こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
辞めさせたい社員がいるけれども、どうしたらよいかわからず1人で悩んでしまっていませんか?
この種の悩みは人に相談しにくく、1人で悩んでしまいがちだと思います。咲くやこの花法律事務所では、問題社員の解雇や退職について、これまで企業の経営者、管理者の方々から多くのご相談をお受けしてきました。
今回は、事務所の経験も踏まえ、問題社員など辞めさせたい社員がいる場合の正しい解決方法についてご説明します。
問題のある従業員がいるときも、きちんと法律のルールを守って対応することが必要です。退職勧奨や解雇についてはそれぞれ守るべきルールがあります。ルールを守らなければ、パワハラになってしまったり、違法な退職勧奨あるいは不当解雇として従業員から訴えられることになります。
例えば以下のような例があります。
例1:京都トヨペット株式会社事件(京都地方裁判所平成30年10月24日判決)
→会社による解雇が不当解雇とされ、約700万円の支払命令
例2:東京地方裁判所平成29年10月18日判決
→会社代表者による退職強要がパワハラとされ、代表者に対し、約100万円の支払い命令
このようなトラブルを招かないように必ず事前に弁護士にご相談ください。なお、問題社員対応に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は、以下をご覧ください。
・業務に支障を生じさせるようになった従業員について、弁護士が介入して規律をただし、退職をしてもらった事例
・成績・協調性に問題がある従業員を解雇したところ、従業員側弁護士から不当解雇の主張があったが、交渉により金銭支払いなしで退職による解決をした事例
▼【関連動画】西川弁護士が「辞めさせたい問題社員がいる!2つの対応方法」を詳しく解説中!
▼辞めさせたい社員対応について今スグ弁護士に相談したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。
※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。
また労働問題に強い顧問弁護士をお探しの方は、以下を参考にご覧下さい。
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,問題社員とは?
問題社員という言葉は正式な用語ではありませんが、能力不足、協調性の欠如、無断欠勤、頻繁な遅刻、業務命令の拒否、部下に対するハラスメント行為、社内での不倫などといった問題点があり、問題点が改善されなければ雇用の継続が困難な社員を指していうことが通常です。
このような問題社員は、大きく分けると、「規律違反型の問題社員」と「著しい能力不足型の問題社員」に分かれます。
「規律違反型の問題社員」とは、業務命令に従わなかったり、ハラスメントを繰り返したり、社長や上司への誹謗中傷を繰り返すといった、会社のルールを守らないこと(規律違反)が問題となるケースです。これに対して、「著しい能力不足型の問題社員」は、勤務成績が悪いのに自覚がなく改善意欲もない、ミスを繰り返し指導を受けても改善できないといったケースが典型例です。
問題社員への対応方法もこの2つのタイプによって異なるので、以下では適宜、この2つのタイプにわけてご説明します。また、問題社員に対応する前に、その特徴や心理についても知っておくことが有益です。この点については、以下の参考記事で解説していますのでご参照ください。
2,問題社員を辞やめさせなければならない理由
会社として様々な手を尽くして改善を求めても改善がされない場合には、問題社員を辞めさせることを検討しなければならないこともあるでしょう。
なぜ、問題社員を退職させなければならないかというと、そのような社員が会社に居続けると、他の従業員がやりがいを感じて就業できる職場づくりの妨げになるうえ、売上や利益の面でもマイナスになる結果、従業員の給与をあげていくことも難しくなるからです。
例えば、勤務成績が悪いのに自覚がなく改善意欲もない従業員について漫然と雇用を続けて、その上司や先輩につきっきりでその従業員の仕事をチェックさせるといったことをするならば、それは上司や先輩の立場から見てやりがいのある仕事とはいえず、また、企業収益向上の妨げにもなるでしょう。
また、規律範型の問題社員については、退職させなければ職場環境が悪化し、よい従業員が退職せざるを得なくなる危険があるというケースも少なくありません。
例えば、部下に対するハラスメントや後輩に対する陰湿ないじめ行為を続ける問題社員について、改善の見込みがないのであれば、職場から排除することは、経営層の責務ともいえるでしょう。
逆に言えば、そういった大義名分がないのに、なんとなく経営者の言うことを聞かないからとか、仕事がすぐに覚えられないからというような理由で安易に人をやめさせてしまうことはすべきではありません。
3,問題社員への基本的な対応手順
では、具体的にどのように取り組んでいけばよいのでしょうか。最初に基本的な対応手順を整理すると以下のようになります。
(1)規律違反型の問題社員に対する対応手順
規律違反型の問題社員に対して指導や懲戒のプロセスを経ないで退職勧奨(退職に向けた説得)を行うことも可能です。しかし、そのようなやり方では問題社員が説得に応じる可能性は低く、また、退職について合意に至らない場合に解雇に進むと改善指導を経ないまま解雇したことになってしまい、後日、解雇の件が訴訟になれば不当解雇と判断されるリスクが非常に高くなります。
まずは、本人に問題点を伝え、改善のための指導をし、改善が得られない場合は懲戒処分をすることで、問題社員に規律違反行為を繰り返す状態で就業を続けることはできないことをはっきりと認識させ、それでも改善がされない場合に退職勧奨をすることが適切です。
そのようなプロセスをしっかり踏んだ場合には、仮に退職勧奨で解決ができずに解雇する場合でも、解雇が有効とされる余地が出てきます。
具体的には以下の流れになります。
4つの主な対応手順
- 手順1:本人に問題点を伝え、改善のための指導をする
- 手順2:改善が得られない場合は懲戒処分をする
- 手順3:それでも改善の見込みがない場合は退職勧奨を行う
- 手順4:退職勧奨でも解決できない場合は解雇を検討する
▶参考情報:以下で、規律違反型の問題社員への具体的な対応例として、咲くやこの花法律事務所にご依頼いただき解決した事例をご紹介していますので、ご参照ください。
(2)著しい能力不足型の問題社員に対する対応手順
著しい能力不足型の問題社員に対して、十分な指導を経ないまま退職勧奨(退職に向けた説得)を行うことも、適切に行う限りにおいては法的な問題はありません。しかし、そのようなやり方では問題社員が説得に応じて退職する可能性は低く、また、説得に応じないからといって解雇に進むと十分な指導を経ないまま解雇したことになってしまい、後日、解雇の件が訴訟になれば不当解雇と判断されるリスクが非常に高くなります。
まずは、本人に改善すべき問題点を具体的に伝えて改善のための指導を行い、改善のための猶予期間を与えても改善の見込みがない場合にはじめて退職勧奨に進むことが適切です。そのようなプロセスをしっかり踏んだ場合には、仮に退職勧奨で解決ができずに解雇する場合でも、解雇が有効とされる余地が出てきます。
ただし、企業規模や本人の職歴等から他職種への異動の余地がある場合は、解雇の前に、異動によって他職種での適性を試す必要があり、それをしないまま解雇すると、後日訴訟になれば不当解雇と判断されるリスクが高くなります。
これらの点をまとめると以下の流れになります。
4つの主な対応手順
- 手順1:本人に問題点を伝え、改善のための指導をする
- 手順2:改善のための猶予期間を与えても改善の見込みがなく雇用の維持が困難な場合は退職勧奨を行う。
あわせて異動により適性を見る余地がないか検討する。 - 手順3:異動によっても解決できない場合は再度退職勧奨を行う
- 手順4:退職勧奨でも解決できない場合は解雇を検討する
▶参考情報:以下で、著しい能力不足型の問題社員への具体的な対応例として、咲くやこの花法律事務所にご依頼いただき解決した事例をご紹介していますので、ご参照ください。
4,会社の意向で問題のある従業員を辞めさせる2つの方法
上記の対応手順でもご説明した通り、会社の意向で社員に辞めてもらう方法としては、「解雇」と「退職勧奨」の2つの方法があります。
1,解雇
「解雇」=従業員の同意なく、会社からの通知により一方的に雇用を終了させること
(※解雇とは?について、全般的に詳しく知りたい方は「解雇とは?わかりやすく解説しています」の記事を参考にご覧ください。)
2,退職勧奨
「退職勧奨」=従業員に退職について了解してもらい、退職届を出して退職してもらうこと
このように、「退職勧奨」と「解雇」は「従業員に退職について了解してもらったうえで辞めてもらうかどうか」という点が大きな違いです。
(1)解雇の前に退職勧奨をするのが原則
辞めさせたい社員がいる場合、まず、「解雇」ではなく、「退職勧奨」により辞めてもらうことを目指すことが原則です。
退職勧奨で合意に至らない場合に初めて、「解雇」を検討することをおすすめします。これは、「解雇」すると、従業員側がから「不当解雇」であるとして訴えられ、場合によっては労働審判や訴訟トラブルに発展するケースがあるためです。
参考として、不当解雇と判断されるとどのようなリスクがあるかなどに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
解雇が裁判所で不当解雇と判断された場合には、企業側は多額の金銭支払いを命じられます。例えば以下のような事例があります。
●日産センチュリー証券事件(東京地方裁判所平成19年 3月 9日判決)
→機密情報の持ち出しなどを理由とする解雇が不当解雇とされ、約700万円の支払命令
▶「日産センチュリー証券事件(東京地方裁判所平成19年 3月 9日判決)」判決全文はこちら
●京都トヨペット株式会社事件(京都地方裁判所平成30年10月24日判決)
→他の従業員への虚偽報告などを理由とする解雇が不当解雇とされ、約700万円の支払命令
▶「京都トヨペット株式会社事件(京都地方裁判所平成30年10月24日判決)」判決全文はこちら
このように解雇は企業にとってリスクが高い選択ですので、まずは退職勧奨を行うべきです。
(2)例外的に退職勧奨の前に解雇を検討する3つのケース
ご説明した通り、「退職勧奨」により辞めてもらうことをまずは目指すべきですが、以下のような場合は、解雇することのリスクが比較的低いため、退職勧奨の手順を踏むことなく、解雇することも問題ありません。
- 無断欠勤で本人と連絡がつかない場合
- 病気休職が続いており休職期間満了による解雇の場合
- 明らかな証拠のある業務上横領により解雇する場合
それぞれの場面の解雇の注意点は以下の記事で解説していますのであわせてご参照ください。
5,退職勧奨により辞めてもらう方法
退職勧奨により辞めてもらう場合の具体的な流れは、以下の通りです。
(1)退職勧奨を行うことについて社内の理解を得る
まず、その従業員に対して会社として退職勧奨をすることについて、会社の幹部層や本人の直接の上司に話して、理解を得ておきましょう。
(2)本人に伝える内容を整理したメモを作成する。
次に、退職勧奨の理由となる、本人の問題点(会社がその従業員に辞めてほしいと思う理由)を整理したメモを作成します。これは、本人に退職を求める際に、その理由をできるだけ冷静に合理的に伝えるための準備です。
メモの作成にあたっては、退職勧奨の話を本人にする人が把握している本人の問題点だけでなく、他の幹部層や本人の直接の上司にもヒアリングして、できるだけ客観的で網羅性の高いメモを作っておくことがポイントになります。
(3)従業員に退職してほしいという会社の意向を伝える。
本人を個室に呼んで、退職してほしいという会社の意向を伝えます。
実際の話し方、伝え方については、以下の参考動画や参考記事でご紹介していますので、ご参照ください。
▶【参考動画】西川弁護士が「問題社員の退職勧奨」違法にならないための注意点と進め方を詳しく解説中!
また、問題社員トラブルを解雇ではなく、退職勧奨で円満に解決するための具体的な手順がわかるおすすめ書籍(著者:弁護士西川暢春)も以下でご紹介しておきますので、こちらも参考にご覧ください。書籍の内容やあらすじ、目次紹介、読者の声、Amazonや楽天ブックスでの購入方法などをご案内しています。
なお、退職勧奨のタイミングについては事前に検討しておきましょう。就業日の午前中に退職勧奨を行うと、本人が同僚に退職勧奨を受けたことを話すことにより、社内に混乱が生じる恐れがあります。
そのような問題を避けるためには、週休2日制の会社であれば金曜日の午後に会社の意向を伝えるなどの工夫が必要です。
(4)退職の時期、金銭面の処遇などを話し合う。
本人が退職勧奨に応じて退職する意向を示している場合は、退職の日について本人と明確に合意する必要があります。
また、いくらか金銭的な補償をしたほうが本人から退職について同意を得やすい場合は、金銭的な補償を提案したうえで退職について合意を求めることも検討する必要があります。
(5)退職届を提出させる。
最終的に退職について合意に至ったときは、必ず書面で退職届を提出させることが必要です。退職届がないと、後で、会社が解雇したという主張をされるケースがありますので、必ず書面を残しておいてください。
以上が退職勧奨により、辞めてもらう方法です。
6,解雇により辞めさせる方法
退職勧奨をしたけれども、従業員が退職に同意しないときは、解雇を検討することになります。
ただし、解雇については、前述の通り、後で不当解雇であると主張され、労働審判を起こされたり、訴訟を起こされるリスクがあるため、慎重にその方法を検討する必要があります。
以下で解雇により辞めさせる方法の重要なポイントを解説します。
(1)解雇理由ごとに解雇が認められる条件がある
まず、最初に、解雇が法的に認められる場面かどうかを検討する必要があります。
「労働契約法」の第16条に次のような条文があります。
この条文に違反して解雇をすると、後日不当解雇として訴えられたときに、敗訴してしまい、多額の金銭の支払いを裁判所で命じられる危険があります。
具体的に、どのような場合に、解雇が正当と判断されるかは、おおむね以下の通りです。
▶参考:解雇理由ごとの解雇が認められる条件例
解雇理由 | 解雇が正当と認められる条件 |
病気やけがで休んでいる | 以下の条件をすべて満たす場合ことが必要。
●条件1: 就業規則に定められた休職期間を経過したが、復職ができる状態にならなかったこと ●条件2: 休職期間経過後しばらくの間、短時間勤務や負担の軽い仕事につけるなどの配慮をしたとしても復職可能になる可能性がないと判断されること。 |
能力不足、成績不良 | (1)新卒者、未経験者の従業員の場合:
必要な指導や、適性を見るための配置転換を行った後も、勤務成績が不良であること (2)経験者で専門性を重視して採用した従業員の場合: 採用時に前提としていた専門性がないことが明らかになり、改善の余地がないこと |
協調性がない、他の従業員とのトラブルが多い | 以下の条件をすべて満たすことが必要。
●条件1: 他の従業員との協調が不可欠な仕事であるとか、少人数の職場であるなどの事情により、協調性が重要な業務内容、職場環境であること ●条件2: 他の従業員と協調せず、業務に重大な支障が生じていること ●条件3: 本人への指導や配置転換によっても協調性の欠如が改善されないこと |
遅刻や欠勤を繰り返す | 以下の条件をすべて満たす場合ことが必要。
●条件1: 正当な理由のない欠勤や遅刻について会社が懲戒処分をするなど適切な指導をしていること。 ●条件2: 会社による適切な指導の後も、頻繁に欠勤や遅刻を繰り返していること。 例えば、遅刻について懲戒処分を受けた後も6か月に24回の遅刻と14回の欠勤をしたケースについて解雇は正当と判断した裁判例があります。
|
業務上の命令に従わない | 以下の条件をすべて満たす場合ことが必要。
●条件1: 会社の正当な業務命令に従わないこと ●条件2: 今後も従わない意思を明確にしているなど、改善が期待できないこと |
会社の金銭や商品の横領、着服 | 横領、着服の事実が証拠により立証されていること |
私生活で犯罪を犯した | (1)強姦、強制わいせつなどの性犯罪について:
通常、解雇が認められる。 (2)私生活上のけんかや交通事故や飲酒運転、無免許運転などについて: 会社名が報道されるなどして会社の信用が損なわれたことが条件になる。 |
転勤命令を拒否する | 以下の条件をすべて満たすことが必要。
●条件1: 会社に転勤を命じる権限があることが就業規則や雇用契約書で明記されていること ●条件2: 転勤を命じることが必要となる業務上の理由があること ●条件3: 重度の障害がある家族を介護する従業員であるなど、従業員側に転勤が極度に困難であるという事情がないこと ●条件4: 転勤を命じるにあたり、単身赴任手当の支給や社宅の提供など会社としての配慮を行っていること |
無断欠勤 | 以下の条件をすべて満たすことが必要。
●条件1: 無断欠勤が7日以上に及ぶこと ●条件2: パワハラなど会社側の責任による無断欠勤ではないこと ●条件3: 精神疾患が原因で必要な連絡ができないなど、従業員側に無断欠勤になることについてやむを得ない事情がある場合ではないこと |
セクハラをした | (1)「無理やりキスをする」、「押し倒して性行為に及ぶ」などのケース:
無条件で懲戒解雇が可能。 (2)より軽微なケース(しつこく交際を求める、下ネタをいう、肩を抱く、ひざの上に座らせる): 「一度セクハラについて懲戒処分を受けたが改まらないこと」が解雇の条件となる。 |
パワハラをした | 過去にもパワハラについて懲戒処分歴がある従業員がさらにパワハラを繰り返したこと |
会社の機密情報を漏洩した | 以下の条件をすべて満たすことが必要。
●条件1: 会社の重要な顧客情報や技術情報を不正に持ち出したこと ●条件2: 会社が社内においてその情報を機密情報として扱うことを明確にしていたこと ●条件3: 情報を個人的な事業あるいは他社のために使用しようとしたと ●条件4: |
会社に対する誹謗中傷を繰り返す | 根拠ない誹謗中傷を社外で行うことにより、会社に重大な損害を発生させたこと |
経歴詐称が発覚した | 以下の条件をすべて満たすことが必要。
●条件1: 重要な職歴や学歴の詐称があったこと。 ●条件2: 真実の職歴や学歴を採用時に聴かされていれば、採用しなかったといえること |
余剰人員を整理する必要がある(整理解雇) | 以下の4つの要素を踏まえ、解雇に合理性が認められることが必要。
(1)人員削減の必要性: (2)解雇回避のための努力をしたか: 解雇以外の経費削減手段(新規採用の募集の停止、契約社員の雇止め、や希望退職者の募集など)をすでに尽くしていること (3)解雇対象者選定方法の合理性: 解雇の対象者が客観的な基準で選ばれていること (4)解雇手続きの妥当性: 解雇について従業員や労働組合との協議が十分されていること |
解雇理由ごとのより詳しい注意点は以下をご参照ください。
●協調性欠如における解雇
・協調性がない人の原因や対処法!人間関係の問題は解雇理由になる?
●能力不足による解雇
・能力不足の従業員を解雇する前に確認しておきたいチェックポイント!
●セクハラを理由とする処分
●パワハラを理由とする懲戒処分
●整理解雇
(2)解雇の種類について検討する
次に、解雇の種類について検討することが必要です。
1,普通解雇か懲戒解雇かの検討
解雇が普通解雇なのか、懲戒解雇なのかによって、進め方や注意点、解雇通知書の作り方などが変わってきます。
そのため、普通解雇か懲戒解雇かを事前に検討しておくことが必要です。
まず、解雇の理由が従業員の問題行動や就業規則違反ではなく、能力不足や経営難にある場合は、普通解雇を選択するべきです。
普通解雇を選択するべきケースの例
- 1,病気やけがによる欠勤を理由とする解雇
- 2,能力不足、成績不良を理由とする解雇
- 3,協調性の欠如を理由とする解雇
- 4,経営難による人員整理を理由とする解雇
- 5,頻繁な遅刻や欠勤を理由とする解雇
一方、以下のように従業員の問題行動や社内ルールの違反に対する制裁として解雇する場合は、懲戒解雇を選択することが基本になります。
懲戒解雇を選択するべきケースの例
- 1,横領など業務に関する不正行為を理由とする解雇
- 2,転勤の拒否など重要な業務命令に対する違反を理由とする解雇
- 3,無断欠勤を理由とする解雇
- 4,セクハラ行為、パワハラ行為を行ったことを理由とする解雇
- 5,経歴詐称を理由とする解雇
ただし、懲戒解雇にあたる場合であっても、会社として普通解雇を選択することは可能です。普通解雇と懲戒解雇の具体的な違いについては、以下の参考記事もあわせてご参照ください。
▶参考記事:普通解雇とは?わかりやすく徹底解説
2,予告解雇か即日解雇かの検討
「労働基準法」により例外的な場合を除き、従業員を解雇するときは、30日前に予告することが義務付けられています(労働基準法第20条)。ただし、会社は30日分の賃金(解雇予告手当)を支払えば、予告なく、解雇を言い渡した当日に解雇することができます。
▶参考情報:労働基準法第20条
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
・参照元:「労働基準法」の条文はこちら
この点を踏まえ、予告解雇にするのか、即日解雇にするのかを検討します。
- 予告解雇:解雇を伝える日から30日以上後の日を解雇日として解雇の通知を行う方法
- 即日解雇:解雇予告手当を支払って、解雇を伝えた日の当日に解雇する方法
予告解雇は、解雇予告手当を支払わなくて済むことがメリットにはなりますが、一方で、解雇を伝えた後も従業員に社内で仕事をさせることになり、従業員が機密情報を持ち出したり、社内で悪評をたてたりといった危険があることに注意する必要があります。
筆者としては予告解雇はこのような問題点があるため、できるかぎり、即日解雇をおすすめしています。即日解雇をする場合の注意点などは以下の参考記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
ただし、無断欠勤や病気休職期間満了による解雇の場合は、30日前の予告による解雇でも、上記のような危険が生じることはないため、問題ありません。また、予告解雇を行う場合の解雇予告の方法や即日解雇の場合に支払う解雇予告手当の計算方法については、以下の参考記事をご参照ください。
▶参考記事:解雇予告とは?わかりやすく徹底解説
(3)具体的な解雇の進め方
以上を踏まえたうえでの具体的な解雇の流れは、以下の通りです。
1,就業規則の規定を確認する。
まず、就業規則の解雇理由のどれに該当するかを確認しましょう。
特に、懲戒解雇の場合は、就業規則にあげられている「懲戒解雇理由」に該当しないときは、懲戒解雇できませんので注意してください。
2,懲戒解雇の場合は本人に弁明の機会を与える。
懲戒解雇の場合は、解雇する前に、本人にどういう理由で懲戒を検討しているかを伝え、それについて本人の言い分(弁明)を聞くことが必要です。
この弁明の機会を与える手続きを飛ばすと、不当解雇と判断されてしまうリスクがありますので注意してください。
3,解雇の方針を会社の幹部や本人の直属の上司にも伝え、理解を得る。
解雇の方針については、会社の他の幹部や本人の直属の上司にも伝えて理解をも求め、方針を共有しておきましょう。
4,解雇の理由を整理したメモを作成する。
次に、解雇の理由として、本人に伝える内容を整理したメモを作成します。
これは、本人に解雇を伝える際にその理由をできるだけ冷静に合理的に伝えるための準備です。ただし、退職勧奨の場合とは違い、法的に解雇理由として認められるものだけを伝えるべきです。「6,解雇により辞めさせる方法」の段落でご説明した「解雇理由ごとの解雇が認められる条件」を満たすもののみ伝えるようにしてください。
5,解雇通知書を作成する。
即日解雇をする場合は、解雇を言い渡すタイミングで、解雇通知書を手渡すことになります。そのため、事前に解雇通知書を準備しておきましょう。
解雇通知書の作り方については、以下の参考記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
6,別室に呼び出して、解雇を伝える。
本人を個室に呼んで、解雇を伝えます。口頭で解雇の理由を説明したうえで、事前に準備した解雇通知書を本人に手渡してください。
解雇通知書は事前にコピーをとっておき、コピーに従業員の受領のサインをもらい、会社側で保管してください。実際の解雇の伝え方については、以下の参考記事で詳しくご紹介していますので、ご参照ください。
なお、即日解雇をする場合は、社内で解雇のことを同僚に話したり、あるいは顧客情報を持ち出すなどの問題をできるかぎり生じさせないために、解雇を伝えたらすぐに私物をまとめさせて帰宅させましょう。
7,退職勧奨や解雇の前に検討するべきこと
以上、辞めさせたい社員がいる場合の退職勧奨や解雇についてご説明しました。ただし、従業員に辞めてほしいと考える場合、以下の点もチェックしておきましょう。
(1)本人に問題点を伝えているか?
問題社員対応のご相談をお受けしていると、社長や上司は、従業員の問題に悩んでいるけれども、当の本人に対して問題点と思っていることをストレートに伝えていないというケースも見受けられます。そのような場合は、まず、本人に問題点をストレートに伝え、指導して、改善を促すべきです。
問題社員の指導方法については以下の参考記事で解説していますのでご参照ください。
(2)異動により適性を見る余地はないか?
本人の性格自体は問題ないけれども今の仕事では能力不足で力を発揮できない、あるいは今の部署では人間関係がうまくいかずトラブルが起きているというケースでは、部署を異動させたうえで、再度本人の適性をみることも検討してみましょう。
8,問題社員に辞めてもらう際の注意点
問題のある従業員がいるときも、きちんと法律のルールを守って対応することが必要です。
退職勧奨や解雇についてはそれぞれ守るべきルールがあります。ルールを守らなければ、パワハラになってしまったり、違法な退職勧奨あるいは不当解雇として従業員から訴えられることになります。特に以下の点に注意してください。
(1)違法な退職勧奨や退職を目的とした配置転換・仕事の取り上げをしない
退職勧奨の中で相手の従業員を侮辱するような暴言を吐いたり、退職に追い込むことを目的として配置転換や仕事の取り上げをすることは、退職勧奨が違法と評価される原因になります。
退職勧奨は、相手の従業員と対等公平の関係のもと、行うべきことです。また、退職してほしいのであればストレートにそのように伝えるべきであり、必要のない配置転換をしたり、仕事を取り上げたりして、本人から退職を申し出るように仕向けようとするのは、違法な退職勧奨またはパワーハラスメントと評価される可能性があります。
▶参考情報:違法な退職勧奨をしないための注意点について以下の参考記事で解説していますのであわせてご参照ください。
(2)事前に弁護士に相談する
退職勧奨や解雇の問題は、事前に弁護士に相談することが適切です。
弁護士に相談しないまま進めると、退職合意の有効性や解雇の有効性をめぐって後日トラブルになり、結局、問題が解決しないことになりがちです。また、退職に向けた説得は、個別の事案ごとに適切な方法があり、それを踏まえないまま自己流でやっても上手くいかないことが多いのが実情です。問題社員対応に精通した弁護士に相談することによって、問題をトラブルなく解決することができます。
▶参考情報:企業が弁護士に退職勧奨について相談すべき理由や弁護士によるサポート内容について以下の参考記事で解説していますのでご参照ください。
(3)安易に解雇に進まない
解雇の前に退職勧奨をするのが原則であることをご説明しましたが、退職勧奨をして、合意が得られない場合に、安易に解雇に進まないことも大切です。
退職勧奨をして合意が得られないのは、退職勧奨の仕方が適切ではないからであることがほとんどです。弁護士に相談したうえで正しい方法で退職勧奨をやりなおすべきであり、安易に解雇に進むことは、不当解雇トラブルのリスクを負うことになります。
▶参考情報:従業員が退職勧奨に応じない場合の対応について以下の参考記事で解説していますのでご参照ください。
9,辞めさせたい問題社員の対応に関して弁護士に相談したい方はこちら
最後に、問題社員対応についての咲くやこの花法律事務所における企業向けサポート内容をご紹介したいと思います。
咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容は以下の通りです。
- (1)退職勧奨や解雇の進め方、伝え方のご相談
- (2)退職勧奨面談や解雇面談への弁護士の立ち合い
- (3)退職勧奨や解雇後のトラブルについての交渉
以下で順番に見ていきましょう。
(1)退職勧奨や解雇の進め方、伝え方のご相談
咲くやこの花法律事務所では、退職勧奨や解雇について、その進め方や伝え方のご相談を承っています。
弁護士が事情をお伺いし、退職勧奨のタイミングや退職勧奨の伝え方について具体的なアドバイスを行います。
また、従業員が退職勧奨に応じない場合の解雇の場面でも、事前にご相談いただくことで、解雇がトラブル化した場合に必要な証拠を事前に確保しておくなど、可能なかぎり、会社側のリスクを減らすための対策を助言します。
咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による弁護士費用の目安
初回相談料:30分5000円+税(顧問弁護士契約ご利用の場合は無料)
(2)退職勧奨面談や解雇面談への弁護士の立ち合い
咲くやこの花法律事務所では、従業員への退職勧奨や解雇の面談について弁護士の立ち合うサポートも実施しています。
トラブルが予想される退職勧奨、解雇の場面では、弁護士の立ち合いによるサポートをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による弁護士費用の目安
初回相談料:30分5000円+税(顧問弁護士契約ご利用の場合は無料)
(3)退職勧奨や解雇後のトラブルについての交渉
咲くやこの花法律事務所では、退職勧奨や解雇によりトラブルが発生してしまった場合の解決に向けての交渉のご相談、ご依頼もお受けしています。
退職勧奨のトラブルや、解雇のトラブルは、対応を誤ると企業として大きな負担を裁判所から命じられることがある企業としてリスクが大きい場面です。
問題がこじれてからではとれる対応が限られてきますので、早めにご相談いただくことをおすすめします。
咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による弁護士費用の目安
初回相談料:30分5000円+税(顧問弁護士契約ご利用の場合は無料)
(4)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
辞めさせたい社員対応に関する相談は、下記から気軽にお問い合わせください。今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年9月18日