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モンスター社員のわがままの野放しは厳禁!問題社員の放置をしてはならない理由とは?

モンスター社員の野放しは厳禁!問題社員の放置をしてはならない理由とは?
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

社内の規則を無視し、業務の指示に反発して従わなかったり、同僚や上司への攻撃的言動を繰り返すなど、職場環境に重大な悪影響を及ぼす従業員のわがままを野放しにしたり、放置したりしているとどのような問題が起きるのでしょうか?

筆者がご相談をお受けしてきた経験からは、事業者が問題を放置して適切な対応をしなかった場合、他の従業員の中にも同調して同様の行動をとる者があらわれ、職場内で業務指示に対する不服従や会社や上司に対する攻撃的言動が常態化し、職場崩壊の状態に至る例もあります。

決して放置せず、問題が出てきた段階で直ちに適切な対応をすることが重要です。

この記事では、これらの従業員を便宜上、モンスター社員・問題社員と呼んで、正しい対応を怠り、放置することの問題点をご説明していきたいと思います。

 

▶参考:なお、モンスター社員・問題社員について、対応方法をはじめ全体像を確認しておきたい方は以下をご参照ください。

モンスター社員とは?問題社員の対応を事例付きで弁護士が解説

 

※モンスター社員・問題社員といった用語はいずれも正式な用語ではありません。この記事では、「モンスター社員」とは、社内の規則や業務命令に従う意識が乏しく規則違反や業務命令違反を繰り返す、あるいは、同僚や上司への誹謗中傷を繰り返すなど、職場環境に重大な悪影響を及ぼす従業員を指す言葉として使用しています。また、「問題社員」とは、能力不足、協調性の欠如、無断欠勤、頻繁な遅刻、業務命令の拒否、部下に対するハラスメント行為、社内での不倫などといった問題点があり、問題点が改善されなければ雇用の継続が困難な社員を指す言葉として使用しています。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

就業規則等の社内規則への違反や業務指示への不服従について見て見ぬふりをし、正しい対応をしないで放置していると、次第に増長し、また同調者が現れ、社内の規律や業務指示が機能しなくなり、組織が崩壊に向かいます。
一方で自己流で厳しい対応をしようとして、パワハラや不当解雇、退職強要の問題を起こしてしまい、重大なトラブルに発展してしまう例も少なくありません。パワハラや違法性があるような解雇あるいは退職強要は決して行うべきではありません。法令を遵守し、どのような社員に対しても、常に法的に正しい方法で対応することが必要です。就業規則等の社内規則への違反や業務指示への不服従の問題は、すみやかに弁護士に相談し、正しい対応をすることが必要です。

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所でもご相談を承っていますのでお困りの際はご相談ください。咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士への相談は以下をご参照ください。

 

▶参考:問題社員対応に強い弁護士への相談サービスはこちら

 

▼モンスター社員の対応について弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

 

問題社員対応に強い弁護士への法律相談サービス

 

1,モンスター社員のわがままを野放しにしたり問題社員を放置した場合におきる問題

モンスター社員を野放しにしたり問題社員を放置した場合におきる問題

モンスター社員のわがままを野放しにしたり、問題社員を放置したりすることにより起こる問題は大きく分けると、以下のように「他の従業員に与える悪影響」「職場規律の崩壊」「事業収益への悪影響」の3点に整理することができます。

 

(1)他の従業員に与える悪影響

  • 他の従業員の退職やメンタルヘルスの悪化を招く
  • 他の従業員の業務が過多になる
  • 他の従業員に対する安全配慮義務違反になる

 

(2)職場規律の崩壊

  • 懲戒処分や欠勤控除などの対応が困難になる
  • 同調して会社の指示や上司の指示に従わない従業員が出てくる
  • 会社や上司に対する攻撃や復讐が行われるようになる

 

(3)事業収益への悪影響

  • 顧客や取引先が離れていく

 

以下で詳細を順番に見ていきたいと思います。

 

2,他の従業員の退職やメンタルヘルスの悪化を招く

 

(1)優良な従業員の離職を招く

職場内で同僚や上司、あるいは部下に対して攻撃的言動をとるモンスター社員がいる場合、職場の雰囲気が重苦しいものとなり、問題に対して適切な対応ができない会社に対する信頼が失われていきます。その結果、優良な従業員の離職を招くことになります。

職場の人間関係の問題が退職を決める理由になることは少なくありません。厚生労働省の調査では、令和2年の転職者のうち男性では「8.8%」、女性では「13.3%」が「職場の人間関係が好ましくなかった」を退職理由として回答しています。

これは給料に対する不満を退職理由として回答した人の割合よりも多く、最多の退職理由の1つとなっています。

 

▶参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」の「4.転職入職者の状況(pdf)」をご覧ください。

 

(2)他の従業員のメンタルヘルスを悪化させる

また、他の従業員のメンタルヘルスを悪化させるという深刻な問題がおきるケースもあります。

職場内で上司や同僚を攻撃したり、声を荒げるタイプのモンスター社員については、優良な従業員ほどその標的とされやすい傾向にあります。そのため、問題を放置すると、優良な従業員が精神的な攻撃を受けて、精神疾患を発症したり、メンタルヘルスを悪化させるケースが出てきます。

筆者の相談経験でも、モンスター社員による強い攻撃的な言動で、経営陣が抑うつ状態になってしまったり、指導担当者が過呼吸を起こして救急車で搬送される、部下が精神科での入院を余儀なくされるなどの事態に至ってしまっているケースがありました。

 

3,他の従業員の業務が過多になる

モンスター社員や問題社員の中には、上司や経営者からの業務上の指示を拒否するタイプが存在します。

このような社員を放置すると、その社員に担当させることができなくなった業務を他の従業員に頼むことになり、他の従業員の業務が過多になるという問題が起きます。

職場内で不公平感が生まれるうえ、残業が増えたり、業務に余裕がなくなることで、問題社員の周囲の従業員も会社に不満を持つようになっていきます。

 

4,他の従業員に対する安全配慮義務違反になる

モンスター社員や問題社員を放置することが、他の従業員に対する安全配慮義務違反になることもあります。

 

(1)モンスター社員や問題社員によるハラスメントを放置した場合の会社の責任

モンスター社員や問題社員を放置することが、他の従業員に対する安全配慮義務違反になるケースの最も代表的な例は、パワハラ・セクハラなどのハラスメント行為を行う問題社員に対して適切な対応をとらなかったことについて、事業者が被害者に対して損害賠償責任を負うケースです。

 

裁判例:
加野青果事件(名古屋高等裁判所判決 平成29年11月30日)

例えば、加野青果事件(名古屋高等裁判所判決平成29年11月30日)は、ミスが続く従業員に対し、約10か月にわたり先輩従業員が「てめえ」「あんた、同じミスばかりして」などと強い口調で不相応に長時間の叱責を繰り返した結果、従業員が自殺した事案です。

裁判所はこの事案において、会社にはこのような指導・叱責を制止する義務があるとしたうえで、放置したことは会社の義務違反であると判断しました。その結果、会社は亡くなった従業員の両親に対し、約5600万円の賠償を命じられています。

後輩従業員に対して違法と評価されるほど強い叱責を繰り返していた問題社員について、会社がそのわがままを野放しにして放置した結果、後輩従業員に対する安全配慮義務違反と評価された事例ということができるでしょう。

 

(2)モンスター社員や問題社員による攻撃的言動を放置した場合の会社の責任

ハラスメントには必ずしもあたらない事案であっても、他の従業員に対して攻撃的な言動をするモンスター社員に対処せず放置した場合、会社は被害を受けた従業員に対する関係で安全配慮義務違反の責任を負うことがあります。

 

裁判例:
アンシス・ジャパン事件(東京地方裁判所判決 平成27年3月27日)

例えば、アンシス・ジャパン事件(東京地方裁判所判決平成27年3月27日)は、2人作業のリーダーに対し、他方の作業者が、仕事を割り振られても自分の仕事ではないと言って応じないうえ、リーダーによるパワハラを受けたとして会社のコンプライアンス機関に訴え出るという行動に出たという事案です。

会社は調査してパワハラなしと判断したものの、その後、リーダーからこの作業者とは一緒に作業ができないとして、繰り返し体制変更を求められても十分な対応をしませんでした。

裁判所は、2人体制で業務を担当する他方の作業者からパワハラで訴えられるという出来事は相当強い心理的負荷であるとしたうえで、リーダーがこの作業者と一緒に仕事をするのは精神的にも非常に苦痛である旨を繰り返し訴えているのであるから、会社は、配転等によりリーダーとこの作業者を業務上完全に分離するか、少なくとも業務上の関わりを極力少なくして、このリーダーに業務の負担が偏ることのない体制をとる必要があったと判示しました。そして、会社はこの義務に違反して十分な対応をしなかったとして、慰謝料50万円の支払いを命じられています。

この事案は、割り振られた仕事を拒否したり、不合理にリーダーをパワハラで訴えたりする問題社員に対して、会社が適切な対応をとらないまま、問題社員対応の負担が1人の従業員に偏った状態で放置した結果、安全配慮義務違反と評価された事例ということができるでしょう。

 

▶参考:安全配慮義務違反については以下で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

安全配慮義務違反とは?会社が訴えられる4つのケースと対応方法

 

5,懲戒処分や欠勤控除などの対応が困難になる

モンスター社員や問題社員のトラブルについて、会社が採るべき手段としてまずあげられるのが懲戒処分です。従業員に非違行為、問題行動がある場合でも、いきなり解雇に進むのではなく、事前に解雇に至らない懲戒処分をして改善を促し、それでも改善がされない場合にはじめて解雇を検討すべきとする裁判例は数多く存在します。つまり、懲戒処分はモンスター社員や問題社員に対して、解雇という手段をとる前に踏むべき手順の1つということができます。

ところが、会社がモンスター社員や問題社員の規律違反等について、見て見ぬふりをし、そのわがままを野放しにしているケースでは、法的に懲戒処分が困難になっていきます。

これは、会社がそのような規律違反を黙認してきたと見られるようになり、突然、態度を変更して懲戒処分による対応をすることは、過去の対応との公平性の観点から疑義が生じるためです。

この点については、菅野和夫「労働法」第12版においても、「懲戒処分は、同様の事例についての先例を踏まえてなされるべきこととなる。また、従来黙認してきた種類の行為に対し懲戒を行うには、事前の十分な警告を要する。」と解説されています。

 

 

このように、社内でモンスター社員や問題社員の規律違反等を放置すると、徐々にそれに対する懲戒処分が困難になり、従って、解雇という手段を採ることも困難さを増していくという関係にあります。

さらに、懲戒処分とは別の問題として、遅刻や無断欠勤を繰り返す問題社員について、就業規則の規定上は欠勤控除すべきなのに、控除を怠っているというケースも見られます。

このようなケースでも欠勤控除の計算が面倒であるなどとして控除せずに放置することを続けていると、法的にも会社は欠勤控除の権利を放棄していたとして、控除が認められなくなるおそれがあることに留意する必要があります。会社の給与規則に欠勤控除の規定があるが、欠勤発覚時も注意はするものの控除はしてこなかったことから、会社は欠勤控除の権利を放棄していたと判断された事案として、学校法人目白学園事件(東京地方裁判所令和4年3月28日)などがあります。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

この段落でご説明したように、モンスター社員や問題社員に対して適切な対応を採らないままそのわがままを野放しにしていると、徐々に懲戒処分や欠勤控除に関する会社の権利が制限されるようになり、解雇等による解決もより困難になっていくことに留意する必要があります。

 

6,懲戒処分が遅れると懲戒処分が無効とされる理由になる

さらに、セクハラやパワハラ等の問題がある従業員に対する懲戒処分は適切な時期に行う必要があることにも注意が必要です。セクハラ・パワハラ等による懲戒処分の効力をめぐる訴訟では、会社がセクハラやパワハラ等を知った後も長期間にわたり懲戒処分をしないで放置したことを、懲戒処分を無効と判断する理由に挙げる裁判例も存在します。

 

裁判例:
東京地方裁判所判決 平成24年3月27日(霞アカウンティング事件)

例えば、東京地方裁判所判決平成24年3月27日(霞アカウンティング事件)は、会社が従業員を懲戒解雇したところ、懲戒解雇が無効であるとして訴訟を起こされた事案です。

会社は、この懲戒解雇において、部下に対する2年前のセクハラ行為等をその理由の1つにあげていましたが、これについて裁判所は「処分が遅延する格別の理由もないにもかかわらず約2年も経過した後に懲戒解雇という極めて重い処分を行うことは、明らかに時機を失している」と判示しています。

このように懲戒処分が遅れたこと自体が、懲戒処分が無効とされる理由になりうることにも留意すべきでしょう。

 

▶参考:懲戒処分については以下でより詳しい解説をしていますのでご参照ください。

懲戒処分とは?正しい進め方など詳しく解説

 

7,同調して会社の指示や上司の指示に従わない従業員が出てくる

上司の指示する仕事を拒否したり指示に従わない問題社員を放置してしまうことには、これに同調する従業員を生んでしまうという危険もあります。

問題社員が仕事を拒否した結果、上司が仕事を別の従業員に依頼しなおすなどの対応を続けていると、仕事を拒否すればやらなくて済むと考えて、問題社員と同様の行動に出る従業員が出てきます。最初は問題社員1人がトラブルを起こしている状態であったとしても、これを野放しにすることで、会社や上司の指示を聴かないことが職場内でまかりとおるようになり、職場崩壊に進む異常事態となっていきます。

 

(1)事例紹介

学校において教職員らが大勢で学校側責任者に詰め寄り、指導担当者の指導に問題があったことを認めるように迫るなどし、学校運営に支障をきたす異常事態に至っていた事案について、咲くやこの花法律事務所の弁護士が支援して問題解決した事例を以下で紹介していますのでご参照ください。

 

 

8,会社や上司に対する攻撃・復讐が行われるようになる

問題社員に同調する従業員が出始めて、職場内において、一定の勢力を占めるようになってくると、上司や経営者がこれに対して毅然とした指導を行おうとしても、問題社員の側から会社や上司に対する攻撃・復讐がされるようになっていきます。

その典型例の1つが、上司による指示や指導に対して、問題社員の側からパワハラ・嫌がらせであるという主張がされるケースです。また、問題社員が他の従業員に対して、「この会社はブラック企業だ」などと触れ回って、賛同者を募り、集団で経営者を攻撃する行動に出る例や、「説明責任」といった言葉で会社に不合理な要求をする例も少なくありません。

 

(1)事例紹介

正当な指導をパワハラであると主張する攻撃が行われるようになった事案について、咲くやこの花法律事務所の弁護士が支援して問題解決した事例を以下で紹介していますのでご参照ください。

 

 

9,顧客や取引先が離れていく

モンスター社員のわがままを野放しにしたり、問題社員を放置していると、これらの問題が職場内で徐々に大きくなり、上司や経営者は本来の業務ではなく、モンスター社員や問題社員の対応に時間と労力をかけなければならなくなっていきます。

その結果、本来、自社の顧客や取引先に向けた事業活動にエネルギーを割くべきであるにもかかわらず、これができなくなっていきます。顧客や取引先から見れば、まともな対応ができない会社とみられるようになっていき、顧客や取引先が離れていく傾向が顕著になってきます。

また、問題社員が事業活動に必要な情報を他に共有せずに抱え込むことにより、自分がいなければ事業がまわらない状況を意図的に作り上げたうえで、会社に対して不当な要求をして事業運営に支障を生じさせる例もあります。

 

(1)事例紹介

古参従業員の細かな問題行動を放置した結果、増長を招き、担当業務がブラックボックス化した事案について、弁護士が介入して事業の主導権を取り戻し、古参社員も退職させた事案を以下で紹介していますのでご参照ください。

 

 

10,モンスター社員のわがままの野放しや問題社員の放置に関する3つの注意点

 

注意点1:
仕事を与えないことはパワハラになり得る

会社によってはトラブルを起こさせないために、問題社員を放置して仕事を与えないという対応をしてしまうケースがあります。しかし、これもまた問題社員の側に会社に対する攻撃材料を与えることになります。いくら問題社員であっても、長期間仕事を与えないことはパワハラになり得るからです。

厚生労働省はパワハラの6つの行為類型の1つとして「過小な要求」つまり「業務上の合理性なく能力や経験 とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや 仕事を与えないこと」を挙げています。

 

▶参考:「過小な要求」については、以下のパワハラの6つの行為類型について詳しく解説した記事をご参照ください。

「過小な要求」などパワハラの6つの行為類型を事例をもとに徹底解説

 

職場内でトラブルが絶えない問題社員に対し、トラブルを避けるという目的で仕事を与えないことは、短期間であれば合理的な理由が認められることもあり得ますが、長期間にわたって仕事を与えないことは、いくらトラブル回避の目的があったとしてもパワハラにあたります。

 

裁判例:
兵庫教育大学事件(神戸地方裁判所判決 平成29年8月9日)

例えば、兵庫教育大学事件(神戸地方裁判所判決平成29年8月9日)は、職場内で暴行暴言を繰り返す職員に対し、大学が職場内トラブル回避のために、約13年間、仕事を満足に与えなかったことが問題になった事例です。

問題の職員は、上司や同僚に対する加害行為を繰り返し、最終的には上司に対する強要罪で有罪判決を受けるほどのモンスター社員でしたが、それでも、裁判所は、仕事を与えない対応を長期間続けたことはパワハラにあたるとして大学に慰謝料40万円の支払いを命じています。

裁判所はこのような事案において、使用者は解雇や懲戒などの対応を採るべきであり、職場内でトラブルを起こすからといって長期間仕事を与えないという対応をすることは正当化されないとしています。

 

注意点2:
自宅待機やテレワークは問題解決につながらない

筆者がご相談をお受けしてきた経験では、モンスター社員や問題社員を職場から切り離すために、とりあえず自宅待機させたり、テレワークさせるという対応を検討したいとおっしゃる事業者の方もおられます。

しかし、モンスター社員、問題社員だからといって、自宅待機やテレワークをさせることは、問題解決を遠のかせることになることが多く、決してお勧めできません。

その理由についてご説明します。

まず、事業者側の都合で自宅待機を命じること自体は可能ですが、その場合は、例外的な場面を除けば、待機期間中も賃金を支払わざるを得ません。つまり、自宅待機を命じることは、結局のところ、仕事をしなくても賃金がもらえる地位を問題社員に与えるということを意味します。これでは、その後に、問題社員に対して退職勧奨(退職に向けた説得)をしたとしても、仕事をしなくても賃金をもらえる地位を手放そうとせず、退職の合意を得ることが非常に困難になります。

また、問題社員にテレワークさせるという対応も同様に問題があります。出勤して上司から指導を受ける環境と比較すると、テレワーク中は、上司からの指導やプレッシャーを受けにくい環境になってしまうからです。問題社員に退職に向けた話し合いをしようとしても、プレッシャーがかかっていない状態で自宅で就業でき賃金がもらえるという環境下では、問題社員から見れば退職しないことのメリットが大きく、退職の合意を成立させることは困難になってしまいます。

そして、自宅待機やテレワークを命じられたモンスター社員や問題社員からは、「問題に正面から取り組むのはしんどいので、とりあえず出勤しないようにさせて問題を先送りしたい」という事業者側のいわば「逃げ」の姿勢を見透かされることになります。

モンスター社員や問題社員のトラブルは、事業者が問題に正面から取り組む覚悟を決め、それが相手にも伝わったときに初めて解決に向かいます。

 

注意点3:
放置してモンスター社員化したときも安易な解雇は危険

問題社員がいきなりモンスター化することは通常はありません。事業者側が放置して適切な対応をとらなかったり、問題行動があっても見て見ぬふりをするのを見て、モンスター化していきます。

このように放置してしまった結果、問題が大きくなりすぎて、すぐに解雇しなければ、他の従業員や職場環境、事業への悪影響が大きくなりすぎるというケースもあります。

しかし、その場合でも、解雇は無効とされる危険を伴うことに注意が必要です。

会社に対して攻撃的な態度をとっているモンスター社員を解雇した場合、解雇後も会社に対する攻撃をやめずに、訴訟を起こしてくる可能性は極めて高いです。

問題社員やモンスター社員の解雇については主に以下の4点を検討して、訴訟になったとしても解雇が認められる場面なのかを、事前に慎重に検討することが必要です。

 

  • 1.問題社員・モンスター社員の非違行為や攻撃的言動について詳細な記録が残り、訴訟においても立証できる状態かどうか
  • 2.非違行為や攻撃的言動に対して単に指導を行うというのにとどまらず、改善がされない場合は解雇を検討することになることを具体的に告げたうえでの指導を行ってきたかどうか
  • 3.非違行為や攻撃的言動に対して解雇の前により軽い懲戒処分により警告し、改善の機会を与えているかどうか
  • 4.非違行為や攻撃的言動の程度が、他の従業員に対して不快感を抱かせるという程度にとどまるものではなく、他の従業員にとって一緒に就業することが困難であり、業務に重大支障を生じさせているという程度に至っているかどうか

 

会社から見ればひどいモンスター社員や問題社員であっても、上記の4点を十分に検討せずに安易に解雇した場合、解雇が無効となり得ることに注意が必要です。

解雇後に訴訟が起こされて、解雇が無効であると判断された場合、問題社員を復職させることを余儀なくされるうえ、解雇の時点にさかのぼって賃金を支払うことを命じられることになり、会社にとって非常に大きな負担になります。

 

▶参考:解雇が無効と判断された場合はどうなるか?については、以下の不当解雇テーマの記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

不当解雇とは?解雇が無効と判断された場合について

 

また、問題社員やモンスター社員の解雇については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

12,モンスター社員や問題社員に対する正しい対応方法について

モンスター社員や問題社員に対する正しい対応の基本は以下の通りです。

 

  • 手順1:問題行動について決して見て見ぬふりをせずに適宜的確な指導を行い、記録を残す
  • 手順2:改善がない場合は懲戒処分により警告し、また改善がなければ解雇せざるを得ないことを具体的に告げたうえで再指導する
  • 手順3:それでも改善がない場合は退職勧奨により退職を説得する
  • 手順4:正しい方法で退職勧奨をしても応じない場合で、他の従業員にとって一緒に就業することが困難であり業務に重大支障を生じさせているという程度に至っている場合は、弁護士に事前に相談のうえ解雇する

 

▶参考:モンスター社員・問題社員への対応方法の詳細については以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。

モンスター社員とは?問題社員の対応を事例付きで弁護士が解説

 

13,咲くやこの花法律事務所の問題社員対応の解決実績

咲くやこの花法律事務所のモンスター社員対応、問題社員対応に関する解決事例の一部を以下でご紹介しています。ご参照ください。

 

社内で暴力をふるう社員について弁護士が調査して暴力行為を認定して退職させた解決事例

歯科医院で勤務態度が著しく不良な問題職員の指導をサポートした事例

下請業者に自宅の建築工事を格安で請け負わせるなどの不正をしていた社員を懲戒解雇処分とし、約200万円の支払をさせた事例

遅刻を繰り返し、業務の指示に従わない問題社員を弁護士の退職勧奨により退職させた成功事例

 

14,モンスター社員対応に関して弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

筆者が代表を務める咲くやこの花法律事務所では、モンスター社員トラブル、問題社員トラブルの問題に正面から取り組み、多くの問題を解決してきた実績があります。これまでの経験から積み上げたノウハウを活かして、企業経営者、人事担当者から、モンスター社員、問題社員に対する対応方法のご相談をお受けしています。

 

咲くやこの花法律事務所の問題社員トラブルに強い弁護士への相談費用

●初回相談料 30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)

 

また、ご相談だけでなく、実効的な解決のために、以下のサポートを提供しています。

 

  • 弁護士による問題社員に対する「退職勧奨」のサポート
  • 弁護士による問題社員に対する「指導・懲戒」のサポート
  • 弁護士による問題社員の「解雇」のサポート

 

サポート内容の詳細や費用等は以下をご参照ください。

 

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

社員がモンスター化、問題社員化してしまったケースを自社で対応することは適切ではありません。

自社で対応すると法的にみて不適切な対応をしてしまい、パワハラトラブルや不当解雇トラブルを起こしてしまったり、不適切な懲戒処分をしてしまい懲戒処分の撤回に追い込まれるケースが非常に多いためです。

会社側でいったん不適切な対応をしてしまうと、その点について問題社員から攻撃を受けることになります。また訴訟に発展したときも、会社の不適切な対応を攻撃されて会社は不利な立場に追い込まれます。

問題社員の対応は必ず、問題社員対応に精通した弁護士に相談しながら進めていくことが必要です。

 

「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

モンスター社員の対応でお困りの企業様は、下記から気軽にお問い合わせください。弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

15,まとめ

今回は、モンスター社員のわがままの野放しや問題社員の放置をしてはならない理由についてご説明しました。

モンスター社員・問題社員に対して適切な対応をとらずに放置していると、他の従業員の退職やメンタルヘルスの悪化を招いたり、他の従業員に対する安全配慮義務違反の問題が発生します。また、懲戒処分や欠勤控除などの対応が徐々に困難になるうえ、問題社員に同調して会社の指示や上司の指示に従わない従業員が出てきて、会社や上司に対する攻撃が職場内で常態化するような異常事態になっていきます。事業にも大きな支障が生じ、顧客や取引先が離れていくことになります。

筆者がご相談をお受けした中でも、経営者自身がうつ病になってしまったり、事業が成り立たなくなり廃業を検討せざるを得ない状態に追い込まれてしまっている例がありました。

従業員の問題行動は早い段階で弁護士に相談して適切な対処をすることが重要です。

 

16,【関連情報】モンスター社員に関連したお役立ち記事一覧

今回の記事では、「モンスター社員のわがままの野放しは厳禁!問題社員の放置をしてはならない理由とは?」のご説明をしました。モンスター社員など問題社員に関しては、問題の先送りや放置をせず正しい対応方法を行わないと重大なトラブルにつながります。万が一、従業員とのトラブルが発生した際は、多額の支払いが発生することも多いです。そのため、今回の記事テーマ以外にも知っておくべき情報が幅広くあります。

この記事内でご紹介していない記事を以下でご紹介しておきますので、合わせてご覧下さい。

 

権利ばかり主張するモンスター社員に対してとるべき対策

 

注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事更新日:2024年11月1日
記事作成弁護士:西川 暢春

 

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    西川 暢春 代表弁護士
    西川 暢春(にしかわ のぶはる)
    大阪弁護士会/東京大学法学部卒
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    小田 学洋(おだ たかひろ)
    大阪弁護士会/広島大学工学部工学研究科
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    大阪弁護士会/大阪府立大学総合科学部
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    片山 琢也(かたやま たくや)
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    堀野 健一(ほりの けんいち)
    大阪弁護士会/大阪大学
    所属弁護士のご紹介

    書籍出版情報


    労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2023年11月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:1280ページ
    価格:9,680円


    「問題社員トラブル円満解決の実践的手法」〜訴訟発展リスクを9割減らせる退職勧奨の進め方

    著者:弁護士 西川 暢春
    発売日:2021年10月19日
    出版社:株式会社日本法令
    ページ数:416ページ
    価格:3,080円


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