就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点!

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点

就業規則の作成や変更にあたっては、「従業員代表の意見書」を添付して労働基準監督署に提出することが義務付けられています。

この意見書の取得手続きは大変重要な手続きです。意見書の取得手続きに問題があると、就業規則が正しい手続きで作成されていないことになります。

▶参考:就業規則の正しい手続きによる作成方法

これからご紹介する「意見書の取得手続き」についてをご説明するのと合わせて、「就業規則の正しい作成方法について」の記事に詳しく就業規則の作成方法について解説されていますので、こちらも合わせてチェックしておきましょう。

「弁護士が教える就業規則の作成方法!記載事項・届出・変更届の注意点などを徹底解説!」はこちら

 

そして、賃金に対する紛争や解雇などの労務トラブルの場面で、従業員から「就業規則について意見を聴かれていない」ということを主張され、就業規則の正当性をめぐって争いになることがあります。

これでは、せっかく作成した就業規則が十分に機能しないことにもなりかねません。そこで、今回は、労務トラブル防止のために必ず実践しておきたい、「就業規則の意見書取得手続きに関する注意点」についてご説明したいと思います。

 

今回の記事で書かれている要点(目次)

 

1,今回の記事で書かれている要点

●意見書取得手続きが義務付けられている理由。
●重要!就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点。
●注意点1:就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う。
●注意点2:従業員代表の選出は民主的に行う。
●注意点3:管理監督者は従業員代表にはなれない。
●注意点4:意見書に協力してもらえない場合の対応について。

 

2,最初にチェック!
意見書取得手続きが義務付けられている理由。

就業規則の意見書取得手続きに関する注意点をご説明する前に、法律上、「意見書取得手続きが義務付けられている理由」について、簡単にご説明したいと思います。

労働基準法90条で就業規則を作成または変更する際は、意見書取得手続きが義務付けられています。

このように、法律で意見書取得手続きが義務付けられた理由は、社内のルールを定める就業規則の内容について従業員に関心をもたせ、内容を確認させる機会を与えるためです。

戦前は、就業規則は会社が一方的に定めるものであり、意見書取得手続きは義務付けられていませんでした。
しかし、それでは、従業員が内容を知らない就業規則により、賃金を決められたり、懲戒を受けたりすることになり、そのことが労務トラブルの原因にもなりました。

そこで、戦後に労働基準法が制定されたのに伴い、就業規則の内容について従業員に関心をもたせ、内容を確認させる機会を与えるために、就業規則の作成や変更の際に意見書聴取手続きが義務付けられたのです。

このように、就業規則の意見書取得手続きは、会社の重要なルールを定める就業規則について、従業員にその内容を確実に確認させるために義務付けられているということをおさえておきましょう。

 

3,重要!就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点。

では、意見書取得手続が義務付けられている理由を踏まえたうえで、「就業規則の意見書取得手続きに関する注意点」についてみていきましょう。

就業規則の意見書取得手続きに関する注意点は以下の4つです。

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点

注意点1:
就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う。

注意点2:
従業員代表の選出は民主的に行う。

注意点3:
管理監督者は従業員代表にはなれない。

注意点4:
意見書に協力してもらえない場合の対応について。

これらの注意点を確実に実践しておくことが労務トラブルの防止につながります。
以下で順番に見ていきましょう。

 

3−1,注意点1:
就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う。

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点の1つ目は、「就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う」という点です。
具体的には以下の2点をおさえておきましょう。

「就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う」についての2つの重要ポイント

ポイント1:
複数の事業所がある会社は、事業所ごとに従業員代表の選出手続きを行い、意見書を取得する必要がある。

ポイント2:
一部の従業員に適用される就業規則を作る場合も、事業所の全従業員が参加して選出した従業員代表から意見聴取を行う必要がある。

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
複数の事業所がある会社は、事業所ごとに従業員代表の選出手続きを行い、意見書を取得する必要がある。

就業規則の意見書を誰に書いてもらうかについては、法律上以下の通りに定められています。

1,事業所の従業員の過半数が加入する労働組合がある場合

その労働組合に意見書を記載してもらうことになります。

2,事業所の従業員の過半数が加入する労働組合がない場合

その事業所の従業員において、従業員代表を選出させ、その従業員代表に意見書を記載してもらうことになります。

 

このように事業所ごとに誰に意見書を書いてもらうかを確認する必要があります。

そして、事業所の従業員の過半数が加入する労働組合がない場合は、事業所ごとに従業員代表の選出手続きを行い、意見書を記載してもらう人を決める必要があります。

ポイント2:
一部の従業員に適用される就業規則を作る場合も、事業所の全従業員が参加して選出した従業員代表から意見聴取を行う必要がある。

パート社員のみに適用される就業規則や、特定の部署に所属する従業員にのみ適用される就業規則の作成が必要になることがあります。

このように一部の従業員にのみ適用される就業規則を作成する場合も、事業所の全従業員が参加して従業員代表を選出する手続きを行い、意見書を記載してもらう必要があります。

 

就業規則の意見書取得の手続やその前提となる従業員代表の選出は「事業所ごとに行わなければならない」ことを、まずおさえておきましょう。

 

3−2,注意点2:
従業員代表の選出は民主的に行う。

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点の2つ目は、「従業員代表の選出は民主的に行う必要がある」という点です。

具体的には以下の2つのポイントをおさえておきましょう。

「従業員代表の選出は民主的に行う必要がある」についての2つの重要ポイント

ポイント1:
会社が従業員代表を指名することはできない。

ポイント2:
従業員代表は、投票、挙手、話し合い、持ち回り決議等により民主的に選出される必要がある。

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
会社が従業員代表を指名することはできない。

従業員代表は、従業員らが選ぶものであり、会社や社長が従業員代表を指名することはできません。

ポイント2:
従業員代表は、投票、挙手、話し合い、持ち回り決議等により民主的に選出される必要がある。

厚生労働省の通達により、従業員代表の選出は、「就業規則の作成・変更の際に使用者から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手などの方法による手続により選出された者であり、使用者の意向によって選出されたものではないこと」が必要とされています。

具体的な選出方法としては、以下のものがあります。

従業員代表の選出方法の具体例

1,従業員らによる投票
2,従業員らによる挙手
3,従業員らによる話し合い

 

そして、従業員代表の選出とその後の意見書の取得について、具体的な手順を見ていくと次の通りです。

従業員代表の選出とその後の意見書取得の具体的な手順

ステップ1:
事業所の従業員全員に従業員代表の選出に関する案内をする。

ステップ2:
従業員らが従業員代表の選出を行う。

ステップ3:
従業員代表が決まったら、就業規則案を検討してもらい、意見を聴く。

ステップ4:
従業員代表の意見を就業規則案に反映させる場合は、就業規則案を変更する。

ステップ5:
従業員代表に書面で意見書を提出してもらう。

ステップ6:
従業員代表の意見書を添付して就業規則を労働基準監督署に提出する。

 

上記のうち、「ステップ1」、「ステップ2」については、もう少し具体的に、進め方を確認しておきましょう。

「ステップ1」の事業所の従業員全員への従業員代表の選出に関する案内について

まず、会社において就業規則案を作成し、「就業規則について従業員代表の意見を聴く必要があるので従業員代表を選出してください」と事業所ごとに案内するのがよいでしょう。

案内方法は、自由ですが、事業場の従業員全員に案内がいきわたるようにしておく必要があります。

たとえば、以下のような方法が考えられます。

従業員代表の選出に関する案内方法の具体例

例1:

事業所の従業員全員がメールドレスを持っている場合は、メールに就業規則案を添付して、全員にメールで従業員代表の選出を依頼する案内をする。

例2:

事業所の従業員全員が集まる機会がある会社では、朝礼などで全員を集合させて、就業規則案を配り、従業員代表の選出を依頼する案内をする。

例3:

事業所の従業員全員が集まる機会がない会社では、出勤すれば必ず見る場所に、就業規則案を掲示して、文書で従業員代表の選出を依頼する案内をする。

 

「ステップ2」の従業員らによる従業員代表の選出方法について

事業所の従業員全員が集まる機会がある事業所では比較的従業員代表を選出しやすいのですが、従業員全員が集まる機会のない事業所では会社側で従業員代表の選出に向けて必要なサポートを行ったほうがよいケースもあります。

たとえば、以下のようなケースが考えられます。

ケース1:

全員にメールで従業員代表の選出を依頼する案内をする場合、メールで、従業員代表にふさわしいものを各自選んでメールで集計担当者に送信するように通知して、集計担当者による集計により従業員代表を選出させる。

ケース2:

出勤すれば必ず見る場所に掲示するなどの方法で従業員代表の選出を依頼する案内をする場合、投票箱を設置して、従業員代表にふさわしい従業員を各自選んで投票するように記載して、投票結果の集計により従業員代表を選出させる。

 

このように、単に「従業員代表を選んでください」というだけでは、具体的な手順がわかりませんので、場合によっては、会社において選出手続きをサポートしていくことが必要になります。

以上、従業員代表の選出の方法と手順についてご説明しました。

従業員代表は会社が指名することはできず、民主的な手続で選出される必要があることをおさえておきましょう。

 

3−3,注意点3:
管理監督者は従業員代表にはなれない。

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点の3つ目は、「管理監督者は従業員代表になれない」という点です。

「管理監督者は従業員代表になれない」についての重要ポイント

厚生労働省の通達により、他の従業員を監督または管理する地位にある管理職(「管理監督者」といいます)については、従業員代表となることはできないとされています。

事業所に「管理監督者」しかいない場合に限って、例外的に管理監督者であっても従業員代表になることができます。

会社としては、従業員に従業員代表の選定を依頼する際に、あらかじめ、「従業員を監督または管理する地位にある管理職は従業員代表になれない」ということを伝えておくのがよいでしょう。

 

3−4,注意点4:
意見書に協力してもらえない場合の対応について。

就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点の4つ目は、「従業員代表に意見書に協力してもらえない場合の対応」についてです。

以下の3つのポイントをおさえておきましょう。

「従業員代表に意見書に協力してもらえない場合の対応」についての3つの重要ポイント

ポイント1:
就業規則の作成、変更に従業員代表の同意は必要なく、従業員代表が反対意見の場合でも就業規則の効力には問題が生じない。

ポイント2:
意見書が従業員代表から提出されない場合も、その旨の報告書を作成して、労働基準監督署に届ければ、就業規則の効力には問題が生じない。

ポイント3:
36協定や変形労働時間制の協定締結も視野に入れて、従業員代表との話し合いが必要。

 

以下で順番に見ていきましょう。

ポイント1:
就業規則の作成、変更に従業員代表の同意は必要なく、従業員代表が反対意見の場合でも就業規則の効力には問題が生じない。

法律上、就業規則については従業員代表の意見を聴けばよく、従業員代表が就業規則に同意することまでは求められていません。

そのため、従業員代表から就業規則に対して反対の意見が出た場合でも、それを意見書に記載してもらい、労働基準監督署に提出すれば、手続き上の問題は生じません。

ポイント2:
意見書が従業員代表から提出されない場合も、その旨の報告書を作成して、労働基準監督署に届ければ、就業規則の効力には問題が生じない。

「従業員代表が反対の意見書すら提出してくれない」という場合には、「従業員代表からの意見を聴取したが意見書を提出しなかった」という内容の報告書を作成して、労働基準監督署に届けることにより、就業規則の届出を受理してもらうことができます。

この場合、労働基準監督署から会社宛に電話があり、従業員代表に意見を聴取したかを、監督署の職員が従業員代表に電話で確認することが通常です。

ポイント3:
36協定や変形労働時間制の協定締結も視野に入れて、従業員との話し合いが必要。

「ポイント1」、「ポイント2」でご説明した通り、意見書に協力をしてもらえなくても就業規則を制定することは、法律上は可能です。

しかし、就業規則について従業員代表の意見を聴いて話し合い、就業規則の内容についても、従業員の意見を反映できるところは反映して、できる限り、労使双方が納得できる就業規則を作り上げることが望ましいです。

就業規則の制定に当たって従業員の意見を丁寧に聴き、話し合いを持つことは、労務トラブルについて労使が団結して取り組む基盤づくりにつながります。また、多くの企業で、36協定や1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結しておられることが多いと思いますが、このような労使協定は就業規則とは異なり、従業員代表の「同意」が必要です。

就業規則について従業員と実質的な話し合いを行わずに一方的に手続きをしてしまうと、36協定や1年単位の変形労働時間制に関する労使協定について従業員代表の同意を得にくくなるということも念頭においておきましょう。

▶参考:「36協定」についての解説

「36協定(さぶろくきょうてい)」は正確には「時間外労働協定」と呼ばれます。従業員に残業や休日労働をさせる場合は、会社は従業員代表との間で「36協定」と呼ばれる労使協定を締結することが義務付けられています。

「36協定とは」についてはこちらを参照してください。

 

▶参考:「1年単位の変形労働時間制」についての解説

「1年単位の変形労働時間制」は業務の繁忙期、閑散期に応じて、「1日8時間、1週40時間」という所定労働時間のルールを変更することを認める制度で、採用する場合は、従業員代表との間で労使協定を締結することが義務付けられています。

「1年単位の変形労働時間制」についてはこちらを参照してください。

 

ここでは、従業員代表が就業規則について反対意見や修正の要望を出したときは従業員との実質的な話し合いをする必要があるということと、どうしても意見が合わない場合は、反対意見のままであっても法律上は就業規則の届出が可能であるということをおさえておきましょう。

 

4,まとめ

今回は、まず、法律上、「就業規則の作成、変更について意見書取得手続きが義務付けられている理由」をご説明したうえで、「就業規則の意見書取得手続きに関する4つの注意点」として以下の点をご説明しました。

注意点1:
就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う。

注意点2:
従業員代表の選出は民主的に行う。

注意点3:
管理監督者は従業員代表にはなれない。

注意点4:
意見書に協力してもらえない場合の対応について。

 

これらの注意点を実践して意見書を取得することは、その後の労務トラブルに対して就業規則をもとに正しく対応していくために必須です。

意見書の取得手続きについてお困りの経営者、労務担当者の方は、様々な企業の就業規則作成の実績が多く、また労務トラブルや労働問題に強い「咲くやこの花法律事務所」に、早めにご相談ください。

▶参考:就業規則の相談実績多数の「労務トラブル・労働問題に関する弁護士への相談」サービスのご案内はこちら

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2017年4月17日

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