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配置転換とは?異動との意味の違い、進め方や注意点を解説

配置転換とは?異動との意味の違い、進め方や注意点を解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

従業員の解雇に厳しい制限がある日本では、従業員の活用のための人事措置として配置転換が当たり前に行われています。大企業の大規模な配置転換が話題になることも多く、ニュース等で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

配置転換は企業に広い裁量が認められており、企業に配転命令権がある場合、従業員は配置転換を拒否できないのが原則です。しかし、どんな配置転換も自由にできるわけではありません。配置転換にも一定の制約があり、会社に配転命令権がない場合や配置転換が権利の濫用にあたる場合は、配置転換は違法または無効となります。

企業による配置転換の命令が違法または無効と判断された裁判例として以下のようなものがあります。

 

裁判例1:
医療法人社団弘恵会事件(札幌地方裁判所判決令和3年7月16日)

法人が従業員に対して必要性の乏しい業務を行う部署への異動を命じたことや、育児中の従業員に勤務の可否を確認しないまま本人の希望に反して夜勤や土日祝の勤務をともなう部署への異動を命じたことについて、配転命令権の濫用にあたるとして無効と判断した事例

 

裁判例2:
インテリウム事件(東京地方裁判所判決令和3年11月9日)

ほぼ営業一筋でキャリアを積み上げていた従業員を、勤務態度や成績不良を理由に監査関連業務に配置転換したことは、業務上の必要性もなく、権利濫用であり、不法行為を構成すると判断した事例

 

配置転換は従業員の就労環境に変化をもたらし、キャリア形成や私生活に影響を及ぼします。配置転換を進める必要がある会社と拒否したい従業員の間で対立が生まれ、トラブルに発展するケースは珍しくありません。トラブルを避けるためには、配置転換による従業員の不利益の程度を事前に検討し、従業員の事情にも配慮した上で、適切な手順で進めることが重要です。

この記事では、どのような場合に配置転換が無効または違法となるのか、従業員から配置転換を拒否された時にどのように対応するべきか、従業員とのトラブルを防止するためにやっておくべきこと等について解説します。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

企業側が、配置転換を拒否する従業員にどのように対応するべきかわからず、難渋しているケースもあります。配置転換を拒否する従業員を放置すると、円滑な企業運営に支障をきたし、他の従業員にも悪影響を及ぼす可能性があるため、早急に処分等を検討する必要があります。

一方で、適切な手順を踏んでいない処分や行き過ぎた処分は違法または無効となり、従業員から損害賠償等を請求される恐れがあります。自己判断での安易な対応は重大なトラブルに発展する可能性があるため、事前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

咲くやこの花法律事務所へのご相談は以下をご参照ください。

 

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1,配置転換とは?

配置転換とは?

「配置転換」とは、人事異動の一種で、同じ勤務地において、従業員の所属部署を変更することを言います。また、勤務地が変更になる「転勤」も含めて「配置転換」と呼ぶ例もあります。日本企業では、正社員は職務内容や所属部署を限定せずに採用され、配置転換によって人材育成や人材の活用、人員調整が図られることが一般的です。

企業が従業員の職務内容や勤務地を決定、変更する権限のことを「配転命令権」といい、企業に配転命令権が認められる場合、企業は従業員の個別の同意を得ることなく配置転換を命じることができ、従業員は原則として拒否することができません。

配置転換の実施状況は企業によって様々で、全く配置転換がない企業もあれば定期的に実施している企業もあります。会社の規模が大きくなるほど定期的な配置転換を行う割合が高くなります。実施時期も企業によって様々ですが、定期的な配置転換は4月または10月に行われることが多くなっています。英語では、「reassignmentやpersonnel relocation」と呼ばれます。

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

「配置転換」という言葉の本来の定義は、同じ勤務地(事業所)の中で従業員の所属部署を変更することです(菅野和夫著『労働法』)。「配置換え」と呼ばれることもあります。これに対し、勤務地を変更することは「転勤」といい、配置転換と転勤をあわせて「配転」といいます。

しかし、実際の人事異動の場面では、配置転換と転勤が明確に区別されておらず、所属部署の変更と勤務地の変更がまとめて「配置転換」と呼ばれ、配置転換の略称として「配転」が使われることがあります。この記事では、このような実務上の取り扱いにあわせて、「配置転換」=所属部署または勤務地の変更を指す言葉と定義して解説します。

 

(1)配置転換の目的

企業が配置転換を行う目的には、以下のようなものがあります。

 

  • 従業員のキャリア形成や適性の発見などの人材育成
  • 適材適所の配置の実現による業務効率の向上や事業の成長
  • 欠員が出た部署への人員の補充
  • 長期間担当者が固定することによる不正の防止
  • 人員調整や事業所の閉鎖、新しいプロジェクトの設立等の社内体制の変化への対応等

 

このように、企業は、円滑な企業運営と事業の成長を実現するために様々な目的で配転命令権を行使しています。

 

(2)配置転換のメリットとデメリット

 

1,メリット

人材を適材適所に配置することで業務効率の向上や事業の成長が期待できること、従業員の能力向上につながること、従業員同士の連携が強化されること、組織の活性化につながること等が配置転換のメリットです。

同じ環境で同じ業務を続けていると、従業員のモチベーションが下がってしまったり、業務効率が低下する要因になったりするため、業務のマンネリ化防止にも効果があります。

さらに、部署内の人間関係や従業員の問題行動によって業務に支障が生じている場合は、配置転換によって職場環境を改善することができるといった側面もあります。

 

2,デメリット

一方で、配置転換をすると、従業員は新しい環境で不慣れな業務を行うことになるので、一時的に生産性が落ちてしまったり、従業員に負荷がかかり配置転換をめぐってトラブルが発生するリスクがある等のデメリットがあります。

 

(3)配置転換と異動の違い

異動(人事異動)とは、会社組織の中で、従業員の配置や地位、勤務形態を変えることをいいます。配置転換は人事異動の一種です。人事異動には、配置転換の他に転勤、出向、転籍、昇格・降格等の種類があります。

 

人事異動の種類

  • 配置転換:従業員の所属部署を変更すること
  • 転勤:従業員の勤務地を変更すること
  • 出向:会社に籍を置いたまま他社で業務を行うこと
  • 転籍:元の会社との労働契約を解消し、別の会社と新たに労働契約を結ぶこと
  • 昇格・降格:従業員の地位や役職、職務等級を変更すること

 

(4)配置転換が多い人の特徴

企業が配置転換を行う目的は様々で、対象者の選択基準も企業によって異なります。一般的に配置転換の対象に選ばれることが多い人の例をあげると以下のとおりです。

 

1,新入社員や社歴の浅い従業員

適性を見つけたり、業務に関する知識を習得してもらうことを目的として、教育制度の一環として配置転換が行われることが多いです。新入社員に限らず、教育制度として、すべての従業員を対象に定期的な配置換え(ジョブローテーション)を導入している企業もあります。

 

2,幹部候補者

様々な業務を経験させて事業に関する知識を深めたり、マネジメント能力を向上させたり、管理職や経営者として求められるスキルを取得させたりして、幹部として育てることを目的としており、このような配置転換はいわゆる出世コースと呼ばれることがあります。

 

2,配置転換が違法になる場合とは?

配置転換には一定の制約があり、会社に配転命令権がない場合や権利の濫用にあたる場合は、配置転換は違法または無効となります。

それでは、実際、どのような場合に配転命令が違法になるのでしょうか。ここからは配転命令が違法または無効と判断されるケースについて解説します。

 

(1)就業規則や雇用契約書、労働協約等に配置転換についての規定がない場合

会社が従業員に配置転換を命じる権利のことを「配転命令権」といいます。配転命令権は労働契約を根拠としており、一般的には、就業規則や雇用契約書において「会社が配置転換を命じることができる」という内容の定めがあれば、会社に配転命令権が認められています。会社に配転命令権がある場合、会社は従業員に対して個別の同意なく、配置転換を命じることができます。

一方、就業規則や雇用契約書にこのような定めがない場合は、会社には配転命令権がなく、企業は従業員の同意なく配置転換を命じることはできないと解釈される可能性があります。

 

▶参考例:就業規則における配転命令権の規定例

(人事異動)

第〇条 会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
2 会社は、業務上必要がある場合に、労働者を在籍のまま関係会社へ出向させることがある。
3 前2項の場合、労働者は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

・参考:厚生労働省作成「モデル就業規則」(pdf)

 

(2)配転命令権の濫用にあたる場合

会社に配転命令権があっても、配転命令が権利の濫用にあたる場合は、その配置転換は違法または無効になります。

どのような配転命令が権利の濫用に該当するかについて示した代表的な裁判例として、東亜ペイント事件(最高裁判所判決昭和61年7月14日)があります。この裁判例において、裁判所は、次の場合に企業の配転命令が権利の濫用に該当すると判示しました。

 

1,業務上の必要性がない場合

この場合の業務上の必要性とは、「他の従業員では代わることができない」というほどの高い必要性は求められておらず、労働力の適正配置や業務効率化、人材育成等の合理的な会社運営のためといえる理由があれば、業務上の必要性があると認められています。

 

2,動機や目的が不当な場合

従業員に対する嫌がらせ目的や、従業員を退職させることを目的とするもの、公益通報や労働組合活動への報復として行われた配置転換等がこれにあたります。

 

3,従業員に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合

業務上の必要性と比較して、配置転換により従業員が仕事上または私生活上で被る不利益が不釣り合いな場合も権利の濫用と判断されます。
例えば、持病のある従業員に対して病状を悪化させるような業務への配置転換を命じたり、家族をひとりで介護している従業員に遠方への転勤を命じたりする場合等がこれにあたります。

 

 

(3)勤務地限定契約や職種限定契約の場合

従業員との間で勤務地や職種を限定する合意がある場合は、会社に認められる配転命令権はその合意の範囲内に限定されます。合意の範囲を超えて転勤や職種変更をするためには従業員の同意が必要です。

 

(4)退職勧奨を目的とした配置転換は違法になる場合がある

従業員を退職させるために閑職に追いやったり、いわゆる追い出し部屋と言われるような部署へ異動させたりすることは、不当な動機・目的で行われたものとして違法または無効と判断されます。

このような配置転換はパワハラにあたる可能性があり、損害賠償の支払いを命じられることもあり得ます。

 

▶参考情報:配置転換がパワハラになるケースについては、以下で解説していますのでご参照ください。

配置転換がパワハラになるケースとは?企業の注意点を解説

 

(5)減給につながる配置転換は違法になる場合がある

配転命令の有効性と減給の有効性は別の問題であることを理解しておく必要があります。会社に配転命令権があれば配置転換に従業員の個別の同意は必要ありませんが、賃金の減額は労働条件の不利益変更にあたるため従業員の個別の同意が必要となるのが原則です。

例外的に、職務給制度を採用し、就業規則や賃金規程等で、業務内容の変更によって賃金体系が変更されることが明示され、そのことがあらかじめ周知されている場合は、従業員の同意がなくても減給が有効となり得ます。ただし、その場合も、配置転換にともなって生じる減給が、従業員に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益であるといえる場合は、配置転換の命令または賃金の減額が違法または無効とされることになります。

 

▶参考情報:配置転換が違法となるケースについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

配置転換が違法になる場合とは?判断基準や注意点を解説

 

3,配置転換の拒否に正当な理由があると認められる例

会社に配転命令権があり、勤務地や職種を限定した雇用契約ではない場合、従業員は原則として配置転換を拒否することはできません。

しかし、事情によっては、従業員が拒否することに正当な理由があるとして配置転換が無効となるケースがあります。従業員が個人的な事情で配置転換を拒否する場合、拒否に正当な理由があるといえるかは配置転換が従業員に対して「通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるかどうか」という点から判断されます。

ここからは、どのような場合に配置転換の拒否に正当な理由があるといえるのかについて実際の裁判例をあげて解説します。

 

(1)重度の障害のある家族の介護をしている場合

家族の介護を担う従業員に対する配転命令が無効と判断された裁判例として、ネスレ日本事件(大阪高等裁判所判決平成18年4月14日)等があります。

この裁判例は、高齢で徘徊癖のある要介護者の母親を介護している従業員と精神疾患を患っている妻がいる従業員に対する兵庫県から茨城県への配転命令について、従業員に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとして無効と判断しました。

 

 

単に家族の介護をしているという事情だけで配転命令が無効となるわけではありません。裁判例を踏まえると、介護中の従業員に対する配転命令の可否について以下の点が考慮されています。

 

  • 被介護者の状態や介護の必要性
  • 従業員がどの程度介護にかかわっているか
  • 従業員の代わりに介護ができる者がいるか
  • 単身赴任または家族で転居することが可能かどうか
  • 単身赴任または転居によって家族の病気が悪化する可能性があるか
  • 社内に他に配置転換が可能な従業員がいないか
  • 会社が従業員の不利益を軽減するための配慮をしたか

 

介護の必要性が高くない場合や家族で転居することが可能な場合等は、通常受け入れるべき不利益を超えないとして配転命令は有効とされる傾向にあります。

家族の介護をしている従業員に対する配転命令が有効と判断された裁判例として、東日本電信電話事件(札幌地方裁判所判決平成15年2月4日)があります。この裁判例は、家族の介護の必要性が高くないことや介護休暇等の会社の制度を利用すればこれまで行ってきた程度の介護は可能であること等を理由に会社の配転命令を有効と判断しました。

 

(2)従業員自身の持病の悪化や治療への支障が生じる場合

持病のある従業員に対する転勤命令が無効と判断された裁判例として、NTT西日本事件(大阪高等裁判所判決平成21年1月15日)があります。

この裁判例では、糖尿病で食事療法や運動療法が必要な従業員に対して新幹線通勤または転居が必要になる転勤を命じたことについて、長時間の通勤によるストレスによる悪化が懸念されることや、自宅で生活できる時間が短縮され、規則正しい食事や運動療法にあてる時間等に相当程度の制約を受け、また、医療機関を受診するのにも不便な状態となったものと認められるとして転勤命令が違法と判断されました。

従業員の症状の内容や程度、治療状況を考慮し、配置転換によって病状の悪化や治療への支障が懸念される場合は、従業員に与える不利益の程度が大きいとして、配転命令が無効と判断される可能性があります。

 

 

(3)育児に重大な支障が生じる場合

育児への支障を理由に転勤命令が無効と判断された裁判例として明治図書出版事件(東京地方裁判所判決平成14年12月27日)があります。

この裁判例では、共働き家庭で重症のアトピー性皮膚炎がある子を養育している育児負担が特に重い従業員に対する転勤命令について、転勤命令について業務上の必要性は認められるものの、従業員に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとして無効と判断されました。

単に育児中であるという事情だけで配置転換が無効となるわけではありません。裁判例を踏まえると、育児中の従業員に対する配転命令の可否について、以下の点が考慮されています。

 

  • 子の年齢や子の健康状態(持病の有無等)
  • 従業員がどの程度育児にかかわっているか
  • 従業員の代わりに育児ができる者がいるか
  • 配偶者の体調や就労状況
  • 単身赴任または家族で転居することが可能かどうか
  • 単身赴任または転居によって育児に生じる支障の程度
  • 社内に他に配置転換が可能な従業員がいないか
  • 会社が従業員の不利益を軽減するための配慮をしたか

 

育児をしている従業員に対する配転命令が有効と判断された裁判例として、ケンウッド事件(最高裁判所判決平成12年1月28日)があります。この裁判例で、従業員は通勤時間が長くなり子の保育園の送迎に支障が生じると主張しましたが、裁判所は、送迎への支障程度では従業員が通常受け入れるべき不利益の範囲を超えないとして配転命令を有効と判断しました。

 

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

介護・育児をしている従業員に対する配転命令については、会社側に従業員の子の養育や家族の介護状況へ配慮する義務があることに注意が必要です(育児介護休業法第26条)。

現時点では育児中・介護中であるという事情だけで配転命令が無効となることはありませんが、共働き世帯の増加やワークライフバランスへの社会的要請の高まりから、今後、裁判例が育児中・介護中の従業員へのより高度な配慮を求める内容に変わっていく可能性もあります。

介護・育児をしている従業員に対して配置転換を命じる場合は、配置転換が従業員に与える不利益をより慎重に検討するべきであるといえます。

 

▶参考:育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第26条

(労働者の配置に関する配慮)

第二十六条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

 

・参照元:「育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」の条文はこちら

 

(4)業務系統が異なる職種への配置転換

業務系統が異なる職種への配置転換とは、例えば事務系の職種から労務系の職種へ従業員を異動させる場合です。

業務系統が異なる職種への配転命令が無効と判断された裁判例として、直源会相模原病院事件(東京高等裁判所判決平成10年12月10日)があります。

この裁判例では、病院が、事務職員として勤務していた従業員に対しナースヘルパー職への職種変更を命じたことについて、これまでに行っていた事務的作業とは全く職務内容が異なる労務的作業への配置転換であり、異なる業務系統間の異動については特別な事情がある場合を除き企業が一方的に異動を命じることはできないとして無効と判断しました。

従業員との雇用契約が職種限定契約にあたる場合は、従業員の同意なく職種変更をともなう配置転換を命じることはできないことは前章「2,配置転換が違法になる場合とは?」で述べたとおりです。しかし、職種限定契約でない場合も職種変更をともなう配置転換には一定の制約があります。

前述の裁判例(直源会相模原病院事件)においては、「業務の系統を異にする職種への異動、特に事務職系の職種から労務職系の職種への異動については、業務上の特段の必要性及び当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、かつこれらの点についての十分な説明がなされた場合か、あるいは本人が特に同意した場合を除き、従業員の同意なく企業が一方的に異動を命じることはできない」と判示されています。

また、従業員の職歴や資格を踏まえて従業員が一定の職種でキャリアを形成することができると期待することに合理的な理由があるといえる場合、職種変更をともなう配置転換は従業員に与える不利益の程度が大きいとして無効と判断する裁判例もあります(エルメスジャポン事件(東京地方裁判所判決平成22年2月8日)、安藤運輸事件(名古屋高等裁判所判決令和3年1月20日)等)。

 

▶参考:職種変更命令については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

安易な職種変更命令は危険!従業員に職種変更を命じる際の3つの注意点

 

4,拒否された場合の会社の対応

従業員に配置転換を拒否されたときに、強引に配置転換を推し進めたり、いきなり懲戒処分をしたりすると、従業員の反発を招き、大きなトラブルに発展する可能性があり、適切ではありません。

このような場合にまず行うべきことは従業員の理解を得るための十分な説明と説得です。配置転換の必要性や対象者の選定基準、配置転換後の業務内容や勤務条件等について説明し、従業員に生じる負担を考慮した上で会社としてどのような配慮を行うかを提示することも必要です。また、従業員が配置転換を拒否する理由を確認し、配置転換を命じることが権利の濫用にあたりうる事情がある場合は、撤回を検討する必要があります。

一方、正当な理由がないのに従業員が配置転換を拒否し続ける場合は、従業員に対する処分を行なったり、配置転換に応じるまで賃金の支払いを停止することも検討に値します。処分にあたっては、過去の同様の事例で懲戒処分をしているか、過去の自社における事例と比較して重すぎる処分になっていないか等を十分に考慮しなければなりません。

 

▶参考:人事異動や配置転換・転勤を拒否された場合の対応については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

人事異動を拒否されたらどうすればいい?企業の対応を解説

転勤を拒否する従業員への4つの対応!重要な注意点も解説

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

配置転換を拒否する従業員を解雇する場合は特に注意が必要です。解雇について裁判になり、会社側が敗訴した場合、会社は従業員を復職させたうえで、解雇以降の賃金の支払いを命じられることが通常です。解雇時までさかのぼって賃金を支払う必要があるため、支払金額が数百万円~数千万円と高額になるケースも多く、会社は大きなダメージを負うことになります。

そのため、従業員を解雇するときは、裁判になった場合にどのように判断されるかという視点で慎重に解雇の正当性を検討することが重要です。解雇は企業にとって重大なリスクをともなう処分のため、事前に弁護士することをおすすめします。

解雇する場合の注意点、不当解雇になる条件や不当解雇になった場合はどうなるかなどについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

 

解雇とは?わかりやすく弁護士が徹底解説【まとめ】

不当解雇とは?正当な解雇との違いを事例付きで弁護士が解説

 

5,配置転換の進め方の流れとトラブル防止のために会社がやるべきこと

配置転換の進め方の流れとトラブル防止のために会社がやるべきこと

配置転換に関するトラブルの発生を防ぐためには適切な手順で配置転換を行うことが大切です。ここでは配置転換の進め方やトラブルを防ぐための注意点を説明します。

 

(1)配置転換の手順

まず、会社が従業員に配置転換を命じる際の具体的な手順について説明します。

 

1,候補者の選定

候補者の選定にあたっては以下の事項を考慮することが必要です。

 

  • 就業規則や雇用契約書に配転命令についての定めがあるか
  • 勤務地や職種を限定した雇用でないか(採用の際の個別の約束等がないか)
  • 育児・介護の状況や健康状態に照らして配置転換することが問題ないか

 

対象者の選定権限は会社にありますが、人選にはある程度の合理的な理由が必要です。他に代替可能な人員がいるのにあえて異動が難しい事情がある従業員を選ぶと、トラブルの誘因や配置転換が無効と判断される原因になるので避けたほうがよいでしょう。

配置転換によって従業員に単身赴任や転居等の不利益が生じる場合は、会社が行う配慮の内容も事前に検討しておきます。

 

2,候補者への打診

対象者を決定した後で配置転換ができない事情が判明し対象者を選定し直すとなると、二度手間になり、人事異動スケジュールに影響します。

そのため、候補者を決めた段階で従業員に打診し、配置転換に応じることが困難な事情がないかを確認します。従業員の意向と状況を聴取した上で、配置転換による従業員の不利益が著しい事情が判明した場合は、候補者から除外することを検討するべきです。

 

3,内示

内示とは社内外への通知の前に従業員本人に配置転換の予定を内々に通知することです。このときに以下の事項を従業員に説明します。

 

  • 配置転換後の勤務場所、勤務部署
  • 配置転換後の業務内容
  • 配置転換後の勤務条件(給与や始業時刻、休日等の変更がないか)
  • 赴任旅費、単身赴任手当、社宅の提供等の会社が行う配慮の内容

 

業務の引継ぎにかかる期間や引越しの準備期間等を考慮して余裕をもって通知しましょう。さらに、従業員が配置転換に難色を示す場合は、配置転換の理由や対象者の選定基準も説明して説得するべきでしょう。

 

4,辞令の交付

辞令とは企業から従業員に対して交付する人事異動等の決定通知のことです。辞令には「配置転換の日付」と「新しい勤務場所、勤務部署」を明記します。辞令の交付方法は決まっておらず、書面を交付する方法やメールで通知する方法、社内掲示板や社内ポータルサイトに掲示する方法等があります。会社が従業員に対して正式に配置転換を命じたことを明確になる方法で通知することをおすすめします。

 

(2)トラブル防止のための注意点

配置転換に関するトラブルで、従業員がユニオンへ加入して団体交渉を求めてきたり、労基署に相談したり、労働審判や裁判を起こされる等、大きなトラブルに発展してしまうケースも珍しくありません。

このような事態を回避するために会社がやっておくべき対策には以下のようなものがあります。

 

1,就業規則や雇用契約書の整備

就業規則や雇用契約書に会社が配置転換を命じることができる旨の定めがない場合、会社は従業員の同意なしで配置転換を命じることはできないと解釈されるおそれがあります。従業員の配置転換を予定している場合は、あらかじめ、就業規則や雇用契約書を整備しておく必要があります。

また、従業員毎に、職務内容や勤務地の範囲等について異なる条件(職種変更がある社員・ない社員、海外転勤のある社員・ない社員等)で雇用する場合は、雇用契約書等で条件を明確にしておくことも重要です。

 

 

2,入社時に配置転換があることを明示する

将来的に配置転換を予定している新入社員に対しては、採用時や入社時に配置転換の可能性があることを説明・周知しておくことで、配置転換に関する会社側と従業員の認識のミスマッチを防ぐことができ、トラブルの防止に役立ちます。

この点については、令和6年4月に労働基準法施行規則が改正され、企業には従業員採用時に採用後の勤務場所の変更の範囲、採用後に従事させる業務内容の変更の範囲の明示が義務化されます。入社時に、会社の配置転換に従う旨の誓約書を提出してもらうことも、トラブル防止のための方法の1つです。さらに、求人の段階でも、募集要項等において採用後の勤務場所の変更の範囲、採用後に従事させる業務内容の変更の範囲の明示が義務化される予定です。

 

▶参考情報:令和6年4月労働基準法施行規則の改正については、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

労働基準法施行規則とは?2024年4月の改正についても詳しく解説

 

3,配置転換が困難な事情をあらかじめ申告してもらう

介護や育児等の状況、本人の健康状態等について事前に申告してもらうと、会社は従業員側の事情を把握することができるので、配置転換に応じることが困難な事情がある従業員を候補者から除外することができ、対象者の選定がスムーズになります。

 

4,公募制を導入する

公募制の場合は、会社が対象者を選定するのではなく従業員に自ら手をあげてもらう形になるため、トラブルが発生しづらいというメリットがあります。また、従業員が自分の興味のある業務内容や分野に積極的に挑戦することができるので、従業員のモチベーション向上につながるというメリットもあります。

 

5,勤務地限定社員への変更を検討する

転勤を避けたいのは多くの従業員に共通する感情です。雇用条件が同じなのに一部の従業員だけ転勤が免除されている状況は、他の従業員との公平性を欠き、他の従業員のモチベーションの低下等につながる可能性があります。健康状態や家庭事情等の理由で長期間にわたり転勤に応じることが難しい従業員については、勤務地を限定した雇用に切り替えることも検討するべきです。

 

(3)理由の説明は必要か?

従業員が配置転換を拒否する場合などは、懲戒や解雇等の処分をする前に、会社から配置転換の対象となった従業員に対して配置転換の理由や選考基準、配置転換後の勤務条件等について説明する必要があると考えるべきでしょう。

裁判例でも、従業員への具体的な説明をしていない場合や会社が従業員との話し合いに応じなかった等の事情がある場合は、適切な手続きを踏んでいないとみなされ会社に不利な要素として考慮される傾向があります。

例えば、エルメスジャポン事件(東京地方裁判所判決平成22年2月8日)は、大手システム会社出身の従業員を中途採用したが、システム関連の部署内で他の従業員とトラブルを起こす等の問題があったため、倉庫係に配置転換したという事例について、業務上の必要性が高くないのに、システム専門職としてキャリアを形成するという従業員の期待に配慮せず、本人の理解を求める手続もとっていないとして、配置転換命令を違法と判断しました。

従業員の個別の同意を得る必要がない場合でも、トラブルを避けるためには、従業員の納得を得た上で配置転換を行うことが望ましいことは確かです。一方的で強硬な態度は、従業員の感情的な反発を招いて問題をこじらせてしまう原因になります。

 

6,配置転換に注意が必要なケース

ここからは、配置転換を行うにあたって特に注意が必要なケースについて説明します。

 

(1)パワハラの加害者・被害者の配置転換

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」に基づいて厚生労働省が策定したパワハラ防止指針において、社内でパワハラが発生した場合に会社が行う適切な対応の一例として、被害者と加害者を引き離すための配置転換があげられています。

しかし、被害者と加害者を引き離す目的であっても、パワハラの認定がされないのに加害者に対する懲罰的な配置転換を行う場合や加害者を退職に追い込むことを意図した配置転換を行なう場合は、配置転換命令が無効と判断される可能性があるため、慎重に検討しなければなりません。

また、被害者の配置転換は被害者に対する不利益な取扱いにならないように注意が必要です。パワハラ防止法において、パワハラの被害を訴えたことを理由に望まない部署に異動させる等の不利益な取扱いをすることが禁止されています。被害者の配置転換については、必ず本人の意向を確認し配置転換の必要性や配置転換先等を慎重に検討する必要があります。

 

(2)能力不足など仕事ができない社員に対する配置転換

能力不足や成績不良の従業員については、解雇の前に他の業務にチャレンジさせて適性を探したり、業務改善の機会を与える必要があります。配置転換等により他の職種での適性を試さないまま、解雇した場合、解雇回避努力が不十分であるとして不当解雇と判断される可能性があります。

配置転換を行う目的は、あくまでも従業員が能力を発揮できるような適性のある業務を探すことであり、厄介払いや退職に追い込むことを目的とした配置転換は権利の濫用として無効と判断されます。

配置転換先を慎重に検討した上で、配置転換後も従業員が業務に適応できるように助言や指導を行い、適切なフォローを行う必要があります。

 

▶参考情報:能力不足の従業員の解雇については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

能力不足の従業員を解雇する前に確認しておきたいチェックポイント

 

(3)従業員から配置転換の希望があった場合

従業員側から配置転換の希望があっても、基本的には、会社は従業員の要望に応じる義務はありません。

ただし、安全配慮義務の観点から配置転換を検討するべきケースがあります。例えば以下のような場合です。

 

  • ハラスメントを受けており、それを理由に配置転換を希望している場合
  • 病気や体調不良のため業務負担の少ない部署への配置転換を希望している場合

 

また、妊娠中の女性従業員が、業務負担の軽い部署への配置転換を希望した場合に、これに応じることは事業主の義務とされています(労働基準法65条3項)。

 

▶参考:労働基準法65条3項

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

(省略)

③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

・参照元:「労働基準法」の条文はこちら

 

会社には、従業員が安全と健康を確保しつつ働くことができるように必要な配慮をする義務があります。現在の部署で勤務を続けることで従業員の安全や健康を損なう可能性があるにもかかわらず、会社が何らの配慮もしなかった場合、安全配慮義務違反として従業員から慰謝料や損害賠償を請求される恐れがあります。

従業員から配置転換の希望があった時は、まず従業員が配置転換を希望する理由を聴き取り、その理由によって配置転換の必要性を判断するべきです。

 

▶参考情報:安全配慮義務違反については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

安全配慮義務違反とは?会社が訴えられる4つのケースと対応方法』

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

次にあてはまる従業員については、従業員の健康を保持するために、会社が必要に応じて配置転換等の措置をとることが労働安全衛生法で義務付けられています。

  • 健康診断で異常所見があると診断された場合
  • 医師による面接指導の対象となる長時間労働者
  • ストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導の対象となった労働者

 

(4)復職時の配置転換

病気休職者が復職する際も、どの部署に復帰させるかが問題になることがあります。この点については元の職場に復帰させることが原則です。

特にメンタルヘルス不調で休職していた従業員は、新たな環境や業務への適用が負担になって症状が再発する恐れがあるため、原職に復帰させることが望ましいとされています(▶参考:厚生労働省作成『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』より(PDF))。

ただし、例えば部署内のハラスメントや過重労働が原因で体調を崩して休職していたケース等は、元の部署へ復職させることが症状の再発や悪化につながる可能性があるため、配置転換を検討した方がよい場合もあります。

復職にともなう配置転換の必要性は、休職の原因や従業員の体調、従業員本人が配置転換を希望しているか、主治医の意見等を総合的に考慮して判断することが必要です。

また、配置転換をする場合は、配置転換先を慎重に考慮する必要があります。病気休職からの復職について、配置転換先が不適切であるとして会社の配転命令が安全配慮義務違反であると判断した裁判例もあります(ピジョン事件。東京地方裁判所判決平成27年7月15日)。この裁判例の事案では、うつ状態等が原因で欠勤していた従業員の復帰にあたり、会社が業務負担の軽い職場として通勤に片道2時間半を要する職場への転勤を命じた事案で、裁判所は、業務負担が軽くなるとしても長時間の通勤が従業員に与える不利益の方が大きいとして、会社の転勤命令を無効と判断しています。

 

(5)うつ病等の精神疾患のある従業員の配置転換

うつ病などの精神疾患にり患している従業員は、配置転換による環境の変化やストレスの影響を受けやすく、配置転換が症状の悪化を招くおそれがあることから、配置転換にあたっては、その必要性や従業員が受ける不利益についてより一層慎重に判断する必要があります。

前述の東京地方裁判所判決平成27年7月15日(ピジョン事件)において、裁判所は、「精神疾患を有する者に対する転勤命令は、主治医等の専門医の意見を踏まえた上で、当該精神疾患を増悪させるおそれが低いといえる場合のほか、増悪させないために現部署から異動させるべき必要があるとか、環境変化による増悪のおそれを踏まえてもなお異動させるべき業務上の理由があるなど、健常者の異動と比較して高い必要性が求められ、また、労働者が受ける不利益の程度を評価するに当たっても上記のおそれや意見等を踏まえて一層慎重な配慮を要する」としています。

このような判示を踏まえると、特にうつ病など精神疾患のある従業員の配置転換については、主治医の意見を確認すべきであるといえるでしょう。また、精神疾患は主治医との信頼関係が治療に大きな影響を及ぼすことから、転居等によって主治医が変更することの不利益についても配慮が必要です。

 

(6)育休明けの配置転換

育児休業後は元の職場に復帰させることが原則です。

育児介護休業法は、企業に対して、育児休業後の就業が円滑に行われるように従業員の配置等に関して必要な措置を行うことを求めています(育児介護休業法第22条2項)。そして、企業が行うべき措置の具体的内容を示した指針において、育児休業後は「原則として原職または原職相当職に復帰させるよう配慮すること」としています(指針第2の7(1))。

何らかの事情で原職へ復帰させることが難しい場合は、地位や職務内容、勤務場所等の諸条件が原職と同じ、原職相当職に復帰させることが原則です。

育児休業を契機に従業員の不利益が大きい配置転換を行うことは、ハラスメントとみなされたり、育児介護休業法で禁止されている育児休業の取得等を理由とする不利益な取扱いに該当する可能性があるので注意が必要です(育児介護休業法第10条、指針第2の11(2))。

 

▶参考1:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(不利益取扱いの禁止)

第十条 事業主は、労働者が育児休業申出等(育児休業申出及び出生時育児休業申出をいう。以下同じ。)をし、若しくは育児休業をしたこと又は第九条の五第二項の規定による申出若しくは同条第四項の同意をしなかったことその他の同条第二項から第五項までの規定に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

(雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置)

第二十二条 事業主は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするため、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
二 育児休業に関する相談体制の整備
三 その他厚生労働省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置
2 前項に定めるもののほか、事業主は、育児休業申出等及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

・参照元:「育児介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」の条文はこちら

 

 

(7)契約社員の配置転換

有期契約社員の場合も、就業規則や雇用契約書に「会社が配置転換を命じることができる」旨の定めがあれば正社員と同様に配置転換を命じることは可能です。

ただし、契約社員にも正社員と同様に配置転換を命じる場合、その範囲や内容によっては正社員と契約社員の間で勤務条件の違いが小さくなり、同一労働同一賃金の点で問題となる可能性があることに注意が必要です。

同一労働同一賃金とは、パート社員、契約社員、派遣社員について、正社員と比較して不合理な待遇差を設けることを禁止するルールです。同一労働同一賃金については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

 

 

7,配置転換について弁護士に相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で、配置転換等の人事異動に関するトラブルについてご相談をお受けしております。咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容をご紹介します。

 

(1)配置転換に関するご相談

配置転換は企業にとって、人材育成や人材活用の手段として欠かすことができない人事措置です。

しかし、配置転換は従業員の就労環境や私生活に影響を与えるため、中には従業員が強い拒否反応を示してトラブルに発展するケースもあります。

育児・介護をしている、持病がある等の事情がある従業員への配転命令は慎重に検討する必要がある一方で、会社の円滑な運営のためには、就業規則に違反して正当な理由なく配置転換を拒否する従業員に対して厳しい対応が必要になることもあります。

咲くやこの花法律事務所では、育児・介護中等の事情がある従業員の配置転換の可否、病気休職からの復職にともなう配置転換、社内体制の変化にともなう大規模な配置転換、配置転換を拒否する従業員への対応など、配置転換に関する様々な困りごとについて相談をお受けしています。

 

咲くやこの花法律事務所の労働問題に強い弁護士への相談費用

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

(2)顧問弁護士サービスのご案内

咲くやこの花法律事務所では、人事労務トラブルの対応や予防はもちろん、企業の労務管理全般をサポートするための顧問弁護士サービスを提供しています。

現実にトラブルが発生していないのに、リスク対策のために相談料を払って弁護士に相談しようと考える方は少ないのではないかと思います。
しかし、何かトラブルが発生した場合、事前のリスク対策ができていない会社ほど大きなダメージを負うことになります。

トラブルによる会社のダメージを抑えるためには、こまめに顧問弁護士に相談し、日頃から社内規程や労務管理体制の整備等の法的なリスクマネジメントに取り組むことが重要です。

もし何かトラブルが発生してしまったときも、初期段階で弁護士に相談して専門的な助言を受けて対応することが早期解決につながります。

企業をトラブルから守り、事業の成長と安定した企業運営を実現するために、ぜひ顧問弁護士を活用していただきたいと思います。

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で数多くの事案に対応してきた経験豊富な弁護士が、トラブルの予防、そしてトラブルが発生してしまった場合の早期解決に尽力します。

咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスのご案内は以下をご参照ください。

 

 

8,まとめ

この記事では、配置転換についてご説明しました。配置転換とは、企業の人事異動の一種で、従業員の所属部署を変更することをいいます。

企業には従業員の配置転換に関して広範な裁量がありますが、無制約に配置転換を命じることができるわけではなく、以下の場合には配置転換が無効または違法と判断されます。

 

  • 1.就業規則や労働協約等に会社の配転命令権についての定めがない場合
  • 2.業務上の必要性がない場合
  • 3.不当な動機・目的で行われた場合
  • 4.従業員に著しい不利益を負わせるものである場合
  • 5.勤務地限定契約や職種限定契約の場合

 

従業員に配置転換を拒否された場合は、まず従業員への十分な説明と説得を行い、それでも正当な理由なく拒否し続けるときは従業員の処分を検討します。処分にあたっては、過去の同様の事例で懲戒処分をしているか、過去の事例と比較して重すぎる処分になっていないか等を十分に考慮する必要があります。

配置転換に関するトラブルを防ぐための方法には、就業規則や雇用契約書を整備することや、入社時に配置転換に応じる旨の誓約書を書いてもらうこと、育児や介護・健康状態等の事情を事前に申告してもらうこと、公募制の導入等の方法があります。

配置転換についてお困りの方、配置転換を拒否する従業員の対応にお困りの方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所の弁護士へご相談ください。

 

9,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

※個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

注)咲くやこの花法律事務所のウェブ記事が他にコピーして転載されるケースが散見され、定期的にチェックを行っております。咲くやこの花法律事務所に著作権がありますので、コピーは控えていただきますようにお願い致します。

 

記事作成日:2023年8月22日
記事作成弁護士:西川暢春

 

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    西川 暢春 代表弁護士
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