誰にでもできる業務を行わせる
- 気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない
6,個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
- 労働者を職場外でも監視したり、私物の写真を撮影したりする
- 労働者の性的指向や性自認、病歴や不妊治療等の個人情報について、労働者の了解を得ずに他の労働者にばく露する
あくまでもパワハラの代表的な言動として6種類があげられているだけなので、この6種類に当てはまらない言動はパワハラにはならない、というわけではありません。
実際のパワハラの判断にあたっては、個別の状況を考慮して慎重に判断することが必要です。
パワハラの種類については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2,チェックシートで職場のパワハラを確認
それでは実際にチェックシートを使ってパワハラをチェックしてみましょう。
以下では、「パワハラを受けていないかをチェックするチェックシート」、「パワハラをしていないかをチェックするチェックシート」、「社内でパワハラが発生していないかをチェックするアンケートシート」をダウンロードしていただくことができます。
(1)パワハラを受けていないかチェック
パワハラを受けていないか気になる方は、まず以下をチェックしていましょう。
▶参考:パワハラを受けていないかのチェックシートのサンプル
こちらのチェックシートは、以下よりダウンロードしていただけます。
パワハラを受けている可能性がある場合は、1人で悩まず、社内のハラスメント相談窓口や、労働局の総合労働相談コーナー等に相談しましょう。
労働者向けの相談窓口は以下の記事で紹介しています。
(2)パワハラをしていないかチェック
自身がパワハラをしていないかが気になる方は、以下をチェックしてみてください。
▶参考:パワハラをしていないかのチェックシートのサンプル
こちらのチェックシートは、以下よりダウンロードしていただけます。
パワハラの加害者になると、会社から懲戒処分を受けたり、被害者から訴訟を起こされるリスクがあります。
パワハラにあたるような行為をしている場合は、ただちにやめ、パワハラに関する研修や部下への適切な指導方法に関する研修を受けて、自分の行動を見直しましょう。
(3)社内でパワハラが発生していないかチェック
社内でパワハラが発生していないかをチェックするためには、社内でのアンケート調査を実施することが効果的です。
厚生労働省が公開するパワハラ実態把握アンケートのひな形(簡易版)で調査を実施するのがよいでしょう。
以下は厚生労働省のひな形に少し修正を加えたものですので活用してください。
▶参考:パワハラ調査アンケートのサンプル
こちらのアンケートシートは、以下よりダウンロードしていただけます。
なお、実際のパワハラの判断にあたっては、その行為がどのような目的で行われたものなのか、発生した経緯や状況、業種や業態等、当事者の関係性等の様々な要素を考慮する必要があります。
パワハラの判断基準については以下で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(4)従業員のストレスが気になるときはストレスチェックを活用
パワハラが原因で強いストレスを感じ、メンタルヘルスに不調を感じる人も少なくありません。従業員のストレスが気になるときは、ストレスチェックを活用しましょう。
ストレスチェック制度とは、従業員のメンタルヘルスの不調を防止することを目的として、平成27年12月に施行された制度です(労働安全衛生法第66条の10)。
ストレスチェックは常時50人以上の労働者を使用する事業場では、1年に1回行うことが義務づけられており、常時50人未満の場合も努力義務とされています。
ストレスチェック制度の詳細は以下をご参照ください。
職業性ストレス簡易調査票をつかって、従業員に自分のストレスの状況を確認してもらいましょう。
▶参考:厚生労働省「国が推奨する57項目の質問表(職業性ストレス簡易調査票)」
・参照元:「ストレスチェック制度導入マニュアル(厚生労働省)」から抜粋
以下の厚生労働省のホームページでもチェックすることができますので試してみてください。
チェックの結果、心理的な負担の程度が高い従業員が申し出た場合は、事業者は医師による面接指導を行うことが義務付けられています(労働安全衛生法第66の10第3項)。
また、面接指導の後は、事業者は医師の意見を聴いたうえで、必要なときは就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じる必要があります(労働安全衛生規則第66条の10第6項)。
3,パワハラ理解度テストの質問項目
職場のパワハラを防止するためには、従業員一人一人がパワハラへの理解を深め、「職場でパワハラをしない、させない」という意識を持つことが重要です。
パワハラの加害者の中には、これくらい問題ないだろうと考え、自分がパワハラをしていることに気がついていない人も少なくありません。
以下の質問項目に自社の従業員に答えてもらい、パワハラ理解度をチェックしてみましょう。
▶参考:パワハラ理解度チェックテストのサンプル
こちらの「パワハラ理解度チェックテスト」は、以下よりダウンロードしていただけます。
4,パワハラがみつかった時の対応方法
では、アンケート調査等でパワハラが見つかったときや従業員からパワハラ被害の相談があった場合、企業はどのように対応すればよいのでしょうか?
以下で対応方法をご説明します。
(1)事実関係の確認を行う
以下のような方法で事実関係の確認を行います。
- 被害者からのヒアリング
- 加害者からのヒアリング
- 目撃者や関係者からのヒアリング
- 録音やメールの履歴等の客観的な証拠を確認する
当事者からのヒアリングは、中立・公平な立場で行うことが大切です。
「それはパワハラとは言えないのではないか」と自分の意見を述べたり、安易に加害者の処分を約束するようなことは控えましょう。
加害者や目撃者等に事実確認を行う時は、事前に被害者の了解を得ることが必要です。
パワハラの調査方法については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
(2)パワハラがあったかを判定する
関係者からのヒアリング等の調査が終了したら、調査の内容を踏まえて、パワハラの有無の判定を行います。
パワハラの有無の判断は、あったと判断するにしても、なかったと判断するにしても、当事者に不満が残りやすいため、会社にとっては訴訟トラブルに発展しかねない難しい判断になります。
被害者と加害者の間で言い分がくいちがう場合や、被害者にも非がある場合等、判断に迷うケースでは弁護士に相談することをおすすめします。
(3)被害者に対するフォローや加害者の処分等を検討する
パワハラがあったと判断した場合は、必要に応じて被害者へのフォローや加害者の処分等を行います。
1,被害者に対するフォローについて
被害者に対するフォローとしては、加害者の配置転換や、加害者への指導、被害者のメンタルヘルスの不調への対応、復職への援助等があります。
パワハラを認識しているのに、何もせずに放置した場合、会社が安全配慮義務違反の責任を追及される可能性もありますので、被害者の意向を確認した上で、必要なフォローを行うようにしましょう。
安全配慮義務違反とは、具体的な解説は以下でわかりやすく解説していますので参考にご覧ください。
2,加害者の処分について
加害者に対しては、パワハラの程度に応じて懲戒処分等を検討します。
懲戒処分をするときは、パワハラの内容、加害者の謝罪や反省の有無、常習性、被害の程度等の要素を考慮し、就業規則や懲戒規定に基づいて処分の内容を検討します。
懲戒処分の手続きを誤ったり、事案の内容に比較して重すぎる懲戒処分をすることは、懲戒処分が無効となる理由になりますので、十分注意してください。
懲戒処分の対象とするべきか、どの程度の処分が妥当か判断に迷った場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
パワハラの加害者に対する懲戒処分については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
パワハラを受けていても、加害者からの報復を恐れて相談をためらったり、不利益な扱いを受けるのではないかと不安に感じて相談できない従業員もいます。相談がないからといって「社内にはパワハラがない」と考えるのは早計です。
パワハラについてアンケート調査を定期的に行う等、積極的にパワハラの発見と問題解決のために働きかけることをおすすめします。
5,パワハラチェックに関して弁護士に相談したい場合はこちら
ここまで社内におけるパワハラチェックの方法と、パワハラが見つかった場合の対応についてご紹介しました。
以下では、咲くやこの花法律事務所のパワハラトラブルについてのサポート内容をご紹介します。
咲くやこの花法律事務所では、ハラスメントトラブルをはじめとして、数多くの労務トラブルについてのご相談をいただいております。
パワハラに関するトラブルでお困りの企業の方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所へご相談ください。経験豊富な弁護士が御社にとって最適な解決方法をアドバイスいたします。
(1)パワハラの調査についてのご相談
パワハラの相談があった場合、被害者、加害者等への調査をすみやかに行うことが必須です。
しかし、パワハラの証拠がない場合や、被害者と加害者の言い分が食い違う場合など、パワハラの有無について判断が難しいケースも少なくありません。
咲くやこの花法律事務所では、パワハラについて、弁護士がヒアリングに立ち会い、適切な調査をバックアップします。
また、加害者の懲戒処分など、調査結果を踏まえた会社の対応についてもご相談をお受けします。
ご相談費用例
- 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
(2)パワハラ防止対策についてのご相談
社内でパワハラが発生すると、会社はパワハラの調査や、場合によっては被害者からの損害賠償請求等の対応に追われることになります。まずは社内でパワハラが発生しないように、防止対策を行うことが重要です。
咲くやこの花法律事務所では、企業のパワハラ防止対策についてのご相談も承っています。企業労働法務を専門とし、数多くの労働問題を取り扱ってきた弁護士が、企業として取り組むべき効果的な防止対策をアドバイスいたします。
また、パワハラについての社内研修やセミナー講演等のご依頼も承っています。
ご相談費用例
- 30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
企業のパワハラ防止対策については以下の記事もご参照ください。
(3)顧問弁護士サービスのご相談
咲くやこの花法律事務所では、パワハラトラブルをはじめとする、労務トラブルを日ごろから弁護士に相談するための、顧問弁護士サービスを事業者向けに提供して、多くの事業者をサポートしてきました。
顧問弁護士サービスを利用することで、問題が小さいうちから気軽に相談することができ、問題の適切かつ迅速な解決につながります。また、日ごろから労務管理の改善を進め、トラブルに強い会社をつくることに取り組むことができます。咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスは以下をご参照ください。
6.パワハラトラブルについての咲くやこの花法律事務所の解決実績
ご参考までに咲くやこの花法律事務所におけるパワハラトラブルに関する企業向けのサポートの解決実績の一部を以下でご紹介しております。
あわせてご参照ください。
▶パワハラ被害を受けたとして従業員から会社に対し300万円の慰謝料が請求されたが、6分の1の慰謝料額で解決した成功事例
▶教職員が集団で上司に詰め寄り逆パワハラが発生!学校から弁護士が相談を受けて解決した事例
▶内部通報窓口に匿名で行われたハラスメントの通報について、適切な対処をアドバイスし、解決まで至った事例
7,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
パワハラのチェックに関する相談などは、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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9,【関連情報】パワハラに関するお役立ち関連記事
この記事では、「職場のパワハラチェックまとめ!あなたの会社は大丈夫ですか?」についてわかりやすく解説しました。社内でパワハラトラブルが発生した際は、パワハラかどうかのチェックはもちろん、初動からの正しい対応方法を全般的に理解しておく必要があります。
そのためにも今回ご紹介したパワハラチェックに関する正しい知識をはじめ、他にもパワハラトラブルを正しく対応するためには基礎知識など知っておくべき情報が幅広くあり、正しい知識を理解しておかなければ重大なトラブルに発展してしまいます。
以下ではこの記事に関連するパワハラのお役立ち記事を一覧でご紹介しますので、こちらもご参照ください。
・パワハラ防止法とは?パワハラに関する法律のわかりやすいまとめ
・パワハラ発生時の対応は?マニュアルや対処法、流れについて解説
・パワハラの証拠の集め方と確認すべき注意点などをわかりやすく解説
・パワハラの慰謝料の相場はどのくらい?5つのケース別に裁判例をもとに解説
・パワハラ(パワーハラスメント)を理由とする解雇の手順と注意点
・逆パワハラとは?具体的な対処法を事例や裁判例付きで徹底解説
注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。
記事作成弁護士:西川暢春
記事更新日:2023年8月18日