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迷惑FAXのDMには業務停止の行政処分も!平成28年の特定商取引法改正の重要ポイントを解説!

平成28年の特定商取引法改正の重要ポイントを解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

法律の概要

特定商取引法が改正され、平成28年6月3日に公布されました。

この特定商取引法の改正は、通信販売についての「FAXによるDM」に対する規制や、テレマーケティングにおける過量販売規制など、新しい規制を設ける重要な内容を含んでいます。

「BtoC」の事業をされている方にとっては、要注意の内容になっていますので、この機会に確認しておいてください。

 

今回の注目の法律ニュース記事の目次

●特定商取引法の平成28年改正の3つの重要ポイント
●重要ポイント1:通信販売に関するFAX広告の制限について
●重要ポイント2:電話勧誘販売の過量販売規制の新設
●重要ポイント3:指示処分対象業者の公表制度の強化
●補足の解説

 

特定商取引法の平成28年改正の3つの重要ポイント

特定商取引法の平成28年改正の内容のうち、特におさえておきたいポイントは以下の通りです。

特定商取引法改正の重要ポイント3つ

ポイント1:
FAX広告の制限について

ポイント2:
電話勧誘販売の過量販売規制の新設

ポイント3:
指示処分対象業者の公表制度の強化

以下で順番にご説明したいと思います。

 

重要ポイント1:
通信販売に関するFAX広告の制限について

特定商取引法改正の重要ポイントの1つ目は、「通信販売に関するFAX広告の制限について」です。

これまで、FAXによる広告、FAXによるDMについては、特段の法規制がなく自由でした。
しかし、今回の特定商取引法改正で通信販売の場合に以下の規制が設けられました。

平成28年特定商取引法改正で新設された通信販売のFAX広告に関する3つの規制

規制1:
FAX送信先からの請求または承諾なく、通信販売に関するFAX広告を送ることが禁止されました。

規制2:
送信先からの請求又は承諾により通信販売に関するFAX広告をする場合は、送信先からの請求又は承諾の事実についての記録を作成、保存することが義務付けられました。

規制3:
通信販売に関するFAX広告をする際は、送信先がFAX広告の提供を受けない旨の意思表示をする手段についての表示が義務付けられました。

以下で順番に見ていきましょう。

規制1:
FAX送信先からの請求または承諾なく、通信販売に関するFAX広告を送ることが禁止されました。

これまでは、FAX送信先からの承諾をもらわなくても、FAXによるDMを一方的に送ることが法律上可能でした。

そのため、名簿屋から名簿を入手したり、あるいは各社のwebサイトに表示されているFAX番号をプログラムで集めて、FAX番号のリストを作り、そこに送信先の承諾なく、FAXによるDMを送りつけるということが行われていました。

しかし、今回の法改正により、送信先から「FAXでDMを送ってください」と請求された場合や、送信先からFAXでDMを送ることについて承諾をもらった場合でなければ、通信販売に関するFAXによるDMを送ることは許されないことになりました。

規制2:
送信先からの請求又は承諾により通信販売に関するFAX広告をする場合は、送信先からの請求又は承諾の事実についての記録を作成、保存することが義務付けられました。

送信先から「FAXでDMを送ってください」と請求された場合や、送信先から承諾をもらってFAXでDМを送る場合は、送信先からの請求や承諾があった事実について記録を作成し、保存することが義務付けられました。

規制3:
通信販売に関するFAX広告をする際は、送信先がFAX広告の提供を受けない旨の意思表示をする手段についての表示が義務付けられました。

送信先から「FAXでDMを送ってください」と請求された場合や、送信先から承諾をもらってFAXでDМを送る場合であっても、送信拒否の意思表示をする手段についてFAXのDMに表示することが義務付けられました。

 

FAX広告の制限については、以上の3つの規制が重要です。

これらの規制に違反して通信販売に関するFAX広告を送信した場合、行政庁から「指示処分」あるいは2年以内の「業務停止処分」を科されることがあります。

なお、ここでいう「通信販売」とは、消費者から郵便や電話、インターネット等によって購入の申し込みを受け、商品を販売したりサービスを提供したりするものです。広告を見た消費者が電話やインターネットで注文する場合が典型例といえます。FAX広告を送って連絡があった消費者に店舗等に来てもらって対面販売を行う場合は、FAX広告の制限のルールは適用されません。

特に、「送信先の承諾を得ないで通信販売に関して、FAXによるDMを送ることが禁止された」という点をおさえておきましょう。

 

重要ポイント2:
電話勧誘販売の過量販売規制の新設

特定商取引法改正の重要ポイントの2つ目は、「電話勧誘販売の過量販売規制の新設」です。

「過量販売規制」とは、日常生活に通常必要な量を著しく超える商品等を購入した消費者から、購入から1年以内に購入の撤回を申し込まれた時は、これに応じて商品代金返還等の措置をとらなければならないという規制です。

さらに、正当な理由なく過量販売を勧誘する行為は行政処分の対象にもなります。

この過量販売規制は、訪問販売については従来から規制がありましたが、今回、電話勧誘販売(いわゆる、テレマーケティング)についても同様の規制が設けられました。

この「電話勧誘販売の過量販売規制の新設」については、以下の4つの項目を確認しておきましょう。

「電話勧誘販売の過量販売規制の新設」の確認しておきたい4つの項目

項目1:
「過量販売」に該当するケースとは?

項目2:
購入の撤回を申し込まれた場合の販売会社の対応について

項目3:
「過量販売規制」の適用範囲について

項目4:
企業における対応の注意点

以下で順番に見ていきましょう。

 

項目1:
「過量販売」に該当するケースとは?

「過量販売」とは、日常生活に通常必要な量を著しく超える商品等を販売することを言いますが、具体的には以下の3つのケースがあります。

1,1回の販売が過量のケース

1回の販売量が、消費者にとって日常生活に通常必要な量を著しく超える場合です。

例えば、マッサージチェアを1世帯に2台以上同時に販売するケースがこれにあたる可能性があります。

2,過去の購入と今回の購入をあわせると過量の販売となるケース

過去の購入量と今回の購入量をあわせると、消費者にとって日常生活に通常必要な量を著しく超える場合です。

例えば、化粧水、乳液、クリーム等のフェイシャルスキンケア商品について前回の購入で1年分の使用量に相当する分量を購入しているのに、さらに1か月後に再度1年分の使用量に相当する分量を販売するケースです。
ただし、その消費者の過去の購入について販売会社が知っていた場合のみが対象となります。

3,過去の購入ですでに過量の販売になっているのに、同種の商品を販売するケース

過去の購入によりすでに消費者にとって日常生活に通常必要な量を著しく超えているのに、さらに同種の商品を販売する場合です。

例えば、1か月前に浄水器を購入した家庭に再度浄水器を販売するケースがこれにあたります。
ただし、その消費者の過去の購入について販売会社が知っていた場合のみが対象となります。

このうち、「2」と「3」は、「次々販売」とも言われます。

「次々販売」の場合は、販売会社が、その消費者の過去の購入について知っていることが、過量販売規制適用の条件となります。

項目2:
購入の撤回を申し込まれた場合の販売会社の対応について

購入の撤回を申し込まれた場合の販売会社の対応として、以下の2点が義務付けられています。

1,代金の返還

購入の撤回を申し込まれた場合、販売会社は代金を返還しなければなりません。使用済みの商品についても代金全額の返還が義務付けられています。

2,未使用商品を引き取る場合の返還費用の負担

消費者において未使用の商品が残っている場合は、消費者に返還を求めることができますが、返還の費用(送料等)は販売会社が負担する必要があります。

項目3:
「過量販売規制」の適用範囲について

従来は訪問販売についてのみ、「過量販売規制」が設けられていましたが、今回の改正で、電話勧誘販売(いわゆる、テレマーケティング)についても、「過量販売規制」の対象となることになりました。

電話勧誘販売とは、販売会社から電話をかけて、商品等の購入をすすめて、郵便やFAXなどにより購入申し込みを受ける販売方法を指しています。

このように一般的にテレマーケティングと呼ばれている販売方法が対象になりますが、以下のようなケースではポスティングやネット通販でも「電話勧誘販売」に該当し、「過量販売規制」の対象となります。

1,ポスティングでも「電話勧誘販売」に該当し、「過量販売規制」の対象となるケース

他の消費者より著しく有利な条件で購入できることを記載したビラやパンフレットを配布して、消費者から電話をかけさせて販売するケースは「過量販売規制」の対象となります。

例えば、「現在特別セール中ですので、全品5割引きで購入できます。〇月〇日までにお電話で購入をお申し込みください。」などと記載したビラやパンフレットを配布して、商品を販売するケースです。

2,ネット通販でも「電話勧誘販売」に該当し、「過量販売規制」の対象となるケース

他の消費者より著しく有利な条件で購入できることをWebサイトに記載し、消費者から電話をかけさせて販売するケースは「過量販売規制」の対象となります。

例えば、「現在特別セール中ですので、全品5割引きで購入できます。〇月〇日までにお電話で購入をお申し込みください。」などとWebサイトに記載して、商品を販売するケースです。

このようにいわゆるテレマーケティングだけでなく、ポスティングやネット通販でも「過量販売規制」の対象となるケースがありますので注意しておきましょう。

項目4:
企業における対応の注意点

企業における対応の注意点としておさえておく必要があるのは、消費者において特別の事情があり、通常必要な量を著しく超える量の購入を希望するときは、その特別の事情を後日、説明、立証できるようにしておく必要があるという点です。

通常必要な量を著しく超える量の購入であっても、消費者において購入を必要とする特別の事情があったときは、過量販売規制による購入撤回の対象とならないことが認められています。なお、「過量販売」として問題になり得るのは、顧客が望んでいないものを強引に売りつけるような悪質なケースだけではないことに注意が必要です。

例えば、スキンケア商品を前回の購入で1年分の使用量に相当する分量を購入しているのに、1か月後に再度1年分の使用量に相当する分量を購入するというケースでも、「前回購入したものが肌に合わなかったから」とか「両親の使用分も購入したいから」など様々な理由で消費者から希望して、通常の分量を超える購入をすることがあります。

このように消費者から希望して購入した場合でも、「今回購入分も肌に合わなかった」、「両親の分として購入したが両親が気に入らなかった」などの理由で、消費者が気が変わり、過量販売を理由として購入を撤回するケースがありうるということを念頭におく必要があります。

このようなケースで購入の撤回が認められると、販売会社は使用分も含めた代金を消費者に返還することが必要になり、手痛い負担となります。

そこで、消費者に対する販売の段階で、消費者が通常必要な量を超えて購入を必要とした理由を説明できるように、記録しておくことが必要です。販売会社側で消費者が購入当時、通常必要な量を超えて購入を必要とした理由を立証することで、過量販売規制の適用を否定し、消費者からの購入の撤回を拒否することが可能です。

 

重要ポイント3:
指示処分対象業者の公表制度の強化

特定商取引法改正の重要ポイントの3つ目は、「指示処分対象業者の公表制度の強化」についてです。

特定商取引法に違反した販売会社に対しては、国や都道府県が指示処分という処分を行うことができます。この指示処分を受けた販売会社については、これまでは特に悪質なケースだけが消費者庁のwebサイトなどで公表されていました。

しかし、特定商取引法の改正により、公表制度が強化され、指示処分を受けた販売会社は一律、消費者庁のwebサイトなどで公表されることが決まりました。

例えば、消費者からのクーリングオフに応じなかった会社に対して指示処分がされるケースで、改正前と改正後の違いを説明すると以下の通りです。

改正前と改正後の指示処分対象業者の公表制度の違い

●特定商取引法の改正前

改正前は指示処分が出た段階で公表されることはまれで、指示処分をしてもまだクーリングオフに応じないというようなケースで消費者庁のwebサイトなどでの公表が行われていました。

●特定商取引法の改正後

改正後は消費者からのクーリングオフに応じなかったことにより指示処分が出されれば、その段階で一律に消費者庁のwebサイトなどでの公表が行われることになりました。

webサイトで指示処分について公表されると、自社名を検索したときに、指示処分歴が表示されますので、販売に悪影響がでることが予想されます。

改正により指示処分対象業者の公表制度が強化されたことから、特定商取引法違反を起こさず行政処分を受けないことが、これまで以上に重要になったことをおさえておきましょう。

 

補足の解説

この特定商取引法の改正は、平成28年6月3日の公布から1年6か月以内に施行されることになっています。

今後、施行までの間に、さらに詳細な規制内容が確定する予定ですので、また「咲くや企業法務.NET」でもお伝えしたいと思います。

企業法務におけるお悩みは、企業法務に強い弁護士へ。「咲くやこの花法律事務所」へご相談下さい。

記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2016年07月19日

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