イラストや画像は「どこまで類似していれば違法なのか?」著作権侵害の判断基準を解説!

著作権の類似の判断基準

ビジネスの現場で、「会社ロゴ・Webサイト・広告販促物」など、様々なケースでイラストや画像作成する場合に、他人の既存のイラストや画像を参考にすることがあると思います。

このような場合に気になるのが、「会社ロゴ・Webサイト・広告販促物」などで利用するために作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像とどこまで類似していれば、著作権侵害になってしまうかという判断基準です。

そこで、今回は、実際の裁判例も踏まえて、「既存のイラストや画像とどこまで類似していれば著作侵害となり法的にアウトなのか?」の判断基準についてご説明したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

 

1,今回の記事を読めばわかること

●著作権侵害の判断基準について
●裁判所で著作権侵害が「否定された事例」
●裁判所で著作権侵害が「肯定された事例」
●他人のイラストや画像を参考にする場合におさえておくべきポイント

 

2,著作権侵害の判断基準について

会社ロゴ・Webサイト・広告販促物など、既存のイラストや画像に類似するイラストや画像を作成した場合、それが既存のイラストや画像の著作権を侵害しているかどうかの判断基準にあたっては、以下の3点がポイントとなります。

著作権を侵害しているかどうかについての3つの判断基準

(1)既存のイラストや画像が「著作物」かどうか(著作物性)
(2)新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像に依拠して作成されたものか(依拠性)
(3)新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像に類似しているかどうか(類似性)

 

以下では、(1)〜(3)の判断基準について、詳しく説明したいと思います。

(1)既存のイラストや画像が「著作物」かどうか(著作物性)

「著作物性」については、法律上、デザインが「著作物」に当たるためには、「創作性」が必要とされています。

そのため、既存のイラストや画像に「創作性」がない場合は、そもそも著作物にはあたらず、同一または類似のイラストや画像を作成しても著作権侵害にはなりません。

たとえば、「気象衛星が撮影した台風の写真」については、機械で撮影したもので人間の手による「創作性」が入り込む余地がないため、「著作物」にあたりません。そのため、この画像を他人が使用したり、コピーしたとしても、著作権侵害にはあたりません。

(2)新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像に依拠して作成されたものか(依拠性)

「依拠性」については、新しく作成したイラストや画像が、「既存のイラストや画像を参考にして作ったものかどうか?」が問題となります。

既存のイラストや画像を参考にせずに作成し、結果として、たまたま既存のイラストや画像と類似のものができあがったとしても、法律上、著作権侵害にはあたりません。

(3)新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像に類似しているかどうか(類似性)

「類似性」については、新しく作成したイラストや画像が、既存のイラストや画像を参考に作成したものであっても、既存のものと類似していなければ、著作権侵害にはあたりません。

そして、「類似しているかどうか?」は、判例上、「既存の著作物の表現形式上の本質的特徴部分を、新しい著作物からも直接感得できる程度に類似しているか?」が判断基準とされています。

もう少し簡単に解説しますと、新しいイラストや画像と既存のイラストや画像の「共通部分」が、既存のイラストや画像にとって「本質的特徴にあたる部分なのか?」、それとも「本質的特徴ではない部分が共通しているにすぎないのか?」が、類似性の判断の分かれ目になります。

 

以上、3つの判断基準について述べましたが、実際にトラブルになるケースでは、「(1)」、「(2)」が重要な争点になることは少なく、「(3)」の「類似性」の判断が著作権侵害か否かの判断において、もっとも重要なウェイトを占めます。

そこで、以下では、どのくらい類似していれば著作権侵害と判断されるのかについて、具体的な事例を見ていきたいと思います。

 

3,裁判所で著作権侵害が「否定された事例」

まず、裁判所で著作権侵害が否定された事例から紹介したいと思います。

事例1:マンション読本事件
(大阪地方裁判所平成21年3月26日判決)

マンション読本

左が「既存のイラスト」、右が「新しく作成されたイラスト」です。

既存のイラストの著作権者が、新しく作成されたイラストについて、「既存のイラストの著作権を侵害している」として、訴訟を提起しましたが、「裁判所は著作権侵害には当たらない」と判断しました。

裁判所は、判断の理由として、以下の2点をあげています。

裁判所が著作権侵害を否定した理由

理由1:

2つのイラストの共通する部分は痩身の女性をイラストで単純化して表現する場合にごく一般的に見られるありふれたものである。

理由2:

2つのイラストでは人物の表情が異なっている。

事例2:博士イラスト事件
(東京地方裁判所平成20年7月4日判決)

博士画像

左が「既存のイラスト「、右が「新しく作成されたイラスト」です。

裁判所が著作権侵害を否定した理由

理由1:

2つのイラストには、顔のつくりが下ぶくれの台形状であって両頬が丸く、中央部に鼻が位置し、そこからカイゼル髭が伸びていることなどの共通点があるが、いずれもありふれたものである。

理由2:

2つのイラストは、瞳の色、眉の形と色、髭の色、角帽の被り方などにおいて相違している。

事例3:絵柄シール事件-招き猫のイラスト
(東京地方裁判所平成26年10月30日判決)

招き猫

左が「既存のイラスト」、右が「新しく作成されたイラスト」です。

裁判所が著作権侵害を否定した理由

理由1:

2つのイラストには、片方の前足を挙げている点、左肘、右肩及び左後足の3か所に斑点がある点などの共通点があるが、これらは招き猫としてありふれた表現である。

理由2:

2つのイラストは最も大きな印象を与える頭部の描き方及び顔面の表情において大きく異なる。

 

このように、類似性を否定し、著作権の侵害はないと判断したケースでは、「共通部分があるけれども、それは既存のイラストの本質的特徴部分とはいえず、ありふれた表現の部分にすぎない」とされていることが特徴です。

人物や動物については、ある程度、描き方が限られるため、類似点が出てきて当然であるという側面があります。そのため、表情などが異なると「共通部分はありふれた表現にすぎない一方で、見る人に最も大きな印象を与える表情が違っている」として著作権侵害を否定されやすい傾向にありますので、覚えておきましょう。

 

4,裁判所で著作権侵害が「肯定された事例」

次に、裁判所で著作権侵害が肯定された事例をみてみましょう。

事例1:出る順事件
(東京地方裁判所平成 平成16年6月25日判決)

●裁判所の結論

イラスト使用の差し止め+1,025万円の賠償命令

出る順画像

左が「既存のイラスト」、「右が新しく作成されたイラスト」です。

裁判所が著作権侵害を肯定した理由

理由1:

「人形を肌色一色で表現して人形の体型をA型にして手足を大きくし、左手の手のひらを肩の高さまで持ち上げて表現する」という表現方法などが2つのイラストにおいて共通している。

理由2:

上記の共通する表現方法は既存のイラストの特徴的な部分である。

 

事例2:西瓜写真事件
(東京高等裁判所平成13年6月21日判決)

●裁判所の結論

写真使用の差し止め+100万円の賠償命令

スイカの画像

左が「既存の写真」、右が「新しく撮影された写真」です。

裁判所が著作権侵害を肯定した理由

理由1:

「大きい楕円球の西瓜ないし冬瓜を配置し、その右前方に小さい円球の西瓜を配置し、これらの西瓜の上には、葉や花のある西瓜のつる一本を配置し、背景として、グラデーション用紙により盛夏を思わせる青色の色彩とした点」などが、2つの写真において共通している。

理由2:

上記の共通部分は、既存の写真の特徴的な部分である。

 

事例3:絵柄シール事件 ひょうたんのイラスト
(東京地方裁判所平成26年10月30日判決)

●裁判所の結論

絵柄使用の差し止め+約2万円の賠償命令

ひょうたん画像

左が「既存のイラスト」、右が「新しく作成されたイラスト」です。

裁判所が著作権侵害を肯定した理由

理由1:

「太い線で黒地に白色の葉脈の葉と、白地に黒色の葉脈の葉を織り交ぜて描いた点」などが、2つのイラストにおいて共通している。

理由2:

上記の共通部分は既存のイラストの特徴的な部分である。

 

このように、著作権侵害を肯定した例をみると、「既存の著作物との共通点が、既存の著作物の本質的特徴部分であること」を根拠にしていることがわかります。

新しいイラストや画像と既存のイラストや画像の「共通部分」が、既存のイラストや画像にとって本質的特徴部分にあたる場合は、類似性が肯定され、著作権侵害と判断されていることをおさえておきましょう。

 

5,他人のイラストや画像を参考にする場合におさえておくべきポイント

以上の裁判例も踏まえて、他人のイラストや画像を参考にして、新しいイラストや画像を作成する場合の注意点をまとめると以下のようになります。

他人のイラストや画像を参考にして、新しいイラストや画像を作成する場合の注意点

注意点1:
他人の既存のイラストや画像を参考にすること自体が、著作権侵害になるわけではない

注意点2:
既存のイラストや画像を参考にする場合、その本質的特徴部分が類似すると著作権侵害となる

注意点3:
既存のイラストや画像を参考にして作ったイラストや画像を、自社商品に掲載する場合、特に慎重な判断が必要になる

注意点4:
著作権侵害が否定されるケースであっても、クレームの対象となり、相応の費用と時間の負担が必要になることがある

 

これらの4つの注意点について、以下、順番に詳しくご説明します。

注意点1:
他人の既存のイラストや画像を参考にすること自体が、著作権侵害になるわけではない

一般に、デザインをする場合に、他人のデザインを一切参考にせずに制作しなければ、著作権侵害とされるわけではありません。まずは、この点を基本としておさえておきましょう。

注意点2:
既存のイラストや画像を参考にする場合、その本質的特徴部分が類似すると著作権侵害となる

この点は、裁判例をもとにご説明したとおりになります。

逆に言えば、既存のイラストや画像のうち、デザインとしてありふれた部分が、新しく作成したイラストや画像と類似していたとしても、著作権侵害になるわけではありません。類似している点が、既存のイラストや画像の「本質的特徴部分なのか?」、「ありふれた部分のなのか?」は、判断が難しい場面もありますので、微妙なケースは著作権に詳しい弁護士にご相談いただくことをお薦めします。

▶参考:著作権に詳しい弁護士への相談についてはこちらをご覧下さい。

注意点3:
既存のイラストや画像を参考にして作ったイラストや画像を、自社商品に掲載する場合、特に慎重な判断が必要になる

前述の著作権侵害を認めた裁判例においても、裁判所が命じた損害賠償の額は、以下のように大きく異なります。

【事例1】では、「1,025万円」
【事例2】では、「100万円」
【事例3】では、「約2万円」

 

最も高額の賠償となっている【事例1】は、資格試験のテキストの表紙に、他社の既存のイラストを参考にして作成したイラストを掲載して、テキストとして販売した事例です。

このように、他人のイラストや画像を参考にして作ったイラストや画像を、自社商品に掲載するケースでは、「著作権侵害と判断された場合の賠償額が高額となる傾向にあります」ので、特に慎重な判断が必要です。

 

注意点4:
著作権侵害が否定されるケースであっても、クレームの対象となり、相応の費用と時間の負担が必要になることがある

著作権の侵害が結論として否定されるケースについても、訴訟が起こされれば、その対応のために費用と時間を負担しなければなりません。そして、訴訟への対応のための弁護士費用は、勝訴した場合であっても、原則として、相手に請求することはできません。

このように、既存のイラストや画像と類似するイラストや画像を使用する場合、仮に著作権を侵害していないとしても、クレームがあれば、相応の費用と時間を負担することになるということにも注意しておきましょう。

 

6,まとめ

今回は、「著作権侵害の判断基準」をご説明したうえで、具体的な裁判の事例をもとに、裁判所で著作権侵害が否定された事例と肯定された事例についてご説明しました。さらに、「他人のイラストや画像を参考にする場合におさせえておくべき注意ポイント」についてもご説明しました。

著作権を侵害しているかどうかの判断にあたっては、過去の判例などを分析して判断する必要があること、また、他人のイラストや画像を参考にして作ったイラストや画像を、自社商品に掲載するケースでは、著作権侵害と判断された場合の賠償額が特に高額となる傾向にあり、注意を要することをおさえておきましょう。

 

7,イラストや画像の著作権侵害の判断に迷った時、弁護士に相談するメリット

自社で使用する予定のイラストや画像が他社の著作権を侵害しないかどうかの判断に迷ったときは、著作権に強い弁護士に事前に相談いただくことをおすすめします。

イラストや画像の著作権について弁護士に事前にご相談いただくことによるメリットは次の通りです。

メリット1:

事前に、著作権侵害にあたるかどうかを弁護士に相談することにより、そのイラストや画像を使用することによるリスクの有無を明確に把握することができ、場合によっては使用をとりやめたり、あるいは修正して使用することにより、リスクを回避することができます。

メリット2:

弁護士への相談の結果、著作権侵害にならない場合は、自信をもってイラストや画像を使用することができます。

 

著作権侵害については慎重な判断が必要な一方で、イラストや画像については他人のものを参考にして作ること自体は合法であり、参考にすることまで否定してしまうと場合によっては事業活動に支障が生じてきます。

事前に弁護士に相談することにより、使用できるイラストや画像は自信を持って使用し、著作権侵害と判断されるおそれが高いイラストや画像は使用をとりやめるなど、明確な判断を行うことができます。

 

8,咲くやこの花法律事務所なら「著作権の相談についてこんなサポートができます!」

最後に、咲くやこの花法律事務所で企業のご相談者からの著作権の相談について行っているサポート内容をご紹介したいと思います。

著作権の相談について「咲くやこの花法律事務所」ができること

(1)著作権を侵害しているかどうかの判断に関するご相談
(2)他社から著作権侵害のクレームを受けた場合の対応のご相談
(3)他社に著作権侵害された場合の対応のご相談

 

以下で順番に見ていきましょう。

(1)著作権を侵害しているかどうかの判断に関するご相談

咲くやこの花法律事務所では、自社で使用予定の画像やイラストなどの著作物について、他社の著作権を侵害していないかどうかの事前相談を多数、承っております。著作権トラブルに精通した弁護士による相談により、著作権侵害のリスクの程度を明確に把握することができます。

(2)他社から著作権侵害のクレームを受けた場合の対応のご相談

咲くやこの花法律事務所では、他社から既に著作権侵害のクレームを受けているケースについても、クレームの対応方針に関するご相談を承っております。著作権トラブルに精通した弁護士が、著作権侵害にあたるかどうかの判断を行い、クレーム解決までの道筋を明確に示します。また、ご相談後に相手との交渉を弁護士にご依頼いただくことも可能です。

(3)他社に著作権侵害された場合の対応のご相談

咲くやこの花法律事務所では、自社の著作物を他社に無断で使用された場合の対応のご相談も承っています。著作権トラブルに精通した弁護士が、相手に対する使用停止の請求、損害賠償請求など法的な対応を含めた解決策を明示します。また、ご相談後に相手との交渉を弁護士にご依頼いただくことも可能です。

 

著作権を侵害しているかどうかの判断は、正確な判断が非常に難しく、また、特に自社が他社の著作権を侵害してしまうと多額の損害賠償責任を負う危険もあり、自己判断は危険です。お困りの企業様は、咲くやこの花法律事務所のサポートを気軽にお問い合わせください。

▶参考:咲くやこの花法律事務所の「著作権に強い弁護士への相談サービスについて」はこちらをご覧下さい。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2017年4月25日

 

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