こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
無断欠勤で連絡が取れない社員がいる場合、会社はどのように対応すべきでしょうか?
社員が無断欠勤し、連絡がとれなくなったというご相談は、咲くやこの花法律事務所でもときどきお受けすることがあります。従業員と突然連絡がとれなくなるような事情はいくつか考えられますので、事情にあわせた対応が必要になります。
この記事では、無断欠勤で連絡が取れない場合に想定される事情を9つ紹介したうえで、メール・手紙等による連絡や自宅訪問といった対応について、その注意点をご説明します。
会社に来なくなった社員と連絡がとれない状況が続く場合は解雇や退職扱いも検討することになるでしょう。しかし、解雇や退職扱いはのちに従業員とのトラブルの原因になることがありますので弁護士に相談したうえで慎重な対応をする必要があります。
無断欠勤を理由とする解雇が不当解雇(無効)と判断された例として、「日本ヒューレット・パッカード事件」(最高裁判所判決平成24年4月27日)があり、この事件では会社が約1600万円の支払いを命じられています。(▶参考:「日本ヒューレット・パッカード事件」最高裁判所判決平成24年4月27日)
この記事を最後まで読んでいただくと、従業員が無断欠勤して連絡が取れない場合の対応について、正しい対応方法や注意点を理解していただくことができます。
それでは見ていきましょう。
会社に来なくなった社員について無断欠勤を理由に解雇したり、行方不明として退職扱いにした事案では、後で訴訟トラブルになり、会社側が敗訴しているケースも少なくありません。敗訴した場合、会社は多額の金銭の支払いを命じられます。
そのため、解雇や退職扱いについては必ず弁護士に相談したうえで判断していただくことをおすすめします。咲くやこの花法律事務所でも、無断欠勤して連絡が取れない社員への対応について、事業者側の立場に立ってご相談をお受けしていますのでご利用ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所へのご相談は以下もご参照ください。
▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川 暢春が「無断で欠勤して連絡が取れない社員!対応方法を弁護士が解説」と「無断欠勤社員への正しい対応とは?重要な7つの注意点を解説」を動画で解説しています!
▼無断欠勤で連絡が取れない従業員の対応について、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,無断欠勤で連絡が取れない場合に想定される事情
無断欠勤で社員と連絡が取れない場合、どのような事情が想定されるでしょうか?想定される事情として以下の例をあげることができます。
(1)急病で亡くなっている
会社に来なくなった社員が一人暮らしの場合、急病で亡くなっているという最悪のケースも考えられます。
(2)交通事故や自然災害
会社に来なくなった社員が交通事故や自然災害により出勤ができず、会社に連絡をすることもできないケースが考えられます。
(3)ドメスティックバイオレンスなど家庭内の問題
ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)の被害を受けるなどした場合、被害者が加害者による追跡から逃れるために避難し、住所を隠すケースもあります。そのような事態が生じても、会社に連絡することは可能であることが通常ではありますが、筆者の経験ではこのような家庭内の問題で従業員と連絡がとれなくなるケースもあります。
(4)携帯電話の故障や紛失、料金不払い
何らかの事情により出勤できない事情が生じたが、携帯電話の故障や紛失、料金不払い等により、電話が使えず、会社に連絡ができないケースもあります。特に、生活が不安定なアルバイト等については、このような事例があります。
(5)逮捕された
何らかの事件に巻き込まれて逮捕され、連絡ができないというケースも考えられます。逮捕については、警察から会社に直接連絡が入ったり、家族や弁護人から会社に連絡が入ることで事実がわかる例も多いです。
▶参考情報:従業員が逮捕された際の会社側の対応については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(6)職場内のセクハラやパワハラ、いじめなどにより出勤できない
職場内にセクハラやパワハラ、いじめなどの問題があり、これにより従業員が出勤できなくなっている例もあります。セクハラやパワハラ、いじめなどの訴えがあった場合は、事実関係を調査し、訴えが事実である場合は、会社が職場環境を改善したうえで従業員が出勤できる環境を整えることが必要です。
▶参考情報:セクハラ、パワハラ発生時の企業側の対応については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
(7)人事異動や転勤を拒否している
自分の意に沿わない人事異動や転勤を命じられた従業員がこれを拒否して無断欠勤をし、連絡が取れなくなる例もあります。そのような場合は、まずは、会社がした人事異動の命令や転勤命令が適法なものかを確認することが大切です。
(8)精神疾患で連絡がとれない
従業員が精神疾患により連絡がとれない状態に陥ることもあります。
例えば、「日本ヒューレット・パッカード事件」(最高裁判所判決平成24年4月27日)は、同僚らに対する被害妄想などの精神的な不調のために、この問題が解決されたと判断できない限り出勤しないと会社に伝えたうえで欠勤を続けた従業員について、会社が諭旨退職の懲戒処分をしたことが問題になった事案です。
最高裁判所は、このような場面で、懲戒処分により対応するのではなく、会社は精神科医による健康診断を実施するなどした上で、必要な場合は治療を勧め、休職等の処分を検討すべきであったとし、諭旨退職の懲戒処分は無効であると判断して会社を敗訴させています。従業員の無断欠勤について精神疾患の影響がうかがわれるときは、懲戒や解雇等の処分を即断するべきではありません。弁護士に相談したうえで慎重に対応することが必要です。
▶参考情報:従業員に精神疾患の兆候が出た場合の会社の正しい対応方法については以下で解説していますのでご参照ください。
(9)退職するつもりである
退職するつもりで従業員が会社に出勤せず連絡がとれなくなるケースもあります。従業員が会社の承諾なく一方的に退職することも可能ですが、その場合は、2週間前の予告が必要です(民法第627条1項。期間の定めのない雇用契約の場合)。従業員が予告をせずに職場離脱し、会社に損害を与えた場合、会社に対する損害賠償責任が発生することがあります。
▶参考情報:退職のルールについては以下で解説していますのでご参照ください。
2,連絡が取れない場合のメール例文
会社に来なくなった社員と電話等で連絡が取れない場合、メールやLINEでメッセージを送ることを検討すべきでしょう。メッセージの内容は、これまでの従業員の就業状況や従業員との関係性にあわせて個別の調整が必要ですが、オーソドックスなメール例文としては以下の内容が考えられます。その従業員についてこれまでから連絡なく欠勤することが多かったというような事情がある場合は、より厳しい対応が必要になります。
▶参考:無断欠勤して連絡が取れない従業員へのメール例文
〇〇さん
本日、連絡なく欠勤されているのでお電話しましたが、こちらからの電話にも応答がない状況です。 あなたの安否を心配しております。
このメッセージを受け取り次第、至急ご連絡ください。
体調不良等の理由がある場合は、その旨をお知らせください。
特に問題がない場合は、速やかに連絡のうえ出勤してください。
3,手紙や内容証明郵便の送付について
メールやLINE等でも連絡が取れない場合は、会社に来なくなった社員に手紙を送付することも考えられます。
普通郵便で送ると、郵便受けに投函されることになり、本人の安否を確認することができません。本人の安否を確認するためには、受け取りを確認できるレターパックプラスや、やや大げさな印象にはなりますが内容証明郵便で送るのがよいでしょう。
▶参考情報:内容証明郵便の書き方や出し方については以下をご参照ください。
4,連絡が取れない場合の自宅訪問について
会社に来なくなった社員とメールや手紙でも連絡が取れない場合は、自宅を訪問することも必要です。ただし、連絡がとれなくなった従業員について、職場内でハラスメント等のトラブルがあったことがうかがわれる場合は、トラブルの当事者が訪問することは避けるべきです。また、従業員が一人暮らしの場合、異性の担当者が1人で訪問することは避けるべきでしょう。
(1)本人に会えた場合
訪問の結果、本人に会えた場合は、その場で事情を聴くことになります。会社として退職してほしいと考えている場合は、自宅訪問時に退職願の用紙を持参するべきでしょう。
(2)本人に会えなかった場合
一方、訪問の結果、本人に会えなかった場合は、ドアポストなどに至急連絡が欲しいといった内容のメッセージを差し入れるなどすることが通常です。そのうえで、会社に来なくなった社員が今もその自宅に住んでいるのか、それとももう自宅にはいないのかを確認する必要があります。実際に住んでいるかどうかは、表札や郵便受け、電気メーター、ガスメーター、水道メーター、屋外から見える洗濯物の有無、自転車の有無などにより確認します。これらの点を記録したうえで、賃貸住宅やマンションの場合は管理会社にも状況を確認する必要があります。
会社に来なくなった社員が自宅に住んでいるか、住んでいないかは、後述する「行方不明」による退職扱いの規定を適用できるかどうかにかかわります。
本人と連絡がとれない場合でも、自宅に住んでいる様子がうかがわれる場合は「行方不明」とはいえません。そのため、「行方不明」による退職扱いの規定を適用する余地はありません。一方、会社に来なくなった社員が既に自宅に住んでいない場合は、「行方不明」による退職扱いを検討する余地があります。この点の判断のためにも、会社に来なくなった社員が自宅に住んでいるか、住んでいないかを確認することが必要です。
5,警察に連絡すべきか?
会社に来なくなった社員と連絡がとれない場合も、いきなり警察に連絡するのではなく、まずは、会社として、身元保証人や従業員の家族と連絡をとることができないかを確認すべきです。
身元保証人や従業員の家族の連絡先がわからない場合や、身元保証人や家族からも従業員に連絡がとれない場合は、警察に連絡し、「行方不明者届」を出すことも検討する必要があります。
「行方不明者届」は、行方不明者の親族等が提出することが通常ですが、雇用主も「行方不明者届」を提出することができます。その場合、会社に来なくなった社員の写真があれば、持参すべきです。
▶参考情報:行方不明者届については、警視庁のホームページをご参照ください。
6,無断欠勤で連絡が取れない社員を退職扱いとしてよいのか?
では、無断欠勤で連絡が取れない社員を退職扱いとすることはできるのでしょうか?
就業規則において、例えば「行方不明となり、1か月以上連絡が取れないとき」は当然退職となると定める例があります。従業員について無断欠勤で連絡がとれない状態が続く場合、解雇するのではなく、このような就業規則の規定を適用して退職扱いとすることも考えられます。
ただし、行方不明を理由とする退職扱いについては慎重な検討が必要です。
東京地方裁判所判決令和2年2月4日(О・S・I事件)は、就業規則で退職事由として「従業員の行方が不明となり、14日以上連絡がとれないとき」と定めていた会社がこの規定により、連絡が取れない従業員を退職扱いとしたところ、従業員から訴訟を起こされたというものです。
裁判所は、就業規則の規定により退職になったという会社の主張を認めず、会社を敗訴させました。
この事案で、従業員は出勤せず、また、会社からの電話や自宅への訪問にも応じていませんでしたが、ファクシミリやメールでの連絡がとれていました。裁判所は、上記就業規則の規定を適用できるのは、従業員が所在不明となり、かつ、従業員に対して通知や意思表示をする通常の手段が全くないときに限られると判示し、ファクシミリやメール等の手段がある以上、「行方が不明となり、14日以上連絡がとれないとき」にはあたらないと判断しています。
行方不明を理由とする当然退職扱いについては、弁護士に相談のうえ、このような裁判例も踏まえた検討が必要になります。
7,解雇の注意点
行方不明に関する規定での対応が難しい場合は、解雇を検討することになります。ただし、解雇については、従業員から後日、不当解雇であると主張されてトラブルになることがありますので、本当に解雇が認められる場合かどうかを慎重に検討したうえで行う必要があります。
2週間以上無断欠勤が続いていることが無断欠勤による普通解雇が認められるための目安の1つといえます。ただし、「無断欠勤の原因がハラスメントなど職場環境にある場合」や「従業員の精神疾患が無断欠勤の原因になっている場合」は、2週間以上無断欠勤があっても、解雇が無効(不当解雇)と判断されることがありますので注意が必要です。
これらの点は、連絡が取れない社員が正社員ではなく、パートやアルバイトの場合であっても同じです。その他、無断欠勤して連絡が取れない従業員を解雇する場面で注意すべき点を以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
ここでご説明した通り、無断欠勤して連絡が取れない従業員を解雇した場面でも、解雇が不当解雇と判断されることがあります。その場合、会社が多額の支払義務を負担することになる例が少なくありません。解雇の判断は必ず弁護士に相談のうえ行ってください。
▶参考情報:解雇や不当解雇については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
8,無断欠勤して連絡が取れない社員の対応について弁護士に相談したい方はこちら
咲くやこの花法律事務所では、従業員の労務管理や問題社員対応について、多くの事業者から相談を受け、解決してきました。最後に、咲くやこの花法律事務所における、無断欠勤社員への対応についてのサポート内容をご説明したいと思います。
(1)無断欠勤して連絡が取れない社員への対応方法、解雇のご相談
今回の記事でご説明した通り、特に無断欠勤社員の解雇や退職扱いの場面では慎重な検討が必要です。不当解雇と判断された場合は会社側のダメージが大きいことから、必ず解雇前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。従業員の労務管理や問題社員対応の分野で実績が豊富な咲くやこの花法律事務所の弁護士がこれまでの経験を踏まえ、ご相談の中で、御社にとってベストな解決策をご提案します。
咲くやこの花法律事務所の労務トラブルに強い弁護士へのご相談費用
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
(2)無断欠勤社員との解雇トラブルに関する交渉、裁判、労働審判
すでに解雇して裁判や労働審判などトラブルになってしまっている場合、早急に弁護士に相談し、適切な対応をする必要があります。自社の考えで対応することは危険なので、労働問題に強い弁護士にご相談ください。
咲くやこの花法律事務所では、トラブルの交渉、裁判、労働審判のいずれについても常時ご相談を承っています。交渉や裁判、労働審判について、咲くやこの花法律事務所の経験豊富な弁護士がご依頼を受けて対応し、企業にとってベストな解決を実現します。
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(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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9,まとめ
この記事では、まず、従業員が無断欠勤して連絡が取れない場合に想定される事情として以下の9つをご紹介しました。
- (1)急病で亡くなっている
- (2)交通事故や自然災害
- (3)ドメスティックバイオレンスなど家庭内の問題
- (4)携帯電話の故障や紛失、料金不払い
- (5)逮捕された
- (6)職場内のセクハラやパワハラ、いじめなどにより出勤できない
- (7)人事異動や転勤を拒否している
- (8)精神疾患で連絡がとれない
- (9)退職するつもりである
そのうえで、連絡が取れない場合のメール例文や手紙の送付などについて、ご説明しました。また、警察への連絡や自宅訪問時の注意点についてもご紹介しています。そして、退職扱いや解雇をする場合に検討すべき点もご説明しました。これらの点は、連絡が取れない社員が正社員ではなく、パートやアルバイトの場合にも同様にあてはまります。
咲くやこの花法律事務所では、従業員の労務管理や問題社員の対応について事業者側の立場から専門的なサポートを提供しています。無断欠勤して連絡が取れない社員への対応にお困りの際は咲くやこの花法律事務所にご相談ください。
10,【関連情報】無断欠勤に関連したお役立ち記事一覧
今回の記事では、「無断欠勤で連絡が取れない社員への対応方法をわかりやすく解説」のご説明をしました。無断欠勤や連絡が取れない従業員の対応に関しては、正しい対応を行わなければ重大なトラブルにつながります。万が一、従業員とのトラブルが発生した際は、多額の支払いが発生することもあります。そのため、今回の記事テーマ以外にも知っておくべき重要な情報が幅広くあります。
この記事内でご紹介していない記事を以下で記載しておきますので、合わせてご覧下さい。
・欠勤が多い社員を解雇できる?体調不良などで休みがちな従業員への対応
記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年11月1日
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