靴のECショップが大手メーカーから商標権に基づく販売差止めを請求されたが、商標権を侵害しないことを説明して、販売を継続できた事例
商標権の解決実績

靴のECショップが大手メーカーから商標権に基づく販売差止めを請求されたが、商標権を侵害しないことを説明して、販売を継続できた事例

この成功事例を紹介する弁護士

  • 弁護士  堀野 健一
  • 咲くやこの花法律事務所  弁護士  堀野 健一

    出身地:大阪府岸和田市。出身大学:大阪大学。主な取扱い分野は、「労務・労働紛争の解決(従業員の解雇トラブルや従業員に対する退職勧奨、従業員からの残業代や未払賃金の請求)、不動産紛争の解決(不法占拠者に対する明渡の交渉・裁判・強制執行、賃料の回収、土地の境界の特定など)、システム開発紛争の解決、クレームの解決、就業規則・雇用契約書のチェック、顧問弁護士業務など」です。

1,事件の概要

 

相談者が、他社(以下、「A社」といいます)の正規品の靴を一般消費者の要望に応じて加工(アレンジ)する店舗(ECショップ)の営業をしていたところ、相談者がA社から、ECショップの営業がA社の商標権侵害にあたるとして、販売差止めを請求された事案です。

なお、「A社」は世界的な大手靴メーカーであり、模造品対策を以前から行っていたという経緯がありました。

相談者がアレンジしていた「A社」の靴には、「A社」の商標登録済みのロゴマーク及び名称があしらわれており、靴を「A社」に無断で加工していた相談者の販売方法が、「A社」の商標権侵害にあたると指摘されました。

 

2,問題の解決結果

 

相談者の依頼を受けて、「咲くやこの花法律事務所」の商標権トラブルに強い弁護士が相談者の代理人弁護士として、「A社」と交渉を行いました。

その結果として、「A社」に商標権侵害にあたらないことを理解させることができ、依頼者は、損害賠償等の支払なく、「A社」の靴をアレンジして販売する店舗の営業を引き続き継続することができることになりました。

 

3,問題解決における争点

 

本件で、仮に「A社」の登録商標であるロゴマーク及び名称がついた靴を、「A社」に無断で加工して販売すれば、商標権侵害に該当します。

しかしながら、依頼者は、加工を施した靴を販売していたわけではありませんでした。

依頼者は、あくまでA社の正規品の靴を一般消費者にそのまま販売し、その販売した靴について、購入者の希望に合わせて事後的に加工を施すことをしていました。

このように、いったん正規品のまま販売して、後で購入者の希望に応じて加工を施すことは、A社の商標権侵害にはあたりません。

そこで、本件では、まず、以下の点が争点となりました。

 

争点1:
依頼者の販売方法が「A社」の商標権侵害に該当するか

この点については、依頼者が加工後の靴を販売しているのではなく、正規品の靴を販売しており、その後購入者の希望を受けてその正規品の靴に加工を施していることを、「A社」に説明して、理解させることが出来るか否か重要なポイントとなりました。

次に、依頼者は、インターネットで正規品の靴の販売と加工の依頼を受けていましたが、インターネット上では、正規品の靴の販売代金と靴の加工の代金を分けずに合計金額のみしか表示していませんでした。

さらに、インターネット上の商品画像は、加工を施した後の靴の写真だけしか載せていませんでした。

そのため、インターネットのページを見た人からすると、依頼者が、「A社」のロゴマーク及び名称を付いた靴を独自に加工して販売していると誤解してしまう表示になっていました。

つまり、インターネット上の表示内容が、実際の販売方法とずれており、インターネット上の表示を見れば、依頼者がA社の商標権を侵害していると受け取られる可能性の高い表示になってしまっていました。

そこで、本件では、2つ目の争点として、以下の点が問題となりました。

 

争点2:
加工後の靴を販売しているのではなく、正規品の靴を販売し、加工を施していることを、インターネット上に明確に表示できるか否か

この点については、依頼者と相談の上、インターネット上の表示を修正し、その修正内容で商標権侵害にあたらないことを「A社」に納得してもらえるかがポイントになりました。

 

4,担当弁護士の見解

 

弁護士から、「A社」に対して、まず、依頼者の販売方法の実態(正規品の靴を販売しており、販売後に購入者の要望に応じて加工を施していること)を説明しました。

その上で、弁護士から、商標権侵害でないことを、法律的な根拠を示して説明しました。

「A社」からは、それでも商標権に違反するとの主張がされましたが、根気強く、主張を繰り返すことで、「A社」の理解を得ることが出来ました。

また、前述のとおり、インターネット上の表示内容が、実態とずれており、依頼者が「A社」の商標権を侵害していると受け取られる可能性の高い表示になってしまっていました。

そこで、弁護士から、依頼者に、インターネット上の表示及び画像を変更するようにアドバイスを行いました。依頼者は、この弁護士のアドバイスを受けて、インターネット上の表示及び画像を変更することになりました。

具体的な変更内容は以下の通りです。

 

(1)依頼者が弁護士のアドバイスを受けて行った変更の内容

 

1,代金表示に関する変更内容

ECショップにおける代金表示として、正規品の靴の販売代金と靴の加工代金を分けずに、合計の金額だけを表示されてしまっていました。

つまり、この表示を見た人は、依頼者が、加工後の靴の販売をしていると勘違いしてしまう表示となっていました。

そのため、依頼者が、正規品の靴の販売とその靴の加工を行っていることを明確にするために、正規品の靴の代金と加工代金を分けて表示することに変更しました。

具体的には以下のような表示にしました。

 

▶代金表示の改善例

○○(正規品の靴の名前):4,320円(税込)
加工代金工賃:3,240円(税込)

 

2,商品画像についての変更内容

次に、商品画像になる靴の画像は、加工を施した後の写真が載せられているだけでした。つまり、この画像を見た人は、依頼者が、加工を施した後の靴を販売していると勘違いしてしまう表示となっていました。

そのため、依頼者が、正規品の靴の販売とその靴の加工を行っていることを明確にするために、画像の中に、「加工後の写真であること」の注意書きを設けました。

 

3,その他の変更内容

交渉の過程で、「A社」から、「依頼者とA社とは無関係であることをECショップ上で明示すること」などの要求がありました。

依頼者は、あくまで正規品の靴の販売とその靴の加工だけを行っていただけですので、本来はこの点の「A社」からの要望を受け入れなくとも、商標権侵害には該当しませんでした。しかしながら、今後も「A社」と折り合いをつけて、ECショップを継続するために、「A社」の要望を可能な限り、受け入れることにしました。

 

このように、「A社」に対して商標権侵害にあたらないことを繰り返し説明し、また、ECショップにおける表示内容を変更することで、依頼者は、「A社」も承知の上で、ECショップの運営を継続することができるようになりました。

 

5,解決結果におけるまとめ

 

商標権侵害を理由として、販売差し止めを求められたという場合に、まず、問題となるのは、商標権の侵害に該当するかどうかという点です。

そして、商標権の侵害に該当するかどうかによって、対応が下記のとおり分かれます。

 

(1)商標権の侵害に該当している場合

商標権侵害にあたる場合、商標権者に直ちに謝罪の上で、販売を停止するしかありません。

また、商標権者に対して、損害の賠償についての交渉をすることが必要になることもあります。

 

(2)商標権侵害に該当していない場合

商標権の侵害に該当していない場合には、商標権者に対して反論し、なぜ、商標権侵害でないかを説明して、理解させることが必要です。

他社から商標権侵害の主張をされた場合の対応方法については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

また、今回の事件では、依頼者のインターネット上の表示に問題があり、「A社」の商標権を侵害していると勘違いされる表示になっていました。この表示が、今回の「A社」からの販売差止めなどの請求のきっかけになりました。

もし、今回の依頼者が、このビジネスを始める前に弁護士に相談に来ていただければ、インターネット上の表示方法などについて、アドバイスをすることが出来ました。そうすれば、「A社」が誤解をすることは無く、依頼者が差し止めの請求を受けることは無かったと思います。

新たなビジネスを始める場合には、そのビジネスに法的な問題点が無いかを確認することが極めて重要です。

思わぬところに落とし穴があることも多いので、新たなビジネスを始める前に法律の専門家である「企業法務に強い弁護士」に相談することをおすすめします。

また今回の解決実績の記事でご紹介した商標権侵害のトラブルについては、実績と経験が豊富な商標権に強い弁護士に早めに相談するようにしましょう。

 

7,咲くやこの花法律事務所の商標権に強い弁護士へのお問い合わせ方法

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