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取締役(役員)解任の方法は?具体的な手続きと損害賠償リスクなどを解説

取締役(役員)解任の方法は?具体的な手続きと損害賠償リスクなどを解説
  • 西川 暢春(にしかわ のぶはる)
  • この記事を書いた弁護士

    西川 暢春(にしかわ のぶはる)

    咲くやこの花法律事務所 代表弁護士
  • 出身地:奈良県。出身大学:東京大学法学部。主な取扱い分野は、「問題社員対応、労務・労働事件(企業側)、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」です。事務所全体で400社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。

 

  • 「取締役と意見があわなくなり解任したい。」
  • 「取締役の不正行為が発覚し解任したい。」

 

こういった取締役の解任の場面で、おさえておく必要があるのが、取締役を解任した場合の会社の損害賠償リスクです。解任された取締役から会社に損害賠償を請求され、裁判所で損害賠償の支払いを命じられた事例として以下のものがあります。

 

事例1:平成25年 5月30日東京地方裁判所判決

約850万円の損害賠償命令

 

事例2:平成22年10月29日東京地方裁判所判決

約1739万円の損害賠償命令

 

事例3:平成23年 1月24日東京地方裁判所判決

約1000万円の損害賠償命令

 

このように、役員解任は多額の損害賠償トラブルにつながることがあります。

今回は、「役員解任に伴う会社の損害賠償リスクや注意点」についてご説明したいと思います。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

取締役の不正事案に関する咲くやこの花法律事務所の解決実績は以下をご参照ください。

 

EC通販会社の在庫品の横領事件、横領した取締役からの回収に成功した事例

 

▼【関連動画】西川弁護士が「取締役(役員)解任とは?法律上のルールや損害賠償リスクについて【前編】」「取締役解任の方法!トラブルを避けるポイントを弁護士が解説【後編】」を詳しく解説中!

 

 

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1,取締役(役員)解任とは?

取締役(役員)解任とは?

取締役解任とは、取締役の意思とは無関係に株主総会の決議により任期の途中で取締役をやめさせることをいいます。議決権を行使できる株主の過半数が賛成すれば、いつでも株主総会決議で解任が可能です(会社法339条1項)。なお、取締役が自らの意思で任期の途中でやめることは「辞任」、取締役が任期満了でやめることは「退任」と呼ばれ、「解任」とは区別されます。

取締役を解任する際は、「会社の損害賠償責任」や「退職慰労金の支払い」「解任された取締役からの株式の買い取り」をめぐって紛争が起きることがあります。以下これらの点について見ていきたいと思います。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

後述の通り、「解任」は、会社が損害賠償責任を負う可能性があるという点で、「辞任」や「退任」によって取締役をやめさせる場合よりも会社としてのリスクが大きい手段です。会社としてはまずは「辞任」や「退任」によって問題を解決できないか検討すべきです。

 

2,取締役(役員)解任に関する基本的な法律上のルール

基本的な法律上のルールについて

取締役(役員)解任に関する基本的な法律上のルールとして、おさえておいていただきたい点は以下の2点です。

 

  • ルール1:取締役(役員)は株主総会の多数決で解任が可能である。
  • ルール2:解任された取締役(役員)は、解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求できる。

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

ルール1:
取締役(役員)は株主総会の多数決で解任が可能である。

定款に特別な定めがなければ、議決権の過半数を有する株主が出席する株主総会で、出席株主の議決権の過半数が解任に賛成したときは、取締役の解任が可能です。

 

つまり、「過半数の出席」+「出席株主の過半数の賛成」があれば、解任が可能です。

 

このような条件による決議は法律上、「特殊普通決議」と呼ばれます。なお、解任される取締役自身が株主の場合、この取締役も株主総会の決議に参加することが可能です。

 

ルール2:
解任された取締役(役員)は、解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求できる。

「ルール1」でご説明した通り、多数決での解任が可能ですが、正しい手続きで解任した場合であっても、解任について正当な理由がない場合は、解任された取締役(役員)は会社に損害賠償を請求できることになっています。

その損害賠償の額は、過去の裁判例をみると、概ね、「解任された取締役(役員)が、任期満了まで役員を勤めた場合に受領できたはずの役員報酬の総額」とされることがほとんどです。

具体的には、「解任時の役員報酬の月額」に、「解任から任期満了までの月数」を乗じて計算されます。

 

例えば、月額の役員報酬が100万円の取締役(役員)について、任期満了まで1年の期間を残して解任する場合、「1200万円」が損害賠償の額となります。

但し、解任について正当な理由がある場合は、解任された取締役(役員)は会社に対して損害賠償を請求できません。

 

以上の「ルール1」、「ルール2」については、「会社法339条1項」、「会社法339条2項」に定められていますので、念のため、法律の条文もご紹介します。

 

▶参考情報:会社法第339条の内容

1, 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

2, 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

・参照:「会社法」の条文

 

1項で「ルール1」が、2項で「ルール2」が定められています。

以上、取締役(役員)解任に関する基本的な法律のルールについてご説明しました。

 

整理すると、「解任は正当な理由があってもなくても多数決で可能。」、「正当な理由なく解任したときは、取締役(役員)から損害賠償を請求されれば会社は支払う必要がある。」という点が要点になりますので、おさえておきましょう。

 

3,取締役(役員)解任について損害賠償が命じられるケースとは?

取締役(役員)解任について損害賠償が命じられるケースとは?

前述のとおり、解任について「正当な理由」があったかどうかが、会社が解任した取締役(役員)に対しての損害賠償義務を負うかどうかの分かれ目になります。

では、損害賠償リスクについての重要なポイントとして、「どのような場合に正当な理由があったといえるのか」についてご説明します。

 

(1)正当な理由がある場合とは?

これについては、平成25年 5月30日東京地方裁判所判決が以下のように述べています。

 

▶参考情報:平成25年5月30日 東京地方裁判所判決の判示内容

会社法339条2項にいう「正当な理由」が存在する場合とは、当該取締役の職務の執行にあたり、「1,不正の行為や定款又は法令に違反する行為があった場合」、「2,取締役が経営に失敗して会社に損害を与えた場合」、「3,当該取締役の経営能力の不足により客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合」には認められるが、単に株主と取締役との間で経営方針が異なるというだけでは、認められない。

 

これを整理すると以下の通りです。

 

1,役員の不正行為や法律違反を理由に解任する場合

「正当な理由」が認められ、会社は損害賠償責任を負いません。

 

2,役員による経営の失敗あるいは経営能力の不足、株主との経営方針の相違を理由に解任する場合

経営の失敗や経営能力の不足、経営方針の相違が、実際に会社に損害を与えた場合、あるいは、客観的な状況から判断して将来的に会社に損害を与える可能性が高い場合でなければ「正当な理由」とは認められず、会社が損害賠償責任を負担します。

 

実際の裁判例をみても、「1,役員の不正行為や法律違反を理由に解任する場合」については、「正当な理由」が認められて会社が勝訴しているケースが多くなっています。

一方、「2,役員による経営の失敗あるいは経営能力の不足、株主との経営方針の相違を理由に解任する場合」については、「損害は発生していないし、将来的にも損害を与える可能性が高いとはいえない」として、「正当な理由」が認められず、会社が敗訴するケースが多く見られます。

単に経営能力が不足しているとか、株主との経営方針との相違があるとかいった事情だけで、損害が発生しておらず、将来的にも損害を与える可能性が高いとはいえないときは、解任について会社は損害賠償を覚悟しなければならない点に注意が必要です。

それでは次の項目で、実際の裁判事例を見ていきましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

ここまでご説明したケースとは別のケースとして、所得税や法人税を減らす目的で実際には職務をしていない配偶者等を取締役にしているケースがあります。

このようなケースは、実際には職務をしていないという意味で、「名目的取締役」と呼ばれます。

例えば離婚などの理由より、配偶者であった名目的取締役を解任した結果、トラブルになるケースもありますが、そもそも名目的な取締役については、取締役の地位を保護する必要性がないため、解任について正当な理由があると認められます。

名目的な監査役に関する事例ですが、解任について正当な理由があると判断した裁判例として、東京地方裁判所平成26年4月24日判決があります。

ただし、配偶者が実務を担当している場合は、「名目的取締役」とは言えない可能性があるため、離婚の際に辞任届を出してもらうことで解決し、解任は避けることが適切です。

 

4,損害賠償請求トラブルの裁判事例

以下では、「役員解任に伴う損害賠償請求トラブルの裁判事例」についてご紹介していきます。

まず、「取締役の不正行為や法律違反を理由とする解任」の事例を3つご紹介し、その後に、「経営の失敗、経営能力の不足、経営方針の相違を理由とする解任」の事例を3つご紹介します。

 

(1)取締役(役員)の不正行為や法律違反を理由とする解任の事例

取締役の不正行為や法律違反を理由とする解任の事例としては、以下の3つの裁判例がありますが、いずれも解任について「正当な理由」を認めています。

 

  • 裁判例1:会社に対する架空請求を理由とする取締役解任事例(平成25年12月24日東京地方裁判所判決)
  • 裁判例2:粉飾決算を理由とする取締役解任事例(平成25年11月26日東京地方裁判所判決)
  • 裁判例3:会社財産の私物化などを理由とする解任の事例(平成24年 5月14日東京地方裁判所判決)

 

詳細は以下の通りです。

 

裁判例1:
会社に対する架空請求を理由とする取締役解任事例(平成25年12月24日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

製造業を事業とする会社において、取締役が会社に対して架空の請求をして支払わせ、最終的に自身にその金銭を還流させていたことなどを理由として、解任した事例。

 

裁判の結論:

裁判所は、解任には「正当な理由」があったとして、会社を勝訴させ、解任された取締役からの損害賠償請求を認めませんでした。

 

裁判例2:
粉飾決算を理由とする取締役解任事例(平成25年11月26日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

食材の販売を事業とする会社において、代表取締役が融資やスポンサーの獲得を目的に粉飾決算をしていたことなどを理由として、代表取締役を解任した事例。

 

裁判の結論:

裁判所は、解任には「正当な理由」があったとして、会社を勝訴させ、解任された代表取締役からの損害賠償請求を認めませんでした。

 

裁判例3:
会社財産の私物化などを理由とする解任の事例(平成24年 5月14日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

情報提供サービスを事業とする会社において、代表取締役が、友人が設立した会社で使用するパソコンについて会社名義でリースを組んだり、代表取締役の私用の車について会社名義でリースを組むなどしたことを理由として、代表取締役を解任した事例。

 

裁判の結論:

裁判所は、解任には「正当な理由」があったとして、会社を勝訴させ、解任された代表取締役からの損害賠償請求を認めませんでした。

 

このように、取締役の不正行為や法律違反を理由とする解任は、不正行為や法律違反行為さえ立証できれば、解任には「正当な理由」があると判断され、損害賠償請求を認めない判決内容となることが通常です。

次に、経営の失敗、経営能力の不足、経営方針の相違を理由とする解任の事例を見ていきましょう。

 

(2)経営の失敗、経営能力の不足、経営方針の相違を理由とする解任の事例

経営の失敗、経営能力の不足、経営方針の相違を理由とする解任の事例としては、以下の3つの裁判例がありますが、いずれも解任について「正当な理由」を認めず、会社に対し損害賠償請求を命じています。

 

  • 裁判例1:経営能力、経営方針の相違を理由とする取締役解任事例(平成25年 5月30日東京地方裁判所判決)
  • 裁判例2:銀行との融資交渉の失敗などを理由とする取締役解任事例(平成22年10月29日東京地方裁判所判決)
  • 裁判例3:金融機関とのリスケジュールの交渉失敗を理由とする取締役解任事例(平成23年 1月24日東京地方裁判所判決)

 

詳細は以下の通りです。

 

裁判例1:
経営能力、経営方針の相違を理由とする取締役解任事例(平成25年 5月30日東京地裁判決)

 

事案の概要:

派遣会社が代表取締役を任期途中で解任したのに対し、解任された取締役が会社に損害賠償を請求した事例です。

 

裁判の争点:

大口取引先の破産に伴い、一定の対策を打ち出すことが必要な状況であったにもかかわらず、解任された取締役が従前からの経営方針を維持しようとした点が、主な解任理由となっており、この点が「正当な理由」といえるかが争点になりました。

 

裁判の結論:

裁判所は、会社に対し、解任された取締役への「約850万円」の損害賠償の支払いを命じました。

 

判断の理由:

裁判所は、「大口取引先の破産に伴い、一定の対策を打ち出すことが必要であったものの、株主の意向により起こした新たな事業について、解任された取締役が反対していたという事情もなかったのであるから、取締役の地位にとどまったからといって会社に損害が発生する可能性が高かったとはいえない。」などとして、解任に正当な理由があるとは認めませんでした。

 

裁判例2:
銀行等の融資交渉の失敗などを理由とする取締役解任事例(平成22年10月29日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

エレベーターの製作、保守等を事業とする会社が取締役を任期途中で解任したのに対し、解任された取締役が会社に損害賠償を請求した事例です。

 

裁判の争点:

会社は、解任された取締役が独断で銀行との融資交渉を行い、その結果、会社が追加の担保提供を余儀なくされ、返済期間も短く設定され、利率も高くなった等の点を、主な解任の理由として主張し、この点が解任の「正当な理由」といえるかが争点になりました。

 

裁判の結論:

裁判所は、会社に対し、解任された取締役への「約1739万円」の損害賠償の支払いを命じました。

 

判断の理由:

裁判所は、会社は融資交渉の段階ですでに銀行からの信用を失っており困難な交渉であったうえ、会社が主張する交渉方法を採用してもよい結果が得られたとは限らないなどとして、融資交渉の失敗は解任の「正当な理由」に当たらないと判断しました。

 

裁判例3:
金融機関とのリスケジュールの交渉失敗を理由とする取締役解任事例(平成23年 1月24日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

ビデオレンタルなどを事業とする会社が取締役を任期途中で解任したのに対し、解任された取締役が会社に損害賠償を請求した事例です。

 

裁判の争点:

会社は、解任された取締役が、金融機関とのリスケジュールの交渉を担当していたところ、交渉失敗により金融機関から有利な条件を引き出すことができなかったことを主な解任理由として主張し、この点が解任の「正当な理由」といえるかが争点になりました。

 

裁判の結論:

裁判所は、会社に対し、解任された取締役への「約1000万円の損害賠償の支払いを命じました。

 

判断の理由:

裁判所は、「解任された役員の能力不足でリスケジュールの交渉に重大な支障が生じたり、会社にとって不利な条件をのまざるを得なくなったりしたことを認めるに足りる証拠はない」などとして、リスケジュールの交渉の失敗は解任の「正当な理由」に当たらないと判断しました。

 

(3)取締役のパワハラを理由とする解任の事例

取締役による従業員に対するパワーハラスメントがある場合も、取締役解任の「正当な理由」にあたり得ます。

ただし、会社から取締役に対してパワハラ的言動について注意、指導を行った後もその取締役がパワハラ的言動を繰り返す場合にのみ、解任に「正当な理由」が認められ、損害賠償責任の対象外となると考える必要があります。

以下の裁判事例があります。

 

裁判例1:
従業員に対するパワハラを理由とする取締役解任事例(平成23年10月3日東京地方裁判所判決)

 

事案の概要:

化粧品の製造販売業の会社が、取締役を任期途中で解任したのに対し、解任された取締役が会社に損害賠償を請求した事例です。

 

裁判の争点:

解任された取締役は、従業員に対して「意見があれば何でも言ってほしい」と言いつつ、実際に従業員が意見を述べると、「そんなことをいう権利はない」と述べたり、電話中に従業員を大声で罵倒するなどのパワハラ的言動があり、会社はこの点を解任の「正当な理由」として主張しました。

 

裁判所の結論:

裁判所は、「正当な理由」を認めず、会社に対し、解任された取締役への「約1000万円」の損害賠償の支払いを命じました。

 

判断の理由:

裁判所は、この取締役のパワハラについて「従業員との関係で、相当配慮に欠けた言動があり、これが業務上の支障を生じさせる一因となっていた」としながらも、「明らかな法令違反行為を行ったとは認められないこと」やこの取締役が17年以上にわたり取締役を勤めてきたことを指摘し、取締役としての職務への不適任が著しいとまではいえず、「正当な理由」にはあたらないと判断しました。

このように、パワハラがあったというだけでは、解任について「正当な理由」があるとは判断されないことに注意する必要があります。

「正当な理由」があると判断されるためには、パワハラが繰り返されて、取締役としての職務への不適任が著しいという段階にまで至っていることが必要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

パワハラを理由とする解任の場合、パワハラに当たるかどうかの判断を正しく行うことも重要になります。パワハラか否かの判断基準を以下で解説していますのでご参照ください。

 

・参照:パワハラ防止の対策とは?義務付けられた10項目を弁護士が解説

 

(4)まとめ

ここまでご説明した裁判例はいずれも、解任時から解任された取締役の任期満了までの期間の役員報酬と役員賞与に相当する額を、解任により取締役に発生した損害と判断し、会社に損害賠償の支払いを命じています。

このように、取締役の不正行為や法律違反を理由とする解任の事例については「正当な理由」が認められている裁判例が多い一方、経営の失敗、経営能力の不足、経営方針の相違を理由とする解任の事例では、損害や損害発生のおそれが生じていないこと、あるいは損害の発生が取締役自身の責任とはいえないことを理由に、解任の「正当な理由」とは認めず、損害賠償を命じている裁判例が多くなっています。

また、パワハラ的言動を理由とする解任については、会社からパワハラ的言動について注意、指導を行った後もその取締役がパワハラ的言動を繰り返す場合にのみ、「正当な理由」が認められると考える必要があります。

 

5,損害賠償トラブルを避けるための4つのポイント

最後に、「取締役(役員)解任に伴う損害賠償トラブルを避けるためのポイント」をご紹介しておきたいと思います。

ご紹介しておきたいポイントは以下の4つです。

 

  • ポイント1:任期満了まで待てないかを検討する
  • ポイント2:役員の辞任により対応できないかを検討する
  • ポイント3:解任する場合は、解任の理由についての資料を収集する
  • ポイント4:使用人兼務役員の場合は、不当解雇トラブルのリスクにも注意が必要

 

以下で順番に見ていきましょう。

 

ポイント1:
任期満了まで待てないかを検討する

役員の解任に伴う損害賠償請求のトラブルは、任期の途中で解任することにより起こるトラブルです。

 

「任期満了を待って、再任しないという方法をとれば、損害賠償請求のトラブルは起こりません。」

 

任期満了が近い場合は、任期満了まで待って、再任しないことで対応できないか検討してみましょう。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

取締役の任期は原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法332条1項)。

ただし、非上場企業においては定款で任期を10年まで伸長することが可能ですので、定款により任期を確認する必要があります。

 

ポイント2:
取締役(役員)の辞任により対応できないかを検討する

取締役(役員)の解任に伴う損害賠償請求のトラブルは、株主総会の多数決で、本人の意思によらずに解任することにより起こるトラブルです。

 

「本人の意思による辞任という方法をとれば、損害賠償請求のトラブルは起こりません。」

 

本人が辞任という方法に応じてくれる可能性があるのであれば、辞任してもらうことにより対応できないか検討してみましょう。

 

ポイント3:
解任する場合は、解任の理由についての資料を収集する

任期満了まで待つことも、辞任により対応することも難しいときは、解任せざるを得ません。

 

この場合は、損害賠償請求のトラブルに備えて、「解任に正当な理由があったことを立証する資料を収集しておくことが必要」です。

 

役員の能力の問題で解任する場合は、能力不足により実害が生じたことや、取引の機会を逃したことなどの資料を収集しておきましょう。

また、場合によっては、役員の職務に不正行為や法律違反がなかったかどうかを調査することも必要です。

 

ポイント4:
使用人兼務役員の場合は、不当解雇トラブルのリスクにも注意が必要

取締役が従業員としての地位も兼ねているケースを「使用人兼務役員」と言います。

「使用人兼務役員」の場合は、取締役を解任することは多数決により可能ですが、従業員としての地位も失わせるためには、別途、「解雇」等が必要になります。

 

この点にも注意して、「役員解任後に、従業員としての雇用は継続するのか、それとも解雇するのか」も検討しておきましょう。

解雇については以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

トラブルなく解決できた実際の解決事例

冒頭で裁判例をご紹介したように、取締役解任の損害賠償トラブルでは、会社が1000万円を超えるような賠償を命じられるケースも少なくありません。

会社としては、「正当な理由」があると考えて解任したとしても、裁判所が必ずしもそのように認めてくれるとは限らないことに注意が必要です。

損害賠償トラブルを確実に回避するためには、まず、取締役の不正を調査して不正の証拠を集めたうえで、取締役に事情聴取して不正を認めさせ、解任ではなく辞任で解決することが重要です。

この一連の流れについて、咲くやこの花法律事務所の具体的な解決事例の1つを以下でご紹介していますのでご参照ください。

 

 

以上、取締役解任に伴う損害賠償請求トラブルを避けるためのポイントとして4つのポイントをおさえておいてください。

 

6,取締役(役員)の解任手続きの進め方

取締役(役員)の解任手続きの進め方

続いて、取締役(役員)の解任を具体的に進めていく方法についてご説明します。

 

(1)取締役の最低人数を確認する

取締役の解任を検討するときは、まず、自社において必要な取締役の最低人数が何人になっているかを確認しておく必要があります。

取締役を解任することによって、必要な人数を下回ることになる可能性があるからです。

取締役の最低人数は、取締役会設置会社の場合は3名以上(会社法第331条4項)、取締役会のない会社の場合は1名以上です。ただし、定款で最低人数を定めているケースがありますので、必ず、自社の定款を確認することが必要です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

解任によって最低人数を下回ってしまう場合は、解任と同時に就任してくれる取締役候補者を探す、あるいは、定款を変更して取締役の必要人数を減らすなどの方法を検討する必要があります。

 

(2)株主を確認する

本来、会社は年1回、定時株主総会を開催することが必要です。

ところが、中小企業では、法令通りに定時株主総会が開かれておらず、株主が誰であるかがあいまいになっているケースも存在します。

そのような場合は、株主総会を開く準備として、株主が誰であるかを会社として確認しておくことが必要です。

 

1,名義株の問題

株式会社では、会社は株主名簿を作成し、それに基づき株主が誰かを把握することが原則です(会社法121条)。

ところが、長年株主総会が開かれていない場合、株主名簿に記載されている株主と実際の株主が食い違っているケースもあり、このようなケースは名義株と呼ばれます。

名義株が発生してしまっているケースで、株主が誰かがあいまいなまま、実際の株主に議決権を行使させないで、株主総会決議で取締役を解任してしまうと、後日株主総会決議が無効であると主張されるなどのトラブルが予想されます。

そのため、名義株が発生している場合は、取締役の解任の前に名義株の問題を解消しておくことが望ましいと言えるでしょう。

名義株の解消方法については、以下で詳しく解説していますのでご参照ください。

 

 

2,相続が発生している場合

株主が亡くなった後も、株式について遺産分割がされないまま放置されているケースもあります。

この場合、相続があった株式について議決権を行使するためには、相続人間において権利行使者1人を定めたうえで、会社に通知し、会社は相続人が定めた権利行使者に議決権を行使させることが必要です(会社法106条)。

 

(3)株主総会を招集する

取締役の解任は、株主総会で行いますので、株主総会を招集することが必要です。

取締役会設置会社では、株主総会を招集するためには、取締役会決議で総会の日時、場所、目的事項等を決定することが必要です(会社法298条4項)。

これに対して、取締役会のない取締役会非設置会社では、取締役の過半数によって総会の日時、場所、目的事項等を決定したうえで取締役が株主総会を招集します(会社法第296条3項)。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

取締役会を招集する際には、取締役に対して、必ずしも事前に議案を通知する必要はないとされています。

そのため、解任予定の取締役に対して、取締役解任のための株主総会の招集が議題であるということを隠して、取締役会を招集することも可能です。

 

1,解任予定の取締役の議決権

取締役を解任する株主総会を招集するための取締役会においては、解任予定の取締役は議決権を行使することはできません(東京地方裁判所決定平成29年9月26日)。

これは、取締役会においては、「決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」とされているためです(会社法369条2項)。

そのため、解任予定の取締役を除いて、取締役会内の過半数がとれれば株主総会の招集を決定することが可能です。

 

2,株主全員が解任に同意している場合

株主全員の同意があれば株主総会の招集手続きを省略して、いきなり株主総会を開くことも可能です。

株主全員がその取締役の解任に同意している場合は、事前に株主に根回しすることにより、取締役会での招集手続きをせずに株主総会を開いて、取締役を解任することも選択肢の1つになります。

 

(4)株主総会で解任決議をする(普通決議で可能)

招集した株主総会で、取締役の解任を決議します。

定款に特別な定めがなければ、議決権の過半数を有する株主が出席する株主総会で、出席株主の議決権の過半数が解任に賛成したときは、解任が可能です(会社法341条。特殊普通決議)。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

解任される取締役が同時に株主でもある場合は、自分の解任を決議する株主総会で、その取締役が議決権を行使できるかどうかも問題になります。この点については、前述の取締役会決議の場面とは異なり、特別利害関係人にあたらず、株主としての議決権を行使することができるとされています(昭和42年3月14日最高裁判所判決)。

 

・参照:「昭和42年3月14日最高裁判所判決」の判決内容

 

(5)例外的に特別決議が必要な場合

ここまでご説明した通り、過半数が解任に賛成したときは、解任が可能なことが原則ですが、例外として、累積投票によって選任された取締役を解任する場合は、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議する「特別決議」が必要です(会社法309条2項7号)。

累積投票とは、例えば取締役を3名選ぶ株主総会決議の際に、株主に1株につき1個の議決権とするのではなく、1株につき3個の議決権を認める投票方法です。

累積投票は、少数株主にも取締役選任の機会を与える制度であり、この累積投票により選ばれた取締役を解任する場合は、少数株主保護の見地から、特別決議が必要とされているのです。

 

(6)株主総会で解任動議を出すことは出来ない

株主総会では、「動議」として、株主総会の招集通知に記載されていない議題を提出することは認められていません。

そのため、株主総会の最中に株主が「取締役解任の動議」を出すことはできません。

 

(7)株主提案による取締役解任

取締役会が招集した株主総会の議案に取締役解任が入っていない場合でも、株主において、株主総会の8週間前までに取締役に通知することで、取締役の解任を株主総会の議題とすることを請求することが可能です(会社法303条)。

これを、株主提案権といいます。

 

(8)株主総会議事録を作成する

株主総会終了後は株主総会議事録を作成することが必要です(会社法318条1項)。

株主総会議事録については、会社法上、取締役の署名押印は必要ありませんので、解任された取締役の協力が得られない場合でも株主総会議事録を作成することが可能です。

ただし、自社の定款で、出席した取締役が株主総会議事録に署名押印することが定められている場合は、それに従う必要があります。

解任した取締役が署名押印を拒否することも考えられますが、その場合は、「署名押印を拒否する取締役の氏名」と「署名押印しない理由」を議事録に付記すれば問題ありません。

 

(9)解任の登記をする

株主総会議事録ができたら、それをもとに、取締役の解任の登記手続をします。

 

(10)取締役解任通知書

取締役は株主総会に出席する義務があるため、解任された取締役が出席していれば、株主総会の場で自分が解任されたことを知ることになります。

一方、解任された取締役が株主総会に出席していなかった場合も、取締役は株主総会の決議によって解任されるため、解任後に解任された取締役に通知する法的な義務はありません。

ただし、法的な義務ではないものの、解任されたことを明確にするため、解任通知を取締役に送付することが適切です。

 

(11)勝手に解任は可能?

このように取締役の解任には株主総会決議が必要であり、株主総会は取締役の多数決または取締役会決議に基づき招集されますので、解任された取締役の知らないところで解任の手続きをすることは通常はできません。

但し、株主全員が株主総会の招集通知の省略に同意した場合は、招集通知は不要ですので、このような場合は、招集通知を省略することにより、取締役が知らないうちに解任してしまうということも可能です。

 

7,解任された取締役(役員)の退職金について

解任された取締役(役員)の退職金については、「取締役としての退職慰労金」と「従業員としての退職金」が問題になります。

 

(1)取締役としての退職慰労金

定款に定めがない場合、退職慰労金が支給されるためには、株主総会の決議が必要であることが原則です(会社法361条1項)。

そのため、解任された取締役についての退職慰労金を定める株主総会決議がなければ、退職慰労金はそもそも発生しません。

なお、株主総会決議によって、退職慰労金の支給基準を定めたうえで取締役会に退職慰労金の決定を委ねることも可能です。この場合も解任された取締役について、取締役会が退職慰労金を定めなければ、退職慰労金は発生しません。

ただし、以下のようなケースでは退職慰労金自体は発生しないものの、退職慰労金を支給しないことについて、会社が損害賠償責任を負うことがあるので注意が必要です。

 

  • 取締役について退職慰労金規程等の内規が設けられているにもかかわらず支給しない場合
  • 取締役について退職慰労金を支給する慣行があるにもかかわらず支給しない場合
  • 取締役就任時に退職慰労金の支給を約束していたにもかかわらず支給しない場合

 

(2)従業員としての退職金について

解任された取締役が、使用人兼務取締役として従業員としての地位を有していた場合で、解雇や退職により従業員としての地位も終了するときは、従業員としての退職金が問題になります。

これについては、退職金規程の定めに従うことになります。

退職金規程には、懲戒解雇の場合は退職金を不支給または減額する旨の規定を設けているケースが多いです。

そのため、解任された取締役の従業員としての地位を会社からの懲戒解雇によって終了させる場合は、従業員としての退職金を不支給とし、あるいは減額することも検討の余地があります。

ただし、退職金の不支給や減額については判例上の制限があることに注意が必要です。

懲戒解雇の場合の退職金の不支給や減額については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

 

8,取締役(役員)からの株式の買い取り

解任された取締役(役員)が会社の株式を保有している場合、解任後も、その後開かれる株主総会の招集通知を送る必要がありますし、解任後も株主としての権利を行使されることになります。

こういったことを避けるためには、解任した取締役から株式を買い取ってしまうことが考えられます。

買い取りは、解任した取締役との合意で行うことが原則ですが、解任した取締役がもつ株式が3分の1未満の場合は強制的に株式を買い上げることも可能です。

強制的な株式の買い取りをスクイーズアウトといいます。

株式の買い取りやスクイーズアウトについては以下をご参照ください。

 

 

9,解任されそうな取締役(役員)から予想される対抗策

解任されそうな取締役(役員)の立場からは、解任を阻止するための多数派工作、解任された場合の損害賠償請求や株式の買い取り請求などの動きが予想されます。

以下で見ていきたいと思います。

 

(1)株主総会での多数派工作

解任されそうな立場の取締役が解任を阻止するために最も有効な方法は、株主総会での多数派工作です。

解任には株主総会決議が必要ですから、株主に接触して、解任決議に賛成しないように求めるということが考えられますし、株主から議決権行使についての委任状を取り付けようとする委任状争奪戦になることも考えられます。

 

(2)黄金株主へのアプローチ

黄金株とは、拒否権付き株式のことであり、株主総会決議事項または取締役会決議事項について拒否権をもつ株式をいいます。

取締役の解任について拒否権が設定された黄金株をもつ株主がいる場合、解任されそうな取締役(役員)は、その株主にアプローチして拒否権を行使してもらうことにより解任を避けようとするということが考えられます。

黄金株についての詳しい説明は以下をご参照ください。

 

 

(3)取締役会での多数派工作

取締役会設置会社では、株主総会の招集には原則として取締役会決議が必要です。

そのため、株主総会では解任を支持する株主が多数になりそうな場合でも、解任されそうな取締役としては、取締役会内での多数派工作をして、解任のための株主総会が招集されないようにするという対抗策をとってくることも考えられるでしょう。

 

(4)損害賠償請求

任期途中で解任された場合は、解任に「正当な理由」がないとして、損害賠償の請求をしてくることが考えられます。

会社としては、解任の理由についての証拠を十分に確保して、損害賠償請求に反論できるように準備しておく必要があります。

 

(5)株式の買い取り請求

解任された取締役が会社の株式を保有している場合、解任後に自分のもっている株式を買い取るように、会社や多数派株主に求めてくるケースもあります。

これについては、会社や多数派株主が応じなければならない義務はありません。

ただし、解任された取締役がいつまでも自社株を持っている場合、その後も、株主総会の招集通知を送る必要がありますし、株主としての権利を行使されることになります。

こういったことを避けるためには、株式を買い取ってしまうことも選択肢として考えるべきでしょう。

株式を買い取る場合は、株式譲渡契約書を作成して、確実に株式についての権利の移転を受けることが重要です。

株式譲渡契約書の作成については以下の記事で解説していますのでご参照ください。

 

 

10,役員解任の訴え

ここまでご説明してきた方法で、取締役を解任するためには、株主の多数がその取締役の解任に賛成することが必要です。

これに対して、株主の多数がその取締役の解任に賛成していない場合であっても、取締役を解任することができる方法として、「役員解任の訴え」の制度が設けられています。

 

(1)役員解任の訴えの要件

役員解任の訴えは、以下の要件を全て満たす場合に、裁判手続きで取締役の解任を求めることができる制度です(会社法854条)。

 

  • 1,役員の職務の執行に関し不正行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったこと
  • 2,その役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたか、株主総会での解任決議が効力を生じない場合であること
  • 3,株主総会の日から30日以内に裁判所に役員の解任を求める訴訟を起こすこと
  • 4,株主総会の日の6か月以上前から3%以上の議決権をもつ株主が訴訟を起こすこと

 

この役員解任の訴えは、役員に重大な不正があるときは、多数の株主の賛成を得ることができない場合でも、裁判所の判決により、役員を解任することができる道筋を設けた制度です。

 

「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」

役員解任の訴えによって、取締役が解任されたとしても、株主の多数がその取締役を再任することを希望する場合、株主総会決議でその取締役を再任することは可能です。

そのため、役員解任の訴えの制度は、実効性が高い制度とは言い難いのが実情です。

 

11,【補足】代表取締役の解任手続きと解任理由

最後に代表取締役を解任する場合の手続きについてもご説明しておきたいと思います。

そもそも代表取締役とは、代表権のある取締役のことをいいます。

代表取締役については、代表権をなくして平取締役にする「解職」と、取締役からも解任してしまう「解任」の両方が問題となります。

 

(1)代表取締役の解職(取締役会設置会社の場合)

取締役会設置会社における代表取締役の解職は取締役会決議で行います。

この場合、解職の対象となっている代表取締役は決議に加わることはできず、定足数にもカウントされません(昭和44年3月28日最高裁判所判決)。

これは、前述の通り、取締役会においては、「決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない」とされているためです(会社法369条2項)。

 

 

また、代表取締役は、自身の解職を求める取締役会で議長を務めることもできません(平成8年2月8日東京高等裁判所判決)。

なお、代表取締役を解職した後に新たな代表取締役を選任する際は、解職された代表取締役も取締役であることから、取締役会決議から排除してはならないことに注意が必要です。

 

(2)代表取締役の解職(取締役会非設置会社の場合)

取締役会のない会社の場合、代表取締役が取締役の互選によって選任されているか、それとも代表取締役が株主総会で選任されているのかによって、解職の方法が異なります。

代表取締役が取締役の互選によって選任されている場合、取締役の互選で代表取締役を解職することができます。

これに対して、代表取締役が株主総会で選任されている場合は、株主総会において代表取締役を取締役から解任することが必要であり、取締役としての地位を残したまま代表取締役ではなくすという「解職」はできません。

 

(3)取締役からの解任

代表取締役を取締役から解任する方法については、ここまで「取締役の解任手続きの進め方」としてご説明してきた内容と全く同じです。

株主総会を招集し、議決権の過半数を有する株主が出席する株主総会で、出席株主の議決権の過半数が解任に賛成したときは、解任が可能です(会社法341条)。

また、代表取締役の解任についても、ほかの取締役の解任と同様に、任期途中の解任に正当な理由が認められない場合は、会社が損害賠償責任を負うことになります。

 

12,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます。」

咲くやこの花法律事務の弁護士によるサポート内容

最後に、取締役を解任しなければならない場面での、咲くやこの花法律事務所のサポート内容をご説明します。

 

(1)取締役(役員)解任についての事前相談

冒頭で裁判事例をご紹介したように取締役解任については、1000万円を超えるような損害賠償を命じる裁判例が多数出ています。

こういったリスクを避けるためには、解任の前に弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

咲くやこの花法律事務所では、弁護士が個々の会社の事情をお聴きしたうえで、問題のある取締役にやめてもらうためのベストな方法をご説明します。

また、解任という選択肢をとる場合は、解任後の損害賠償請求のリスクを踏まえて、事前に解任に「正当な理由」があることを根拠づける証拠を確保しておくことが非常に重要ですので、この点についてもサポートを行い、また、株主総会の招集に向けた具体的な進め方を助言します。

 

弁護士へのご相談費用

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

(2)取締役(役員)解任のための株主総会への同席

取締役を解任する際の、株主総会の招集手続きや、当日の株主総会の対応を不備なく行うことも非常に重要です。

招集手続きや当日の株主総会決議に不備があると、解任決議が無効になったり、取り消されることになるためです。

咲くやこの花法律事務所では、招集手続きの書類作成のサポートや株主総会への弁護士の出席のご依頼を承っています。

 

弁護士へのご相談費用

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

(3)解任後のトラブルについての対応

取締役解任後に、解任された取締役から損害賠償請求や株式の買い取り請求がされることがあります。

こういった解任後のトラブルについても、咲くやこの花法律事務所の弁護士が会社側の立場で対応し、適切な解決を実現します。特に損害賠償請求については、訴訟になる前の段階で、弁護士が会社側の立場で交渉することで、会社にとって良い解決につながることが多いです。

トラブルが起きたら、裁判になる前の早い段階でご相談いただくことが重要です。

 

弁護士へのご相談費用

●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約の場合は無料)

 

13,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法

今すぐのお問い合わせは以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

「咲くやこの花法律事務所」のお問い合わせページへ。

 

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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2023年7月28日

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