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虚偽記載は許可取消の制裁も!派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成のポイント【雛形あり】

解雇予告通知書の記載事項など書き方について
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

平成27年9月30日に労働者派遣法が改正されました。

改正された労働者派遣法は、派遣会社に対して派遣労働者の保護や派遣契約の管理のための取り組みを新しく義務付けており、義務を守らない派遣会社は行政処分や許可の取り消し、許可の更新の拒絶などの不利益を受けることが予想されます。

今回は、その中でも重要なポイントの1つとなる「派遣元管理台帳の作成」について、派遣法改正を踏まえたご説明をしたいと思います。

 

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1,知らないと怖い!派遣元管理台帳の重要性

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントについてご説明する前に、まず、派遣元管理台帳の重要性について確認しておきたいと思います。

派遣元管理台帳は、労働者派遣法37条で「作成」と「3年間の保管」が義務付けられています。

そして、この義務に違反して、派遣元管理台帳を作成しなかった場合については、30万円以下の罰金刑の規定が設けられています。

法律の規定としては、罰金刑を受けたときは、労働者派遣法14条により、労働者派遣の許可が取り消されることもある内容になっています。

派遣元管理台帳の不備は、厚生労働省の統計でも、毎年、立入検査で見つかる違反件数の上位を占めており、平成25年度には、全国で「1837件」の派遣元管理台帳に関する法令違反が指摘されています。

このように、派遣元管理台帳の不備については、行政指導や罰金刑、許可の取り消しなどのペナルティが定められています。

派遣会社のリスク管理においては、派遣元管理台帳を法律の規定どおり確実に作成し、保管しておくことが、重要であることを確認しておきましょう。

 

2,【必ずチェック!】
労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成のポイント

平成27年9月の労働者派遣法改正で、派遣元管理台帳の記載事項についても変更がありました。

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成のポイントは以下の通りです。

 

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成の5つのポイント

ポイント1:
「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」の追記

ポイント2:
「派遣先の組織単位」の追記

ポイント3:
「雇用安定措置として講じた措置の内容」の追記

ポイント4:
「教育訓練の日時及び内容」の追記

ポイント5:
「キャリア・コンサルティングを実施した日及び内容」の追記

 

上記の5点が平成27年9月の労働者派遣法改正で新たに派遣元管理台帳に記録しなければならない項目として義務付けられました。

以下で5つのポイントを順番にご説明していきます。

 

2−1,ポイント1:
「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」の追記

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントの1つ目は、「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」に関する項目を追記することが必要になったという点です。

具体的にはこれまでの派遣先管理台帳のフォーマットに新しく、「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」の記載箇所を追加して、記載する必要があります。

なお、ここでいう「無期雇用の派遣労働者」とは、派遣会社との契約が無期の雇用契約になっている派遣社員のことです。

派遣会社との契約に1年とか6ヶ月といった期間が定められており、それを更新していくケースは、「無期雇用の派遣労働者ではない」という扱いになります。

「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」の追記が必要になった理由は、以下の通りです。

 

(1)追記が必要になった理由

平成27年9月の改正で、「同一の派遣労働者について、同一の派遣先の事業所の同一の組織単位に派遣できるのは3年まで」という派遣期間の制限のルールができましたが、「無期雇用派遣労働者」と「60歳以上の派遣労働者」についてはこの派遣期間の制限が適用されません。

そのため、派遣される労働者が、「無期雇用派遣労働者」あるいは「60歳以上の派遣労働者」であるかどうかを、明確に管理する必要があり、派遣元管理台帳に記載が義務付けられました。

無期雇用の派遣労働者、60歳以上の派遣労働者については、他の派遣労働者と違い、派遣期間の制限がないことから、派遣元管理台帳でもその点を記載して管理することが必要になったことをおさえておきましょう。

 

2−2,ポイント2:
「派遣先の組織単位」の追記

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントの2つ目は、「派遣先の組織単位」を追記することが必要になったという点です。

労働者派遣法の改正以前は、派遣元管理台帳に「派遣労働者が就業する事業所の所在地」を記載する必要がありました。

今回の労働者派遣法改正で、「事業所の所在地」だけでなく、「組織単位」についても派遣元管理台帳に記載することが必要になりました。

具体的には、「総務課」あるいは「管理グループ」などというように、派遣先の事業所の「課」や「グループ」の名称を派遣元台帳に記載する必要があります。

「派遣先の組織単位」の追記が必要になった理由は、以下の通りです。

 

「派遣先の組織単位」の追記が必要になった理由

平成27年9月の労働者派遣法改正で、「同一の派遣労働者について、同一の派遣先の事業所の同一の組織単位に派遣できるのは3年まで」という派遣期間の制限のルールができました。

このように、「課」、「グループ」などの組織単位ごとの派遣期間のルールが設けられたため、「派遣労働者がどの部署で就業していたか」を派遣元で明確に管理することが必要になり、派遣元管理台帳にも「派遣先の組織単位」を記載することが義務付けられました。

派遣期間の制限のルールとの関係で、個々の派遣労働者の派遣期間の制限を明確にするために、派遣元管理台帳に、派遣労働者が就業している派遣先の組織単位を記載することが必要になったという点をおさえておきましょう。

 

2−3,ポイント3:
「雇用安定措置として講じた措置の内容」の追記

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントの3つ目は、「雇用安定措置として講じた措置の内容」を追記することが必要になったという点です。

今回の労働者派遣法改正で、3年以上同じ派遣先の同じ組織単位に派遣する見込みがある派遣労働者について、「雇用安定措置」を講じることが義務付けられました。

雇用安定措置とは、派遣期間が終了した後も、派遣労働者の雇用を確保する措置のことを指し、具体的には以下にあげる5つの措置のうちいずれかをとることが義務付けられています。

 

(1)雇用安定措置の具体的な内容

内容1:
派遣会社から派遣期間が終了した派遣社員に新たな派遣先を紹介する。

内容2:
派遣会社が派遣期間が終了した派遣社員を新たに紹介予定派遣する。

内容3:
派遣会社が派遣期間が終了した派遣社員を無期雇用する。

内容4:
派遣会社で、派遣期間が終了した派遣社員に対し、新たな仕事が見つかるまでの期間、有給の教育訓練を実施する。

内容5:
派遣会社から派遣先に対し、派遣期間が終了した派遣社員を直接雇用してもらうように依頼する。

 

そして、派遣社員について、上記のいずれかの雇用安定措置を講じたときは、その内容を派遣元管理台帳に記録することが義務付けられました。

また、「内容5」の「派遣会社から派遣先に対し、派遣期間が終了した派遣社員を直接雇用してもらうように依頼する」ことを選択したときは、派遣先が直接雇用に応じたかどうかも派遣元管理台帳に記録することが義務付けられています。

このように、労働者派遣法改正で3年以上派遣先の同じ組織単位に派遣する見込みとなる派遣労働者については、派遣期間終了後、具体的な雇用安定措置をとることが義務付けられており、どのような措置をとったかについて派遣元管理台帳に記載が義務付けられたことをおさえておきましょう。

 

2−4,ポイント4:
「教育訓練の日時及び内容」の追記

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントの4つ目は、「教育訓練の日時及び内容」を追記することが必要になったという点です。

平成27年9月の労働者派遣法改正で、派遣会社が派遣社員に対して行うことが必要な教育訓練に関する規定が整備されました。

この教育訓練制度は、「キャリア形成支援制度」と呼ばれます。

教育訓練の要点は以下の通りです。

 

(1)平成27年9月の労働者派遣法改正で規定が整備された教育訓練の要点

要点1:
教育訓練の対象者について

対象者は派遣社員全員です。

 

要点2:
教育訓練の時間数について

フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者については、毎年おおむね8時間以上の教育訓練を実施することが義務付けられています。

 

要点3:
教育訓練時間の給与について

教育訓練の時間については、派遣会社から派遣労働者に給与を支払うことが義務付けられています。

 

このような教育訓練制度に関する規定が整備されたことに伴い、派遣元管理台帳にも、それぞれの派遣社員について、「いつ、どのような内容の教育訓練を行ったか」を記載することが義務付けられました。

「教育訓練の日時及び内容」が新たに派遣元管理台帳の項目に加わったことをおさえておきましょう。

 

2−5,ポイント5:
「キャリア・コンサルティングを実施した日及び内容」の追記

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳の作成のポイントの5つ目は、「キャリア・コンサルティングを実施した日及び内容」の追記が必要になったという点です。

今回の労働者派遣法改正で、派遣会社は派遣社員から希望があったときは、「キャリア・コンサルティング」を実施する義務があることが法令上、明記されました。

「キャリア・コンサルティング」とは、派遣労働者の希望があったときは、派遣労働者の職業生活の設計について相談に応じる機会を設けることを指しており、必ずしも専門の資格をもつ者が対応しなければならないわけではありません。

そして、キャリア・コンサルティングを実施したときは、「いつ、どのような内容のキャリア・コンサルティングを行ったか」を派遣元管理台帳に記載することが義務付けられました。

 

3,咲くやこの花法律事務所の派遣業に関する解決実績

咲くやこの花法律事務所では、多くの派遣会社から顧問契約のご依頼をいただき、改正法の対応や派遣社員とのトラブル、派遣先とのトラブルについて実際に解決をしてきた実績があります。

また、契約書の整備などについても派遣会社からご依頼いただき、実施してきました。

以下では咲くやこの花法律事務所の派遣業に関する実績の一部を紹介しておりますのであわせてご参照ください。

 

 

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6,まとめ

今回は、平成27年9月の労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成のポイントについて以下の5つのポイントをご説明しました。

 

ポイント1:
「無期雇用の派遣労働者か否か」、「60歳以上か否か」の追記

ポイント2:
「派遣先の組織単位」の追記

ポイント3:
「雇用安定措置として講じた措置の内容」の追記

ポイント4:
「教育訓練の日時及び内容」の追記

ポイント5:
「キャリア・コンサルティングを実施した日及び内容」の追記

 

これらを踏まえた派遣元管理台帳の参考の雛形は以下の通りです。

 

参考情報:平成27年9月労働者派遣法改正に対応する派遣元管理台帳の雛形

派遣元管理台帳の参考の雛形はこちらからダウンロード(.xlsデータ)

 

今回、派遣元管理台帳の記載項目が新たに追加されたことにより、今後、派遣元管理台帳の記載をきっかけに労働局の指導や行政処分が行われるケースが増えていくことが予想されます。

たとえば、ポイント3でご説明した「雇用安定措置として講じた措置の内容」の項目について、雇用安定措置の対象となる派遣社員に雇用安定措置を実施しなかった結果、派遣元管理台帳に記載ができなかった場合、労働局から派遣会社に対して、「法律で義務付けられている雇用安定措置が実施されていない」として指導がされることが予想されます。

そして、このような指導は場合によっては、次回に更新の許可を得ることができるかどうかの場面で影響が出てきます。

「雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと」が新たに派遣業許可の更新の条件に加えられたためです。

また、実際は雇用安定措置をとっていないのに、指導を受けることを回避するために、派遣元管理台帳に雇用安定措置を講じた旨の嘘の記載をした場合、さらに重いペナルティが予想されます。

最初の項目でご説明したように、派遣元管理台帳の作成義務の違反については罰金刑が定められており、刑事処分の対象になり得るほか、派遣の許可の取り消しの可能性もあるためです。

虚偽の記載については、このような強いペナルティもありうることをおさえておきましょう。

また補足として、今後の派遣会社の経営では、下記の点が重要なポイントとなります。

 

【補足】平成27年9月の労働者派遣法改正を踏まえた派遣会社の経営の重要なポイント

ポイント1:
派遣元管理台帳を正しく作成する。

ポイント2:
派遣法で義務付けられた「雇用安定措置」や「教育訓練」など派遣会社にとってコストがかかる義務規定も確実に守る。

ポイント3:
派遣元管理台帳に虚偽の記載は絶対に行わない。

 

労働者派遣法改正に伴い派遣会社側で対応しなければならないことは多く発生しています。

そのため、現在、咲くやこの花法律事務所でも労働者派遣法改正関連の相談件数が増加しております。この機会に、自分の会社の法令遵守状況をチェックしてみてください。

そして、もし少しでも不安や疑問がある場合は、お気軽に労働者派遣法改正に伴う対応に強い咲くやこの花法律事務所の弁護士にご相談ください。

 

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記事更新日:2020年08月04日
記事作成弁護士:西川 暢春

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