商品やサービスの名前が商標として登録されている場合、商標権者に無断で同じような種類の商品やサービスに似たような名前を使用すれば、 商標権者である人や会社からその名前の使用をやめさせられたり、その名前で商品やサービスを売って得た利益を損害賠償請求されてしまいます。
それでは、すでに登録されている商標と似たような商標を自社で登録した場合はどうなるのでしょうか?
実際に
「他社が商標権を取得して使用している名称とよく似た名称を自社の商品やサービスで使いたいのだが、どうしたらよいか?」
「他社が使用している名称と良く似た名称であっても自社で商標登録してしまえば使用しても問題ないのか?」
というご相談はよくあります。
たとえば、「レクサス」という商標が自動車の商標として商標登録されていますが、
「レキサス」という商標を自社で登録してしまえば
「レキサス」を使用しても問題ないかということです。
商標登録を申請すると、特許庁の審査官がその商標を登録してよいものかどうか、審査することになります。
ここで、類似の商品やサービスについて類似の商標が既に登録されていれば、本来、商標登録が拒絶されることになります。
ですので、「レキサス」という商標を自動車の商標として登録申請しても、すでに「レクサス」という商標が自動車の商標として登録されているのですから、登録申請しても拒絶されるという仕組みになっています。
ただ、商標の類似の判断は微妙な判断ですので、他社の商標によく似ているけれども、審査官の審査では
「類似している」
とまでは言えないと判断され、登録できてしまうことがよくあります。
たとえば、「レキサス」という商標が商標登録されてしまった場合、「レキサス」という商標は、一応、自動車の名前を表す商標として商標登録されているのですから、
トヨタは、このままでは、この「レキサス」という自動車を売っている会社に対して「レキサス」という名前の使用をやめさせたり、損害賠償を請求していくことは原則としてできません。
この場合、トヨタは特許庁に対して、
「すでに『レクサス』という商標が登録されているのであるから、これに似ている『レキサス』という商標は無効だ!」
ということで、「商標無効審判」というものを申し立てることになります。
そして、このとき商標が無効かどうかを審査する人は、最初に商標登録を認めるかどうかを審査した審査官とは違う人です。
そのため、商標登録の段階では問題なく商標が登録されたのに、あとから商標が無効と判断されてしまうということが起こりえます。
「商標は無効だ!」
ということで商標無効審判が申立てられて、商標を無効とする「審決」が下され、審決が確定すると、「その商標は、最初から無効であった」
つまり、商標登録が、最初からなかったことになってしまうのです。
「レキサス」という商標は、最初から登録されていなかったということになってしまうのです。
そうなると、「レキサス」という商標が無効となった時点で、自動車が、「レキサス」という名前で売られていれば、トヨタはその名前の使用をやめさせることができます。
それだけではなく、
たとえ「レキサス」という商標が無効となった時点では既に「レキサス」という自動車の販売をやめていたとしても、それまでに「レキサス」という自動車を売ったことで得た利益をトヨタに賠償しなければならないことになります。
たとえば、平成24年1月に「レキサス」という商標が登録されてそれと同時に「レキサス」という名前の自動車を売り出し、平成24年10月にその「レキサス」という商標が、商標無効審判により最初から無効であったことになったとします。
その場合、平成24年8月に「レキサス」という名前で自動車を売るのをやめていたとしても平成24年1月から平成24年8月まで「レキサス」という自動車を売ったことで得られた利益をトヨタに対し、賠償しなければならないことになります。
「商標登録が、最初からなかったことになる」
というのは、こういうことなのです。
ですから、他者の商標に類似する商標を商標登録申請して、これが登録されたからといって 完全に安心して使用することはできないのです。
弊事務所では、これまで多数の商標のトラブルを解決し、また商標についてのご相談をお受けしてきました。
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