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【法律ニュース】平成27年9月の労働者派遣法改正の内容と、企業側で必要な対応

平成27年9月の労働者派遣法改正
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
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    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

平成27年9月11日、「労働者派遣法」が改正されました。この改正は、現行法で設けられていた「労働者派遣の期間制限」を事実上撤廃する重要なものです。これまで「原則として3年まで」という期間制限があった労働者派遣をめぐる状況が大きく変わり、企業は労働者派遣の利用をしやすくなりました。

今回は、この平成27年9月の「労働者派遣法改正の内容」と、それに伴い企業側で必要となる対応についてご紹介します。

 

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1,労働者派遣法の平成27年改正の内容

今回の労働者派遣法の平成27年9月改正の主な内容は以下の2点です。

 

労働者派遣法の改正の主な内容について

改正点1:
労働者派遣の期間制限の撤廃

派遣を利用できる期間の制限が撤廃され、企業は期間の制限なく労働者派遣を利用することができることになりました。

 

改正点2:
すべての労働者派遣事業が許可制に移行

これまで許可が不要だった「特定労働者派遣」の制度が廃止され、すべての労働者派遣事業が許可制になりました。

以下で重要なポイントについて、順番にご説明したいと思います。

 

2,重要ポイント1:
労働者派遣の期間制限の撤廃について

現行の労働者派遣法では、「派遣の利用は最大で3年まで」という期間制限がありましたが、今回の改正でこれが撤廃されました。まずは、現行の労働者派遣法の期間制限の内容を確認したうえで、今回の改正によりどのように変わったのかをみていきましょう。

 

現在の労働者派遣法の労働者派遣の期間制限の内容

現行の労働者派遣法では、「同じ事業所の同じ業務について労働者派遣を利用できるのは最大3年まで」という期間制限が設けられていました。

そして、その例外として、ソフトウェア開発や建築物の清掃など、期間制限がない業務が法令で定められており、これらの業務は「法定26業務」と呼ばれていました。このように、現行法では、法定26業務と呼ばれる業務とそれ以外の業務によって、期間制限の有無が異なりました。

現行の労働者派遣の期間制限の内容をまとめると、以下の通りになります。

 

現行の労働者派遣の期間制限のまとめ

現行の労働者派遣の期間制限について

今回の労働者派遣法の改正により、法定26業務とそれ以外の業務の区別がなくなり、すべての労働者派遣について、企業は以下の3つのルールに従う限り、無期限で労働者派遣を利用することが可能となりました。

 

今回の労働者派遣法の改正により定められた労働者派遣の3つのルール

ルール1:
同じ事業所の同じ部署について同じ派遣社員の派遣を受けることができるのは最大で3年までに制限される。

ルール2:
同じ事業所について、3年を超えて派遣を受け入れる場合は、労働者代表の意見を聴く手続が必要になる。

ルール3:
派遣会社が期間の定めなく雇用している派遣社員については、「ルール1」、「ルール2」による制限がなく、派遣社員の交代をしなくても、無期限で労働者派遣の利用が可能。

 

以下、順に「ルール1」から「ルール3」についてご説明したいと思います。

 

ルール1:
同じ事業所の同じ部署について同じ派遣社員の派遣を受けることができるのは最大で3年までに制限される。

今回の労働者派遣法の改正により、企業が労働者派遣を利用できる期間については制限がなくなりましたが、3年以上同じ事業所の同じ部署について労働者派遣を利用する場合は、派遣社員の交代が必要になります。現行法では、法定26業務以外の業務については、派遣社員が交代したとしても3年までしか労働者派遣を利用することができませんでしたので、法定26業務以外の業務については、今回の改正により、労働者派遣の利用がしやすくなりました。

一方、法定26業務については、これまでは派遣社員を交替しなくても無期限で労働者派遣の利用が可能でしたが、今回の改正により、3年ごとに派遣社員の交代が必要になりました。

 

ルール2:
同じ事業所について、3年を超えて労働者派遣を利用する場合は、労働者代表の意見を聴く手続が必要になる。

今回の労働者派遣法の改正により、企業が労働者派遣を利用できる期間については制限がなくなりましたが、3年を超えて同じ事業所で労働者派遣を利用するときは、労働者代表の意見を聴く手続が必要になりました。これは、労働者派遣の利用が進むことにより、正社員の仕事が失われることについての歯止めの意味で義務付けられた手続きです。

 

ルール3:
派遣会社が期間の定めなく雇用している派遣社員については、「ルール1」、「ルール2」による制限がなく、派遣社員の交代をしなくても、無期限で労働者派遣の利用が可能。

派遣会社と派遣社員の雇用契約は、「期間の定めのない雇用契約になっている場合」と、「有期の雇用契約になっている場合」があります。今回の改正で、派遣会社と派遣社員の雇用契約は、期間の定めのない雇用契約になっている場合には、前述の「ルール1」、「ルール2」は適用されず、派遣社員の交代をしなくても、無期限で労働者派遣の利用が可能とされました。

また、派遣社員が60歳以上の場合も、同様に「ルール1」、「ルール2」による制限がなく、派遣社員の交代をしなくても、無期限で労働者派遣の利用が可能とされています。

上記を整理すると下記の表の通りになります。

 

平成27年9月改正により定められた3つのルールのまとめ

現行の労働者派遣の期間制限のまとめ

これらの3つのルールに従えば、同じ事業所の同じ部署について無期限に労働者派遣を利用することが可能になったことが、今回の労働者派遣法の改正の最大のポイントになりますので、確認しておきましょう。

 

3,重要ポイント2:
すべての労働者派遣事業が許可制に移行

平成27年9月の労働者派遣法の改正のもう1つの重要なポイントが、「すべての労働者派遣事業が許可制に移行した」という点です。

現行法では、派遣社員と派遣会社の雇用契約の内容によっては、届出のみで労働者派遣事業が行える、「特定労働者派遣事業」が認められていました。しかし、今回の労働者派遣法の改正で、すべての労働者派遣事業について厚生労働大臣の許可が必要になりました。

ただし、これまで、特定労働者派遣事業として届出のみで労働者派遣事業を行ってきた派遣会社については、経過措置として平成30年9月までは、事業を継続することが認められます。平成30年10月以降も労働者派遣事業を続ける場合は、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。

この点は派遣会社にとっては重要な改正になります。現在、特定労働者派遣事業を行っている派遣会社は、平成30年9月までに厚生労働大臣の許可を得なければ、事業の継続ができなくなる点に注意が必要です。

 

4,労働者派遣法改正に伴い企業側で必要となる対応について

労働者派遣法の改正の主要なポイントをご説明しましたが、労働者派遣法の改正に伴い企業側で必要となる対応についてもご説明したいと思います。

以下では、「派遣先企業において必要となる対応」、「派遣会社において必要となる対応」に分けて説明します。

 

必要となる対応1:
派遣先企業において必要となる対応

労働者派遣法の改正により、派遣先企業において必要となる対応として、次の2点を確認しておきましょう。

 

ポイント1:
いま派遣されている派遣社員と派遣会社との雇用契約が期間の定めのないものか、それとも有期の契約かを確認しましょう。

今回の改正で、派遣社員と派遣会社の雇用契約の内容によって、「3年ごとの派遣社員の交代が必要かどうか」が異なることになりました。

 

【派遣社員と派遣会社の雇用契約が期間の定めのない契約の場合】

●派遣社員の3年ごとの派遣社員の交代を行う必要なし

 

【派遣社員と派遣会社の雇用契約が有期の契約の場合】

●3年ごとに派遣社員の交代が必要

 

このように、派遣社員の交代が必要かどうかが違ってきますので、いま派遣されている派遣社員と派遣会社の雇用契約の内容を確認しておきましょう。

 

ポイント2:
派遣社員と派遣会社の雇用契約が有期の契約のときは、派遣社員の交代や配置について検討しましょう。

今回の改正で、派遣社員と派遣会社の雇用契約が有期の契約のときは、同じ部署で3年を超えて労働者派遣を利用する場合は、派遣社員の交代が必要となります。同じ派遣社員を3年を超えて受け入れる場合は、他の部署に配置換えするなどの対応が必要になります。

この点を踏まえて、今後、自社で派遣社員の交代や配置をどのように行っていくか検討しましょう。特にこれまで法定26業務にあたる労働者派遣を利用していた企業は、現行法では無期限で派遣受け入れが可能でしたが、今回の改正により、派遣社員と派遣会社の雇用契約が有期の雇用契約のときは、3年ごとの派遣社員の交代が必要になったことに注意しましょう。

 

必要となる対応2:
派遣会社において必要となる対応

労働者派遣法の改正により、派遣会社で必要となる対応としては、次の2点を確認しておきましょう。

 

ポイント1:
特定労働者派遣を行っている派遣会社は平成30年9月までに派遣事業について許可を受ける計画を立てましょう。

新しく許可を受ける上で、特に重要なポイントとなると思われるのが、「資産要件」です。「資産要件」とは「労働者派遣の許可を得るためには、1事業所につき、純資産額2000万円、現預金1500万円以上が必要である」というルールです。

現在、特定労働者派遣を行っている派遣会社は、これらのルールを踏まえて、許可を受けるための計画を立てる必要があります。なお、小規模事業者については、新たな許可を得るにあたって、一定の配慮措置が講じられることとなっています。今後、どのような配慮措置が定められるかについても注意しておきましょう。

 

ポイント2:
派遣先企業と派遣会社の間で締結する「労働者派遣契約書」の修正が必要となります。

労働者派遣法では、派遣先企業と派遣会社の間で労働者派遣契約書の作成が義務付けられており、その記載事項も決められています。今回、「同じ事業所の同じ部署について同じ派遣社員の派遣を受けることができるのは最大で3年まで」というルールができたことにより、労働者派遣契約に「派遣先の部署」の記載が必要になりました。

そのほか、今回の労働者派遣法の改正にともない、労働者派遣契約書の記載事項の詳細を定めている厚生労働省令も改正される見込みであり、「派遣先の部署」の記載以外にも、労働者派遣契約書を修正する必要が生じるものと思われます。

具体的な修正の内容は、今後改正される厚生労働省令の内容を確認して対応することが必要になりますので、注意しておきましょう。

 

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