経営上の必要から従業員の給与を減額せざるを得ないときに注意すべき点はどのような点でしょうか?
東京地方裁判所の平成24年2月27日判決の「NEXX事件」は、会社が経営上の必要から従業員の給与を20%減額したのに対し、この20%減額された賃金を3年間受け取っていた従業員が退職後に賃金の減額分の支払を求めた裁判です。
裁判所は、この事件で、賃金減額に対して、従業員の合意はなかったとして、減額前の給与との差額分の支払を会社に命じました。
裁判所は判決の中で、賃金の引き下げに対し、黙示の合意が成立したということができるためには
「使用者が提示した賃金額引き下げの申し入れに対して、ただ労働者が異議をのべなかったというだけでは十分ではなく、このような不利益変更を真意に基づき受け入れたと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要である」
としています。
そして、裁判所は、減額後の給与を異議なく3年間にわたり受け取っていたとしても、従業員が給与の減額に同意にしたことにはならないと判断しました。
裁判での会社側の主張内容からは、会社としては業績悪化のため、業績連動型の給与制度に切り替えたかったということが読み取れます。
しかし、そのような制度を人件費総額の削減を目的として導入することは、従業員の同意が必要であり、十分な説明をして書面による同意をもらっておくべきでした。
経営者としては業績悪化で人件費総額を減らさざるを得ない場合は、まず賞与を削減し、それでも足りなければ、会社の決算状況を具体的に従業員に開示した上で必要な人件費の削減額を明確にし、給与の削減に理解を求め、あるいは希望退職者を募集することになります。
そうはいっても、給与の削減についてどうしても従業員の同意を得ることができない場合に一方的に給与を下げることも経営上やむを得ないことがあります。
しかし、その場合も、会社の決算状況を具体的に従業員に開示した上で十分な説明、説得を行うことが必要です。
この事件では、業績連動型給与と言いながら給与が上がった社員はおらず給与制度の変更が人件費総額の削減を目的とするものであったこと、当面の給与の減額の必要性について会社として一応の説明は行ったものの会社の決算状況を具体的に開示して従業員らに説明をしていないことなどが会社側敗訴の理由となりました。
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