従業員が、会社を犠牲にして他の会社や自らの利益を図った場合は、会社は従業員に対して当然に損害賠償を請求することができます。
しかし、常日頃から業務管理をしておらず、従業員の不正を漫然と見過ごしてしまうと、気づいた時には多額の損害が発生し、裁判しても回収できないという事態になりかねません。
実際の裁判例として、東京地裁平成23年12月27日判決の「山口工業事件」をみていきましょう。
この事件は、会社が新規事業への参入にあたって、経験者であるXを責任者として中途採用し、東京支社長の地位につけたところ、このXが顧客から会社を通さずに報酬を受け取っていたという事件です。
裁判所は、会社の主張を認め、Xに対して、Xの行為は会社への背任行為であり許されず、これによって生じた会社の損害を賠償するよう命じました。
このようなケースでは、横領あるいは背任として、従業員に対する損害賠償請求が認められます。
問題は、裁判上、従業員が会社を通さずに報酬を受け取った時期、金額を特定する必要がある点です。
そのためには、横領あるいは背任が疑われる従業員の個人口座の入金状況を確認する必要があります。このケースでは銀行への調査嘱託によって、入金の時期、金額を特定しています。
また、この事件の根本的な原因は、会社の預金管理がずさんだったということにあります。
この会社では売上が入金される法人口座の通帳や銀行印を従業員に預けていた上、記帳もしていませんでした。
また売上についても請求書と入金内容を突き合わせて入金確認をする作業をしていませんでした。
裁判所もこの点については、「極めて迂闊かつ杜撰」としています。
法人口座の通帳や銀行印は社長自身が管理するのがベストです。
しかし、事業の規模が大きくなったり支店ができたりすると、法人口座の管理についても従業員にゆだねざるを得ないこともあります。
その場合でも、銀行印の管理者と支払伝票の作成者を別人にする、会社からの支払に対応する成果物の納品を確認する、会社から成果物を納品した場合はそれに対応する入金を確認する、通帳を記帳させ毎月その内容を確認するといった、複数の従業員で法人口座の入出金の内容を確認し合う体勢を作ることが必要です。
このような体勢をつくっておけば、従業員が会社を通さずに顧客から報酬を受け取ったり、あるいは従業員が仕入先からこっそりリベートをうけとったりすることを防げます。
従業員の横領行為が疑われるケースでお困りの方は、ぜひ咲くやこの花法律事務所にご相談ください。一緒にトラブルを乗り切っていきましょう。
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