インターネット通信販売の事業を行う場合に、返品の可否について、なにも表示をしないでおくと、顧客からの返品を受け付けざるをえないため、通信販売を行うときは返品についての表示をしておかなければなりません。
今回はこの表示についての注意点をお話しします。
インターネット通信販売では、物を売り買いするときに、販売業者と顧客が実際に会うことはなく、顧客は販売業者の人物、販売店の雰囲気等を知ることはありません。
また、顧客は、商品を購入するに当たって、商品の現物を実際に手に取って見ることもありません。
商品についてのWebページ上の写真や文章を見て、商品を買うかどうか決めることになります。
それだけでなく、「申込書」などの書面を取り交わすこともなく、クリックとクレジット決済で契約が成立して、商品が顧客の元に届くことになります。
顧客の側からすれば、インターネット通信販売で商品を購入した場合、「届いた商品が、想像と違った」ということが、店舗で商品を購入する場合と比較して、はるかに多いことになります。
そのため、インターネット通信販売の顧客は、原則、商品が届いた日を含めて8日間が経過するまでは、届いた商品を返品することができる、ということが、「特定商取引法」という法律に定められています。
商品に欠陥や不具合が何もなく、なおかつ、Webページ上の商品についての写真や文章に何も嘘偽りがなくても、返品できてしまいます。
インターネット通信販売の事業者は、顧客からの返品を受け付けないようにするためには、Webページ上に「顧客は商品を返品することはできない」ということを、はっきりと表示しておかなければなりません。
このことも、「特定商取引法」に定められています。
Webページ上に「顧客は商品を返品することはできない」ことを表示しておく際に、特に気をつけるべき点は、次の2点です。
①「返品不可」の表示を、顧客が一見して認識できる表示のしかたで表示しなければならない。
②広告や商品紹介のページだけでなく、最終申し込み画面にも、「返品不可」の表示をしておかなければならない。
この2つの点について順番にお話しします。
まず、①についてです。
「返品不可」という表示は、商品紹介のページのなかで、一目でわかるように分かりやすく表示しておかなければなりません。
例えば、「商品を返品することはできません」という表示がされているものの、ページの隅の目につきにくいところに非常に小さな文字で表示してあるだけでは、顧客が一見して認識できる表示のしかたで表示してあるとは言えません。
また、商品紹介の画面から、膨大な画面をスクロールしなければ「返品不可」という表示にたどり着けない場合や、何十条もある購入規約のなかの一条項に「返品不可」という内容が表示されているに過ぎない場合には、両方とも、顧客が一見して認識できる表示のしかたで表示してあるとは言えません。
返品についてのトラブルを予防するために、顧客が商品紹介のページを見れば、「返品不可」という文字が目に入ってくるように、12ポイント以上の大きさの文字で、また太字や色文字にすることで目立つように表示しておくことをお勧めします。
次に、②についてです。
「返品不可」という表示は、商品紹介のページだけではなく、最終申し込み画面にも表示しておかなければなりません。
「最終申し込み画面」というのは法律上の定義は難しいのですが、簡単に言えば、商品を購入する人が、購入を確定する際に、「購入を確定する」などのボタンをクリックする画面をいいます。
商品紹介のページで、どれほどわかりやすく「返品不可」の表示を行っていたとしても、最終申し込み画面に「返品不可」の表示がされていなければ、通信販売業者は顧客からの返品を受け付けなければならなくなってしまいます。
この点は見落としがちですが、重要な点です。
以前は最終申し込み画面に「返品不可」と表示することまでは求められていませんでしたが、平成21年12月の特定商取引法の改正により、返品対応しない場合はこのような表示が義務付けられました。
最終申し込み画面の「返品不可」の表示も、一見してわかりやすく表示しておかなければならないことは同じです。
12ポイント以上の文字で、色文字や太字にして目立つようにしておけば、顧客が一見して認識できる表示のしかたをすることをお勧めします。
最近、インターネット通信販売のトラブルで、消費者センターに相談する消費者が増えています。
商品紹介ページだけでなく、最終申し込み画面にもきちんと「返品不可」の表示をしていれば、消費者センターに相談されても、十分に対応することが可能です。
逆に言うと、そのような表示がされていない場合は返金対応しなければならなくなりますので、十分注意してください。
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