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仕事ができない能力不足の従業員を配置転換できる?判断基準や注意点を解説

仕事ができない能力不足の従業員を配置転換できる?判断基準や注意点を解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

「従業員を採用したが思ったような成果が上がらないので別の業務に従事させたい」、「業務効率が悪く業務に支障を生じさせているため部署を異動させたい」等、仕事ができない能力不足の従業員の配置転換について悩んでいませんか?

あるいは、本音では解雇を検討したいと思っているけれども、解雇の前に配置転換を経る必要があると聴いて、配置転換について検討しておられる方もいらっしゃるかもしれません。

配置転換は、企業にとって円滑な経営のために重要な人事措置です。しかし、一方で、従業員自身の希望とは必ずしも一致せず、配置転換をきっかけに会社と従業員の間でトラブルになることがしばしばあります。配置転換が辞めさせるための嫌がらせだと主張されたり、パワハラだと主張されたり、訴訟で損害賠償請求の対象とされるといったことは少なくありません。そのため、配置転換は法的なルールを事前に正しく理解したうえで行うことが大切です。

この記事では、仕事ができない能力不足の従業員の配置転換の可否、どのような配置転換が違法または無効となるのか、配置転換に伴い減給することはできるのか等について解説します。この記事を最後まで読んでいただくと、能力不足をきっかけとする配置転換について注意すべき点をよく理解していただけるはずです。

それでは見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

能力不足の問題がある仕事ができない従業員について自社の判断のみで対応しようとすると、指導に対してパワハラだと主張されたり、不当な配置転換であるとして配置転換を拒まれる、不当解雇のトラブルを起こしてしまうなどの問題に発展しがちです。

事前に弁護士に正しい方法を確認したうえで対応することが必要です。咲くやこの花法律事務所でも、能力不足の問題がある仕事ができない従業員への対応について指導方法、賃金の扱い、賞与の査定、配置転換、退職勧奨、解雇等に関するご相談をお受けしています。お困りの際は早めにご相談ください。咲くやこの花法律事務所におけるサポート内容は以下でもご説明していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:労働問題・労務に関する企業側弁護士への相談サービスはこちら

 

▼仕事ができない能力不足の従業員の対応について、弁護士の相談を予約したい方は、以下よりお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

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1,最初に、配置転換について

配置転換とは、人事異動の一種で、同じ勤務地で従業員の所属部署や業務内容を変更することです。日本企業では、特に正社員については、人材の育成や人材の活用、人員調整等の目的で幅広く配置転換が行われることが多いです。

企業が従業員の職務内容や勤務地を決定、変更する権限のことを「配転命令権」といいます。企業に配転命令権が認められる場合、企業は従業員の個別の同意を得ることなく配置転換を命じることができ、従業員は原則として拒否することができません。

 

▶参考情報:配置転換に関して詳しくは、以下の記事をご参照ください。

配置転換とは?異動との意味の違い、進め方や注意点を解説

 

2,仕事ができないという理由で能力不足の従業員を配置転換できるか?

従業員の仕事ぶりが会社の求める水準に達していなかったり、その部署での業務について従業員の適性がなかったりする場合、従業員の能力と業務内容のミスマッチを解消するための方法の1つとして配置転換があります。

 

配置転換の意味と要件について

 

仕事ができないなどの問題が解決しない能力不足の従業員に対しても、必要に応じて配置転換を命じることが可能です。

就業規則や雇用契約書等で「会社が配置転換を命じることができる」旨が定められている場合、配置転換について企業に広い裁量が認められるとされることが多く、企業は原則として従業員の個別の同意がなくても配置転換を命じることができます。

ただし、企業に広い裁量があるといっても、なんの制限もなく自由に配置転換を命じることができるわけではありません。配置転換にも一定の制限があり、これに反するものは違法または無効となります。また、配置転換を命じることができる場合であっても、それに伴い、従業員の賃金を減額することまで認められるかは別の問題であることにも注意が必要です。

具体的にどのような配置転換が違法となるのか次章で解説します。

 

3,配置転換が違法になる場合とは?注意点について

配置転換が有効、適法と認められるためには以下の2つの要件を満たすことが必要です。

 

  • 要件1:企業に配転命令権があること
  • 要件2:配転命令権の濫用にあたらないこと

 

(1)要件1:企業に配転命令権があること

企業に配転命令権があると認められるのは、就業規則や雇用契約書等で「会社が配置転換を命じることができる」旨が定められている場合です。

このような規定がなければ、会社に配転命令権があるとは認められず、原則として会社は従業員の同意なしに配置転換を命じることはできません。能力不足を理由とする配置転換の場面でも、まず、就業規則や雇用契約書上、会社に配転命令権があるのかを確認することが必要です。なお、就業規則の規定を根拠に配転命令権があるとするためには、就業規則が事業場内に周知されていることが必要です。

 

(2)要件2:配転命令権の濫用にあたらないこと

企業に配転命令権がある場合でも、配転命令が権利濫用にあたるときは、その配転命令は違法、無効となります(労働契約法3条5項)。

 

▶参考:労働契約法第3条5項

第三条
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

・参照:「労働契約法」の条文はこちら

 

判例上、配転命令が権利濫用にあたる場合とは、①配転命令について業務上の必要性が存在しない場合や②配転命令が不当な動機や目的をもってされた場合、③配転命令が労働者に著しい不利益を負わせる場合があげられます(東亜ペイント事件・最高裁判所判決昭和61年7月14日)。

 

 

具体的には、以下のような配置転換が違法または無効と判断される可能性があります。

 

  • 従業員に対する懲罰や嫌がらせを目的とするもの
  • 従業員を退職させることを目的とするもの
  • 公益通報や労働組合活動への報復として行われたもの
  • 持病のある従業員に対する病状を悪化させるような業務への配置転換
  • 従業員が特定の職種でキャリアを形成することについて合理的な期待をもつ状況にある場合に、業務上の必要性が高くないのに、この従業員の期待に配慮せず、本人の理解を求める手続もとらずに行う配置転換

 

また、このような配置転換はパワハラにあたる可能性もあり、配置転換を命じた企業が損害賠償の支払いを命じられることもあり得ます。能力不足の問題がある従業員を配置転換する場面でも、これらの点に注意することが必要です。企業としては退職させることや嫌がらせを目的とする配置転換でなくても、従業員からそのように受け取られないように従業員に対して適切な事前説明をすることが大切です。

 

▶参考情報:どのような配置転換が違法になるのかや、配置転換がパワハラになるケースについては、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

配置転換が違法になる場合とは?判断基準や注意点を解説

配置転換がパワハラになるケースとは?企業の注意点を解説

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

従業員との雇用契約が、従事する職種を限定した内容(職種限定契約)の場合は、会社に認められる配転命令権はその合意の範囲内に限定されます。

合意の範囲を超えて職種変更をするためには従業員の同意が必要です(最高裁判所判決令和6年4月26日・滋賀県社会福祉協議会事件)。

また、職種限定契約でなくても、例えば事務系の職種から労務系の職種へ従業員を異動させる場合など、業務系統が異なる職種への配置転換には注意が必要です。

直源会相模原病院事件(東京高等裁判所判決平成10年12月10日)は、病院が事務職員として勤務していた従業員に対し、ナースヘルパー職への職種変更を命じた事案ですが、裁判所は、「業務の系統を異にする職種への異動、特に事務職系の職種から労務職系の職種への異動については、業務上の特段の必要性及び当該従業員を異動させるべき特段の合理性があり、かつこれらの点についての十分な説明がなされた場合か、あるいは本人が特に同意した場合を除き、従業員の同意なく企業が一方的に異動を命じることはできない」として、配置転換命令を無効と判断しています。

 

▶参考情報:職種変更命令については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

安易な職種変更命令は危険!従業員に職種変更を命じる際の3つの注意点

 

4,能力不足を理由とする配置転換が無効とされた裁判例

仕事ができない・能力不足等の問題をかかえた従業員に対する配置転換が無効または違法と判断された裁判例には以下のようなものがあります。

 

(1)実質的に懲罰目的の配置転換命令であるとされた例

 

社会福祉法人秀峰会事件(横浜地方裁判所判決令和4年12月9日)

ミーティングへの不参加や、空き時間に事務所へ戻らず所在が分からない状態になる等、勤務態度に問題があった理学療法士を、それまで勤務していた訪問看護リハビリステーションから、新しく設立したレポートやパンフレットの作成を行う部門に配置転換を命じた事案です。

 

●裁判所の判断

この従業員は、業績評価、能力評価でも低評価を受けていたという事情がありました。

裁判所は、従業員の勤務態度に問題があったとはいえるものの、(配置転換ではなく)懲戒を含めた指導や業務命令の明確化など、労務管理上の工夫によって改善を促す余地はあったとして、専門性の高い職種の従業員を、本人の希望に反して訪問リハビリテーションの現場から切り離し、必要性のない業務を行わせることは、実質的に懲罰目的の不当な目的に基づいて行われたものとして、権限の濫用にあたり、配転命令を無効と判断しました。

ただし、この事案の控訴審判決では、配転命令は権利濫用とは言えないとして、配置転換の有効性・適法性が認められました。

 

(2)業務上の必要性が高くないのに、専門職としてキャリアを形成するという従業員の期待に配慮しない配置転換命令であるとされた例

 

エルメスジャポン事件(東京地方裁判所判決平成22年2月8日)

大手システム会社出身のシステム技術者を中途採用したものの、部署内で他の従業員とトラブルを起こすなどの問題があり、倉庫係に配置転換を命じた事案です。この従業員は会社の能力発揮度評価でも最低評価となっていたという事情がありました。

 

●裁判所の判断

裁判所は、業務上の必要性が高くないのに、システム専門職としてキャリアを形成するという従業員の期待に配慮せず、配置転換について本人の理解を求める手続もとっていないとして、本件配転命令を違法と判断しました。

 

(3)業務上の必要性が高くなく、違法な配置転換命令であるとされた例

 

インテリム事件(東京地方裁判所判決令和3年11月9日)

ほぼ営業一筋でキャリアを積み上げていた従業員を、勤務態度や成績不良を理由として監査関連の業務に異動を命じた事案です。

 

●裁判所の判断

裁判所は、従業員が大学卒業後ほぼ一貫して営業業務に従事しており、毎期相当高額な案件の受注に貢献していた一方で監査関連の業務には従事したことがなかったこと、従業員の業務態度や成績不良について会社が指摘したり、指導したりしていた資料はないこと等を理由に、業務上の必要性は認められず、配置転換は権限濫用であり、不法行為を構成すると判断しました。

 

5,能力不足の従業員を配置転換した場合は減給が可能か?

ここまでご説明した通り、会社に配転命令権があれば配置転換に従業員の個別の同意は必要ありません。しかし、配置転換に伴って給与を減額することの可否はこれとは別の問題です。

配置転換によって、従業員の業務がより簡易で責任の軽いものに変更されたとしても、それに伴い賃金を減額することは労働条件の不利益変更にあたるため従業員の個別の同意が必要となるのが原則です(労働契約法8条)。

 

▶参考:労働契約法第8条

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

・参照:「労働契約法」の条文はこちら

 

例外的に、就業規則や賃金規程等で、業務内容や職種が変更された場合に賃金が変更されることが定められており、その減額事由や減額幅についても明確な基準が定められているときは、従業員の同意がなくても減給が有効となり得ます。

ただし、その場合も、減給の幅が大きすぎるなど、配置転換に伴って生じる減給が、従業員に通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を与えるものであるときは、配置転換の命令または賃金の減額が違法または無効とされることになります(労働契約法3条5項)。

また、就業規則等で配置転換の場合の賃金の変更について規定されていても、その規定の内容が具体的なものでなければ、従業員の同意を得ずに賃金を減額することは認められません。

 

(1)参考裁判例:ユニデンホールディングス事件(東京地方裁判所判決平成28年7月20日判決)

会社が従業員の勤務成績不良を理由に、部長から課長に降格させ、給与を月額約13万円減額したことについて、その減額の有効性が争われた事案です。

 

●裁判所の判断

会社は賃金規程で「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する。」と定めていました。

裁判所は、このような規程が賃金減額の根拠たり得るためには、減額事由、減額方法、減額幅等の点において、基準としての一定の明確性を有するものでなければならないと判示しました。その上で、本事案の「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定する。」という規定は、減額方法、減額幅等の基準が示されているということはできないとして、賃金の減額は無効と判断しました。

 

▶参考情報:労働条件の不利益変更については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

労働条件の不利益変更とは?5つの方法と注意点を解説

 

「弁護士西川暢春のワンポイント解説」

上記の裁判例からもわかるように、能力不足等の事情による配置転換の場面で、従業員の職務を変更した場合に賃金を従業員との合意がなくても減額できるようにするためには、就業規則や賃金規程で減額事由、減額方法、減額幅等について明確な基準を定めておく必要があります。

このように裁判例が示すルールに基づいて就業規則を整備することが重要です。就業規則の整備については咲くやこの花法律事務所でもご相談をお受けしていますので、ご利用ください。また、以下の書籍でも解説していますのでご参照ください。

 

▶参考情報:就業規則の解説本「労使トラブル円満解決のための就業規則・関連書式 作成ハンドブック」

 

▶参考動画:この記事の著者 弁護士 西川 暢春が「能力不足の従業員!配置転換したら減給可能?」を動画で解説しています!

 

6,配置転換を経ない解雇はリスクが大きい

仕事ができない能力不足の従業員に対しては、会社を辞めてもらうことを検討しなければならない場面もあります。しかし、その場合も、十分な指導や適性を見るための配置転換を経ずにいきなり解雇手続きに進むのは不当解雇と判断されるリスクが高いです。

裁判所が能力不足を理由とする解雇の有効性を判断するとき、会社が解雇を回避するための十分な努力をしたかが判断要素の1つとなっています。

解雇を回避するための努力とは、十分な指導・注意をして改善の機会を与えたり、配置転換で業務内容を変更して適性を見極めたりすること等です。特に多くの部署があり、配置転換の余地がある企業では、単に指導するだけでは足りず、配置転換をして他の業務での適性を試すことが求められます。配置転換をせずに解雇した場合は、不当解雇と判断される例が多く見られます。

例えば、日本アイ・ビー・エム事件(東京地方裁判所判決平成28年3月28日)では、コミュニケーション能力の不足等の問題があり業績評価で低評価が続く従業員を解雇した事案について、現在の担当業務に関して業績不良があるとしても、その適性に合った職種への転換や業務内容に見合った職位への降格、一定期間内に業績改善が見られなかった場合の解雇の可能性をより具体的に伝えた上での業績改善の機会の付与などの手段を講じることなく解雇したとして、解雇が無効とされました。

 

▶参考情報:能力不足による解雇については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。

能力不足の従業員を解雇できる?具体的な手順とチェックポイント

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

能力不足の問題がある従業員について配置転換して他部署での適性を試すことは、周囲の負担も大きいです。

しかし、裁判例の傾向を踏まえると、配置転換の余地があるのに配置転換せずに解雇することは、解雇が訴訟トラブルに発展した場合の企業側の敗訴リスクが高く避けるべきです。

配置転換を経ることが難しい場合は、解雇ではなく、退職勧奨により解決することが適切です。咲くやこの花法律事務所では、退職勧奨についても弁護士がご相談をお受けしてサポートしていますのでご利用ください。

退職勧奨についてや、退職勧奨を進めるにあたって弁護士に相談するメリット等については以下でも解説していますのでご参照ください。

 

退職勧奨(退職勧告)とは?適法な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説

企業が弁護士に退職勧奨を相談すべき4つの理由とサポート内容や費用について

 

7,配置転換トラブルを防ぐために会社がやるべきこととは?

配置転換をめぐってトラブルになる原因の1つに、会社と従業員の認識の違いがあります。

従業員に配置転換の可能性があることを認識してもらい、あらかじめ心構えをしてもらうことが、配置転換に対する拒否感をおさえ、トラブルを防ぐことにつながります。

 

(1)就業規則や雇用契約書の整備

会社が従業員に対して配置転換を命じるためには、就業規則や雇用契約書等に、「会社が配置転換を命じることができる」旨の定めがあることが前提となります。

従業員の配置転換を予定している場合は、就業規則や雇用契約書を整備しておくことが必要です。

 

▶参考情報:就業規則や雇用契約書の整備については以下で解説していますのでご参照ください。

就業規則とは?義務や作成方法・注意点などを弁護士が解説

雇用契約書とは?正社員用の書き方など作成方法を弁護士が解説【雛形テンプレート付】

 

(2)入社時に配置転換があることを明示する

企業は、従業員を新たに採用する場合、雇用契約書や労働条件通知書等で雇い入れ直後の就業場所と業務の内容に加えて、「就業場所や業務の変更の範囲」を明示することが義務付けられています(労働基準法施行規則第5条1項1号の3)。

入社時に配置転換の可能性があることやその範囲を明示しておくことで、配置転換に関する会社側と従業員の認識のミスマッチを防ぐことができ、トラブルの防止につながります。単に書面で明示するだけにとどめず、配置転換の可能性について説明もしておくことが適切です。また、入社時に「配置転換・転勤などの人事異動に従う」旨の誓約書を提出してもらうことも、配置転換について理解してもらうことにつながり、有用です。

 

▶参考情報:雇入れ時の労働条件明示義務については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

労働条件の明示義務とは?労働基準法15条の明示事項やルール改正を解説

 

(3)配置転換について正しい手順を踏む

配置転換について正しい進め方、正しい手順を踏み、嫌がらせ等を目的とする配置転換ではないことを対象となる従業員に理解してもらうこともトラブル防止のために重要です。

配置転換は「候補者の選定」→「候補者への打診」→「配置転換の内示」→「辞令の交付」といった手順を踏むことが適切です。

 

▶参考情報;配置転換の適切な進め方については、以下で解説していますのでご参照ください。

配置転換の進め方や注意点を解説

 

8,配置転換について弁護士へ相談したい方はこちら

配置転換について弁護士へ相談したい方はこちら

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で、配置転換や能力不足の従業員への対応に関するトラブルについてご相談をお受けし、解決してきました。

以下では咲くやこの花法律事務所の弁護士によるサポート内容をご紹介します。

 

(1)配置転換に関するご相談

配置転換は企業にとって、人材育成や人材活用の手段として欠かすことができない人事措置であり、能力不足の従業員について適性を試す観点からも必要なものです。

しかし、配置転換に従業員が強い拒否反応を示してトラブルに発展するケースもあります。トラブルを避けるためには、配置転換が適法といえるかどうかを事前に検討し、配置転換について従業員の理解を求めるための十分な説明をすること、配置転換後のフォロー等を適切に行うことが重要です。

咲くやこの花法律事務所では、従業員に対する配置転換命令の可否の判断、配置転換を拒否する従業員への対応、能力不足の従業員に対する対応等のご相談をお受けしています。お困りの際は早めにご相談いただきますようにお願いいたします。

 

弁護士への相談費用

  • 初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)
  • 来所相談のほか、オンラインや電話での相談も可能

 

(2)顧問弁護士サービスのご案内

咲くやこの花法律事務所では、従業員との労働トラブルの対応や予防はもちろん、企業の労務管理全般をサポートするための顧問弁護士サービスを提供しています。

何かトラブルが発生した場合、事前のリスク対策ができていない会社ほど大きなダメージを負うことになります。

トラブルによる会社のダメージを抑えるためには、こまめに顧問弁護士に相談し、日頃から社内規定や労務管理体制の整備等の法的なリスクマネジメントに取り組むことが重要です。

もし何かトラブルが発生してしまった時も、初期段階で弁護士に相談して専門的な助言を受けて対応することが早期解決につながります。

 

▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについては、以下で詳しく説明していますので、ご覧ください。

顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら

 

(3)「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

弁護士の相談を予約したい方は以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせについて】

個人の方からの問い合わせは受付しておりませんので、ご了承下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

9,まとめ

この記事では、仕事ができないという問題が解決しない能力不足の従業員に対する配置転換についてご説明しました。

仕事ができないというような能力不足の理由での配置転換が有効と認められるためには以下の要件を満たしていることが必要です。

 

  • 会社に配転命令権があること
  • 業務上の必要性があること
  • 不当な動機や目的をもってされたものでないこと
  • 労働者に著しい不利益を負わせるものでないこと
  • 職種限定契約である場合はその合意の範囲内であること

 

また、配置転換に伴う減給は「従業員の個別の同意がある場合」もしくは「就業規則や賃金規程で業務内容の変更に伴って賃金が変更されることが定められており、減額事由や減額幅の基準について明確な基準が定められている場合」に限り有効となり得ます。

仕事ができない能力不足の従業員についての配置転換は、最終的に解雇を検討する場合にも重要です。能力不足の従業員について配置転換をして他の業務での適性を試すことなく解雇した場合は、解雇を回避するための努力が足りないと判断され、解雇が無効と判断される可能性があります。

配置転換をめぐるトラブルを防止するための対策としては、就業規則や雇用契約書の整備や、入社時に配置転換の可能性があることの明示、配置転換にあたって適切な手順を踏むこと等が有用です。

咲くやこの花法律事務所では、企業側の立場で、能力不足の問題がある従業員への対応について指導方法、賃金の扱い、賞与の査定、配置転換、退職勧奨、解雇等に関するご相談をお受けしています。配置転換についてお困りの方、能力不足の従業員の対応にお困りの方は、咲くやこの花法律事務所にご相談ください。

 

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記事更新日:2025年6月18日
記事作成弁護士:西川 暢春

 

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