前回のブログ(https://kigyobengo.com/blog/it/1476をご参照ください。)では、ユーザーが行う納入物の検査について、契約書の中で、その検査の対象を、「最初に決めたシステムの仕様と一致しているかどうか」という点に限定しておかなければならないというお話をさせていただきました。
今回は、納入したシステム等が、万一第三者の特許権や著作権等の知的財産権を侵害していた場合に備えた条項を契約書に入れるべきだというお話です。
そもそも、ウェブサイトやゲーム、システムなどの制作物が、第三者の特許権や著作権を侵害していないかどうかというのは、法的にも微妙な判断を含む難しい問題であることが多いです。
先日、グリーがディー・エヌ・エーに対して起こしたモバイルゲームの著作権を巡る訴訟の判決があり、ディー・エヌ・エーに2億3400万円の損害賠償義務が命じられていますが、一方でグリーの主張の大部分が退けられています。
また、ウェブサイトの制作を受託してこれを下請先に制作を外注に出す場合に、外注先が第三者に著作権があるコンテンツを無断で制作に使用してしまい、その結果、ウェブサイトを公開したユーザーが、後日、著作権者から賠償請求を受けるというトラブルが頻発しています。
このようにベンダーの制作物が後日第三者の権利を侵害していたことが発覚するということは、ウェブサイトやシステム、ゲームの開発の世界では頻繁に起こりうるトラブルです。
このようなトラブルの対処として、契約書ではどのような対処が可能なのでしょうか?
ベンダーの開発したWebサイトやシステムが、万が一第三者の著作権などの知的財産権を侵害していた場合には、普通はユーザーにクレームや警告がいきます。
Webサイトやシステムを使っているのはあくまでユーザーであって、制作したベンダーの名前は表には出てこないからです。
ここで、第三者からクレームを受けたユーザーが、すぐにWebサイトやシステムの使用をやめてくれればよいのですが、ユーザーがクレームを無視してWebサイトやシステムを使い続けていると、その使い続けている間、知的財産権を侵害し続けることになり、第三者に対する損害場報償責任がどんどん膨らんでいきます。
そして、第三者の知的財産権を侵害しているシステムを制作したのはベンダーなのですから、最終的にはこのふくらんだ損害をベンダーが賠償しなければならないということになります。
このように、ユーザーが第三者からのクレームを無視してWebサイトやシステムを使い続けていると、ベンダーが知らないうちに知的財産権侵害による損害額がどんどん膨らんでいき、結局はベンダーがこの膨らんだ損害を賠償しなければならないということになってしまいます。
これに対して、第三者からクレームを受けた時点で、ユーザーがWebサイトやシステムの使用を停止し、あるいはWebサイトやシステムを、第三者の知的財産権を侵害しないようなものに作り変えてしまえば、損害賠償しなければいけない額は、最小に食い止めることができます。
そのため、契約書の中で、次の2つのことを決めておかなければなりません。
第一に
ベンダーが開発したシステム等についてユーザーにクレームがきた場合には、ユーザーがそのことをベンダーに通知しなければならない
ということです。
第二に
通知されたベンダーは、ユーザーに対して、そのシステム等の使用を停止するよう求めたり、ベンダーの側でシステムを作り変えさせてもらえるよう求めたりすることができる
ということです。
具体的には、契約書の中に、次のような条項を入れておくことになります。条項の中の甲とはユーザー、乙とはベンダーのことです。
第○条
第1項 本契約に基づき乙が作成し甲に納入した成果物について、第三者の著作権その他の知的財産権を侵害しているとして第三者から通知または請求を受けた場合には、甲はその通知又は請求を受けたことを速やかに乙に通知するものとする。
第2項 乙は、甲から前項の通知を受けた場合には、甲に対し、当該通知又は請求の対象となった成果物の使用の停止を求め、あるいは仕様の変更を求めることができる。
さらに、もし可能であれば、納品物が第三者の権利を侵害していたときにベンダーがユーザーに対して負担するべき損害賠償の額に上限を設定することを検討するべきです。
具体的には、
「ユーザーに対する損害賠償はその案件についてユーザーから支払ってもらう委託料の額を上限とする」
旨の条項を入れることを検討するとよいと思います。
一般的に、システムやWebサイトの開発には、下請先への外注をする場合も多くあります。
そのような場合に、たとえば下請先が作った部分に知的財産権侵害の問題があってユーザーが損害賠償を支払うと、今度はユーザーがベンダーに損害の賠償を求めてくることになります。
ベンダーとしては、自分が作ったわけでもない部分が知的財産権を侵害していたとして、莫大な損害賠償を支払わされてはたまりません。
そのため、少なくともユーザーとの関係では、制作したシステム等が原因でユーザーに損害が生じた場合、ベンダーは委託料の限度でしかユーザーに対して賠償責任を負わないという規定を入れておくべきなのです。
具体的には、契約書の中に、次のような条項を入れることになります。ここで甲というのはユーザーのことで、乙というのはベンダーのことです。
第○条
本件契約に基づき乙が制作した制作物によって甲に損害が生じた場合に乙が甲に対して支払う賠償額は、当該損害賠償の原因となった案件にかかる委託料の額を上限とする。
これらのような条項を入れておくことで、ベンダーは、制作したシステムによる知的財産権侵害に迅速に対応することができ、また、知的財産権侵害によるベンダーの負う賠償責任を、最小限に食い止めることができるのです。
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