従業員が病気やケガのため、これまでとおりに業務を行うことができなくなる場合があると思います。
このような場合、その従業員には配転命令を出して、別の仕事に就いてもらう必要があります。しかし、当人の同意なしにそのようなことは可能でしょうか。
参考になる裁判例として、平成24年5月24日千葉地裁松戸支部での「エバークリーン事件」をご紹介します。
この事件は、産業廃棄物回収・処分等を行う会社で入社以来ドライバーとして勤務していた従業員が足を負傷したため、会社がドライバー職は困難と判断して工場職に配置転換し、それに伴い、工場職の給与体系を適用して給与を大幅に引き下げたという事件です。
これに対し、この従業員が給与の差額分の支払いなどを求めて会社を訴えました。
裁判所は、配置転換とそれに伴う給与の引き下げは正当であると判断して、従業員の請求を認めませんでした。
従業員を採用するときに、職種を決めて採用する場合があります。
たとえば、営業職として採用する、ドライバー職として採用する、技術者として採用するといった場合です。
しかし、その後、怪我や病気などの理由でその従業員が当初予定していた職種を続けることが難しくなった場合に、会社としてはどうすべきでしょうか?
いままでの職種を続けることができなくなったのだから、退職してほしい、あるいは退職させてしまおうという判断もあり得ます。
他の職種につけようとしても、必要な経験がなく、経営上不合理であることが多いです。
しかし、結論から言えば、そのような場合でも、できる限り、他の職種を用意するのが正しい判断です。
さらに、問題が生じるのは、会社が他の職種を用意した場合に、その職種に合わせた給与に変更してよいかどうかという点です。たとえば、いままで営業職として勤務してきた人を工場勤務に替える場合には、通常は営業手当は出なくなりますし、いままでドライバー職として勤務してきた人を別の勤務に替える場合は、通常は無事故手当は出なくなりますが、それでよいのでしょうか。
場合によっては給与が大幅に下がり従業員が了解しないこともあります。
しかし、仮に従業員が了解しなくても、会社として、新しい職種に基づく給与体系を適用するのが正しい判断です。
このような問題に対応するために、日ごろから就業規則に、会社が必要に応じて従業員の配置転換をできることや、職種が変更になった場合はその職種の賃金規定が適用になることを定め、また、賃金規定に職種ごとの賃金体系を明記しておきましょう。
従業員の怪我や病気、配置転換のトラブルでお困りの方はぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
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