労働者派遣法の改正で派遣法に違反した場合のペナルティーが厳しくなっています。
今回はこの点について、大阪高等裁判所平成23年9月30日判決をもとに考えていきましょう。
この判決は、派遣会社からいわゆる偽装請負を受け入れていた製造業の会社が、労働局の指導により、偽装請負で勤務していた労働者を直接雇用することを余儀なくされたため、約6か月の有期雇用契約でこの労働者を直接雇用し、6か月後に雇い止めをした事件です。
これに対し、雇い止めをされた従業員らが会社に対し訴訟を起こし、継続して雇用することや損害の賠償を求めました。
これに対し、裁判所は、会社が偽装請負で勤務していた従業員との間でした約6か月の有期雇用契約は更新の予定のないものであったとして、会社の雇いど止めは正当であると判断しました。
このように、会社側が勝訴しましたが、この判決の後に派遣法が改正され、少し状況が変わってきています。
この派遣法の改正の中で一番重要な改正が、労働契約申込みなし制度と呼ばれる制度です。これは実務への影響も大きいので、平成27年10月からの施行とされています。
この改正により、偽装請負をはじめとする違法派遣を受け入れていた場合は、この違法派遣の労働者と直接雇用契約をすることを拒むことができなくなります。
以前は、労働局の指導で直接雇用をするように指導されることが多かったのですが、この改正で、労働局の指導があるかないかにかかわらず、直接雇用契約が成立してしまうケースが出てきます。
さらに、違法派遣の労働者と派遣元との間の契約は、有期の契約であっても、更新を前提とするものになっているケースが多いです。
この制度では「派遣のときと同じ条件で」、労働者と受け入れ先の間に直接の雇用契約が成立しますので、違法派遣の労働者と受け入れ先との間に成立する雇用契約も、更新を前提とするものとなります。
その結果、受け入れ先は、直接雇用の契約が満了した後も簡単には更新を拒否することができなくなります。
そうなると、今回の事案では派遣法改正前だったので、会社が勝訴しましたが、派遣法改正後であれば、会社側が敗訴し継続して偽装請負の労働者を直接雇用するように命じられていた可能性があります。
このように、平成27年10月から施行が予定されている労働契約申込みなし制度は、非常に重要な内容を含んでいます。
派遣を受け入れる際はきちんと弁護士に相談し、違法な派遣と言われる余地がないかを確認しなければ、思いもかけないペナルティーを被ることがあります。
単に派遣会社の責任問題としてすませることはできません。
また、すでに、派遣を受け入れておられる会社は、派遣の内容に違法がないかをきちんとチェックし、少なくとも労働契約申込みなし制度が導入される平成27年10月までに違法状態を正しておく必要があります。
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