会社と従業員との間で、解雇や残業代の支払についてトラブルとなったときに、その従業員が労働組合に駆け込み、労働組合が、問題となったトラブルについて会社に交渉を求めてくる場合があります。
最近では、会社に労働組合がなくても、会社の外部の労働組合から交渉が申し入れられることも増えてきており、社内に労働組合がないからといって、安心してはいられません。
弊事務所では団体交渉に同席して経営者側の立場にたって交渉することに取り組んでおりますが、今回は交渉が成立した場合の手続きについてお話しします。
交渉の結果、会社と、労働組合、従業員との間で、トラブルになった点についての話し合いがまとまり、合意が成立した場合には、その合意を、
「合意書」として書面化しておくことが必要です。
合意書を作らずにお金を支払ってしまうと、のちのち、同じ従業員の同じ問題について、また同じような請求がされてしまうおそれがあります。
この合意書に必ず入れておくべき
①守秘義務条項
②清算条項
についてお話します。
まず、①の守秘義務条項についてです。
守秘義務条項とは、
「交渉の内容、結果を、交渉の当事者以外の第三者にもらさない。」
ということをお互いに約束する条項です。
労働問題の場合、
経営者が組合や組合員に譲歩して、金銭を支払ったりしたという話が他の従業員に広まると、それをまねて金銭の請求をしてくる従業員が出てきます。
このような事態を防止するために、
会社と労働組合との合意の内容だけではなく、合意があったということ自体を秘密にしておく必要があります。
具体的には、合意書に、次のような条項を入れることになります。
第●条(守秘義務)
株式会社○○、△△組合、△△組合員□□□□は、本協定書の存在およびその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、その相手方の如何にかかわらず一切開示または漏洩しない。
このような条項をきちんと明確に合意書に記載しておくことで、
万が一、組合や組合員が、合意があったことやその内容を第三者に漏らしたときには、その責任を追及できることになり、結果的に第三者に漏れることを防ぐことができます。
次に、②の清算条項についてです。
これは、
「今回話し合った問題については、会社も労働組合従業員も、これ以上、蒸し返すことはしない。この問題については、この合意でもって、最終的な解決とする。」
ということを約束する条項です。
例えば、未払い残業代の支払の問題で、会社としては、50万円を支払って解決したつもりになっていても、労働組合や従業員の側から、
「まだ未払いの分がある!」
と言って、問題を蒸し返し、さらなる請求をしてくるおそれがあります。
清算条項を入れておけば、このような、すでに解決した問題についての組合側からの請求を拒むことができます。
清算条項は、具体的には次のようになります。
第●条(清算条項)
株式会社○○、△△組合、△△組合員□□□□は、本協定書に定める他、株式会社○○(株式会社○○の関連会社、および株式会社○○とその関連会社の役員、従業員、株主を含む。以下同じ。)・△△組合員□□□□間において、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
ただし、これは、問題となった組合員が退職により会社と関係がなくなる場合の清算条項です。
会社と組合員との雇用関係が、合意書締結後も続く場合には、組合員は従業員として会社に労務を提供する義務を負いますし、会社としてはそれに対して給与を支払う義務を負うのですから、「何らの債権債務が存在しない」というわけにはいきません。
会社と組合員との雇用関係が続く場合の清算条項は、次のようになります。
第●条(雇用関係の継続)
株式会社○○、△△組合、△△組合員□□□□は、株式会社○○と△△組合員□□□□との雇用関係が今後も継続することを相互に確認する。
第●条(清算条項)
株式会社○○、△△組合、△△組合員□□□□は、本協定書に定める他、株式会社○○(株式会社○○の関連会社、および株式会社○○とその関連会社の役員、従業員、株主を含む。以下同じ。)・△△組合員□□□□間において、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
このように記載しておけば、
従業員の側が今回の労使交渉で問題となった点を蒸し返して、実質的には同じ内容を形をかえて持ち出してくるということを防ぐことができます。
これらの、
①守秘義務条項や、
②清算条項は、
のちのちのトラブルを防止するために、トラブルの内容を問わず、合意書には必ず入れておく必要があります。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、団体交渉にお困りの経営者の方のために、団体交渉の場に経営者の方と一緒に同席して組合との交渉にあたっております。
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