従業員が犯罪を犯して退職した場合に、退職金の支給についてはどのようにするべきでしょうか。
この点が問題になった事件として、東京地方裁判所平成24年3月30日判決をご紹介します。
この事件で原告となったNTT東日本の元正社員は、在職中に強制わいせつ事件を起こして逮捕、起訴され、起訴の日に勤続23年目で自主退職しました。
NTT東日本はこの元正社員の退職金を支給しないこととしましたが、これに対して、この元正社員がNTT東日本に退職金の支払いを求めた事件です。
裁判所は、退職金を全く支払わないことは許されないとして、退職金規定によって計算される退職金の45%に相当する金額の支払をNTT東日本に命じました。
この判決をもとに、従業員が犯罪を起こして逮捕された場合に企業がとるべき対応を考えていきたいと思います。
① まず最初に注意しなければならないのは、従業員が犯罪の容疑で逮捕された場合、その従業員を解雇してよいかどうかは慎重な検討を要するという点です。
裁判所は、会社が処分の対象とできるのは原則として業務に関係があることだけであり、就業時間外の犯罪については特別な場合を除いて解雇の理由にはならないと考えています。
そのため、性犯罪や交通事故、飲酒運転といった犯罪を従業員が起こして逮捕された場合で、その従業員に退職してもらいたいという場合でも、解雇はせず、退職届を提出させて自主退職とするべきです。
一方、今後更生が可能な人材であれば、継続して雇用するにあたり、同じ問題を繰り返さないように、事情を聴いて反省を促す必要があります。
② 次に、従業員が退職した場合に退職金の支給が問題になります。
会社に退職金規定がある場合特に慎重に判断しなければなりません。
会社に退職金規定がある場合、従業員が犯罪をおこしたことをきっかけに退職したという場合でも、退職金を全く支給しないということは裁判所では通常認められません。
これは、裁判所が、会社が退職金規定を設けている場合、退職金は賃金の後払いの意味合いがあると考えているためです。
つまり、退職金は労働の対価であり、後日、従業員が犯罪で逮捕されても、それまでの労働がなかったことになるわけではないので、退職金を不支給とすることは認めないというのが裁判所の通常の判断です。
このように0とすることは法的には困難ですが、一定程度減額することは判例上も認められています。
具体的にどの程度減額するかは過去の判例を参照して判断する必要があります。
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