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モンスター社員とは?問題社員の特徴や対応を事例付きで弁護士が解説

モンスター社員、問題社員の具体的な対応方法を弁護士が解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

会社を経営しているとモンスター社員などの問題社員に悩まされることがあります。

モンスター社員、問題社員といった用語は、いずれも正式な用語ではありません。モンスター社員とは、規則違反や同僚・上司らへの誹謗中傷を繰り返すなど、職場環境に重大な悪影響を及ぼす従業員を指し、問題社員とは、より広く、能力不足、頻繁な遅刻、私生活での刑事事件などさまざまな問題をかかえる社員も含めて使用されることが多いです。

モンスター社員など問題社員は対応に多くの労力を割かれるだけでなく、離職者が増えるなど企業に重大な不利益をもたらします。

今回は、社内の他の従業員にまで悪影響が及び、離職者が増えたり、会社全体の士気が下がるなど重大な影響をもたらすモンスター社員など問題社員の対応の基本と、ケース別の具体的な対応方法について弁護士が解説します。

この記事を最後まで読んでいただくことで、モンスター社員など問題社員への正しい対応方法や対応時に注意しなければならないリスク面についても理解していただくことができます。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

モンスター社員、問題社員が起こすトラブルに対して自社で対応しようとすると、指導がパワハラだとして訴えられたり、あるいは不当解雇トラブルに発展したり、外部の労働組合が介入してきたりといったトラブルに拡大するケースがあります。パワハラがないように十分注意し、また違法性があるような解雇は決して行うべきではありません。法令を遵守し、どのような社員に対しても、常に法的に正しい方法で対応することが必要です。

自社での対応が難しいときは、問題をこじらせる前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。咲くやこの花法律事務所では、対応が難しい従業員への対処について、企業側の立場に立って具体的かつ専門的なサポートを提供しています。以下では、咲くやこの花法律事務所のモンスター社員や問題社員の対応に関する解決事例をご紹介していますので、参考にご覧ください。

 

▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の解決事例は、こちらをご覧ください。

 

▶【動画で解説】西川弁護士が「モンスター社員」トラブル解決のポイントについて詳しく解説中!

 

▼モンスター社員など問題社員に関して今スグ相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

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1,モンスター社員(問題社員)とは?

モンスター社員(問題社員)とは?

モンスター社員とは、社内の規則や業務命令に従う意識が乏しく規則違反や業務命令違反を繰り返す、あるいは、同僚や上司、取締役への誹謗中傷を繰り返すなど、職場環境に重大な悪影響を及ぼす従業員を指すことが多いです。一方、問題社員とは、能力不足、協調性の欠如、無断欠勤、頻繁な遅刻、業務命令の拒否、部下に対するハラスメント行為、社内での不倫などといった問題点があり、問題点が改善されなければ雇用の継続が困難な社員をいいます。

ただし、これらの用語はいずれも正式な用語ではないことは前述の通りです。

 

(1)モンスター社員や問題社員の種類

モンスター社員など問題社員の例としては以下のようなケースがあげられます。

 

1,会社や組織の秩序を無視するモンスター社員の種類

モンスター社員と呼ばれるケースの具体例として以下の例があげれらます。

  • 上司や同僚に暴力を振るい、暴言をはく
  • 業務命令に従わずに自分の権利ばかり主張する
  • 正論を通すことにこだわり、業務命令に従わない
  • 社長や上司に対する誹謗中傷を繰り返す
  • 部下や弱い立場の社員に対していじめやハラスメントをする

 

2,雇用の継続が困難な問題社員の種類

問題社員と呼ばれるケースの具体例として以下の例があげられます。

  • 勤務成績が悪いのに自覚がなく、改善意欲もない
  • 周囲との協調性がなく、トラブルを次々に起こす
  • ミスが多く、改善ができない
  • 会社外で刑事事件を起こす
  • 社内で不倫を繰り返す
  • 病気休職や体調不良による欠勤を繰り返す
  • 無断欠勤を繰り返す
  • 遅刻や早退を繰り返す

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

社員がモンスター化あるいは問題社員化する職場では、会社の労務管理の不備や、上司の指導力不足があるといった会社側の背景もあるケースが多く見られます。

そのため、会社側の問題点を検証しないまま、特定の社員にモンスター社員、問題社員というレッテルを貼ることは、避けるべきでしょう。

 

2,トラブルを放置したり野放しにしている場合の問題点

トラブルを放置したり野放しにしている場合の問題点

会社や組織の秩序を無視するモンスター社員など問題社員を放置していると、会社の規律がルーズになり、以下の問題が起こります。

 

  • モンスター社員など問題社員に同調して会社の指示や上司の指示に従わない従業員が増える
  • モンスター社員など問題社員が会社の指示に従わないだけでなく、会社に対して不当な要求をするようになる
  • 経営者や上司のことを馬鹿にして従わない風潮が社内に広がる
  • 職場環境が悪化し、モンスター社員など問題社員のトラブルに嫌気がさした優秀な従業員が離職する
  • 会社として十分な顧客対応、取引先対応ができなくなり、顧客や取引先が離れていく

 

このように業務の指示を無視したり、会社のルールにあからさまに従わない社員を放置、黙認してしまうと、他の従業員にも問題が広がり、経営者が会社をコントロールできない状態になるうえ、会社の収益も悪化してきます。

そのため、問題を放置したり、黙認したりせずに、すぐに必要な対応をとることが非常に重要になります。

 

(1)見て見ぬふりをすることで懲戒処分が難しくなることもある

モンスター社員など問題社員のトラブルを放置していると、問題行動に対して会社が懲戒処分を科すことも難しくなっていきます。

懲戒処分は、会社がモンスター社員など問題社員に対応するうえで切り札の1つとなるものですが、懲戒処分が不当であると主張して訴訟を起こされるリスクがあることを覚悟して、慎重に行う必要があります。

そして、会社がこれまで問題に目をつぶり、必要な指導や懲戒処分を行ってこなかった場合、会社が方針を変え、懲戒処分を行っても、過去の会社の対応とのバランスを欠いているなどとして、裁判所で懲戒処分が無効と判断される理由になることがあります。

裁判所は、懲戒処分が有効か無効かを判断するにあたって、懲戒対象になった問題行動の程度だけでなく、その懲戒処分が過去の会社の対応と比較してバランスがとれた処分なのかどうかも、1つの判断材料にしています。

そのため、問題を放置したり、黙認したりすることにより、本来であれば会社側に与えられた切り札の1つである懲戒処分を科すことも難しくなっていく危険があります。

 

(2)逆パワハラ問題に発展するリスク

モンスター社員など問題社員を放置した結果、いわゆる「逆パワハラ」の状態に会社が陥ってしまうケースも見られます。

部下からの上司や経営者に対する暴言・暴力が横行したり、部下が上司からの業務命令に対して執拗に反論する、あるいは上司の業務命令に対して「それはパワハラだ」などと主張して従わないなどの事態が起こります。

このような逆パワハラが経営トップや経営幹部に対してまで行われる事態になると、会社での自主的解決が困難となることが多いです。

そのため、弁護士に依頼して会社側の立場で介入してもらうことによって、モンスター社員など問題社員に必要な指導や懲戒処分を行い、また、必要に応じて退職させて、会社を正常化する必要があります。

逆パワハラについては以下で詳しく解説していますので併せてご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

社員が集団となって上司や経営者に逆パワハラを行うようになると、もはや、企業だけの力で自力解決は困難であり、弁護士が企業側の立場で介入して解決する必要があります。

筆者の所属する咲くやこの花法律事務所における逆パワハラ問題についての実際の解決事例を以下でご紹介していますのでご参照ください。

 

・参照:教職員が集団で上司に詰め寄り逆パワハラが発生!学校から弁護士が相談を受けて解決した事例

 

(3)会社に対する攻撃や復讐

社員の問題点に毅然とした対応をせずに放置した結果、社員がモンスター化してしまい、その後、会社が指導や懲戒処分を行っても、それを素直に受け止めず、むしろ、会社に対する攻撃や復讐といった態度に出る例も少なくありません。

会社への攻撃は以下のような様々なケースが想定されます。

 

  • 上司からセクハラやパワハラを受けた、会社には安全配慮義務違反があるなどとして事実無根の主張による攻撃をするケース
  • SNSに会社がブラック企業である等と誹謗中傷を投稿するケース
  • 労働組合を組織し、ストライキと称して、不当に会社の業務命令を拒否するケース
  • 会社からハラスメントを受けているとして訴訟を起こしてマスメディアで記者会見をするケース
  • 顧客情報を持ち出して独立しようとするケース

 

こういった問題を起こさないためにも、従業員に、会社の指示や上司の指示に従わない傾向や、会社のルールを守らない傾向が出てきたときはすぐに手を打つことが必要です。

また、モンスター社員など問題社員から会社に対する攻撃や復讐が予想されるときは、必ず弁護士に相談し、攻撃が行われた時の対処方法も考えながら対応することが必要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

モンスター社員による攻撃、復讐の1つの事例として、兵庫教育大学では、上司にカッターナイフを突きつけて詰め寄る等の暴行、暴言を繰り返し上司に対する強要罪で有罪判決を受けて懲戒解雇された男性職員が、大学を訴え、大学が敗訴するという事件が起きています。

大学はこの男性職員の在職中、約13年にわたり、上司や同僚らがトラブルに巻き込まれることを回避するために、この職員に仕事を十分に与えずに他の職員と極力かかわらせないようにしてきましたが、裁判所は故意に仕事を与えていなかったことはパワハラにあたるとして、大学に慰謝料の支払いを命じています(神戸地方裁判所判決平成29年8月9日 兵庫教育大学事件)。

 

モンスター社員の野放しや放置してはいけない理由については、以下の参考記事でさらに具体的な事例をあげながら解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

3,問題社員の対応方法の基本

問題社員、モンスター社員への対応の基本

モンスター社員など問題社員には様々なケースがありますが、各ケースに共通する対応方法の基本は以下のとおりです。

 

(1)問題行動があったときは直ちに指導をする

まず、問題行動があったら直ちに指導することが対応の基本でありとても重要です。

以下のような対応をすると問題行動が拡大し、モンスター化する危険があります。

 

  • 退職してしまうと困ると思ってとりあえず我慢するケース
  • 指導することによる反発を避けるために見て見ぬふりをするケース
  • 成績のよい社員の問題行動について見て見ぬふりをするケース
  • 男性上司が女性の問題社員に対して遠慮したり距離を置き、必要な指導をしないケース

 

また、従業員が同じ問題行動をした場合に、経営者や上司が、それに対して指導をしたりしなかったりというように時によって対応がまちまちになると、指導をしても単に機嫌が悪かったから怒ったんだろうと受け取られてしまいます。遠慮せずにその都度繰り返し指導すること、問題行動があった場合は必ず指導することが大切です。

指導をするときは、感情を入れずに、端的に問題点を伝えるようにしましょう。感情的になってしまったり、持って回ったような言い方をしたり、嫌みな言い方をするのは、よくありません。

例えば、仕事ができない社員に対して、「新人でもそのぐらいはできる」というような感情的な言い方は相手の反発を買うだけですし、場合によってはパワハラと評価されます。

そうではなく、「どのようにすべきなのか」という問題点に応じた具体的な改善方法を端的に伝えることが必要です。

 

▶参考情報:モンスター社員や問題のある社員への指導方法については、以下の記事で詳しくご説明していますのであわせてご覧ください。

問題社員を指導する方法をわかりやすく解説

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

筆者の所属する咲くやこの花法律事務所では、問題社員に対する指導についても、顧問弁護士サービスの中でサポートしてきました。実際に、咲くやこの花法律事務所が問題社員に対する指導をサポートした事例として、Webサイトで解決実績を掲載していますのでご参照ください。

 

・参照:歯科医院で勤務態度が著しく不良な問題職員の指導をサポートした事例

・参照:歯科医院の依頼で能力不足が顕著な職員の指導をサポートして問題解決した成功事例

 

(2)毎月面談をする

問題社員かどうかにかかわらず、毎月、従業員と面談を実施することが、モンスター社員化を防ぎ、良い従業員を育てるための基本になります。毎月の面談で、1人1人の従業員と話をし、経営者または上司からフィードバックを返すことで、会社側の意向を理解させていくことができます。このような地道なコミュニケーションが重要です。

問題行動があったら直ちに指導することが重要とご説明しましたが、普段からコミュニケーションをとっていない相手にいきなり指導しても反発を買うだけになりがちです。普段から面談を行うことは問題があったときに指導をするために必要な素地、従業員との関係性を作っていくという意味もあります。

面談の場でも、従業員に問題がある点については遠慮せずに指導を行うことが重要です。そして指導をしたままにせずに、指導をした後に改善がされたかどうかを確認し、場合によっては再度指導をすることを忘れないようにしましょう。しつこく指導を繰り返すことで、きちんと仕事をし、社内の規則を守る社風を作り上げていくことが大切です。

 

(3)必要に応じて懲戒する

指導や面談を行っても問題行動が改善されないときは、懲戒処分を検討することが必要です。

懲戒処分を行うことで本人に対して警告を与えると同時に、周囲の従業員に対しても問題行動を許さないという会社の姿勢を明確にし、会社の規律を正すことができます。懲戒処分には、「戒告譴責訓告」、「減給」、「出勤停止」、「降格」、「諭旨解雇」などがあり、問題行動のレベルに応じて適切な懲戒処分を選択することが必要です。

懲戒処分については以下の記事で詳しくご説明していますのであわせてご覧ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
指導や面談を行っても問題行動が改善されないときは、解雇も視野に入ってくると思います。しかし、そのような場合でもまずは懲戒処分を行ったうえでそれでも改善されない場合に解雇に進むことが原則です。

重大な問題行動がない限り、懲戒処分を経ずに解雇すると裁判所で不当解雇と判断されるリスクが高くなりますので注意してください。

 

(4)異動により適性を見ることも必要

複数の部署や、複数の職種がある会社では、従業員が現在の業務で能力を発揮できていなくても、他の部署に配置転換して、他の業務にチャレンジさせ、従業員の適性を見る機会を作ることも検討する必要があります。

能力不足を理由に従業員を解雇したケースについての裁判例では、解雇の前に、他部署に配置転換して他の業務での適性を試す機会を与えるべきであったとして、そのような機会を与えずにした解雇が不当解雇であると判断されたケースが多数存在します(▶参照:東京地方裁判所判決平成28年3月28日 日本アイ・ビー・エム事件 等)。

また、特定の上司の業務命令に従わない従業員についても、解雇の前に、他部署に配置転換して別の上司のもとでの就業の機会を与えるべきだったとして、解雇を不当解雇とした裁判例も存在します(東京高等裁判所判決平成30年1月25日 社会福祉法人蓬莱の会事件等)。

こういった点を踏まえると、能力面で大きな問題を抱えた社員や、上司の指示に従わないモンスター社員についても、安易に改善の余地がないと即断するのではなく、他部署への異動により機会を与えることも必要です。

 

1,退職に追い込むことを目的とした異動は違法

会社の人事異動は大きく分けて、勤務地の変更を命じる「転勤命令」と、勤務地は変更せずに業務内容を変更する「配置転換」があります。

就業規則において会社の転勤命令や配置転換命令に従うべきことが定められている場合、従業員が、正当な理由なく、これらの命令を拒否することは懲戒事由になります。

ただし、一方で、会社による人事異動命令には一定の制限があることにも注意が必要です。特に、モンスター社員など問題社員を退職に追い込むことを目的に異動を命じたケースについては、多くの裁判例で、業務上の必要性のない不当な目的による異動命令であるとして、異動命令が無効であると判断されたり、会社が損害賠償を命じられたりしていますので注意が必要です。

人事異動に関するトラブルについては以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

(5)自宅待機命令は抜本的な解決策にならない

モンスター社員など問題社員が同僚や上司に対して危害を加えたり、職場内でトラブルを引き起こしたりすることを防ぐために、自宅待機命令を出し、在宅勤務させたいというご相談をいただくケースもあります。

この点については、会社が従業員に給与を支払いながら在宅勤務させ、出社させないことは合理的な理由がある限り、法的な問題はありません(▶参照:東京高等裁判所判決平成2年11月28日 ネッスル自宅待機命令無効確認事件 等)。

ただし、自宅待機命令を出すことは、抜本的な問題解決にはならないことに注意する必要があります。

本来、モンスター社員など問題社員に対しては、賃金に見合う会社への貢献をするように本人の問題点を改善させるか、あるいは、退職してもらうかのどちらかの解決をする必要がありますが、自宅待機命令はそのどちらにもつながらず、問題を先延ばしするだけになりがちです。また、前述の兵庫教育大学事件の例もあるように仕事を長期間与えないことはパワハラに該当しますので、その点にも注意することが必要です。

トラブルを解決するためには、その場しのぎの自宅待機命令等で対応するのではなく、正面からモンスター社員など問題社員に向き合うことが必要です。

なお、自宅待機命令については以下の記事で詳しく解説していますので併せてご参照ください。

 

 

4,辞めさせることはできるのか?

では、懲戒処分をしても態度を改めないときに、やめてもらうことはできるのでしょうか?

 

(1)懲戒処分をしても改まらないときは退職勧奨を検討する

懲戒処分をしても改まらないときは、モンスター社員など問題社員を退職に向けて説得する退職勧奨を検討することが必要です。退職勧奨は、従業員を退職に向けて説得し、従業員の同意を得て退職させることを指します。退職勧奨は、解雇と比べて、従業員の同意を得ている点でトラブルになりにくく、企業としてのリスクも低いというメリットがあります。

退職勧奨の具体的な方法や注意点については以下の記事で詳しくご説明していますのであわせてご覧ください。

 

 

また、問題社員トラブルを解雇ではなく、退職勧奨で円満に解決するための具体的な手順がわかるおすすめ書籍(著者:弁護士西川暢春)も以下でご紹介しておきますので、こちらも参考にご覧ください。書籍の内容やあらすじ、目次紹介、読者の声、Amazonや楽天ブックスでの購入方法などをご案内しています。

 

 

(2)退職勧奨に応じないときは解雇を検討する

モンスター社員など問題社員が退職勧奨にも応じないときは解雇を検討します。

 

 

ただし、解雇については、解雇後に従業員が不当解雇であると主張して、解雇の撤回の要求や金銭請求をしてくるケースも多いので慎重な判断が必要です。

解雇の具体的な方法については以下の記事で詳しくご説明していますのであわせてご覧ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

解雇する場面では、会社は不当解雇として訴えられるリスクにさらされます。そのような訴訟の場面でも、モンスター社員など問題社員に対して指導や面談を行っていたのかどうかが非常に重要になります。指導を行わずに解雇すると、裁判所で不当解雇と判断されるケースがほとんどですので注意してください。

 

不当解雇の裁判については以下の記事をご参照ください。

不当解雇とは?正当な解雇との違いを例をあげて弁護士が解説

 

(3)モンスター社員など問題社員の解雇についての訴訟事例

過去の裁判例では、モンスター社員など問題社員の解雇が裁判所で不当解雇と判断されている事例が相当数存在します。

以下で実際の訴訟事例をご紹介したいと思います。

 

1,社会福祉法人蓬莱の会事件

年下の女性上司に反発して業務の指示を拒否し、机をたたくなど粗暴な言動をとる男性職員の解雇事例(東京高等裁判所判決平成30年1月25日)

 

事案の概要

社会福祉法人の男性職員が、年下の女性主任の下に配属された後、この主任にことあるごとに反発し、主任が命じた業務を正当な理由なく一方的に拒否したり、主任に対して机をたたく、大声を出すなどの威圧的言動に出るようになったため、法人がこの男性職員を普通解雇した事案です。

 

裁判所の判断

第一審の裁判所は、他の若い職員らの中にも、問題の男性職員に同調する者が出て、職場環境が異常な事態になっていたなどと認定し、解雇は有効と判断しました。

しかし、第二審の裁判所は、この男性職員の態度は重大な服務規律違反であるとしながらも、年下の女性主任への反発という事情もうかがわれるから、解雇の前に別の部署に配置転換して他の上司の下で就業する機会を与えるべきだったなどとして、解雇は無効と判断しています。

その結果、社会福祉法人は、650万円を超える支払いと、男性職員の雇用の継続を命じられています。

 

2,椿本マシナリー懲戒解雇事件

会社の宴会で女性社員に「犯すぞ」と発言する等のセクハラをする東京支店長の懲戒解雇事例(東京地方裁判所平成21年4月24日判決)

 

事案の概要

電動機器等を販売する会社の東京支店長が、東京支店の従業員40名が参加した慰安旅行での懇親会の場で、女性従業員に対して、「犯すぞ」などと発言するセクハラを行っていたことが、会社のヘルプラインへの通報で発覚した事案です。

この東京支店長は、宴会の席で、女性従業員らに向かって「体のラインを強調するような私服を着たらいいのに」、「しかし、おっぱい大きいな」、「女として乳が大きいのはええことやろ」、「わしが手で図ったるわ」などと繰り返しセクハラ発言をしていました。

また、ヘルプラインの通報を受けて、会社が調査したところ、この東京支店長は、懇親会の以前から長年にわたり、女性従業員らに対して同様のセクハラ発言を繰り返してきたことがわかり、会社はこの東京支店長を懲戒解雇しました。

 

裁判所の判断

裁判所は、この東京支店長の懲戒解雇について、「何らの指導や処分をせず、労働者にとって極刑である懲戒解雇を直ちに選択するというのは、やはり重きに失するものと言わざるを得ない」として、懲戒解雇を無効と判断しています。

その結果、会社は、この東京支社長に対し約1300万円の支払いをしたうえで、この東京支店長の雇用を継続することを命じられました。

 

 

3,国立大学法人群馬大学事件

部下9名のうち5名からパワハラ被害の訴えがあった大学教授の懲戒解雇事例(前橋地方裁判所判決平成29年10月4日)

 

事案の概要

国立大学法人群馬大学が、部下9名のうち5名からパワハラ被害の申告があり、4名が退職あるいは精神疾患にり患するなどした大学教授を懲戒解雇した事例です。

 

裁判所の判断

裁判所は、この大学教授が、部下に対して必要な指導をしないまま、連日にわたって長時間、廊下を隔てた別の部屋にまで聞こえるくらいの大声で部下を叱責していたことなどはパワーハラスメントにあたると判断しました。

しかし、懲戒解雇は重すぎるとして、不当解雇と判断しました。その結果、大学は、この教授に対して約1900万円の支払いをしたうえで、この教授の雇用を継続することを命じられています。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
このようにかなり従業員側に問題があると思われる事例でも、裁判所は解雇を不当解雇と判断しています。

そのため、モンスター社員など問題社員についても、解雇は最後の手段と考えるべきであり、解雇をできる限り避け、退職勧奨で合意による退職を実現することが重要です。

 

5,ケース別のモンスター社員や問題社員の対策について

ケース別の問題社員対応、モンスター社員対策

ここからは、ケース別のモンスター社員について、問題社員対策を解説していきたいと思います。

 

(1)自分の権利ばかり主張する社員の対応

権利ばかり主張して義務を果たさない社員もいます。そのような社員についての対応は、個別のケースに応じて工夫する必要がありますが、基本的には、義務を果たさない点について、「業務命令」を書面で出し、これに従わないときは懲戒処分を科すことが対応方針になります。そのうえで、それでも問題が解決しないときは、解雇や退職勧奨により問題を解決することになります。解雇については訴訟トラブルになるリスクがありますので、できる限り解雇ではなく、退職勧奨で社員を説得して合意により退職させることを目指す方針をとるべきです。

自分の権利ばかり主張する社員の対応については、以下の参考記事や参考動画で詳しく解説していますのでご参照ください

 

 

▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川 暢春が「権利ばかり主張して義務を果たさない社員への対応方法はコレ!弁護士が解説」を動画で解説しています!

 

(2)無断欠勤社員への対応

社員が連絡なく欠勤した場合は、まず電話を入れて事情を聴くことが必要です。

そして、やむを得ない急な理由で欠勤する際は必ず会社に連絡するように指導しなければなりません。指導しても無断欠勤を繰り返す場合、懲戒や解雇を検討することになります。2週間以上無断欠勤が続くことが、無断欠勤による解雇が、裁判所で正当と判断されるための目安です(東京地方裁判所平成12年10月27日判決など)。

 

▶参考情報:無断欠勤社員への対応については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

無断欠勤で連絡が取れない社員への対応方法をわかりやすく解説

無断欠勤社員への対応と解雇する場合の重要な注意点7つ

 

(3)遅刻・早退を繰り返す問題社員への対応

遅刻・早退を繰り返す社員についても、その都度指導が必要です。指導しても無断欠勤を繰り返す場合、懲戒や解雇を検討することになります。ただし、遅刻を理由とする解雇については、裁判所でなかなか正当な解雇と認めてもらえないのが現状です。

 

裁判所が正当な解雇とした例

遅刻について懲戒処分を受けた後も6か月に24回の遅刻と14回の欠勤をしたことを理由に解雇したケース

 

裁判所が不当解雇とした例

ラジオアナウンサーを2週間の間に2回の遅刻をして放送事故を起こしたことを理由に解雇したケース

 

このような判例もあるため、遅刻や早退についてはしつこく注意して改善させ、また必要に応じて懲戒処分によるペナルティを課していくことが基本的な対応になります。

遅刻を繰り返す従業員の対応については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にご覧下さい。

 

 

(4)能力不足、成績不良の問題社員への対応

能力不足や成績不良の問題社員についても、適切な指導や面談を行い、仕事ができるようにきたえていくことが基本的な対応です。

ただし、指導しても改善せずに解雇する場面では、募集職種について未経験で入社した社員(新卒社員など)と募集職種について経験者として入社した社員で法的な扱いが異なります。

 

募集職種について未経験で入社した社員(新卒社員など)の法的な扱い

募集職種について未経験で入社した社員(新卒社員など)については、解雇が裁判になれば、裁判所としては「未経験なんだから会社が十分指導しなければ仕事ができないのも無理はない」という判断になりがちです。

正当な解雇と認めてもらうためのハードルは高いです。そのため、繰り返し指導をしたが改善されなかったことについて十分な証拠を確保しておく必要があります。

 

募集職種について経験者として入社した社員の法的な扱い

一方、募集職種について経験者として入社した社員については、そもそも指導しなくても活躍できる即戦力として入社したという考え方ができます。

そのため、十分な指導の証拠がない場合でも、採用時に本人が申告していた能力が実際にはなかったことを会社側で立証できれば正当な解雇と認められるケースがあります。

能力不足、成績不良の社員の解雇については以下の動画や記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

(5)協調性が欠如したモンスター社員への対応

協調性に欠けるモンスター社員についても、適切な指導や面談を行い、チームワークや周囲と協力した働き方ができるように改善を促していくことが基本的な対応です。

指導しても改善がされない場合、懲戒処分を検討することになります。また、特定の部署で協調できない場合、他の部署に配置転換してみて再度チャンスを与えることも必要です。それでも改善されないときは解雇を検討することになります。

裁判所では、以下の条件をすべて満たす場合には、協調性の欠如を理由とする解雇も正当と判断されています。

 

条件1:

他の従業員との協調が不可欠な仕事であるとか、少人数の職場であるなどの事情により、協調性が重要な業務内容、職場環境であること

 

条件2:

他の従業員と協調せず、業務に重大な支障が生じていること

 

条件3:

本人への指導や配置転換によっても協調性の欠如が改善されないこと

本人への指導が不十分であったり、また企業内に他の部署があり配置転換の余地があるのに配置転換せずに解雇すると、あとで不当解雇として訴えられたときに敗訴する危険がありますので注意が必要です。

 

協調性が欠如したモンスター社員の対応については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

 

 

(6)業務命令に従わないモンスター社員への対応

業務命令に従わないモンスター社員には、まず業務命令の内容を文書で明確化し、確認させることが必要です。そのうえで、文書で明確化された業務命令の内容に従う旨の誓約書を本人に提出させましょう。

このような文書化をすることによって、会社の業務命令に本人が従わない場合に、本人が従わなかった事実を記録上明確にすることができます。

その後も命令に従わなかったり、あるいは業務命令に従う旨の誓約書を提出しない場合は、懲戒処分を検討することになります。

懲戒処分をした後も業務命令に従わない場合は、解雇を検討しましょう。

裁判所で解雇が正当と認められるためには、会社が正当な業務命令を出しているのに、懲戒処分を受けた後も従わない意思を明確にしているなど、改善が期待できないことが条件になります。

なお、業務命令違反を繰り返す従業員への対応については以下の動画や記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

(7)横領、着服をする社員への対応

横領や着服をする問題社員については、指導ではなく、調査が必要になります。横領は犯罪行為ですので、調査の結果、横領した事実が確認できるのであれば、指導を経ずに解雇することが可能です。

ただし、実際には、横領で解雇した従業員から、会社が不当解雇であるとして訴えられ、会社側が敗訴しているケースが多いことに注意が必要です。

これは会社側が横領の事実について十分な証拠を確保しておらず、裁判所に横領があったと認めてもらえないことが原因です。横領や着服についてはその事実についての証拠の確保が最重要になります。

証拠の確保の方法や、証拠をおさえた後の解雇については、以下の記事を参照してください。

 

 

その他、業務上横領に関する関連記事は以下も参考にご覧下さい。

 

 

(8)転勤を拒否する社員への対応

転勤に応じることが前提となっている会社では、転勤に応じないことは原則として解雇理由になります。

ただし、転勤を命じる場合の一般的な注意点として、以下の点をチェックしておく必要があります。

 

  • 転勤命令が正しい流れで発令されているか
  • 「重度の障害のある家族を介護している」などといった、転勤が難しい事情が従業員側にないか
  • 単身赴任手当、社宅の提供等の転勤を命じるにあたって必要な配慮がされているか
  • 転勤が必要な理由について従業員への説明を十分に行ったか

 

これらのチェックポイントも踏まえた、転勤を嫌う社員への対応方法については以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

就業規則に転勤に応じる義務が定められている会社で転勤を拒否する場合、裁判所は転勤拒否を理由とする解雇も原則として適法と判断しています。

しかし、例外的に個別の事情を理由に、就業規則に転勤義務の定めがあっても裁判所が転勤命令を違法と判断するケースもあり注意が必要です。

例えば、従業員の家族に重度の障害があり、その介護をしているなどの事情があるといったような場面では、従業員側の個人的な事情にも配慮して転勤命令を控える必要があります。

 

(9)セクハラをする社員への対応

従業員が部下にセクハラを繰り返す場合、まずは、被害者、加害者双方に対するヒアリング調査を行い、セクハラが本当にあったのかどうか、どの程度のセクハラがあったのかを確認することが企業として必要です。そのうえで、セクハラの程度に応じた処分を検討する必要があります。

処分の大まかな目安は以下の通りです。

 

1,「卑猥な言動」のような身体接触を伴わないセクハラ

常習性がない場合は処分なしとして注意する程度にとどめるか、懲戒処分をするとしても、一番軽い処分である戒告程度とすべきです。

一方、常習性があり卑猥な発言を繰り返していたり、上下関係を利用して男女関係を迫るような悪質なケースは、出勤停止あるいは降格処分が妥当です。

 

2,「肩を抱く」、「膝の上に座らせる」など暴力を伴わない身体接触のセクハラ

常習性があったり、加害者の反省がない場合は、出勤停止あるいは降格処分が妥当です。

 

3,「無理やりキスをする」、「押し倒して性行為に及ぶ」など暴力を伴うセクハラ

懲戒解雇が妥当です。

 

セクハラをした社員に対する企業側の対応方法、懲戒処分や解雇については以下の記事で詳しくご説明していますのでご参照ください。

 

 

(10)パワハラをする社員への対応

従業員が部下にパワハラを繰り返す場合についても、まずは、被害者、加害者双方に対するヒアリング調査を行い、パワハラが本当にあったのかどうか、どの程度のパワハラがあったのかを確認することが企業として必要です。そのうえで、パワハラの程度に応じた処分を検討する必要があります。

処分の大まかな目安は以下の通りです。

 

1,パワハラ行為の後、加害者が反省して被害者に謝罪し、被害者も一応謝罪を受け入れているようなケース

「戒告」あるいは「減給」程度にとどめるべきです。

 

2,パワハラの被害者が多数であり、しかも加害者が反省していないケース

このようなケースでは、加害者を上位の役職につけておくのは企業の職場環境を著しく悪化させることになります。そのため、加害者の「降格処分」を検討することが必要です。

 

3,過去にもパワハラについて懲戒処分歴がある従業員がさらにパワハラを繰り返したケース

このようなケースでは、「諭旨解雇」あるいは「懲戒解雇」を検討する必要があります。

 

パワハラをした社員に対する懲戒処分や解雇については以下の記事で詳しくご説明していますのでご参照ください。

 

 

6,モンスター社員など問題社員の特徴と心理

上司の正当な業務命令に対して全く聞き入れる余地を見せないモンスター社員や、能力不足を指摘されても改善する意欲を見せず周りに迷惑をかけ続ける問題社員もいます。

そのような社員への対応にあたっては、その特徴や心理状況についても知っておくことが必要です。

 

(1)自分のこと以外に無関心で相手の立場を考えない

モンスター社員など問題社員の特徴として挙げられるのは、自分のこと以外には無関心で、相手の立場を考えない傾向にあるということです。

彼らは、自分の考え方や判断には強いこだわりがあります。その一方で、自分とは関係が無いと判断したことに対してはひたすら無関心です。

そのため、何かトラブルが起きたときにも、相手の立場を考えたり相手に対して寛容さを持ったりすることができません。自分の主張を通すことだけに強くこだわって一歩も譲歩せず、問題がこじれるといったことが起きがちです。

自分のことしか考えない自己中心的な考え方について、彼らは、自分の価値観で物事を決めて自己責任で行動するという現代的な正しい考え方であると思い込んでいます。

そのため、会社のルールを守るという意識がそもそもありません。

自分の行動が周囲にどのような影響を与えるのかを想像する力も乏しい傾向にあり、会社のルールに反する行為をしていても、「自己責任でやっているし問題ない」などと考えることが多いのです。

このようなモンスター社員など問題社員に対しては、問題行動があるたびに会社のルールを明確に示し、プライベートはともかく就業時間中は会社のルールを守らなければならないということを指導していくことが必要です。

 

(2)自己評価が高い

本人に対する会社からの評価が低いにもかかわらず、自己評価が高く、「自分は正しい」「ちゃんと仕事ができている」と思い込んでいるという特徴もあります。

そのため、上司の指導や同僚の助言に耳を傾けることがありません。また、自己評価の高さから、将来のために地道に努力をすることを無駄だと考えて嫌う傾向にあります。

このような問題社員に対しては、人事評価面談はもちろん、日頃の指導の場面においても、問題点を繰り返し根気強く指導して改善を求めることで、会社からの評価を本人にはっきりと伝えていくことが必要です。

 

(3)会社に対する評価が低い

モンスター社員など問題社員については、会社に対する評価が低いという特徴もあげることができます。

その自己評価の高さから、「こんなところは自分の本当の居場所ではない」という感覚を常々持っている傾向にあります。

このように会社に対する評価が低いため、自分のやりたくない仕事や納得のいかないルールを示されると、不当な扱いを受けたと感じ、会社に対して強い不満を抱きがちです。

また、会社に対する評価の低さから、自分さえ良ければそれで良いという開き直って、ルールを逸脱した行動が止まらなくなるケースもあります。

 

7,モンスター社員が増加する背景

モンスター社員が増加する背景として、以下の点があげられます。

 

(1)仕事よりも個人のライフスタイルを重視する考え方

仕事よりも個人のライフスタイルを重視する考え方が広がってきたことが、モンスター社員を生む背景になっています。

個人のライフスタイルを重視すること自体に問題があるわけではなりませんが、それはプライベートの場面であり、仕事においては会社の規律と上司の指示に従う必要があることを入社時からはっきりと意識させる必要があります。

 

(2)管理職がパワハラを恐れる

社会的にパワーハラスメントの問題がクローズアップされ、部下に指導することで、部下から「パワハラだ 」と指摘を受けることを恐れ、部下への指導を怠る管理職が増えました。

管理職には、問題のある従業員に問題点の改善のための指導をすることはパワハラではないということをはっきり教える必要があります。

また、パワハラにならない指導方法を管理職に正しく伝え、問題のある社員に対しては遠慮なく指導することが管理職の責任であることを理解させることが必要です。

 

8,モンスター社員の弱点と末路

上司の正当な業務命令にも強く反発し、全く聞き入れないモンスター社員の弱点は、「会社に貢献するだけの資質、スキルを持っていないし、今後も身に着ける機会がない」という点です。

モンスター社員は、会社に対して強い不満を抱き、批判的な対応をしつつ、自己評価が高いことから、「会社に貢献するだけの資質、スキル」を身に着けることができません。

これは、実は資本主義の社会では致命的な弱点であり、いったん現在の会社での待遇を失うと、もはや転職市場で高い評価は望めないということになります。

特に年齢層が上のモンスター社員は、企業に貢献するだけの資質やスキルを一から身に着けなおすということも難しく、現在の会社を退職した後は、定職に就けないという末路をたどる可能性もあるでしょう。

結局は、モンスター社員化することで一番後悔することになるのは、キャリアアップの機会を失うモンスター社員自身なのです。

会社としては、従業員に対して常にスキルアップ、キャリアアップの必要性を教えていくこと同時に、個々の従業員の会社への貢献を見える化し、貢献できない社員は退場せざるを得ない仕組みを作ることが、モンスター社員の発生を防ぐことになります。

また、モンスター社員化した従業員についても、会社として本人に対する正しい評価を伝えることや、会社のモンスター社員に対する評価を社内でもわかる形で見える化することが必要です。

そうすることで、モンスター社員に会社でやっていけないことを理解させ、退職勧奨に応じて退職する下地を作っていくことが可能です。

 

9,モンスター社員など問題社員を生まないための工夫

モンスター社員など問題社員をできるだけ生まないための工夫についても、触れておきたいと思います。

筆者の経験では、しっかりマネジメントされた良い会社であっても、モンスター社員など問題社員が生まれることがあり、生まないための特効薬はないと言わざるを得ません。

しかし、ご相談いただくケースの中には、モンスター社員を生んでしまう背景が会社にあるケースが多いことも事実です。

以下の点を確認してみてください。

 

(1)査定を行い賞与、昇給・賞与に反映させる

従業員の勤務成績について査定を行い、その査定を賞与や昇給に反映させることが、モンスター社員など問題社員をうまないための工夫として有用です。

従業員が社長や上司を誹謗中傷する、あるいは業務命令に自分勝手な主張をして従わないというケースには、その背景として、そのような行動をとっていても、会社からの不利益を受けないと思われているという側面があります。

例えば、以下のような会社では、仮に社員がモンスター化しても、賞与はそのまま支給することになりかねません、

 

  • 個人の成績ではなくチームの成績を重視して賞与を査定している会社
  • 賞与についてあらかじめ計算式が決められ、経常利益や個人の営業売り上げなど数字に連動する形で賞与が決まる会社
  • 基本給の●ヶ月分など賞与が基本給に連動して決まる会社

 

このような会社では、従業員が会社の業務命令に従わなかったり、他の従業員にいじめやハラスメントを行ったりした場合に、賞与においてその従業員に不利益を与える仕組みを作ることが必要です。

 

(2)査定の進め方の注意点

賞与や昇給の査定はあらかじめ査定項目と査定期間を決めた上で、査定期間が始まる前に査定項目を従業員に周知したうえで査定を行い、査定結果は、面談で従業員1人1人にフィードバックすることが必要です。

査定にあたって注意していただきたいのは、モンスター社員など問題社員の査定については、問題点を遠慮なく指摘する査定記録をつけるべきであるという点です。

筆者がモンスター社員にお悩みの企業からご相談を受けて、査定記録を見ると、それほど悪い評価を受けているということが読み取れないような内容の査定記録になっていることがよくあります。

例えば、業務命令に従わず、会社が扱いに困っている問題社員であるにもかかわらず、その査定記録には、評価者が「臨機応変に対応してもらえて助かりました。」などと書いている一方で、問題点については簡単に触れられている程度になっていて驚くことがあります。

大きな問題を抱えた社員については、あいまいな伝え方をせず、問題点を端的に指摘し、改善されない限り雇用の継続が困難であることをはっきりと査定記録に記載し、本人にも伝えることが、モンスター社員を生まないために重要です。

 

(3)業務のローテーションを実施する

モンスター社員の傾向として、自分の業務を自分だけにしかわからないように抱え込むという傾向があります。

自分の業務の内容を社内で共有せずに自分にしかわからないようにし、自分がいなければ会社が困るという状況を作り上げたうえで、モンスター化して業務上の指示に対して反論して協力を拒否したり、自己中心的な要求を通そうとするタイプです。

このような事態を避けるためには、業務の手順についてマニュアル化した文書を作り、その業務を担当できる従業員を増やしたうえで、定期的に業務のローテーションを行うことが必要です。

いま、特定の従業員にしかできない業務ができてしまっている会社は、まず、現在の担当者にその業務について文書化したマニュアルを作らせることから始め、業務の手順を誰でもわかる形にすることに少しづつ取り組んでいく必要があります。

 

10,スムーズな問題解決のためには弁護士への相談が必須

社員がモンスター化、問題社員化してしまったケースを自社で対応することは適切ではありません。

自社で対応するとモンスター社員など問題社員に対する感情的な嫌悪感から、法的にみて不適切な対応をしてしまい、パワハラトラブルや不当解雇トラブルを起こしてしまったり、不適切な懲戒処分をしてしまい懲戒処分の撤回に追い込まれるケースが非常に多いためです。

会社側でいったん不適切な対応をしてしまうと、その点についてモンスター社員から攻撃を受けることになり、また紛争化した時も、裁判所から問題点を指摘され会社は不利な立場に追い込まれます。

モンスター社員など問題社員の対応は必ず、問題社員対応に精通した弁護士に相談しながら進めていくことが必要です。

弁護士への相談が遅れれば遅れるほど、自社での対応による対応の誤りが発生したり、問題放置による職場環境の悪化が進むことになり、リカバリーのためにより多くの時間と労力を費やすことが必要になります。早く弁護士に相談することが、泥沼化させずに解決するための重要なポイントです。

問題社員対応について相談できる労働問題に強い弁護士の探し方については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

 

 

11,咲くやこの花法律事務所の解決事例のご紹介

咲くやこの花法律事務所では、モンスター社員など問題社員対応に関して多くの企業からご相談を受け、サポートを行ってきました。

咲くやこの花法律事務所の実績の一部を以下でご紹介していますのでご参照ください。

 

 

12,モンスター社員に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に咲くやこの花法律事務所におけるモンスター社員・問題社員対応についての企業向けサポート内容をご説明したいと思います。

サポート内容は以下の通りです。

 

  • (1)モンスター社員・問題社員対応に関するご相談
  • (2)モンスター社員・問題社員に対する弁護士による面談の実施
  • (3)弁護士による懲戒手続きの実施
  • (4)退職勧奨や解雇の際の面談の立ち合い
  • (5)解雇後のトラブルや懲戒処分後のトラブルに対する対応

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

(1)モンスター社員・問題社員対応に関するご相談

咲くやこの花法律事務所にはモンスター社員・問題社員の対応に精通した弁護士が多数在籍しています。

ご相談の際は、まず個別の事情を詳細にヒアリングします。そのうえで、過去の事務所での対応経験や最新の判例動向も踏まえて、実効性のある対応策をご回答します。

モンスター社員・問題社員の対応にお悩みの企業経営者、管理者の方はご相談ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による相談料

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

 

(2)モンスター社員・問題社員に対する弁護士による面談の実施

業務の指示に従わない問題社員や指導そのものが難しいモンスター社員については、弁護士が、その社員との面談や指導の現場に立ち会うことで、経営者や管理者による指導や面談の実施をサポートしています。

弁護士が問題社員に対して直接指導することで、企業の規律を正すことができます。また、将来解雇に進む場合に必要な証拠を確保していくことにもつながります。

モンスター社員や問題社員への指導・面談の実施でお悩みの企業の経営者、管理者の方はご検討ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による面談実施の費用

●初回相談料:30分5000円+税
●面談費用:時間や面談場所への距離に応じて、10万円~20万円+税程度

※別途、事案の内容に応じた着手金、報酬金が必要になることがあります。

 

(3)弁護士による懲戒手続きの実施

咲くやこの花法律事務所では、モンスター社員・問題社員対応に対する懲戒手続きについてもサポートを行っています。

懲戒するべき事情があるかどうかの調査から、懲戒処分の言い渡しまでを弁護士が同席してサポートすることが可能です。

懲戒については、まず懲戒するべき事情があるかどうかの調査を正しい手順で行うことが必要です。調査には専門的なノウハウが必要であり、弁護士に依頼することがベストです。

また、懲戒処分の言い渡しの場面では、従業員がその場で不満を述べたり反論をしてきたりすることがあります。無用なトラブルを防止するためには、懲戒処分の言い渡しの場に専門家である弁護士も同席することが効果的です。

咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルに強い弁護士が懲戒処分の言い渡しの場に同席し、会社側の立場で適切な応答をするなどして、懲戒処分の言い渡しをサポートしています。

懲戒するべき事情があるかどうかの調査や懲戒処分の言い渡しに不安があるときは、ぜひ咲くやこの花法律事務所のサポートサービスをご利用ください。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士によるサポート費用

●初回相談料:30分5000円+税
●面談費用:時間や面談場所への距離に応じて、10万円~20万円+税程度

※別途、事案の内容に応じた着手金、報酬金が必要になることがあります。

 

(4)退職勧奨や解雇の際の面談の立ち合い

咲くやこの花法律事務所では、企業のご要望に応じて、退職勧奨や解雇の際の面談への立ち合いも行っております。

退職勧奨や解雇の問題に精通した弁護士が立ち会うことで自信をもって、退職勧奨あるいは解雇を進めることが可能になります。

また、解雇の場面で重要な書面になる解雇理由書や解雇通知書の作成と発送についてもご依頼を受けています。解雇の問題に精通した弁護士が書面作成に携わることによって、万が一、裁判等に発展した時のことも見越した書面作成が可能になります。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士によるサポート費用

●初回相談料:30分5000円+税
●面談費用:時間や面談場所への距離に応じて、10万円~20万円+税程度

※別途、事案の内容に応じた着手金、報酬金が必要になることがあります。

 

(5)解雇後のトラブルや懲戒処分後のトラブルに対する対応

咲くやこの花法律事務所では、解雇した従業員あるいは懲戒処分をした従業員とのトラブルに関する交渉や裁判のご依頼も常時承っています。

解雇した従業員が不当解雇であるとして復職を求めたり、会社に金銭を請求してくるという場面では、弁護士が従業員との交渉を会社に代わって行います。

また、懲戒処分をした従業員が不当な懲戒解雇であると主張して、懲戒処分の撤回を求めてくるような場面でも、弁護士が従業員との交渉を会社に代わって行います。

懲戒処分後のトラブルや解雇後のトラブルでお困りの方は、早めに「咲くやこの花法律事務所」までご相談下さい。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による対応費用例

●初回相談料:30分5000円+税
●交渉着手金:20万円~30万円+税程度~
●裁判時の対応着手金:45万円程度~

 

(6)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士による問題社員やモンスター社員に関するサポート内容は、「労働問題に強い弁護士について」のこちらのページもご覧下さい。

また、今すぐお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

 

13,まとめ

今回は、モンスター社員など問題社員への対応の基本と、ケースごとの対応方法についてご説明しました。

モンスター社員など問題社員に対して経営者側が適切な対応をせずに放置すると、モンスター社員化して、どんな指導も受け付けなくなる危険があります。問題が小さいうちに指導し、改めさせることを繰り返すことが基本であることを確認しておきましょう。

また、指導をしても改まらずに、解雇や懲戒処分を検討する際は、企業としてもリスクを伴う場面になりますので、事前に必ず弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

14,【関連情報】モンスター社員に関連したお役立ち記事一覧

今回の記事では、「モンスター社員(問題社員)の対応方法を事例付きで弁護士が解説」のご説明をしました。モンスター社員など問題社員に関しては、正しい対応方法を行わないと「重大なトラブル」につながります。万が一、従業員とのトラブルが発生した際は、多額の支払いが発生することも多いです。そのため、今回の記事テーマ「モンスター社員」「問題社員」については、他にも知っておくべきお役立ち関連情報が幅広くあります。

この記事内でご紹介していない記事を以下でご紹介しておきますので、合わせてご覧下さい。

 

問題社員など辞めさせたい社員がいる場合の正しい解決方法

やる気のない社員の特徴と対処法!クビは問題あり?【放置は悪影響です】

勤務態度が悪い従業員を解雇する場合の重要な注意点

出社(出勤)拒否する従業員への対応方法!解雇等について解説

 

実際に従業員を雇用されている会社では、問題社員やモンスター社員の対応をしなければならないケースも出てくるかもしれません。

そのため、「正しい対応方法や注意点」を事前に把握しておくことはもちろん、万が一「重大なトラブル」などが発生しそうな際は、弁護士へのスピード相談が早期解決の重要なポイントです。

問題社員などモンスター社員については、「労働問題に強い弁護士」に相談するのはもちろん、普段から自社の労務環境の整備を行っておく必要があるために「労働問題に強い顧問弁護士」にすぐに相談できる体制も構築しておきましょう。

具体的な顧問弁護士の役割や必要性、メリット・デメリット、費用の相場などは、以下の記事で詳しく解説してますのでご参照ください。

 

▶参考情報:顧問弁護士とは?その役割、費用と相場、必要性について解説

 

また、労働問題に強い「咲くやこの花法律事務所」の顧問弁護士については、以下を参考にご覧ください。

 

▶参考情報:【全国対応可能】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

▶参考情報:大阪で顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)をお探しの方はこちら

 

記事作成弁護士:西川暢春
記事更新日:2024年8月29日

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    小田 学洋(おだ たかひろ)
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    発売日:2023年11月19日
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    著者:弁護士 西川 暢春
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